吉田ひろきが初めての女唄、『あの日の恋』をリリース。「女性目線の歌ですが、かつての自分の体験を重ねつつ自然体で歌えました」

2022.10.26

端正なビジュアルと成熟したバリトンボイスで人気の吉田ひろきが、5枚目のシングル『あの日の恋』(c/w『またサヨナラ』『あなたを忘れない』)をリリースした。前作の『瞳の願い』を経て『あの日の恋』に至り、ようやく“歌手・吉田ひろき”の方向性が見えてきたと話す。そんな吉田に、収録の3曲すべてが“女唄”という初のチャレンジへの意気込みから、ご自身の“あの日の恋”の思い出話まで十分に語ってもらった。


――新曲『あの日の恋』は、5作目にして初めての“女唄”です。感情の込め方など難しかった点はありましたか。

女性目線の歌ではありますが、歌詞全体を俯瞰すると男性の身からしてもわりと理解できる部分があり、これまでの自分自身の体験を思い出したりして、自然体で歌えたと思います。例えば2番に「夢を熱く 語るあなたに 惹かれたのだから しょうがないわ」という歌詞が出てきますが、かつて僕もお付き合いしていた女性に「ビッグになるから」なんて語っていて(笑)、「そういうところに惹かれた」と言われたことがありました。自分の経験に置き換えられた部分があったものですから、そういう意味でもあまり女唄を意識せず、曲の世界にスッと入れた気がします。

――吉田さんの歌を聴いていていると、シンプルな歌詞にも関らず、物語が浮かんでくるような気がします。頭の中でストーリーや人物像を意識して作り込むほうですか。

オペラのように役どころが決まっていて、背景もキチンとあってということであれば意識するでしょうが、歌謡曲のように解釈をゆだねられる場合は、作り込むというより歌詞に沿って、自然に湧き上がってくる感情を大事にしながら歌うことが多いですね。『あの日の恋』も自分の中で起こった感情に忠実に歌っています。

――カップリングの2曲も女唄ですが、こちらも『あの日の恋』のように、女唄であることをあまり意識せず歌えたのでしょうか。

『またサヨナラ』は女性が書いた詞ですし、男にはない視点を感じました。「一人きりの 寂し気な テーブル」という歌詞がありますが、モノに焦点を置くって女性独特の感性だと思いますし、「幸せな 女のフリして」という強がりを言う部分など、女性の気持ちを勉強させていただきました。この歌詞で1本のショートムービーが作れるような内容でしたので、無意識に自分の中で女性を主人公にした物語を想像しながら歌っていたかもしれません。

――今回のCDに収録された3曲には、三者三様の女性が描かれているように思いますが、吉田さん的には、どの女性がお好みですか。

うーーん(笑)、難しいですが『またサヨナラ』の女性かな。今お話ししたように、この女性は“今自分は一人じゃない、幸せなの”ってまだ未練のある男性に対して強がっていますよね。どちらかというと、そういう強気な女性が好きなんです。別れ話でもあまり暗くならず、サラリとお別れできるような(笑)。

――前回のうたびとインタビューで、藝大時代はモテたとお聞きしましたが、その分、様々な別れも経験されたのでしょうね(笑)。ではそんな吉田さんの“あの日の恋”の思い出を聞かせていただけますか。

僕の人生の中でひとりの方ときちんと長くお付き合いしたのは、藝大時代です。その方もクラシックを勉強していて、音楽をやっている方なら多かれ少なかれ同じだと思いますが、感情を表に出すことに抵抗がなくて情熱的な女性でした。その分もめごとも多かったですけど(笑)でも、今振り返ると刺激的で充実した時間を過ごせたなと思います。

――「ビッグになる」と語った相手がその方ですね。でも、そういった一つひとつの経験が歌う上での糧になっているのではないですか。

恋愛の経験もそうですし、オペラなどでいろいろな役柄をやらせていただいた経験も含めて、すべてが自分の中で感情の引き出しになっている気がします。先ほど僕の歌でストーリーが浮かんでくると言っていただきましたが、これまでのいろいろな経験が、知らず知らずのうちに僕の歌の中に出てきているのかもしれません。

――ところで、好奇心旺盛にいろんなことに挑戦されている吉田さんですが、今一番興味を持っていることと言えば何ですか。

最近、身体を鍛えることにハマっていて、新しく自分の中で始まったのは筋トレです。コロナ禍で家にいる時間が長くなりましたし、歌の練習だけだと気持ちを発散する場所がなくて、ちょっと運動でもとやり始めたらハマってしまいました(笑)。ジムに通っているわけではなくて、家の中でダンベルをあげたり腕立てや腹筋をやったりという程度なんですが。

――プロフィールには特技がパン作りと書いてあります。

先日はほうれん草の食パンを焼きました。もともとパンは食べるのが好きだったのですが、学生時代に『焼きたて!!ジャぱん』という高校生がパン職人を目指す漫画にめちゃめちゃハマって、いつか僕もパンを焼けるようになろうと心に決めていたんです。それで、デビューしてから趣味を聞かれることが多くなって、その頃誇れるような趣味もなかったので、やるならここだと思って始めました。パンシェルジュ検定も1級を取ったんですよ。

――コロナ禍の中でYouTubeの配信も積極的にされていますが、どんな内容ですか。

今は『あの日の恋』をなるべくたくさんの方に聴いていただこうと思っています。その他、6月に開催したファンイベントで、リクエスト曲をワンフレーズ歌うという企画をやったのですが、今回は前もってリクエストしていただいた曲をYouTubeの生配信の中で1曲通して歌っています。ポップスから演歌まで、ファンの方が吉田ひろきの声で聴きたいという曲なら何でも。おかげ様でレパートリーが増えました。

――これまでコンサートができない状況が続いてきました。YouTubeもその中での工夫のひとつだったと思いますが、今、コロナ禍の毎日を振り返って何を思いますか。

これまで人前に出て直接自分の歌をお届けすることが当り前だと思ってやってきましたので、それができない環境はすごく窮屈に感じました。YouTubeでの配信もコミュニケーション手段としては効果的だと思っていますが、それでもやっぱり生でお客さんの反応を感じながら歌うことは、自分の中の一番の喜びなんだと再認識しました。

――これからネット社会がより進んでいくと思います。そういう中でも生の声を届ける意義は大きいということでしょうか。

世界中どこにいても声を聴いていただけるわけですし、普段なかなか会えない人に歌をお届けするという意味ではネットも大いに意義のあることだと思っていますが、生の興奮とか会場の雰囲気とかをお客様と共有するためには、ライブに勝る方法はないと思っています。キャンペーンの時など、ファンの皆さんから「ようやく会えたね」という声をたくさんいただくと、「待っていてくださったんだ」と、ありがたく思います。

――前回お話を伺った時に、吉田ひろきだけのジャンルレスな音楽を目指したいとおっしゃっていました。あれから具体的な方向性は見つかりましたか。

前作の『瞳の願い』、そして今回の『あの日の恋』と、この2曲を歌ってみて、ようやく吉田ひろきが歌う歌の方向性を見つけることができたような気がしています。これまでは僕もクラシックから転向して間がなく、探り探りという部分がありましたが、歌謡曲を歌う上での声の出し方も掴んできましたし、今の方向が一番、皆さん納得していただけるのではないかと思っています。

――その方向性をもう少し具体的に説明していただけますか。

具体的に言えば女性が共感できる歌を、聴いてくださる方が自分のために歌ってくれているんだと思えるように歌っていきたいということ。これまではわりと客観的な視点で歌うことが多かった気がするのですが、もう一歩聴く方の心に近づいて歌うことで、より喜んでいただけると思いますから。

――“バリトンエンターテイナー”としてはどんなことをしたいと思っていますか。

今はどっぷり歌謡曲の世界に浸かっていて、それはそれでいいのですが、機会があればもう少しクラシックに準じるような、僕の声の幅を活かせる歌も歌いたいです。実際にコンサートでは洋楽を歌うなど、いろんなことをやっていますので、さらにアイデアを出して、幅広いファン層に僕の歌を届けられたらいいと思っています。

――吉田さんのポテンシャルを活かしていろんな顔を見せていただけたらファンの方々も喜ぶのではないですか。

僕もひとつのことに捕らわれる必要はないと思っていますから、いろいろな吉田ひろきを知っていただいて、唯一無二の存在になれれば僕にとってはそれが一番うれしいことです。

――最後に新曲を待ちわびているファンの皆さんに一言お願いします。

今回は女唄を歌わせていただいています。初めてのチャレンジですが、皆様からどんな反応をいただけるか、とても楽しみにしています。『あの日の恋』は、特に女性の方には共感していただける曲だと思いますので、ぜひ楽しんで聴いていただけたら嬉しいです。そしてこれからも応援よろしくお願いします。

吉田ひろき『あの日の恋』

2022年10月26日発売

品番:TKCA-91458
価格:¥1400 (税抜¥1273)

【収録曲】

1. あの日の恋
2. またサヨナラ
3. あなたを忘れない
4. あの日の恋 (オリジナル・カラオケ)
5. またサヨナラ (オリジナル・カラオケ)
6. あなたを忘れない (オリジナル・カラオケ)

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