水森かおりがアルバム『歌謡紀行21~九十九里浜~』をリリース 「いろいろなパターンの7着の新曲を着ることができました」

2022.9.21

“ご当地ソングの女王”水森かおりが、2022年9月21日に“歌”で旅するアルバム『歌謡紀行21~九十九里浜』をリリースする。最新シングル『九十九里浜』を含む全14曲のうち、7曲がこのアルバムのために書き下ろしされたオリジナルの新曲だ。王道の演歌・歌謡曲からフォークタッチの曲、そして地中海の潮風が香るようなシティポップテイストの歌詞に惹きつけられる曲まで多彩な歌世界が、水森の低音から高音まで澄みきった歌声で響きわたる。オリジナル新曲を中心に、今回のアルバムについての思いを聞いた。


わくわくするような『九十九里浜』の歌い出し

――本作で第21弾となる『歌謡紀行』が完成した気持ちをお聞かせください。

第1弾をリリースしたのが2002年。その時はまさか「21」まで到達するとは思ってもいなかったので、前作の『歌謡紀行20~鳴子峡~』のときにも感じたことですが、「ちょうど20年。よくぞここまで!」という気持ちです。

――アルバムは、最新シングル『九十九里浜』で幕を開けます。2月にリリースされてから約半年が経ちました。千葉県が舞台の曲で、これで47都道府県のうち、残すは3県ですね。

「ついに千葉県きたーッ!」という感じです(笑)。千葉は東京の隣で近いイメージがありますが、実はとても広いですよね。都心から車で一時間半近くかかるような場所もありますので、キャンペーンでうかがうと、「なかなか東京まで行けないから、かおりちゃんがここまで来てくれて、本当にうれしい」と、おっしゃる方が多いんです。「来て良かったな、千葉が舞台の曲を歌って良かったな」と心の底からうれしくなります。

――コロナ禍のこの3年間を経て、お客様の前で直接新曲を披露できるようになったことは、水森さんにとっても大きいことではないでしょうか。

まだコロナ禍前と完全に同じというわけにはいかないですが、ちょっとずつキャンペーンができるようになってきて、直接みなさんに歌を聴いていただける場が増えてきたことは、大きな変化です。お客様あっての歌い手ということを日々実感しています。

――『九十九里浜』を歌い込まれていくなかで、この曲に対する思いや新たに気付かれたことはありますか?

サビからの歌い上げる部分など、迫りくるメロディーが印象的なスケールの大きな曲です。また、楽曲冒頭の歌い出しのフレーズ(バース)が、「これからどういう物語が展開していくのかな」と、わくわくするような始まり方をしますので、私自身も表現しがいがある曲です。歌っていて、とても楽しいですね。途中で少しメジャーに展開する部分もあり、聴き応えがある歌だと思っています。前作『鳴子峡』が、サビから始まる歌だったので、今回は異なる手法ではあるのですが、ファンの方からも「今回もいいね」と言っていただけるのがうれしいです。

“歌っていないようで歌っている”ことの難しさ

―――7曲のオリジナルソングについて、それぞれ聴きどころや特徴を教えてください。青森県鶴田町が舞台の『ふたり舞い~鶴の舞橋~』は、シンガーソングライターの西島三重子さんが作曲した作品です。

西島さんの作品なので、演歌とは異なるフォークミュージックの世界観を持った曲です。私にとって西島さんは歌い手としての大先輩であり、同時に“西島先生”という存在です。西島さんはリズムをとても大事にされていますが、リズムの取り方、歌の作り方が演歌とは異なります。演歌歌手はどうしても歌い上げてしまいたくなるのですが、“歌っていないようで歌っている”という西島さんの作品の世界観を表現する難しさが毎回あります。

――『冬の雷鳴』は、失った恋を忘れようとする女性が、汽車で新潟から山形を経て秋田まで冬の東北をひとり旅する歌です。

最初にデモ音源で曲をいただいたときの印象と、実際に歌って完成してから聴いたときの印象ががらりとかけ離れた曲になりました。完成するにつれどんどん変わっていったんです。これまでの自分の歌にはなかった世界だと感じていますので、楽しみに聴いていただければと思います。

――『柴又暮色』は、イントロのメロディーや“さくら”という言葉が織り込まれた冒頭の歌詞など、映画『男はつらいよ』へのオマージュも感じさせます。

柴又ということで、イントロや歌詞は、作詞の小野塚清一先生、アレンジを担当してくださった竹内弘一先生の遊び心ではないでしょうか。

――報われない恋に傷ついた女性の気持ちが歌われていますが、曲調はカラッと明るくて水森さんの凛とした歌声にも清々しさを感じました。

とてもノスタルジックで懐かしい風景が描かれます。実際に柴又に行ったことがなくても、映画で寅さんが歩いていた下町の景色が浮かんできます。どの曲も歌うときは主人公の気持ちを推し量るのですが、この歌では、「主人公はすべてのことを昇華して、恋をした相手の幸せを願い、自分自身も明るい未来を思い描きながら、穏やかな笑顔で柴又を歩いている」という女性像が浮かびました。作詞の小野塚先生は、いつものお散歩コースが柴又だそうですから、歌詞で描かれる情景に嘘がなく自然なんです。

歌が流れるように身体のなかにスッと入った

――鎌倉が舞台の『化粧坂』(けわいざか)は、永井龍雲さんの曲でフォークタッチです。水森さんにとっては、どのような曲でしょう。

永井龍雲さんの世界が私はとても大好きです。永井さんに曲をいただくのは、今回で2回目。とても良い歌です。フォークにも歌謡曲にも聴こえる、本当に独特な立ち位置の曲で、歌っていても新鮮です。歌詞のついていない曲だけのデモテープの段階では、「この曲を私、歌えるのかな?」と少し心配したのですが、詞が決まり、アレンジが固まると、流れるようにスッっと身体の中に入ってきました。

――『南紀白浜』は、白浜に恋の涙を捨てにきた強い女性を歌われています。

これぞ、“ザ・水森英夫先生の世界”という曲です。カップリング曲などを除けば、1999年の『竜飛岬』、2000年の『尾道水道』でお世話になって以来、久しぶりに水森先生の世界を、余計なことを何も考えずにストレートに歌わせていただき、うれしかったです。

――『大隅半島』は、九州最南端、南国が舞台の歌です。どのようなイメージで曲をとらえられたのでしょうか。

半島全体をイメージするというよりも、たとえば、2番の歌詞にある「線路が果てる」など表現からもの悲しさを膨らませていくといった感じでしょうか。2007年の『ひとり薩摩路』で鹿児島県内をあちこち回らせていただいたことも、この曲に取り組むうえで助けになりました。

――『マルガリータ』は、スペインのマヨルカ島が舞台。3拍子のメロディーにフラメンコギターやアコーディオンを使用したサウンドに、今までにない新境地を開かれたと感じました。歌詞もシティポップ風のおしゃれなワードが散りばめられています。

歌い出しが男女の会話で始まるような、私にとっては新しいタイプの歌です。マヨルカが舞台ですが、ご当地ソングの範疇にとどまらない曲になっていると思います。とてもおしゃれで、このような雰囲気の曲はオリジナルソングでは初めてです。

新曲が自分のものになるのは「着慣れる」感覚

――歌詞の主人公の気持ちを想像するとうかがいましたが、その主人公の心情まで寄りそって歌うのでしょうか。

いえ、そこは俯瞰する目線で歌っています。ご当地ソングは、聴いてくださる方が主人公になっていただきたいと思いますから。私の気持ちを吐露するように歌ってしまっては、聴いている方が主人公になれませんよね。その地方の風景を織り込んで、「こういう女性が、こういう気持ちで、こういう場所を歩いています」という歌を、行間も含めてお届けしたいと考えています。主人公に対して「がんばれ!」とは思いますが、歌う際はお天気カメラの映像のような感覚です。

――新曲は、それぞれかなり歌い込んでからレコーディングに臨むものなのでしょうか。

私は事前にあまり歌い込みません。実際にブースに入って歌うことで、色々な気付きが出てくることを大切にしています。新曲に対して新鮮な気持ちで向き合いたいということもあります。

――レコーディングをしていくなかで、新しい曲が自分のものになったと感じる瞬間はありますか?

ありますね。ファッションにたとえると「着慣れてきた」という感覚です。第一印象が「あ! かわいいお洋服」と思って着てみたら、「あれ? 似合わない」ということもありますし、最初に「これはないよな」というお洋服が、意外に「良いじゃん!」というときもありますよね。ためらいながら着てみて、改めて「うーん」と考え込んでしまうときもあります。そこをどうにか自分らしさを出して「襟をちょっと立ててみようかな」とか、「ちょっと折り曲げてみようかな、ここは伸ばしてみようかな」と、自分に合うところを見付ける作業が必要な曲もあるという感じです。どの曲でも、アレンジや工夫を加えながら、自分のものにするところを探していく作業が好きですね。

――今回のアルバムでは7着分を着こなしたんですね。

いろいろなパターンの7着の新曲を着ることができました。弦哲也先生は、私のクセや良い部分、悪い部分を分かってくださっているので、オートクチュールで曲を作ってくださるような感覚があります。一方、アルバムでは、初めて曲をいただく先生方もいらっしゃいます。それぞれの先生方の多彩な世界があるので、不安もあるのですが、それを自分の曲にしていく作業がめちゃめちゃ楽しいんです。それがアルバムならではのおもしろさですね。その結果、ファンのみなさんから「このような水森かおりの世界はなかったね、新鮮だね」とおっしゃっていただけます。私の歌に、これまでになかった世界を広げていただき、たくさんの引き出しを作らせていただけるのがアルバムだと思います。

これまでで一番寒かった九十九里ロケでのMV撮影

――初回限定盤のDVDには『九十九里浜』のMVが収録されていますが、撮影時のエピソードはありますか?

MVはご当地ソングの場所で撮影するのですが、大体リリースが1~4月なので、冬に撮影するんです。これまでも-14℃の極寒や雪が降っているなか、肩を出したドレスを着て歌ったりしてきたのですが、実は『九十九里浜』のロケが過去で一番寒かったです。九十九里浜は、真後ろが海。海風をもろに浴びるので、北海道、青森での体験を超えましたね。

――この春から市川由紀乃さんとのジョイントコンサートツアーも始まりました。

12歳と10歳で出会っていますので、幼なじみのような、姉妹のような関係です。由紀乃ちゃんと「まさか同じ舞台で一緒に歌わせていただけるなんて」という喜びにあふれています。小さなころからお互いを知っている分、他のどの方とやるよりも不思議な気持ちになります。まさに「しっくりくる」という感じで、デュエットしていても楽しいですね。多くを語らずとも分かりあえる部分があるので、安心しています。

――ソロコンサートの味わいとは違う、共演ならではのお二人の魅力が堪能できそうです。今後もツアーは続いていきますが、楽しみにしている全国各地のファンの方も多いと思います。

由紀乃ちゃんのファンの方で、初めて水森かおりの歌を聴いてくださる方もいれば、その逆の方もいらっしゃると思います。今回のジョイントコンサートで、お互いに歌の世界を盛り上げていければと思います。

――ところで、先日インスタグラムとブログに、“おひとり様”スシローしたとあげていらっしゃいましたが、紅白歌合戦19年連続出場アーティストが、一人でチェーンの回転寿司店に行くのだとびっくりしつつ、ちょっと感動しました。周囲に気づかれませんでしたか。

いえ、全然。スシローさんにもくら寿司さんにもよく行きますよ。家族でも一人でも。お寿司以外の外食チェーンにも普通に行きますし。

――ちなみに回転寿司では、どんなネタを召し上がるのでしょう。

軍艦巻をよく頼みますね。ネギトロが好きです。変わったネタはあまり食べませんが、なぜかコーンだけは頼んじゃいます。インスタにあげた写真の日は、もうちょっと食べたかったんですけど、8皿で抑えました (笑)。

――最後にアルバムを聴いてくださるファンの方へ、改めてメッセージをお願いします。

『歌謡紀行』シリーズを20年間以上にわたり続けてこられたことに対し、これまで応援してくださったファンのみなさんや、制作にかかわってくださったスタッフのみなさんへの感謝の思いしかありません。シングルもアルバムも多くの方の思いがこもっていますので、リリースした作品すべてが私にとっては財産です。

『歌謡紀行21~九十九里浜』

2022年9月21日発売

【初回限定盤 】 ★ CD DVD / TKCA 75100 3,600 税 込
【通常盤】★ CD / TKCA 75101 3,200 税 込
M 1.九十九里浜 (作詩:麻こよみ 作曲:弦 哲也 編曲:伊戸のりお)
M 2.ふたり舞い ~鶴の舞橋 作詩 みろく 作曲 西島三重子 編曲 若草惠
M 3.松島紀行 作詩 たかたかし 作曲 弦 哲也 編曲 伊戸のりお
M 4.冬の雷鳴 (作詩:さくらちさと /作曲:岡千秋 /編曲:伊戸のりお
M 5.越後水原 作詩 伊藤薫 作曲 弦 哲也 編曲 前田俊明
M 6.輪島朝市 (作詩 木下龍太郎/作曲:弦 哲也/編曲:前田俊明)
M 7.柴又暮色 (作詩:小野塚清一/作曲:桧原さとし /編曲:竹内弘一
M 8.化粧坂 けわいざか (作詩:麻こよみ/作曲 永井龍雲 /編曲 佐藤和豊
M 9.南紀白浜 (作詩:麻こよみ/作曲 水森英夫 /編曲 伊戸のりお
M10..瀬戸内 小豆島 作詩 たきのえいじ 作曲 弦 哲也 編曲 伊戸のりお
M11.島根恋旅 作詩 仁井谷俊也 作曲 弦 哲也 編曲 伊戸のりお
M12.大隅半島 作詩 伊藤薫 作曲 伊藤薫 編曲 竹内弘一
M13.マルガリータ 作詩 円香乃 作曲 木村竜蔵 編曲 西村真吾
M14.鳥取砂丘 (作詩 木下龍太郎/作曲:弦 哲也/編曲:前田俊明)
※初回限定盤DVD収録内容
①「九十九里浜」ミュージックビデオ
②「九十九里浜」字幕入りカラオケ

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