「惚れちまったの俺」――敬愛する師匠・吉幾三から贈られたニューシングル『恵比寿』で勝負をかける真田ナオキ
「恋する確率100% ノックアウトボイス!」――キャッチフレーズにたがわぬ印象的なハスキーボイスで人気の真田ナオキがリリースした移籍第一弾シングル『恵比寿』。発売直後のオリコン週間シングル演歌・歌謡曲ランキングで初登場1位を獲得するなど絶好調だ。師匠・吉幾三から贈られたこの曲で勝負をかける彼に、吉から学んだ男の美学から新曲にかける思いまで、縦横に語ってもらった。
2016年、シングル『れい子』(作詞・作曲:吉幾三)でデビューして以来、今回の『恵比寿』まで、吉作品を歌い継いできた真田ナオキ。歌の世界に入るきっかけも、後に師匠となる吉のひと言からだった。
「師匠とは、僕がまだデビューする前にお世話になっていた方が、たまたま師匠と食事をされる機会があって、その時に歌を勉強しているのなら紹介してあげるからと、会食の席に呼んでいただいたのが出会いでした。その時にこれも偶然なんですが、師匠の息子さんと僕の本名が同じで、〝じゃあ、お前、俺の息子みたいなもんじゃないか″って盛り上がって、〝面白い声してるな。よし、明日から付き人になれ″ということでその場で弟子にしていただきました。師匠、その時、けっこうお酒が入っていたんですけどね(笑)」
47都道府県に彼女を作れ!?
以来、真田が敬愛してやまない師匠・吉幾三からは、硬軟取り交ぜて、いろんなアドバイスをもらっているという。
「最初にいただいたアドバイスは、デビュー曲のレコーディングの時。〝ナオキ、売れるためにはどうしたらいいか分かるか。あのな、47都道府県にひとりずつ彼女をつくることだ″でした。それも耳元でこっそり。もうふざけてるんだか、本気か分からないですよね(笑)。全国にファンを作れっていう意味かもしれないと思っていますが……。
もちろん真面目な話もしていただいています。印象に残っているのは、プロと一般の人との違い。〝プロは毎日、歌わなきゃならないから、時には風邪をひいて体調が悪いこともある。でも体調の良し悪しなんてお客さんには関係のないこと。お客さんは吉幾三の歌を、真田ナオキの歌を期待して毎回、聴きにきてくださっているんだから、どんな時も期待通りの歌を、期待以上の歌を届けられるように練習しなさい″って言われたことです。今も肝に銘じています」
「師匠は日ごろから歌に関して細かいことは言わず、自由に歌わせくれます」と真田は言うが、移籍第一弾という勝負曲である今作の『恵比寿』ではどうだったのだろう。
「師匠から言われたのは1点だけです。冒頭の〝惚れちまったの俺″の入りの部分がすべてだからということ。このワンフレーズは、あまり真面目に歌いすぎるとキャッチーなノリのこの曲の良さを消してしまうし、崩し過ぎると歌にならないので、そこのバランス感には気を付けました。ただ、レコーディングに臨んでは、最初いろんな歌い方を試したのですが、やればやるほど下手になっていっちゃうんで、最終的には考え過ぎないようにしました。考えれば考えるほど〝型″にはまってしまいがちですから。吉メロディって型にはまると良さが消えてしまうんです。自由に遊ぶように歌うことが大事だと思ったので、レコーディングルームのブースの前にはお客様がいると思って、楽しんでいただいているお客さんの顔を思い浮かべてライブの現場ノリに近い感じで収録しました」
『恵比寿』のMV(ミュージックビデオ)では、バーのカウンターでウイスキーを傾ける姿が印象的だった。
「実は、僕はもともとお酒がぜんぜん飲めないんです。でもお酒を飲む場所に足を運んで、実際には飲まなくてもその場の雰囲気を味わうことって大事だと思っています。師匠に一度、銀座のクラブに連れていっていただいたことがあるんですが、一緒に飲んでいる方や、接客するホステスさんたちのお話を聞くのがすごく勉強になりました。師匠がいろんな遊び、いろんな経験をすることが大事だというのは、そういう経験をすべて肥にして、いい歌を歌いなさいということだと思います。それに僕には憧れがあるんです。たくさん遊んで、たくさん飲んで食べて、たくさん働く――昭和のバイタリティ溢れる男性像に。師匠は僕に遊んでいいんだって教えてくれた。恵まれているなあって思います」
そんな「吉幾三・愛」にあふれた真田に〝惚れちまったの俺″の歌詞にちなんでご自身の惚れちまったエピソードをお聞きすると、迷わず出てきた言葉は、
「師匠ですね!最初の頃はお会いしても緊張するばかりだったのですが、今は実の父親のようでもあり、同じ男性として憧れの存在でもあります。まだ駆け出しで仕事もなかった頃、年末に、わざわざ音響を持ち込んだ居酒屋さんに呼んでくださって。そこで歌うとお小遣いをいただけるんですが、ただ渡したんじゃ受け取りにくいだろうけれど、歌ってもらえるお金はおひねりだろって。ギャラだよギャラって笑いながらくださるんですが、その時の師匠の後ろ姿を見た時、〝惚れちまった!″というか、ああ男としてこうなりたいと思いました」
歌で皆さんを勇気づけられたら
コロナ禍にあって直接、生のダイナマイトボイスを届けられない今、どんな活動をしていこうと思っているのか計画を聞いた。
「ここ1カ月くらいファンの方から往復ハガキをいただいて期間限定でお返事を書いているんですが、どんな形でもいいので生の声が聞きたい、今の表情が見たいという声がすごく多いんです。ですから実はITは苦手なんですが、ネットを使った配信は視野にいれていかなくてはならないと思っています。ポップス系でライブ配信をやられているアーティストの方のように大々的なものは難しいかもしれませんが、僕なりのやり方があると思っています。僕はもともとスタートが飛込みのキャンペーンでしたから、(歌う)場所とか状況はあんまり関係なくて、ギター1本でも、なんなら手拍子だけでも歌える。準備ができないんだったら手拍子でうたえばいいというのが僕の音楽の原点で、そこで皆様と一緒に楽しめればそれでいいと思っています。SNSならそれを簡単に発信できますものね。もちろん先々はきっちりとしたライブ、コンサートもSNSで発信できたらいいし、いろんなことに挑戦してみたいです」
最後にプロの歌い手として、これからどんな人にどんな歌を届けていきたいかを尋ねた。
「今、コロナ問題で大変な時ですが、こういう時だからこそ、音楽が必要だと思うんです。ただ直接ファンと接することはできないし、歯がゆい思いをしています。でも僕は音楽の力を信じています。今、苦しんでいる方もいるでしょうし、たとえコロナが収束に向かっても、いろんな意味で精神的に辛い思いをする方もいると思うんです。その時にやっぱり、少しでも気持ちが楽になるように、歌で、トークで皆さんを勇気づけられたらと思っています。泣いて楽になることもあると思いますし、感動の涙を流してもらえるような、また笑顔になれるような音楽を伝えられたらいいなと思っています」
師匠の吉幾三から、「自分を歌手だから、スターだからと思ってはいけない。歌手である前に一人の人間として心を大切にしなさい。その気持ちが一番目にあるから歌手としていい歌がうたえる」のだと教えられた言葉を胸に刻む真田ナオキ。今後の活躍が楽しみだ。
作品情報
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真田ナオキ『恵比寿』
「恋する確率100%、ノックアウトボイス!」テイチクレコードメジャーリリース第一弾! 2020年1月22日発売/¥1,227+税/【西口盤(TECA-20005)】カップリング:昔に…誘われて、【東口盤(TECA-20006)】カップリング:我が身恨んで