福田こうへいがニューシングル『天空の城』をリリース 「どっしりとした一本気のある男の歌になりました」

福田こうへい
2023.4.12

民謡、演歌を股にかけ、その歌声で聴く者の魂を震わせ続ける福田こうへい。前作『北風よ…』から約半年、4月12日に荒木とよひさが初めて詞を提供し、水森英夫作曲によるニューシングル『天空の城』(編曲:南郷達也)を早くもリリースする。無骨な男の生き様を雄々しくそびえたつ城に重ね合わせた本作は、デビュー以来、これまで発表してきたどの楽曲とも異なる世界観を持ち、それだけに怖さもあると本人自ら打ち明けるほど歌い手として新たな挑戦となった作品だ。全国コンサートツアーも始まり、4月にはチャンネル銀河で特集放送「イッキ見!福田こうへい」も放送される。雪融け水がほとばしり、新緑が一斉に芽吹く故郷のように、充実の春を迎えるみちのくが生んだトップシンガーに、新曲『天空の城』について、コンサートについて、自然と親しむライフスタイルまでを聞いた。


CDを買ってくださった方を裏切らない

――14thシングルとなる『天空の城』ですが、どのような楽曲ですか。

最初は曲調がおとなしめに聴こえるかもしれませんが、どっしりとした一本気のある男の歌になりました。

――水森英夫先生作曲の作品は2020年の『筑波の寛太郎』以来2度目、作詞の荒木とよひさ先生とは初タッグとなります。曲を受け取った時の印象は?

レコーディングでは、春と秋の空をバックにした城をイメージして歌わせていただきましたが、編曲やアレンジなどがあるために、実はレコーディング当日までは最終的な楽曲の想像はつかないんです。最初にいただくデモ音源は、ほぼギター1本の弾き語りの音だけですから。オケ録り(伴奏の録音)でさまざまな楽器が入って仕上げていくので、サウンドによって曲調がどのように変わるのかが分からない。それが楽しみでもあるんですけどね。だからレコーディングまでは先入観を持たないようにしています。

――デモ音源の段階では、あまり想像を膨らませないのですね。

メロディーだけをある程度覚えてレコーディングには臨みます。収録当日、歌い方を直していくこともあるので、前もって歌い込んでいない方が直しやすいんです。今回のレコーディングは、今までの曲の中で一番早く録音が終わりました。歌い方は2パターン試して、初めはまっすぐな歌い方、もう一つは自分で何も考えず、歌詞だけを見ながら好き勝手に歌ったパターン。自由に歌った方が本人に合っているということになりました。型にはまっちゃうと、つまらないですから。最終的に5テイクを録って、あとは部分、部分でちょっと歌い直しを録って、ぜんぶで一時間くらい。スムーズすぎましたね。水森先生からは「歌の基礎がもうできているから直すところがない。仕上げのデコレーションする段階のケーキのようなもので、生地を初めから作るわけじゃないから楽だ」とうれしいことをおっしゃっていただきました。

――そこからコンサートや歌番組での収録などに向けて、曲を自分のものにしていく作業があるのでしょうか。

レコーディングで完成した自分の歌を覚えていきます。収録後に聴いて気づくこともあるんだけど、発売する音源として一つの形にしたからには、それをあまり直しちゃならないんです。コンサートやテレビでもCDの自分通りに歌わなきゃいけない。CDを買ってくださった方を裏切りたくないから。そこは大事にしていきたいなと思っています。

――ファンのみなさんと歌を徐々に育てていくような感覚もあるのですか。

そうですね。歌い方はCD通りを根本に置いていますけど、お客様から生のほうがいいねとか、前より深みが出たなとかお声をいただくので、そういう変化は自然に出てきますよね。

聴きたくなる曲と歌いたくなる曲

――本作の歌詞は、流れ者や海の男といった分かりやすい主人公像があるわけではなく、場所も判然としません。時代とずれを感じている男が自分の生き様を貫こうとする覚悟を歌った歌にも聴こえますが、この曲の世界観をどのように受け止めていますか。

これまでの自分ぽくない歌だなとは思います(笑)。海の荒々しさそのままのようなコッテコテのド演歌の歌い方とは異なる、演歌の中でも歌謡曲に近いメロディーです。自分でも不思議な感覚がありますね。まだお客様にお披露目していないので、反応がどうなるか楽しみでもあり、不安でもあります。特に東北の人たちは正直ですからね(笑)。

――詞も曲もシンプルながら奥深さのある歌だと思いますが、歌唱表現で特に気を付けておきたい点はありますか。

難しいのは、音域じゃないでしょうか。自分のキーからすると、声が高いところと低いところが極端になるので、高い声のところがとんでもなく高く聴こえてしまうとは思うんですけど、民謡に比べると低いんです。カラオケで歌われると、後半がきつくなるかもしれませんね。最後の2行の歌い上げが高音でたぶん疲れるところでしょうから、みなさん挫折しなきゃいいな(笑)。そこまでもっていけるようにストーリーを作って歌っていただけるとうれしいですね。最後の歌い収めまでの、低音の部分の歌詞を点と点ではっきり聴こえるようにしていただければ聴きやすいと思います。

――ファンのみなさんに歌ってもらうのはうれしいことですね。

『天空の城』が、みなさんにとって歌ってみたいという曲になるのか、歌うよりは心地よく聴いていたいという曲になるのか、どちらの印象が大きくなるか楽しみです。これまで民謡を交えたような難しさのある歌もありましたので、今回は比較的やさしめの歌いやすい歌だと思います。

――福田さんは、アマチュアの方の歌ってみた動画をご覧になったりするのですか。

たまに拝見しますね。若い方より年配の方のほうがうまかったりします。やっぱり味じゃないですかね。自分も今の年齢になって、声よりも味のほうをとりたくなってきましたし、高いきれいな声よりも味のあるホロッとくるような歌い方している人を評価したくなります。ご本人の姿を見ずに歌だけを聴いたときに、胸に刺さるものがあるかが大切じゃないでしょうか。

『天空の城』への挑戦は綱渡りをしている感覚

――聴いてくださる方には『天空の城』をどう受け止めてほしいですか。

まずはお聴きいただいて、心地よさがあるかないか――メロディーと自分の声にうまくこの歌詞が重なってくれたらいいなと思います。自分にとっては初めての感情を歌いますので、今回はお客様にどう受け止めていただけるか、ちょっと怖さがあります。

――ジャケットの白の衣装も目を引きます。

白を着るとどこか堅苦しくなってしまうので、これまでは避けていました。ステージでもあまり着たことがないですね、汚すから(笑)。今回はジャケットで立っているだけだから白になったのかも。

――怖ささえ感じさせるような初めての感情を歌う楽曲であり、ジャケットの衣装もこれまで着ることがなかった白。新たな福田こうへい像ができあがっていくようです。

たとえて言うなら、自分としては綱渡りをしているような感覚です。これまでの曲は落ちても安全な高さだったけれど、まったく新しいことに取り組んだ『天空の城』は、もし下に落ちたら死んでしまうかもしれない綱渡りに挑戦するくらいの気持ちでいます。この曲の世界観に似た曲がないために、コンサートでは他の曲と続けて歌うことが難しく、今後のコンサートの構成もこの曲をどのように入れるかを考えているところです。ただ、怖さと同時に、大きく化ける部分があるのも歌。不思議な生き物ですよね、「歌」って。

――カップリング曲の『雨の影法師』は、2012年のデビュー曲『南部蝉しぐれ』からの四方章人先生が作曲、作詞は昨年亡くなられた坂口照幸先生です(編曲:南郷達也)。

晩年の坂口先生がご自身の人生を投影して書かれた詞ではないかと感じています。メロディーはシンプルで四方先生らしさあふれる作品です。声高く歌うより、渋い人にぴったりな男性歌です。低い声の人に合う歌だと思います。

男女偏らない耳の肥えたファンの存在

――3月22日には、『新歌舞伎座 福田こうへい特別公演2022』のBlu-ray、DVD、CDもリリースされました。5年ぶりの座長公演ということで、第1部のお芝居では殺陣にも初挑戦されました。

殺陣は集中しました。毎日違う殺陣の振り方があり、タイミングを微妙に合わせる難しさがありました。膝を使って全身で動いた後遺症が今になってきております(笑)。学生時代は、競技アルペンスキーをやっていて、膝には自信があったんですけど、やっぱり年には勝てません。せりふを覚えるのは大変ですが、お芝居は終わるころに良くなるというのがもったいなくてね。第2部のコンサートは約1時間半と、通常のコンサートより時間がかなり凝縮されるので、メドレーや手拍子によるお客様参加型のプログラムを採り入れました。

――1月から今年のコンサートツアーも始まりました。コロナ禍の3年間を経て、お客さんと直接向き合って歌うことで、改めて気づかれたことはありますか。

やっぱりコンサート会場で直接会って聴いていただかないと、歌の良さが伝わらないなとよく感じますね。拍手だけでは分かりづらいところもありますし、早くお一人お一人のマスクをしていないお顔を見ながら歌いたいなと思います。

――ファンはどのような方が多いと感じていますか。

ペンライトを大きく振らない(笑)。お客様によっては、歌をじっくり味わうためには光がじゃまだという方もいらっしゃいますので、お客様同士で周囲に気遣いできる方が多いと思います。

――福田さんのファンは、根っからの歌好きというイメージがします。

男性の人も多いんでね。男性、女性どちらかに偏らず、コンサートでもちょうど半々くらい。それは歌手になって一番良かったなと思います。確かに東北の人なんかは、まず歌がうまくないとコンサートに行かないよという人も多いです。

――民謡が今も根付いている東北の土壌もありそうですね。

そう、だから恐ろしい環境で育ってきた! 耳が肥えてしまうんですよね。

もう俺にしか歌えない民謡を残しておく

――4月には、チャンネル銀河で特集放送「イッキ見!福田こうへい」の特集放送もあります。放送ラインアップには、2021年に盛岡で開催した10周年コンサートなどのライブ映像をはじめ、人気ロケ番組「里山ライブ」シリーズなどが予定されています。コンサートでは、『渋民荷方節』のようなご自身のルーツとなる地元の民謡も歌われていますね。

『渋民荷方節』は、もう俺しか歌わない歌になっちゃいましたね。お座敷歌でね、祝い歌なんです。ごく一部の地域から発祥した歌で、流行るような歌でもなければ、覚えることも難しい歌なんです。これをコンサートに入れたのは、たぶん俺で終わっちゃうであろうから記念として残しておきたいと思ったから。俺がいなくなったあとはもう聴くばっかりの歌になっちゃうわけです。歌いたいけど難しくて誰も歌えないから、記録の意味も込めて披露しました。

尺イワナの引きはグネングネン

――前回の「うたびと」のインタビューでは、ゴルフの話をうかがいましたが、他にお好きなのが釣りや山菜採りなど、いずれも自然と向き合う趣味ですね。釣りは渓流釣りですか?

でっかい川に流れ落ちてくる小さな川。会議室によくある長テーブル2つ分くらいの川幅しかないようなところを上流に釣り上がっていくんです。だから渓流釣りというよりも沢釣り。沢を釣り歩いています。魚はほとんどイワナですね。岩手以外の山にも入りますが、時期をみて行かないとクマに会うんでね。魚がたまっている場所で何匹か釣ったら、残った魚は警戒してもう釣れなくなっちゃう。誰かが入った痕跡があるとね、餌に食いつかなくなっちゃうんですよ。難しいです。

――繊細な釣りですね。今年は行きたいですね。

ちょうど釣れる頃がコンサートツアー真っ最中なので、その合間に行けるかどうか……。雪の融け具合によってですね。

――やはりみちのくの出身、春を待つ感じですね。山菜採りに沢釣り。

雪国の人は春が一番待ち遠しいんですよ。釣りする人にとっては、特に尺イワナというでっかい魚がこんな場所にいるの! っていうところにいるんでね。釣りあげた時には、バシャバシャじゃなくて、グネングネングネングネンってきますからね。

――そういうときはお一人ですか。

一人です。もう集中してしまうんでね。だから仲間同士で出かける釣りではないですね。

――東日本大震災から12年。福田さんは今まで復興支援をされてきましたが、現在の被災地への思いを聞かせてください。

コロナ禍で一時できませんでしたが、これまでと同じ復興支援、トラックでめぐる野外での被災地コンサートはやりたいなと思います。野外だったらマスクもそんなに気にせずに済むのかなと思いますし。

演歌、民謡の良さを知る若い人を増やしたい

――今後の抱負を聞かせてください。

一番の願いは、まずはお客様と握手ができる環境に早く戻ってほしいということです。ご高齢の独り暮らしの方が多くなってきていると聞きますので、コンサート会場に来られない方のためにも、テレビやCDで元気な歌を届けていきたいです。また、今年のコンサートツアーでは久しぶりにうかがえる場所もあり、各地でも歌を元気に届けられればなと思います。

――長いスパンで考えた場合の歌手として実現したい夢はありますか。

特別大きな夢はないですが、聴き手の方を増やしたいと思っています。昭和の演歌を聴いて育った人たちがだんだんと少なくなっていきますから、演歌の良さ、民謡の良さを知る若い方を自分の活動を通して少しでも増やしていければなと思います。

――ファンの方たちへのメッセージをお願いします。

常日頃みなさんに歌を聴いていただいていますけれども、今年もまた、1カ所1カ所、1曲1曲をみなさまの心に届くように、響くように努めますので、応援のほどよろしくお願いいたします。

福田こうへい『天空の城』

2023年4月12日(水)発売

品番:KICM-31096
価格:¥1,400

【収録曲】

1.天空の城(作詞:荒木とよひさ/作曲:水森英夫/編曲:南郷達也)
2.雨の影法師(作詞:坂口照幸/作曲:四方章人/編曲:南郷達也)
3.天空の城(オリジナル・カラオケ)
4.天空の城(一般用半音下げ・カラオケ)
5.雨の影法師(オリジナル・カラオケ)
6.雨の影法師(一般用半音下げ・カラオケ)

新歌舞伎座 福田こうへい特別公演2022ダイジェスト

福田こうへい『新歌舞伎座 福田こうへい特別公演2022』

2023年3月22日(水)発売

<Blu-ray>

品番:KIXM-535
価格:¥6,800

<DVD>

品番:KIBM-958
価格:¥5,800

<CD>
※CDには【第一部】望郷 風の流れ旅は収録されません

品番:KICX-1167
価格:¥3,100

【第一部】望郷 風の流れ旅(約87分)

【第二部】福田こうへいコンサート2022(約65分)

北風よ・・・
男の残雪
北の旅人
津軽平野
奥飛騨慕情
はぐれコキリコ
道頓堀人情
相撲甚句
津軽三下り

二輪草
海の匂いのお母さん
涙を抱いた渡り鳥
河内おとこ節
父子鷹
アイヤ子守唄
天竜流し
ふるさと山河
南部蝉しぐれ
一番マグロの謳
北の出世船
みちのく祭り唄
全22曲予定

福田こうへいコンサートツアー2023

2023年3月22日(水)サンシティ越谷市民ホール<埼玉県越谷市> 1回目13:00/2回目17:30
2023年3月25日(土)あきた芸術劇場ミルハス<秋田県秋田市> 14:00 チケット完売
2023年4月1日(土)久慈市文化会館 アンバーホール<岩手県久慈市> 1回目11:30/2回目16:00
2023年4月2日(日)宮古市民文化会館<岩手県宮古市> 13:30
2023年4月8日(土)奥州市文化会館 Zホール<岩手県奥州市> 1回目11:30/2回目16:00
2023年4月9日(日)二戸市民文化会館<岩手県二戸市> 13:00
2023年4月22日(土)岩手県民会館<岩手県盛岡市> 14:00
2023年4月23日(日)岩手県民会館<岩手県盛岡市> 12:00
2023年5月9日(火)長崎ブリックホール<長崎県長崎市> 昼の部13:30/夜の部18:00
2023年5月10日(水)北九州ソレイユホール<福岡県北九州市> 14:00
2023年5月11日(木)福岡市民会館<福岡県福岡市> 昼の部13:30/夜の部18:00
2023年6月23日(金)神奈川県民ホール<神奈川県横浜市> 1回目13:30/2回目18:00
※時間は開演時間

詳しくはこちら:http://fukudakohei.info/tour

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