愛しのレコードジャケット<ちびっこ歌謡>

2019.12.2

2019年も残すところあとわずか。
着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編む季節がやってきた。
年末の忙しさをしばし忘れ、昭和の懐かしいレコードを楽しんでいただこう。

今回のテーマは「ちびっこ歌謡」である。
一口にちびっこ歌謡といっても、その奥は深い。
あの美空ひばりさんも、かつては「天才ちびっこ歌手」として各地ののど自慢大会に出場し、あまりの歌の上手さに「子どもらしくない」という理不尽な理由で優勝できなかったというエピソードがあるとか。
歌謡界の女王も、ちびっこ歌謡出身なのである。
また、ドラマやバラエティ番組に出演する子役たちも人気にあやかって出したレコードが多数あり、ちびっこ歌謡だけ集めるコレクターもいる。
そんなさまざまな「ちびっこ歌謡」のレコードを紹介していこう。

黒ネコのタンゴ/皆川おさむ
日本語詞:見尾田みずほ 作曲:Franaio,A.Soricillo


ちびっこ歌謡の金字塔とも言われる大ヒット曲
原曲はイタリアの音楽コンクールに出品された童謡だが、日本語の訳詞をつけて当時小学1年生の皆川おさむが歌った。
皆川おさむの歌は舌足らずながらも元気いっぱいで、音程もしっかりしている。
B面の「ニッキニャッキ」も、イタリア童謡をカバーした楽しいちびっこ歌謡だ。

ドラネコのゴーゴー/森あきよ
作詞:足柄金太 作曲:鈴木邦彦

大ヒットした「黒ネコのタンゴ」を意識して、ジャケットに「日本初のアンサー・ソング」と記載している。
タイトルには「ゴーゴー」とあるが、リズムはゆったりで「ネコふんじゃった」を踏襲したメロディが特徴である。
森あきよの歌声は、ライバル皆川おさむ君に負けず表情豊かではつらつとしている。
ジャケットのいたずらっ子っぽい表情も可愛い。

ヒーヒーマンボ/波ちゃん&ヒーばあちゃんず

人気スナック菓子「カラムーチョ」のCMで話題になった波ちゃんの人気にあやかって発売された曲。
マンボのリズムに乗り、元気いっぱいで一生懸命に歌う波ちゃんが可愛い。

 

チンチンポンポン/小谷浩代・前野良典
日本語詞:本庄一郎 作曲:A.Gorassini

「黒ネコのタンゴ」と同様イタリアの音楽コンクールに出品された童謡のカバー曲。
タイトルの「Cin Cin Pon Pon」はイタリア語で汽車が走る音だそうだが、日本語版では幼い兄妹がお風呂に入る様子を表している。
歌っているのは3歳の小谷浩代と6歳の前野良典の二人。
特に小谷浩代ちゃんの歌は天真爛漫で、聴いていると思わずほっこりしてしまう。

山口さんちのツトム君/川橋啓史・斉藤こず恵
作詞作曲:みなみらんぼう

NHK「みんなのうた」で放送され大ヒットしたちびっこ歌謡。
優しいメロディと元気のない友だちのツトム君を心配する歌詞は、まさにちびっこ歌謡王道の1曲といえよう。
オリジナルは川橋啓史のバージョンだが、後にドラマで有名になった子役の斉藤こず恵も競作し、斉藤バージョンの方が有名になってしまった。

わたしはタバサ/リトル・ピンク
作詞:細の直紀 作曲:小六禮次郎

「リトル・ピンク」は双子の小学生デュオとして、子供向け番組「おはようこどもショー」に出演していた。
「リトル・ピンク」というネーミングは、当時の大スターであるピンクレディを意識しているそうで、そのためか曲はビートの効いたディスコ調でやや大人びた歌詞を歌っている。

キャベツ畑の子供たち/間下このみと子供たち
作詞:浜口庫之助 作曲:南羽肇

「がんばれ玄さん」のCMや「所さんのただものではない!」で人気者になった間下このみの歌。
当時、アメリカで大ヒット商品となった「キャベツ畑人形」をモチーフにした歌で、間下このみを中心に子どもたちが元気よく歌っている。

初恋/松本結香
作詞:川口文 作曲:やまだ寿夫

テレビの歌合戦番組でグランプリを受賞した松本結香が歌うちびっこ演歌。
松本の歌の実力は本物で、くるくる回るこぶしは聴いていて心地よい。
B面の「モダンおじいちゃんと孫娘」は、一転してビートの効いたファンキーディスコ歌謡で松本もノリノリで歌っている。

母恋おけさ/小林幸子
作詞:西沢爽 作曲:古賀政男

某動画投稿サイトでは「ラスボス」と呼ばれるなど、現在も活躍中の小林幸子がちびっこ歌手時代に出したレコード。
A面は故郷新潟の民謡であるおけさをモチーフにした演歌だが、B面「ちびっこ天使」はモダンジャズ風の歌謡曲で、美空ひばりの「悲しき口笛」を思い起こさせる。
どちらも抜群の歌の上手さで、当時「第二の美空ひばり」と呼ばれた片鱗がうかがえる。

 

このように様々なちびっこ歌謡があるが、共通して言えるのは、純真な子どもの歌は大人たちの心を癒してくれるということだ。

さて、2019年も終わりが近づいてきた。
年末といえばベートーヴェンの第九だが、今年はちびっこ歌謡を聞いて、溜まった心の疲れを癒してみてはどうだろうか。

~おまけ~
ちびっこ歌謡ではないが、あの名子役えなりかずきが大人になってからCDを出していた
初回盤限定には「えなりかずき千社札」というちょっと微妙な特典付き。

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