愛しのレコードジャケット<マンザイブーム>

2020.1.31

あけましておめでとうございます。

2019年末はダウンタウンの「絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!」で「新しい地図」の3人の登場に驚き、「紅白歌合戦」ではビートたけしの「浅草キッド」に聞き惚れた。
そして迎えた令和初のお正月、いよいよ東京五輪イヤーの幕開けでいつもよりめでたさも増し×2な気分である。
とはいえ、最近のお正月は凧あげ、羽根つきがネットゲームに変わり、お年玉もキャッシュレス決済でというのもちょっと寂しいが、そんな時こそアナログレコードをかけて懐かしい昭和を満喫したい。

今回は、”笑う門には福来る”ということで、昭和のお笑いブームである「マンザイブーム」がテーマである。
昨年から、テレビやネットで「お笑い第七世代」という言葉を聞くようになった。
霜降り明星やEXITなどの若手芸人による新たなお笑いブームが起きつつあるというものだが、昭和にもお笑いニューウエーブのブームがあった。
それが、ツービート、紳助・竜介、明石家さんまらによるマンザイブームである。
大人気となった彼らに注目したレコード会社から数多くのレコードが発売されたが、人気に乗じてヒットした曲から全く売れなかったものまで様々であった。
その中から、いくつかのレコードをピックアップしてみよう。

恋のぼんちシート/ザ・ぼんち
作詞・作曲:近田春夫


若者に絶大な人気を誇ったザ・ぼんちのデビューシングルで、芸人が出したレコードの中では異例の80万枚の大ヒット曲になった。
歌詞に「そーなんですよ川崎さん」などギャグの数々がちりばめられているが、曲は軽快なロックンロールナンバーで、音楽としても十分楽しめる。
当時、ビートたけしが自身のラジオ番組で「ザ・ダーツの『ダディ・クール』のパクリじゃねーか」と発言して物議を醸したが、プロデューサーの近田春夫があっさり認めて騒ぎも収まったという逸話がある。

俺は絶対テクニシャン/ビートたけし
作詞:来生えつこ 作曲:遠藤賢司


毒舌漫才で売り出したツービートの3枚目シングル。
当時流行していたテクノミュージックをベースにし、「コマネチ!」などたけしのギャグと歌が楽しめるコミックソングで、作詞が「セーラー服と機関銃(夢の途中)」の来生えつこ、作曲が「カレーライス」の”エンケン”こと遠藤賢司という豪華な顔ぶれなのも特徴だ。
個人的には、たけしの歌の中でツービート時代のこの曲が一番好きである。

MAIDO/のりお・よしお
作詞:西川のりお 作曲:増田俊郎


暴れだしたら止まらない過激なキャラクターで、紳助やさんまにいじられながらも活躍した西川のりおと相方上方よしおのデビューシングル。
A面はのりお、B面「カモナ・ペーパー」はよしおがそれぞれソロで歌っている。
漫才では「声が汚い」と突っ込まれるのりおだが、歌は独特のダミ声が良い味になっていてそれほど悪くない。
ジャケットは、ブルースブラザーズをイメージした黒のスーツでキメており、なかなか格好良い。

Mr.アンダースロー/明石家さんま
作詞:阿連 赤 作曲:藤山節雄


明石家さんまの若手時代の持ちネタである小林繫投手の形態模写をモチーフにしたレコード。
今や「お笑い怪獣」として若手芸人たちから尊敬を集めるさんまちゃんだが、歌に関しては苦手なようでこのレコードでもやや不安定な歌いっぷりは健在だ。
しかし、現在では滅多に見られない若手時代のネタに触れることができる点で、貴重なレコードといえる。

カントリー・ボーイ/SHINSUKE-BAND
作詞:島田紳助 作曲:浦田博信


「紳助・竜介」としてマンザイブームをけん引していた島田紳助が、相方の松本竜介や村上ショージ、Mr.オクレなど芸人仲間と結成した「SHINSUKE-BAND」の3枚目シングル。
紳助自ら作詞した曲は、田舎者と馬鹿にされる若者の鬱積した心情を吐き出すロックンロールだが、コミックソング的な明るい曲調が良い味になっている。
私が20歳の頃、ある音楽番組の収録の見学に行った時、たまたま番組に出演していたSHINSUKE-BANDを見ることができたのだが、粗削りだがパワフルな演奏が非常に印象深かったことを覚えている。

おんど笠岡/B&B
作詞:吉村優輝 作曲:信楽順三


マンザイブームで最も人気があったと言われるB&B4枚目のシングル。
島田洋八の出身地である岡山県笠岡市を題材にした音頭で、サビの部分では笠岡市に生息するカブトガニを取り上げている。
レコードではB面の扱いだが、洋八の伸びのある歌声が良く、また曲のノリの良さと歌詞の面白さから最近は歌謡DJのイベントでも聞かれるなど、隠れた名曲である。

渚のミステリー・ギャル/おぼん・こぼん
作詞:井伊田朗 作曲:幸耕平


最近、コンビ仲の悪さが話題となったおぼん・こぼんのマンザイブーム時代のデビューシングル。
曲は50年代オールディーズ風で、タップダンスやジャズをネタに取り入れるなど音楽に強みを持つ二人の歌は爽やかで心地よい。

い・け・な・い・お化粧マジック/島田紳助・明石家さんま
作詞・作曲:長沢ヒロ


島田紳助と明石家さんまが当時大ヒットしていた忌野清志郎・坂本龍一の「い・け・な・い・ルージュマジック」のパロディとして発表したレコード。
二人とも歌は抜群に上手いというわけではないが、同期の親友が息の合ったデュエットを聴かせてくれ、実に楽しい。

うなずきマーチ/うなずきトリオ
作詞・作曲:大瀧詠一


うなずきトリオは、たけしや紳助がラジオ番組で「きよし、竜介、洋八がトリオを組んだら、3人ともしゃべらずうなずいているだけ」と話していたネタをそのまま実現したものだが、予想に反して大人気となってしまい、その勢いでレコードまで出してしまった。
作詞作曲を担当した大瀧詠一の遊び心が詰まったナイアガラサウンドを堪能でき、コミックソングファンだけでなく、大瀧詠一コレクターの間でも人気アイテムとなっている。

フラワールームより愛をこめて/フラワー・ダンシングチーム
作詞:詩村博史 作曲:勝山俊一郎


「俺たちひょうきん族」で、ヘルメットに海パンといういで立ちでシュールなダンスをしていた「フラワー・ダンシングチーム」によるレコード。
シャンソン風のメロディに乗せ、のりおと女性の愛のささやきから始まり、次第に荘厳なバラードに変わるが、のりおちゃんのダミ声は相変わらずである。
当時は若手だったヒップアップとコント赤信号がメンバーに入っているのも面白い。

アミダばばあの唄/アミダばばあ&タケちゃんマン
作詞・作曲:桑田佳祐


たけし扮するタケちゃんマンとさんま扮するアミダばばあのデュエットソング。
作詞作曲は桑田佳祐で、哀愁のあるメロディは名曲の風格すら感じさせる。
タケちゃんマンとアミダばばあの息の合ったデュエットも良い。

ビックリ箱のうた/タケちゃんマン&ナンデスカマン
作詞・作曲:松山千春


「アミダばばあの唄」のヒットにスタッフが気を良くしたのか、再び出たタケちゃんマンとナンデスカマンのデュエットソングで、作詞作曲は松山千春。
コミックソング的な要素は少ないものの、松山千春らしいしっとりとしたメロディでこちらも隠れた名曲と言える。
この頃のひょうきん族は、大物アーティストを盛んに起用するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。

 

いかがであろうか。
勢いのある若手芸人のお笑いも良いが、レジェントと呼ばれるたけしやさんまの若い頃のレコードを聞きながら、当時のマンザイブームを振り返ってみるのもコレクターの楽しみの一つなのである。
今回は取り上げなかったが、片岡鶴太郎や山田邦子、ひょうきん族関連のレコードもまだまだある。
機会があれば、そちらもあらためて紹介しよう。

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