原田波人が『火の鳥』タイプC/D盤とカバーアルバム『波人covers2』をリリース 「初の演歌・歌謡曲チャート1位でホップ・ステップ・ジャンプができました」

2025.11.17

最新シングル『火の鳥』(作詩:日野浦かなで、作曲:木村竜蔵、編曲:西村真吾)が、オリコンの演歌・歌謡曲チャートで本人初となる週間1位を記録した原田波人。同曲は、80年代歌謡曲を彷彿とさせるメロディーに乗せて、不死鳥のように蘇る「女心」を透き通るような声で歌いあげた情熱的なラブソング。このスマッシュヒットを受けて、9月3日に新たなカップリング曲を収録した『火の鳥タイプCD盤をリリース。さらに10月8日には、昭和から平成にかけての時代を象徴する女性アイドルたちの代表曲に挑んだカバーアルバム『波人covers2』も発表した。まさにビッグウェーブに乗ろうとする歌謡界Z世代の旗手に話を聞いた。


歌に「差し色」を入れる

――『火の鳥』がオリコンの演歌・歌謡曲部門で1位を獲得し、総合でも14位と一気にジャンプアップを果たしましたね。

3年目にして初の1位ということもあり、ファンの皆さんが喜んでくださいました。リリース前からスタッフの皆さんとも「『火の鳥』でホップ・ステップ・ジャンプしようね」と話していましたので、多くの方々と喜び合うことができ、本当によかったです。

――前々作『純情ホトトギス』がつんくさんの作品、前作の『万燈籠』は演歌に寄せた作品でしたが、今回の『火の鳥』はガラリと変わって80年代歌謡テイストの楽曲。ビジュアルも大人っぽく一新し、転機となった作品では?

まさか80年代のシティーポップのような楽曲がくるとは思っていなかったので、最初に曲をいただいたときはびっくりしました。当初は自分に歌えるのだろうかという不安のほうが大きかったんです。(収録当時)22歳の僕が大人の女性のラブソングを表現できるのだろうかって。だからオリコン1位をいただいたことで、ファンの皆さんが受け入れてくださったという喜びも大きかったですね。

――不安を払拭し、この曲を自分のものにしたというポイントはあったのでしょうか。

最初はかなり凝り固まった考え方をしていました。(人生)経験のなさをカバーしようと、ドラマや映画を参考にイメージを膨らませながら歌作りをしてレコーディングに臨みました。でも、頭の中だけで考えた変に大人びた歌い方になっていたんですよね。すると、レコーディング中に僕の歌を聴いた(木村)竜蔵先生から「22歳の原田に歌ってほしいと思って作った曲なんだから、余計なことを考えずにありのままの原田の歌い方でいいんだよ」とおっしゃっていただき、吹っ切れたことが大きかったですね。

――収録の現場ですぐに歌を変えることができたのですか?

そうですね。竜蔵先生からその一言をもらい、無理に背伸びすることなく、自分が歩んできた音楽をそのままこの歌にぶつければいいと思いました。

――むき出しの原田波人を出せばいいと。これ以上ない励ましのようでもありますね。

竜蔵先生がおっしゃることはわかりやすく、素直に受け止められるんです。また、僕が最初に歌ったとき、ニュアンスに違和感があったようで、「サビのワンコーラスに1カ所違う差し色を入れてみるつもりで歌ってくれ」とおっしゃったんです。

――差し色とは、ファッション好きの原田さんには絶妙なアドバイスですね。

ハッとなりました。この曲をどのように表現すればいいか、はたと気づかされたというか。そこでサビ全体を甘く歌うだけでなく、「激しく燃えさかる」のフレーズを差し色として情熱的に強く歌ってみたところ、歌にメリハリが生まれ、うまく表現することができました。竜蔵先生もすぐにOKを出してくださいました。

女歌は歌舞伎の女形のように

――タイプA盤/B盤のリリースが3月でした。それから半年以上歌ってきて、新たに気づいた点などはありますか?

「カラオケで歌っています」という声を多くいただき、『火の鳥』はステージでしっかり歌いたくなる歌なのだと思っています。僕もステージに立って、スポットライトがパンと当たって、この曲のイントロが流れてくると、自然に歌の世界に入り込んでしまいます。歌っていて気持ちいい曲ですし、主人公になりきるような感覚をカラオケ好きの皆さんも感じ取ってくださっているのではないでしょうか。

――大人の女性が主人公のこの曲の世界観を表現するうえで、どのようなことを大切にしているのでしょう。

『万燈籠』から女心を歌うようになり、失礼に当たらないよう気を配りながら、日々の生活で女性を中心に人間観察をしています。歌舞伎でも女形があるように、演歌・歌謡界でも女歌に特化した男性歌手がいてもいいのではという思いが出てきたからです。女性らしさを感じられるような仕草の工夫をはじめ、男性から見た女性の表現の仕方をいろいろと考えるようになりました。

泣きそうになる3部作の連続歌唱

――『火の鳥』はタイプA~D盤までカップリング曲も多彩です。新たにリリースしたタイプC盤のカップリング曲『風花ロマン』(作詩:北爪葵、作曲:大村友希、編曲:西村真吾)は、どのような曲ですか?

実は『風花ロマン』は、作詩の北爪先生が前作の『万燈籠』、タイプA盤のカップリング曲『琴の滝』からなる3部作の第1章として書かれた作品です。『風花ロマン』だけを聴くと、「もう離さない。ずっとそばにいる」という男女2人だけの幸せな物語になるのですが、その後を描いた『万燈籠』『琴の滝』を知ってからこの曲を聴くと切なさがどっと押し寄せてきます。レコーディング当日に『万燈籠』の前を描いた物語であることを知らされ、思わず泣きそうになりました。

――歌い手として想像力を喚起される作品だったのですね。

大好きな作品です。ステージでこの3曲を連続で歌うと、号泣されるファンの方が大勢いらっしゃいます。なにしろ歌っている僕も号泣しそうになるくらいですから。この曲を歌うときは、まっすぐ純粋に思いを伝えるようにしています。皆さんも自分の大切な人を頭の中に置きながら、その人に思いが届くように歌ってほしいですね。

――今後のステージで3部作が連続で披露されることに注目ですね。タイプD盤のカップリング曲『灼熱グラデーション(作詩:北爪葵、作曲:木村竜蔵、編曲:西村真吾)は夏がテーマ。原田さんにとってこれまでにないノリの曲です。

自分のオリジナル曲の中にファンの皆さんと一緒に声がけやクラップ(手拍子)して会場が一体になるような盛り上がれる曲がありませんでしたので、ディレクターさんにお願いしてできあがった作品です。実際にお客様の前でも披露しましたが、ものすごく盛り上がりました。先ほどの3部作と印象ががらりと変わるので、振り幅の広さを楽しんでいただけるようなライブが実現できるようになったと思います。

ステージには私服で登場!?

――タイプA/B盤に続き、C/D盤のジャケット写真も雰囲気があります。アートワークには原田さんの意見も入っているのですか?

これがいちばんの楽しみと言ってもいいくらいです。日本クラウンのデザイナーの方と2人で綿密に事前打ち合わせをして、カメラマンの方などごく限られた方以外は、当日までデザインの方向性や撮影プランの詳細は内密にしています。周囲のスタッフの方にお任せするやり方でもいいかもしれませんが、やっぱり僕はファッションが好きなので、衣装や写真のイメージについては自分で決めていきたい。もちろん自らプロデュースすることで責任も生じるのですが、ファンの方が好意的に受け止めてくださると、自信にもなります。

――驚いたのですが、ステージでの衣装は私服だそうですね。スタイリングも自分でなさるとか。

せっかちなので、舞台が終わって着替える時間が嫌で、私服で上がっています。衣装と私服の差が最もない歌手じゃないかと自分でも思います(笑)。素敵な服だと思ったら、面識のないアマチュアの服飾学生の方の作品でも連絡先を調べて、お借りできないか自分で交渉します。もし歌手になっていなかったとしたら、自分も服飾学校で服飾デザインを学びたいんです。

――では、ファッションブランドの春秋の展示会シーズンは楽しみなのでは。

いっぱい服を買ってしまいます。展示会に行くと、ファッション関係者に限らず、さまざまな業界の方を紹介され、いろいろな考え方を知ることができるので、自分の幅が広がり、それが歌手としても新たな引き出しが増えることにつながっていけばいいなと思います。

――好きなファッションブランドは?

コムデギャルソンが好きです。今日もそうですが、最近はコムデギャルソンしか着ていないですね。あとはヴィヴィアーノというブランドの方ともご縁をいただいて、よくうかがっています。

原田波人=女歌となれるように

――10月には『波人covers2』をリリースされました。そもそも女性アイドルのカバーアルバムを制作するきっかけは?

「女歌といえば、原田波人だ」と言ってもらえるようになりたいとディレクターさんに相談したところ、女歌だけを詰め込んだカバーアルバムを作ってみようかという話になったことが始まりですね。選曲は僕がどうしても入れたい曲とディレクターさんが「波人に歌わせたい」という曲をすり合わせて決めています。

――今回のアルバムで、その原田さんが入れたかった曲、ディレクターの方が入れたかった曲とは?

僕は『夕月』(1968年 歌:黛ジュン)と『渡良瀬橋』(1993年 歌:森高千里)ですね。ディレクターさんは『慟哭』(1993年 歌:工藤静香)と『恋(いと)しさと せつなさと 心強さと』(1994年 歌:篠原涼子)でした。

――『夕月』は名曲ですが、このアルバムの他の収録曲に比べ、時代の中でやや埋もれてしまったような印象もあります。それが収録1曲目で、しかも23歳の原田さんご自身の選曲とは驚きました。

制作に入る前の頃、よく聴いていたんです。黛ジュンさんのオリジナルはもちろん、由紀さおりさんや所属事務所の先輩・徳永英明さんのカバーバージョンも聴いていました。一つの曲でもアレンジの仕方でこうも変わるものなのかと楽しくなって、原田波人の『夕月』はどうなるのか挑戦してみたくなりました。

――今回の収録曲は30年以上前の大ヒット曲が並びますが、当時を知らない原田さんがチャレンジするうえで苦心されたところはありますか?

どれも時代に左右されない強さがある名曲揃いですが、怖いのは皆さんがオリジナルをご存じで、口ずさめる曲ということ。それぞれ自分の歌声でどのように表現するかものすごく難しかったのですが、今回、カラオケを全部作り変えていただいて、サウンドも原田波人に合ったアレンジにしていただきました。

――取り組んでみて、特に面白さややりがいを感じた曲はありますか。

『渚のシンドバッド』(1977年 歌:ピンク・レディー)です。オリジナルが女性デュオなので、男がソロで歌うことに難しさがあるのですが、刺激的で楽しかったです。『やさしい悪魔』(1977年 歌:キャンディーズ)もそうですね。

――女歌以外のカバー集にトライする気持ちは?

ファンの方から男歌も聴きたいという声もいただきますし、僕に歌ってほしい曲をアンケートで募ってみても面白そうだなと思います。

初のセルフ衣装デザインが進行中

――今後やってみたいことはありますか?

自分がデザインした衣装を着てコンサートをしたいですね。そして何年かのちには、自分がデザインした衣装を集めた個展を開くことが夢です。歌とファッションを融合させたいんです。実は今友人の協力を得て、衣装のデザインを進めています。来年にはお披露目できると思います。

――デビューから3年半、歌手として20代をどのように過ごしていきたいでしょうか?

デビューから異なる曲調の楽曲を歌ってきて、僕自身、間違ってもいいから一つの方向に突き進んだほうがいいんじゃないかと少し悩むこともあったんです。でも、ファンの方からは「いろいろな面を見られて楽しい」と言っていただけるので、あまり凝り固まらず、変化に富んだ楽曲をきちんとお届けできる歌手になりたいと思っています。もちろんファッションなども含めて楽しんでいただき、「原田波人と言えば」と皆さんにイメージしていただけるように、芯のある歌手として確立できるように過ごしていきたいと思います。

――読者にメッセージを。

『火の鳥』は、思い切り歌謡曲に振り切りました。カラオケで歌ってくださる方がすごく多い曲なので、皆さんに歌っていただくことで原田波人をご存じない方にも「いい曲だな」と思っていただけると、それが僕にとってはすごく力になります。『火の鳥』もカップリング曲もたくさん聴いて、歌って、楽しんでいただければ嬉しいです。

 

原田波人『火の鳥』(タイプC・D)

発売中
価格:各 ¥1,500(税込)

【タイプC】

品番:CRCN-8781

【収録曲】

1.火の鳥(作詩:日野浦かなで 作曲:木村竜蔵 編曲:西村真吾)
2.風花ロマン(作詩:北爪 葵 作曲:大村友希 編曲:西村真吾)
3.火の鳥(オリジナル・カラオケ)
4.風花ロマン(メロ入りカラオケ)

【タイプD】

品番:CRCN-8782

【収録曲】

1.火の鳥(作詩:日野浦かなで 作曲:木村竜蔵 編曲:西村真吾)
2.灼熱グラデーション(作詩:北爪 葵 作曲:木村竜蔵 編曲:西村真吾)
3.火の鳥(オリジナル・カラオケ)
4.灼熱グラデーション(メロ入りカラオケ)

原田波人『火の鳥』MV

原田波人『波人covers2』

原田波人「波人covers2」CRCN20496

発売中

品番:CRCN-20496
価格:¥3,000(税込)

【収録曲】

1.夕月
2.恋のバカンス
3.渚のシンドバッド
4.やさしい悪魔
5.さよならの向う側
6.越冬つばめ
7.慟哭
8.あなたに逢いたくて~MISSING YOU~
9.飾りじゃないのよ涙は
10.夢の途中-セーラー服と機関銃-
11.渡良瀬橋
12.恋しさと せつなさと 心強さと

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