伍代夏子 初のデジタル・シングル『一枚の写真』をリリース 「あの経験があったからこそ今がある。人生を肯定できる曲です」
自身の誕生日でもある12月18日にデジタル・シングル『一枚の写真』を発売した伍代夏子。『NHKラジオ深夜便』12月と2026年1月の「深夜便のうた」に決定したこの曲は、中森明菜や倉木麻衣を手掛けてきた藤原いくろうとの初タッグ。演歌とは違う伍代の魅力が存分に味わえる楽曲の裏話や自身の社会活動、これからの目標について語ってもらった。
あなたの人生を肯定してほしい
——『一枚の写真』聞かせていただきました。美しいメロディに伍代さんのきれいな声が乗って、歌詞がスーッと心に入ってきました。
なるべく力を入れず、人生を俯瞰するような気持ちで歌いました。今は幸せに暮らしていますが、かつての恋人と心残りのある別れ方をしてしまった。その出来事を懐かしく思い出す女性……というイメージです。夜中の番組『NHKラジオ深夜便』で流れる歌なので、静かに聞けるということも意識しました。この歌を聞きながら、ご自分の人生のさまざまな出来事を思い出してほしいです。
——作・編曲の藤原いくろうさんとは初めての出会いです。
藤原さんとは初対面でしたが何度もやりとりをさせていただいて、最終的に“オーソドックスなエモい曲”に落ち着きました。藤原さんは私のアイデアを取り入れてチャレンジしてくださって、その過程も楽しかったですね。
——レコーディングには愛犬のりくとそらも駆けつけたとか。
初めてレコーディングに連れて行きました。もちろんスタジオの中は犬にはうるさすぎるので、終わるまで別室で待機。りくもそらも「ママ、こんなうるさいところで何してるの?」って言ってたんじゃないかしら(笑)。
——彼らは現場を和ませるのに一役買ったんですね。今回のデジタル・シングルには、カラオケ・バージョンがついています。この曲をカラオケで歌うときのアドバイスを。
「あのときこうしていれば、ああしていれば」ということは、どなたにも思い当たる節があると思います。「あのときはひどい思いをしたけれど、それがあったから、今は人に優しくなれる」とか。誰もが自分の人生に100%満足しているわけではありません。「あれがあったから、今は不幸だ」ではなく、「あの出来事が自分を大きくしてくれた。今、自分が幸せなのはそのおかげだ」と思ってほしいんです。昔を思い出して泣きながら歌うのではなく、余裕をもって微笑んで歌ってほしいと思います。
——NHKといえば、『ふんわり』(NHKラジオ第1 朝8時30分〜11時40分)で水曜MCを始められました。
ラジオは久しぶりで、それこそ20代か30代のとき以来。いつもはりくとそらのご飯があるので朝6時半に起きますが、『ふんわり』の日は5時半起床です。ラジオ番組で歌うのは表情が見えないので難しいけれど、喋るのは気楽に楽しんでいます。

能登半島地震 被災地復興応援コンサート
——2024年6月に珠洲市、2025年3月に七尾市、10月に輪島市と3回にわたり能登復興応援コンサートを開催しました。伍代さんの思いに賛同した艶歌卓球部の方々を中心に、第3回には俳優の高島礼子さんも参加しました。
チャリティなので当然ながら手弁当なんです。だから気軽には誘えないのですが、みんな「行きたい、行きたい」と言ってくれるので、ありがたいですね。
——第1弾コンサートの会場は珠洲市立三崎中学校体育館で、約400人が集まりました。珠洲市で開催したきっかけは?
2024年1月に震災があった翌月、主人(俳優の杉良太郎)と炊き出しに行ったんです。そこで倒壊した家屋やたくさんの瓦礫を見てしまって。これはちょっとやそっとじゃ片付かないと思って、応援したい気持ちがわいてきました。能登で3回行ったコンサートの中で最初の珠洲市が一番小さい会場でしたが、あの熱気は忘れられません。
——今後のご予定は?
能登に限らず、全国には自然災害などで復興が難しいところがたくさんあります。そんな場所に、また艶歌卓球部のメンバーで訪れようと計画しています。

りく・なつ同室避難推進プロジェクト
——伍代さんは、チャリティコンサート以外にもいくつかの社会活動をされています。2023年7月25日に、人とペットが安心して同じ室内に避難できる社会を目指す「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」を立ち上げました。7月25日は名前にちなんだナツコ(725)の日ですね。まず、伍代さんと犬との関わりを教えてください。
実家でダックスフントを飼っていたんですが、結婚して犬のいない生活を25年送りました。ある日、声が出なくなる病気になって、お医者様から「心の安静が一番」と。私なりにいろんなことにトライした結果、もう一度犬を飼うことにしたんです。犬と暮らしてみると、「避難所生活を送る人たちは愛犬を手放したのかしら?」「私が被災したらこの子たち(りく・そら)を連れて行けるのかしら?」と気になってきて、調べ始めるとこれが不条理なことばかりなんです。
——自治体によって対処の仕方が違いますよね。
国の方針としては、置き去りにすると野良犬が増えるから犬と一緒に避難してほしいんですが、犬と避難所に入れるかどうかは保証してないんです。「あんまりだ!」と憤慨しまして、「ペットと一緒にいられる部屋の確保」を実現する運動を始めました。いつ来るかわからない災害のマニュアルを作るのはハードルが高いですが、頑張っています。
——トークショーや保護犬・保護猫の譲渡会など、イベントも開いています。
それぞれの関係者しか来ないと広がりがないので、最近は私が他に携わっている健康プロジェクトや特殊詐欺の啓発イベントなどと合同で開催しています。イベントで歌うとファンも来てくれますし、そうするといろんな人が集まってくるんですよね。本当に必要な人に情報を届けるのはとても大変なことですが、これからも続けていきます。

まだまだやりたいことがたくさん
——より良い社会にするために活動される姿勢に頭が下がります。話題は変わりますが、趣味も含め、今後チャレンジしたいことはありますか?
艶歌卓球部で京都や台湾に旅行に行っているんですが、来年も海外に行きたいねという声が出ています。私は個人的にガラパゴスに行きたいんですよね。
——ガラパゴスですか!
2日がかりじゃないと行けないくらい遠いですが、そこにしかない珍しい動物や植物を撮りたいんです。沖縄に行きたいという人もいて、私も7月に石垣島に行ってサガリバナを撮りたいんですよね。夜中に咲いて明け方にポトリと落ちる、その落ちる音も録音したくて。でも私が撮影している間、みんな付き合ってくれないんです。動物や植物を撮影するときは人間の気配を消さなくてはいけないのですが、艶歌卓球部のメンバーは気配を消さない人が多すぎるんですよ(笑)。
——以前、植物を撮影した展覧会を開催されましたね。
最初の写真展覧会ですね。その後、保護犬を撮影した展覧会を開きました。保護犬を撮るのは難しくて、警戒している顔を撮りたかったのに、向こうが慣れてきちゃったりして。人間に慣れると犬の目が優しくなっちゃうんです。
——きっと伍代さんの「犬好き」が伝わってしまうんですね。
犬といえば、アメリカの刑務所で受刑者の更生に保護犬が一役買っているというテレビ番組を見て、日本でもできないかといろんな人に働きかけて、広島の尾道にある刑務所で活動を始めました。そこにもいつか撮影に行きたいと思っています。

——伍代さんは夢や目標がたくさんありますね。
自分一人では何もできないけど、たくさんの人とつながることでプロジェクトを大きくすることができると思うんです。だからこの年になって、毎日が楽しいですね。
——最後にもう一度、『一枚の写真』についてメッセージをお願いします。
今回は「深夜便のうた」ということで、エモく、懐かしく、誰もが共感できる歌を作っていただきました。幸せの度合いは人それぞれです。ポジティブな人はいつでも幸せだし、ネガティブな人は恵まれていても何かを引きずっている。でも、「今の自分がいるのはあの出来事があったから。そのときは辛かったけど、経験してよかった!」と、人生を肯定してほしいというメッセージを込めました。思い出に浸りながら幸せな気持ちで聞いてくださるとうれしいです。
伍代夏子『一枚の写真』

詞:朝倉 翔/作曲:藤原いくろう/編曲:藤原いくろう
同時配信:一枚の写真(オリジナル・カラオケ)
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