令和のドラマティック歌謡曲を歌うシンガーソングライター・おかゆ「昭和歌謡女子を流行らせたい!」

2022.4.27

「流し」出身という異色の経歴で知られるシンガーソングライター・おかゆが、4月27日に4thシングル『赤いひまわり』(詞・曲:おかゆ、編曲:多田三洋)を、カップリング曲の異なる3つのバージョン(桜綴盤・マーメイド盤・夜間飛行盤)でリリースする。『赤いひまわり』は、北海道勇払(ゆうふつ)郡安平(あびら)町に咲く赤い花をモチーフに、偽りの愛に翻弄される切ない女心を情感たっぷりに歌いあげたドラマティックな歌謡曲。ソングライターとしての創作方法から、流し時代に出会った酒場に集う人々のエピソード、そしてユニークなプライベートライフまでを聞いた。

本当はひまわりではない赤い花を報われぬ恋の歌に

――新曲の『赤いひまわり』は、ご自身で作詞・作曲した約1年ぶりのオリジナルのシングル曲です。ご自身にとってはどんな作品と捉えていますか?

2ndシングル『愛してよ』(2020年)に続く本命歌謡曲で、令和のドラマティック歌謡曲を目指しています。昭和の歌謡曲には一曲の中で物語が劇的に展開していく作品がたくさんありますが、『赤いひまわり』も聴いてくださった方が作中で描いたドラマの情景を思い浮かべられるような作品になれたらいいなと思っています。歌謡曲を聴いていると、自分がその歌の主人公のような気持ちになったりしますよね。映画を見ているように登場人物たちの気持ちになって、この歌の世界に入り込んでいただきたいです。

――愛する男性が実は妻子を持つ身であることを知った女性の揺れる気持ちを、赤いひまわりという花になぞらえて表現されています。そもそもの着想と、それを作品としてどうやって膨らませていったのでしょう。

私の地元、札幌市の近くの安平町には、観光名所として赤いひまわりの群生地があるんです。咲いているその花がひまわりではないことを知ったのが、この曲が生まれたそもそものきっかけです。実はメキシコ原産のチトニアという花で、とてもきれいな花なのですが、それを恋の歌にするとすれば、ひまわりと思っていた恋人が本当は別の花で、だまされていたという歌になるなと思ったんです。ということは、相手の愛は本物ではない。どういう男性だろうと考えているうちに、実は結婚している不倫の恋となっていきました。チトニアは元気いっぱいな明るい花というよりは、色合いもどこか哀愁のある花で、寂しそうな女性のイメージにもつながると思いました。そこから2人の関係性がどんどんストーリーとして膨らんでいきました。

――チトニアの花言葉は「あなたは素晴らしい」だそうですね。

「悲哀」という花言葉もあるんです。歌詞の内容も曲が一番から二番へと進むにつれて「あなたは素晴らしい」から「悲哀」に変わっていきます。

心が震えるアレンジに初めて自分の曲のデモで号泣

――サウンドもピアノの旋律が印象的で、Aメロ、Bメロからサビへと音も厚みを増し、おかゆさんの歌唱も熱情があふれていくようになります。

サウンドにはかなりこだわりました。『赤いひまわり』のアレンジャーの多田三洋さんが手がけるアレンジは、ピアノ一本で引き込まれ、心が震えます。温かくて悲しくて、心のひだをえぐられるような独特の素晴らしい感性を感じられるサウンドなんです。『赤いひまわり』は、まず多田さんにデモ音源を送らせていただいたのですが、そのデモのアレンジが返ってきたとき、アレンジしていただいた自分の曲を聴いて私、号泣したんです。インディーズ時代から今まで数多くの曲を作ってきましたが、デモの段階で聴いた瞬間に自分の曲で涙が止まらないなんて初めての経験でした。「桜綴盤」のカップリング曲『桜綴(さくらつづり)』も多田さんにアレンジをお願いして、こちらも返ってきたのを聴いた瞬間、またも号泣してしまいました。

――曲を作るときは、詞が先ですか。作曲ではギターを使うのでしょうか。

詞が先でメロディーが後です。ギターを使うとコードにとらわれすぎるので、『赤いひまわり』はギターを使わず、ボイスレコーダーに直接歌って録音していきました。ざっくりと吹き込んでいくのですが、途中で符割りがおかしくなったり、変な音になっているところがあるので、調整していく段階でキーボードを使いました。『桜綴(さくらつづり)』も「マーメイド盤」のカップリング曲『真夜中のマーメイド』も、今回の新曲3曲は、ギターを使わないやり方で作曲しました。『赤いひまわり』のサビは、もう黒鍵ばかりです。黒鍵が主体なので、複雑でアンニュイ、ちょっと奥行きがある感じになるんです。ライブではギターで弾きたいので、コードをさらおうとしたら、最初まったく弾けなくて。ギターを使わずに作った結果、弾いたことがない難しすぎるコードばかりになっちゃったんです(笑)。カポ(タスト)をつけて、なんとかがんばって弾けるようになりました。

自分でも驚くほどの声が出たスタジオ変更が生んだ奇跡

――今回の歌唱表現で特に工夫された点はありますか。

私の声のトーンはどちらかといえば低いのですが、『赤いひまわり』では、自分の声のいい部分を活かしたいなと思ったので、あまり作り上げずナチュラルな自分の声で歌っています。そういえば『赤いひまわり』と『桜綴(さくらつづり)』は、レコーディング当日、ハプニングが重なって、レコーディングスタジオが急遽変更になったんです。5倍くらい広いスタジオになって、なんでも吉永小百合さんがレコーディングされるようなすごいところで(笑)。30人くらいは入れるんじゃないのっていうブースに一人で入って歌ったら、今まで自分でも聞いたことがないくらい声が出て、もうびっくりしちゃって。今まではこういう風には歌えなかったよなという声がいっぱい出たので、今回はスタジオに大変助けていただきました。絶対ヒット曲を出して、毎回あのスタジオで録っていただけるようになろうとひそかに決意しました。

――今回のミュージックビデオ(MV)では、自ら主人公を演じられていますね。

これまでのMVでは、みなさんに想像していただくことを大切にしたいので、自分で演じることを避けて、俯瞰的な立ち位置から歌手として歌っているシーンだけでしたが、今回はスタッフの方が機先を制すように「おかゆさんに演じていただいて!」とおっしゃって、初めて演技に挑戦することになりました。熱愛シーンもありますし、見ている人からすると主人公が私になってしまうので、自分の書いた曲でとても恥ずかしかったのですが、やるからには主人公になりきるしかないと全力で演技しましたので、最後までご覧いただきたいです。

かつて悔いを残していた『夜間飛行』をカップリングの一曲に

――カップリング曲についても聞かせてください。

今回、『桜綴(さくらつづり)』を書いて、桜って儚くてやさしくて、こんなにも温かな気持ちにさせてくれるんだと思いました。母を亡くした季節が北海道での桜の開花時期、4月下旬でした。春の訪れとともに、その頃はまだ雪も少し残っていて、私にとっては明るい旅立ちと、別れの寂しさも感じさせる季節です。『桜綴(さくらつづり)』は人生で初めて書いたハッピーなラブソングです。自分にとっての愛や恋、家族など、人への思いを見つめ直すことで、きれいな言葉ややさしいメロディーがたくさん浮かんできました。季節は移ろっていくけれど、必ずやってくる春。桜の花びらに愛し合う2人が愛や未来を綴っていく歌です。野に咲く花と違い、見上げる桜の花は必ず空と一緒。今年は空も桜もたくさん見ているなと思ったときに、私は桜が好きなんだと思いました。

――『真夜中のマーメイド』は’80年代を思わせる軽快なポップソングですね。

『真夜中のマーメイド』はシティーポップのど真ん中を攻めました。昨年リリースした3rdシングル『星旅』でシティーポップ風の曲に挑戦したのですが、それをきっかけに世界中のシティーポップを聴きまくった1年でした。ファッショナブルでかっこよくて、おしゃれ、自分もこういう曲が書きたいと、シティーポップを書くぞと決めて取り組んだ作品です。タイトルの「真夜中」「マーメイド」をはじめ、「土曜の夜」「星空」「冷たいベッド」といった言葉も、アクセサリーでファッションをカスタマイズしていくような感覚で詞に散りばめました。でも、自宅は地下にあるので、実は私の部屋からは星空が見えないんです。こういう家に住んでみたいという憧れがつい出てしまったのかもしれません(笑)。

――ちあきなおみさんのカバー曲『夜間飛行』は、素晴らしい歌唱に圧倒されました。原曲に対して、どういう味付けをしていこうと思われたのですか。

大前提として、ちあきさんが表現されている世界観を崩さないということがありました。リスペクトの精神を絶対に忘れずに、平成生まれで令和の時代を生きている自分の感性を入れて、みなさんに伝えられたらと思いました。『夜間飛行』は、テレビ番組「THEカラオケ☆バトル」で2回目の優勝をしたときに歌った曲です。そのときはカラオケ機器で高得点を取るための歌い方に徹していたので、ちあきさんの世界観を顧みない歌い方をしてしまったという悔いがずっと心に残っていました。その後、ありがたいことにBSの歌番組で、のびのびとこの曲を歌う機会をいただきました。そのオンエアをご覧になったディレクターが次のシングルでカップリングに入れましょうとおっしゃってくださいました。歌手として、ちあきさんの曲に大きな影響を受けているので、今回のリリースについては特別な思いです。とにかくこだわって、フランス語での語りのパートも自分で行いました。

少ない言葉で豊かな物語が紡がれる歌謡曲の素晴らしさ

――TikTokなどのSNSで積極的に昭和の歌謡曲を披露されていますが、昭和歌謡を歌い継いでいくことへの思いを聞かせてください。

なんといっても自分の音楽的ルーツ、憧れです。“昭和歌謡女子”を流行らせたいです。歌手志望だった母が歌謡曲を歌っている姿を見て育ったので、母との思い出でもあります。このジャンルを護りたい――それくらいの強い思いで大事にしています。昭和歌謡曲が今の私を作っている、昭和歌謡曲に自分の人生があるという気がします。歌謡曲の良さは、少ない言葉で豊かな物語が紡がれ、聴く人が想像をめぐらせていくことにあると思うんです。私もそういう曲を作りたいし、令和の音楽シーンに残したい。昭和の歌謡曲を歌い継いでいきながら、自分の歌謡曲もまた誰かに歌い継いでもらえるようにたくさんの方に知っていただきたいです。
私、結構YouTubeで、私の曲を歌ってくださっている方の動画を見るのが好きでして。歌い方を教えていらっしゃるのを、私も生徒の気持ちで見ているんですけど(笑)、みなさん色々な解釈をされているのがすごく面白くて。私とは違うメロディーで歌われる方もいらっしゃって、すごく勉強になるんです。『赤いひまわり』の歌唱動画もどんどんアップしていただきたいですね。みなさんの歌を私も聴きたいです。

――多くの歌謡曲に触れてきたのも、流しとして全国を巡られていたからだと思いますが、忘れられないエピソードを教えてください。

青春すべてが流しになりました。スナックといった酒場は大人の社交場なんですよね。その空間を一つにするのが音楽で、お酒だけでなく歌でも酔うというか。好きな歌を歌ってと言われたときに、その場にふさわしい歌を考えるのも楽しくて、勉強になりました。四国のとある町で、ご病気で余命わずかだというおじいちゃんに出会ったんです。エト邦枝さんの『カスバの女』をリクエストいただいたのですが、私の歌を聴いて号泣されて。先立たれた奥様が好きだった歌だそうです。強いお酒をあおり、いかにも強そうな煙草を吸われていて、どこか死に急いでいるようなロッカーのような感じの方でしたが、ボロボロ泣いて、生きていてよかったと言ってくださいました。その言葉を聞いて、私も歌っていてよかった、生きていたよかったと思って、涙が出ました。出会いや別れ、流しをして出会った方々のたくさんのドラマを見てきました。

――20代前半で濃密な経験をされていますね。

全国のママやマスター、お客様がプロの歌手になってがんばってと応援してくださいました。右も左も分からない地方で、最初の一軒から始まって、どんどんお客様がついてきてくださって、最終的には人があふれて、お店に入れないので外から歌ったような楽しい思い出もあります。流しをした帰りの電車で自分と同世代の方と夢を語り合ったり、娘さんを亡くされたママから実の子どものように思っていただいて手料理をご馳走になったり、本当に色々な出会いがありました。流しという言葉さえ知らなかった私が、みなさんに育てていただきました。

聴くだけではないアナログレコードのひそかな愉しみ

――レコード収集をしているそうですが、どんなジャンルの音楽ですか。

やっぱり演歌・歌謡曲が多いですね。ジャケットがかっこいいです。流しで地方に行くと、思いがけず中古盤のレコードショップがあるんです。都内のショップだと結構なお値段がついているアナログレコードが、100円で売っていたりして(笑)。ジャケ買いしたのが、森進一さんのアルバム『影を慕いて』『無情の夢』『再会』の三部作。岩田専太郎さんのイラストがすてきで。レコードを集め始めた頃は、実はプレーヤーを持っていなかったんです。では、レコードで何をしていたかというと、ジャケットの裏に歌詞が掲載されていますよね。その歌詞とジャケットを見て、勝手にメロディーをつけるという遊びをしていたんです。あとからYouTubeなどで曲を聴いて答え合わせをして、ぜんぜん違う! とか、おっ、ちょっと近い! とか、こういう感じなのかって納得するというものなんですけれど(笑)。答え合わせがめちゃくちゃドキドキするのでハマっていました。

――歌詞は同じでも、全く違うメロディーになるわけですね。いい趣味ですね。

アナログ盤は200枚くらいあると思うのですが、今、そういう昭和歌謡曲のレコードが「和モノ」として注目されていますよね。ご縁があって、有名な和モノDJの方と知り合うことができたので、コロナ禍が落ち着いたら、昭和歌謡曲のイベントをコラボしたいと考えています。

釣りが大好き!ペットは鰻!?

――釣りも趣味だとか。

釣り好きですね。海釣りも川釣りもどちらも行きます。これまでの釣果でいちばんの大物は、70センチの鯉です。戸田公園で釣りました(笑)。大きさに自分でもびっくりして。魚拓まではとらないですけど、釣れるとうれしくて魚にチューしちゃいます。鰻もこれまでいっぱい釣っています。釣った魚は食べることをモットーにしていますが、鰻は簡単に素人が捌けませんので、鰻屋さんに持ち込んだりもします。

 

戸田公園で釣った70センチの鯉

 

――ペットも鰻だそうですね。

「うなお」と「うなまる」と名付けた2匹を飼っています。最初に出会ったのはうなおのほうで、顔が小動物のようにかわいくて、これは飼うしかないと。インターネットで調べてみると、自宅でいちばん飼育が簡単なのが鰻と出てきたんです。最初は冷凍の赤虫を餌にしていたのですが、冷蔵庫が赤虫くさくなってしまい(笑)、今は常温で保管できる亀の餌をやっています。飼い始めて3年ほど経ちますが、さすがにこの2匹は愛情があるので、鰻屋さんには持っていけません。

――最後に、今後の目標は?

昨年の『愛してよ』が歌謡曲シンガーソングライターとして勝負したいという思いで発表した曲だったのですが、コロナ禍の影響でお客様の前で歌う機会がほとんどなかったこともあり、私としてはかなりの打撃を受けました。そのため、まずは新曲の『赤いひまわり』を絶対に多くの方に届けたいです。初のソロコンサート(2月開催)はコロナ禍で実現までに大変な思いをしましたが、もちろん今後もやっていきたいです。

おかゆ『赤いひまわり』MV(Short Ver.)

おかゆ『赤いひまわり』

発売中
価格:¥1,350

桜綴(さくらつづり)盤

品番:VICL-37633

【収録曲】

1.赤いひまわり(作詞・作曲:おかゆ/編曲:多田三洋)
2.桜綴(さくらつづり)(作詞・作曲:おかゆ/編曲:多田三洋)
3.赤いひまわり(オリジナルカラオケ)
4.桜綴(オリジナルカラオケ)

マーメイド盤

品番:VICL-37634

【収録曲】

1.赤いひまわり
2.真夜中のマーメイド(作詞・作曲:おかゆ/編曲:阿部靖広)
3.赤いひまわり(オリジナルカラオケ)
4.真夜中のマーメイド(オリジナルカラオケ)

夜間飛行盤

品番:VICL-37635

【収録曲】

1.赤いひまわり
2.夜間飛行(作詞:吉田旺/作曲:中村泰士/編曲:斉藤真也)
3.赤いひまわり(オリジナルカラオケ)
4.夜間飛行(オリジナルカラオケ)

4月27日より、音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信スタート
※対応ストリーミングサービス:Apple Music、LINE MUSIC、Spotify、YouTube Music、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、TOWER RECORDS MUSIC

おかゆ プロフィール

1991年6月21日生まれ、北海道札幌市出身、血液型A型、 シンガーソングライター 。
歌手になることが夢だった母のもと、小さい頃からスナックに連れて行かれ、そこで歌謡曲を聞いて育つ。
母がいちばん好きだった歌手が髙橋真梨子で、自身も好きになった。他にも藤圭子や、ちあきなおみなどの楽曲も好んで歌っている。 急逝した母の夢を引き継ぎ歌手になるため2014年から「流し」の活動を始め、日本全国を廻り2019年4月に47都道府県を制覇。
インディーズ時代にはテレビ東京「THE カラオケ☆バトル」で2回優勝。
2019年5月1日『ヨコハマ・ヘンリー』でビクターからメジャーデビュー。
中学時代に本名の「ゆか」をもじって付けられたニックネームが「おかゆ」。
現在、BSテレビ東京「徳光和夫の名曲にっぽん」にアシスタントMCとしてレギュラーで出演中。
ヤマハのアコギ(FGX5)を使用。

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