田川寿美がデビュー35周年記念曲『いのち陽炎(かげろう)』をリリース 「自分にまだ見ぬ可能性があるならば、蓋をせずに生きていきたい」
前作『悲しいめぐり逢い』で都会的な大人の歌謡曲路線のサウンドに乗せて新たな魅力を披露した田川寿美が、デビュー35周年記念曲となる40thシングル『いのち陽炎』(c/w『海峡みなと駅』『春よ来い』)を4月22日にリリース。「田川寿美らしい演歌スタイルの曲」という本作に賭ける思いや35周年を迎えた現在の心境、そして歌い手としての今後について聞いた。
ハッピーエンドの陽だまりのような作品
――35周年記念曲となる『いのち陽炎』(作詩:石原信一 作曲:岡千秋 編曲:石倉重信)を最初に聴いたときの印象は?
演歌になるということはスタッフから事前に聞いていました。ただ、私の場合、コロコロとこぶしを回すというようなド演歌にはならないだろうと思っていたら、そのとおりで、岡(千秋)先生が私らしい演歌スタイルの楽曲を作ってくださいました。しかもデビュー曲の『女…ひとり旅』の延長線のような楽曲だったので、本当にうれしかったです。
――『女…ひとり旅』は、別れた男性との思い出を抱えながら冬の北国を旅する女性が主人公でした。今回の『いのち陽炎』主人公は、過去の恋愛を振り返りながらも、新たな恋心を感じている、内面でより成熟した女性を感じさせる楽曲ですね。
いろいろな恋をしてきて、もう新しい恋は諦めかけていたけれど、ときめいてしまう人が目の前に現れて、「また私、恋をしてもいいのかしら」って思う。そういう揺れる気持ちは私にもあるので、とても共感できる等身大の歌だなと思いました。揺れる女心を陽炎にたとえていて、タイトルだけ見るとちょっと重々しい感じを受けるかもしれませんが、詞の世界観はハッピーエンドの陽だまりのような作品なので、温もりを感じていただけたらうれしいです。
――カラオケで上手に歌うにはどこがポイントになりますか?
幸せにつながっていく歌なので、軽い気持ちで歌っていただけたらと思います。ポイントは〈ゆらり ゆらら ゆらり〉の部分です。ここが一番歌い手の色が出るフレーズですので、ご自身の気持ちを重ねて、心が揺れている様を表現していただけたらと思います。そしてその後に続く〈陽炎(かげろう)もえて〉の部分では雰囲気を変えて、思い切り声を出して大きく歌っていただくとメリハリが出ていいと思います。また、ちょっとキーが高いと感じられる方には半音下げのカラオケも収録してますので、ぜひそちらにもトライしてみてください。
――カップリングには、2000年リリースの『海峡みなと駅』(作詩:里村龍一 作曲:岡千秋 編曲:南郷達也)と2018年リリースの『春よ来い』(作詩:石原信一 作曲:幸 耕平 編曲:南郷達也)が再収録されています。
『海峡みなと駅』は私がメインにしているファルセットを使いながらもダイナミックさを表現できればということで作っていただいた楽曲でした。今でもカラオケで歌ってくださる方がいらっしゃる、私の中では演歌の基本のような存在になっています。『春よ来い』は、メジャー調の明るく前向きな演歌で、つい口ずさみたくなってしまうような世界観がとても気に入っています。
35年間は出会いの奇跡に恵まれた宝物の連続
――35周年を迎えられて、改めて今の心境はいかがですか?
もう“奇跡”のひと言です。人様との出会いの奇跡でここまで来させていただいたということに尽きると思います。自分で作詞作曲される方は別として、演歌歌手の場合、スタッフや作詞作曲家の先生方が歌を作ってくださって、どんな歌が来ても表現できることが求められます。楽しいだけでなく、もうダメだなと苦難を感じた時期もありました。でも、振り返ると、常に周りのスタッフの皆さんが一生懸命私のことを考えて、新曲を作り、世に出そうとしてくださって、それはもう宝物の連続といえるものだったと実感しています。その結果、こうして今日も取材をしていただけていることが本当に幸せです。
――35年の間には歌手をやめたいと思うようなこともあったのですか?
ありましたね。もっと違う声が出せたら個性が際立つのにと、つい考えてしまったりして。でも、自分の持っている音色はそうそう変えられるわけではないですからね。自分の歌が嫌いになったり、認められないと悲観したり、他人を羨んだり、自分を否定するような時期を経験して、今はひと巡りした感じです(笑)。年を重ねてくると自然と体の変化とともに声帯も変わってきますが、今はそのままの自分を受け入れることが大切だと思えますし、何よりまず自分のことを認めて、好きにならないと、人にも伝えられないと思っています。
――過去の「うたびと」のインタビューで、自分の個性を模索する中、悠木圭子先生から「母性本能を感じて、包んであげたくなっちゃった。そういうところがもともとあなたにはある」と言われたことがヒントになったとおっしゃっていたことが印象的でした。
たぶんそれが私の芯の部分だと思います。その人がもともと持っているものってありますよね。例えば、私は人見知りするタイプで、これではダメだと思い切って初対面の方とも積極的に話すように心がけて克服した気でいましたが、ふとしたときに人見知りの部分が出てくることに気付かされます。生きてきた分だけ、自分の身に1枚1枚人生の年輪が何層にも重なっていくけれど、自分の芯の部分はしっかりと残っている。そこを大事にしていきたいと思っています。
新曲のメインビジュアルはIKKOさんアドバイス
――35年間、歌手を続けてこられた原動力となったのは、やはり歌が好きというお気持ちですか?
そうですね。思春期の不安定なときに歌で救われたことで、私は歌にハマっていったんです。当時の私は友達が多いわけでもなく、家でもきょうだいが多くて我を出せず、自分の殻に閉じこもるようなタイプでした。でも、歌を歌うと周りの人たちが振り返ってくれました。「ここが自分の居場所なんだ!」と思ったんですね。その気持ちが今も続いている感じです。
――ご自身の成長についてはどのようにとらえていらっしゃいますか?
満足してしまったら終わりだと思っています。自分の何が人様に響くのか一生かけて見つけていきたいと思っているし、それがまた楽しくもあるんです。ヒットすることだけが正解ではないし、いつか「このために私、歌っていたんだな」という歌手としての答えを実感できればいいなと。そしてこれからも自分の中にまだ見ぬ可能性があるならば、蓋をせずに生きていこうと思っています。
――そんな前向きな姿勢は『いのち陽炎』のジャケット写真にも表れています。ガラッとイメチェンしたビジュアルは、IKKOさんのプロデュースだそうですね。
IKKOさんとは、デビュー当時にヘアメイクをしていただいて以来、今も交流が続いています。35周年記念曲ということで今回、「イメチェンしたいんですけど、アドバイスをいただけますか?」と相談したんです。そうしたらウィッグを使ったオレンジ色っぽい髪色のボブスタイルを提案いただいて。皆さんからどんな反響があるか、とても楽しみにしているんです。
――IKKOさんが考えられたイメージは、どのようなコンセプトだったのでしょう。
お人形さんみたいな雰囲気がいいとおっしゃっていました。歌に合わせた炎をあしらったお着物は京都の友禅作家の方の作品なのですが、半衿はIKKOさんがくださった刺繡のものを付けているんです。その衿元を、丸みをもたせて合わせることで、舞妓さんのような、お人形さんのような、かわいらしくて柔らかい雰囲気を出すといいというアドバイスもいただきました。
演歌の底上げに貢献したい
――新たな挑戦という意味では、YouTubeの「歌ってみた」動画やギター弾き語り企画の「田川寿美の〇〇はじめました!」も話題となっていますね。
「歌ってみた」への挑戦は20代のマネージャーさんからの発案でしたが、やったことがない世界に飛び込んで、すごく勉強になりました。元気になる感じが大好きな緑黄色社会さんの『花になって』とファルセットが使えるKing Gnuさんの『カメレオン』は、私から歌いたいと希望した曲です。視聴者の皆さんからの「いろいろなタイプの歌が歌えるんだね」というコメントには勇気をいただきました。自分でも演歌歌手という枠にとらわれすぎていたところがあったので、この企画をきっかけに田川寿美を知っていただく間口を広げられたこともよかったと思います。
――ギターの弾き語りはコンサートでも披露されていますが、いつから始めたのですか?
2002年にリリースした『女人高野』の映像で、エレキギターを弾いて歌う表現に挑戦したことがきっかけでした。そのときの撮影では実際には弾いていませんが、ポーズや指の動きなどちゃんと弾いているように見せたかったので、撮影の1年前からアコースティック・ギターを習い始め、以来ずっと勉強を続けてきました。というのも、長く活躍されている先輩方は、音楽理論を理解したうえで自在にアレンジしながら自分の色を出されています。私も自己流ではなく、音楽理論をしっかり身につけたかったんです。基本がわかっていれば、苦手なところがあっても、別の部分で技術的にフォローするとか、壁に当たったときも乗り越えやすいですから。
――ギターは心強い相棒になっているのですね。
いや、まだ友達くらいの感じで(笑)。恋人になってもらえたらいいんですけど、その関係になるにはまだ時間が必要ですね。
――今後についてはどのような抱負を持たれていますか?
坂本冬美さんが今年デビュー40周年なんです。自分がデビューしたときに冬美さんのことを大御所のお姉さまという感じで憧れて見ていたので、歌手生活に5年の差しかないんだっていうことが本当にビックリです(笑)。冬美さんをはじめ、先輩方が元気に果敢に挑戦されている姿を見ていると本当に励まされますし、とても心強いんです。私も先輩方を目標にまだまだ頑張らなくちゃと思っています。
――今は田川さんの背中を追って歩んでいる下の世代も演歌界には育っています。
演歌界をもう少し底上げしていければいいなって思いますね。演歌の伝統的な様式美のスタイルは、若い世代からは古典になりすぎて敬遠されてしまうところがあるのかもしれません。でもそこに新たなものを融合させながら、その時代を反映しながら進化してくのがベストだと思うし、そうやって存在し続けてほしい。私もその役割を担う一人になれたらと思っています。
――プライベートについてもお聞きしたいのですが、ストレス解消にはどんなことをしていますか?
配信でドラマを観ています。今は仲間由紀恵さん、阿部寛さんの『トリック』にハマっています。昔からコミカルなところがある作品が大好きで、小説も伊坂幸太郎さんの作品のような、個性的なキャラクターたちのちょっとおとぼけな部分にほっこりするファンタジーが大好きなんです。吉本新喜劇の3回落とすみたいなベタな喜劇も大好きですけど(笑)。
――体調管理についてはいかがですか?
歯磨きしながら深めのスクワットを10回はやるよう心がけています。あとはストレッチですね。身体って何もしないでいると年とともに固まっていくことを痛感しています(笑)。着物を着て歌うのって体幹の筋肉がないと成立しないので、頑張って続けています。
――いつも応援してくださるファンに向けてメッセージをお願いします。
皆さまに支えていただけてこそ、大好きな歌の道を35年間続けてこられたと本当に感謝しています。その感謝の気持ちを歌の世界に貢献できるように頑張りますので、35周年記念曲『いのち陽炎』ともども、これからもよろしくお願いいたします。
田川寿美『いのち陽炎(かげろう)』

2026年4月22日(水)発売
価格:¥1,500(税込)
品番:COCA-18325
【収録曲】
1.いのち陽炎 (作詩:石原信一/作曲:岡 千秋/編曲:石倉重信)
2.海峡みなと駅 (作詩:里村龍一/作曲:岡 千秋/編曲:南郷達也)
3.春よ来い (作詩:石原信一/作曲:幸 耕平/編曲:南郷達也)
4.いのち陽炎(オリジナル・カラオケ)
5.海峡みなと駅(オリジナル・カラオケ)
6.春よ来い(オリジナル・カラオケ)
7.いのち陽炎(半音下げオリジナル・カラオケ)
8.海峡みなと駅(半音下げオリジナル・カラオケ)
9.春よ来い(半音下げオリジナル・カラオケ)
10.いのち陽炎(2コーラス・カラオケ)
11.いのち陽炎(半音下げテレビ2コーラス・カラオケ)
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