前作に続き女性アイドルとコラボしたニューシングル『夢を抱いて走れ』をリリースした松原健之「7月からコンサートツアー。お客さんに笑っていただくと快感で、歌の合間についおしゃべりしてしまいます」
美しく澄んだ歌声で“奇跡のクリスタルボイス”として知られる歌手・松原健之が、前作『風のブーケ』に続いて女性アイドルをコーラスに迎えたニューシングルをリリース。ハロプロOG・宮崎由加とアンジュルム・伊勢鈴蘭が参加した新曲『夢を抱いて走れ』は、かえがえのない地球とそこで生きる人々へエールを贈る爽やかなメッセージソングだ。7月からはコンサートツアーもスタート。デビュー以来、日本各地の隅々まで歌を届けることにこだわってきた松原にとって、コロナ禍の2年間とはどんな日々だったのか。2019年3月の「うたびと」オープン記念以来のインタビューで存分に語ってもらった。
──新曲『夢を抱いて走れ』は、松原さんの清涼感あふれる歌声にぴったりな爽やかな世界観です。前作に続いて女性アイドルとのコラボレーションはいかがでしたか?
前作は僕も初めてのことでちょっと緊張しつつも、アイドルのみなさんの堂々たるパフォーマンスのおかげで、『スカボロー・フェア』みたいな広がりのあるコーラス感など面白い挑戦ができました。そして今回は前作と違う方々の参加となりましたが、宮崎さん、伊勢さんともにこの曲に込められたメッセージ──『この美しい自然を未来まで守っていこう』という思いを共有していたことも含めて、意義深いコラボレーションになりました。
──歌詞には森や川、空といった美しい風景が描かれています。松原さんもかねてから環境問題に取り組んでこられたとか。
僕自身というよりは、アップフロントグループとして『SATOYAMA movement(里山里海プロジェクト)』というプロジェクトに取り組んでいます。僕もそこに参加させてもらって、地方で野菜を植えるなど活動してきました。ただこの歌もそうですが、あまり『環境を守ろう!』と説教くさく言っても伝わらないと思います。あくまで娯楽として楽しんでいただいて、サブリミナル効果じゃないけど、皆さんに『自然を大切にしたい』と思っていただくきっかけになれば、という密かな思いをこの曲に込めています。
──カップリングにはフォークのスタンダードナンバー『岬めぐり』のカバーを収録。選曲理由をお聞かせいただけますか?
三浦半島がモデルだと言われることも多い曲ですけど、僕は日本各地にある半島を思い浮かべながら歌いました。僕をデビューに導いてくれた作家の五木寛之先生がいつも『地方が大事だ。地方がイキイキしていないと日本はいい国にならない』とおっしゃっていたこともあり、僕も歌で地方を元気にしたいという思いがずっとあります。その中でも半島、つまり末端というのは過疎化が進んで寂しくなっている場所が多いんですよね。だけどそこにはおいしい食べ物や美しい自然、力強く生きる人たちがいる。この歌でもう一度『半島に行ってみたいな』という気持ちを呼び起こせたらうれしいですね。
──松原さんにとって思い出深い半島はありますか?
だいぶ前のことですが、キャンペーンで石川県の能登半島のほうに行ったことがあります。僕はキャンペーンでもなるべく客席の後ろまで回るようにしていますが、そのときも自販機の横で缶コーヒーを飲みながら聞いているおじいちゃんのところまで行きました。そうしたら『いつもここで歌手の歌を聞くのを楽しみにしているけど、一番後ろまで来てくれたのは君が初めてだよ』と照れながら手を握ってくれました。その言葉がずっと忘れられなくて、最近は特に深く心に刺さります。
──この2年間はキャンペーンもなかなかできていないのでは?
そうなんです。コンサートは昨年から少しずつ始まりましたし、チケットを買って足を運んでくださる方は本当にありがたいです。もちろん配信ライブやネットサイン会にアクセスしてくださった方も。ただ、その一方で取り残されている人もいるのではないかと。それこそ、たまに来てくれる歌手の歌をささやかな楽しみにしていた、あの能登のおじいちゃんみたいな人が。そう思うと、少しでも早く全国に歌を届けに行きたいという思いが募ってきますね。
──7月からはコンサートツアーも始まります。
東京公演には宮崎由加さんも参加してくれることが決まり、一緒に『夢を抱いて走れ』を歌えるのが楽しみです。最近はしゃべりすぎって言われることが多いので、なるべく歌を多めに聞いてもらえるコンサートにしたいですね。昔、夏木ゆたかさんに『お笑いじゃないんだから、そんなにしゃべりがうまくならなくてもいいよ』と言われたことがありますが、笑っていただくとそれが快感になってしまって(笑)、気をつけますね。
──トークを楽しみにされているお客さんもいますよね。
いやいや(笑)。コンサートもですけど、一方でやっぱりキャンペーンも大切にしていきたいです。そこには偶然の出会いもありますし、歌で道行く人の足を止めるのも歌手としての喜びです。『夢を抱いて走れ』の発売日には久しぶりに地元である静岡県の浜松市でキャンペーンができるのでうれしいですし、これからもっとキャンペーンの日々が戻ってきてほしいです。
──松原さんご自身、コロナ禍はどんな日々でしたか?
音楽に関してはラジオ関西で『松原健之 こころの旅』という番組が始まり、そこで毎週弾き語りをするので改めてギターを手に取りました。ほとんど部屋の飾りになっていますが(笑)。さだまさしさんの『無縁坂』や山崎ハコさんの『織江の唄』、『宇宙戦艦ヤマト』みたいな意外な曲にも挑戦しています。プライベートでは豆を挽いてコーヒーを淹れるようになりました。そしたら今度はコーヒーカップに凝り出してしまって。ネットオークションでアンティークの良いものが安く手に入るんですよね。もう食器棚はカップだらけで、いつか『カフェ松原』がオープンするんじゃないかというくらいです。
──意外と充実されていたんですね。
充実と言いますか、やっぱりコロナ禍では『世の中ってなんて不条理なんだ』と思うこともたくさんありました。先輩であるシャンソン歌手の高木諒太さんがお亡くなりになって……。高木さんはよく『夢はたくさん持っていたほうがいい』とおっしゃっていました。1つが叶わなくても別の夢が叶うかもしれない。だから大きい夢も小さい夢も、いっぱい持っていたほうがいいよね、と。高木さんとはもう会えない。それは悲しいことだけど、それも1つの現実として受け止めなければ。俯いてばかりではいけません。自分が前を向くためにも夢は持ったほうがいいという高木さんの言葉も、『夢を抱いて走れ』というタイトルに込められたのは良かったなと思っています。
──松原さんには今、どんな夢がありますか?
ハワイに行ってみたいです。旅行だったらいつでも行けますけど、歌を歌いに行けたら。ハワイには日系の方も多いですし。ブラジルにも歌いに行けたらうれしいなあ。それとは別に、僕は旅行が好きで、いつかインドに行ってみたいんですよ。五木先生がエッセイで『インドに呼ばれる人と呼ばれない人がいる』と書かれていて、僕はどっちだろう? と興味があります(笑)。
──国内旅行ではどちらに行きたいですか?
国内では小笠原島に行ってみたいです。今はほぼ週1便の定期船しかなくて、しかも片道24時間とアクセスが大変な場所です。ということは、小笠原にお住まいの方は、生の歌を聞く機会がほとんどないのではないかと。そう思うと海外もいいけれど、国内にもまだ歌を届けに行けていない場所はたくさんある。いつも日本中を隅々まで歌で周りたいという気持ちがありますね。
──では最後に『夢を抱いて走れ』を聞いてくださるみなさんにメッセージをお願いします。
生きているとどうしても俯いてしまうときがあります。だけど視線を上に向けたら、なんと青空がきれいなことか。きっとみなさんそれぞれの人生にこの歌を重ねていただける瞬間があると思います。ドラマチックに歌い上げるというよりは、シンプルなメロディとリズムで心地よく口ずさめる歌なので、愛唱歌のように親しんでいただけたら。そしてカラオケボックスでは、できれば各パートを覚えて数人でコーラスしていただけたらとてもうれしいです。
松原健之 with 宮崎由加 & 伊勢鈴蘭(アンジュルム) 『夢を抱いて走れ』
2022年6月29日発売
品番:TECA-22030
定価:¥1,350(税抜価格 ¥1,227)
【収録曲】
1. 夢を抱いて走れ
2. 岬めぐり
3. 夢を抱いて走れ(オリジナル・カラオケ)
4. 岬めぐり(オリジナル・カラオケ)