松原健之、21枚目の“新曲”はデビュー曲の新バージョン『金沢望郷歌2024』 「大変な思いをしている能登の方々にささやかでもエールを送ることができたら」

2024.6.19

今年9月でデビューからちょうど20年目を迎える松原健之が発表した“新曲”が話題だ。自身21枚目のシングルとして選んだのは、『金沢望郷歌2024』(c/w『あなたに逢いたい』)。2005年にデビュー曲としてリリースした松原の原点ともいえる曲だ。「五木寛之先生のお仕事で初めて金沢にお邪魔したのがデビュー前の2001年。その後、『金沢望郷歌』を発売することになって、リリースまでの9か月間は、ミカン箱とこの曲を持って能登中を回りました」と当時を回想する松原に、今再び『金沢望郷歌』を世に出す意味と能登への思いなどを聞いた。


――『金沢望郷歌』は言わずと知れた松原さんのデビュー曲です。なぜ今回、もう一度この曲をリリースしようと思ったのですか。

まだ歌手デビューする前の2001年に、五木寛之先生の原作・脚本で上演された舞台『旅の終りに』に出演することになって、初めて金沢を訪れました。そんな縁もあって五木先生作詞、弦哲也先生作曲の『金沢望郷歌』を歌ってデビューすることになったのが2005年。リリース前の9か月間はミカン箱とこの曲を持って能登中をキャンペーンでまわりましたし、その後も地元のテレビ局にサポートをしていただきました。そんなお世話になった土地の皆さんが、今、地震で大変な思いをしている。何か少しでも寄り添えるようなことができないかと考えた末に、もう一度『金沢望郷歌』を出してはということになりました。

――編曲者に前田俊明さんと鈴木豪さん、おふたりの名前がクレジットされていますが、デビュー曲の時とはアレンジを変えたのですか。

レコード会社のスタッフの皆さんに意見を聞くと、「『金沢望郷歌』はイントロにインパクトがある。あのイントロに皆、馴染んでいるから、新しいアレンジというより原点に戻るという意味も込めて、デビュー曲のままで、そこに今の松原くんの声を乗せてレコーディングしては」と提案していただきました。ただ、レコーディング技術も日進月歩ですから、当時の音源に少し手を加えようということで、19年前の前田俊明先生の編曲を鈴木豪先生がブラッシュアップしてくださって完成しました。

――19年ぶりにレコーディングしてみてどんな感想を持ちましたか。

やっぱり19年もたつと、声が少し太くなったと思いました。自分の中では当時のクリアな声が理想で、それを再現しようという気持ちが強かったのですが、身体も喉も変わっているんですね。ただ、あれから19年間、いろんな経験をしてきましたから、歌により人間味が加わって、厚みが出ていたらいいなと思いながら歌いました。基本的な歌い方は変えていませんが、今の年齢なりの表現の仕方ができたのではないかと思っています。

――先ほど、この曲で能登の皆さんに寄り添えればとおっしゃっていましたが、具体的にはどんな思いを伝えたいと思っていますか。

避難されている方も多いでしょうし、復興もまだまだこれからという中で、この曲を今の声で“新曲”として出せば、それが僕の今年の歌になりますので、いろんな場所で歌う機会も増えるでしょうし、例えば番組の新曲コーナーでも取り上げてくださるかもしれません。そういった一つひとつのことが能登で聴いてくださる皆さんへのささやかなエールになればいいと思っています。弦先生に相談した時、もし歌い直すのなら、能登地震の記憶をなくさないように“2024”を付けたらというアイデアもいただいて出来た『金沢望郷歌2024』という新曲で、今度は僕が恩返する番だと思っています。

――デビュー盤には合唱バージョンも収録されていましたが、今回も子どもたちや若い人にも歌ってもらえるといいですね。

この間、加賀にキャンペーンで行った帰り、新幹線のホームで若い方に話しかけられて、『金沢望郷歌』のことをお話したら、今度聴いてみますとおっしゃってくださったのですが、20年も前の曲ですから、地元の方でも知らない世代が増えているんだと思いました。今回もう一度リリースすることで、子どもたちや今を頑張っている人たちにもこういう歌があるんだということを知っていただいて、心の応援歌のようにしていただけたら嬉しい。自分の気持ちの深いところで、そんなことをテーマとして持ちながら歌っています。

――では、そんな若い皆さんがカラオケで歌う時に、どうしたら上手く歌えるか、アドバイスしていただけますか。

サビの部分は3コーラスハーフともに同じ歌詞ですので、もし金沢で生まれた方はもちろん金沢を思って、それ以外の方はご両親のことや子どもの頃の思い出を心の中に抱きながら気持ちよく自分の故郷と重ね合わせて歌っていただければと思います。「わがふるさとは金沢」のところで地名を自分の出身地に変えて歌ってもいいと思いますし、そういう意味ではテクニック云々よりも気持ちで歌う曲だと思います。

――ミュージックビデオも楽しみです。どんな映像作品になったか教えてください。

デビューの時にオール金沢ロケで撮影したミュージックビデオの映像をスクリーンに映して、それを眺めながら当時を回想しているというストーリー仕立てになりました。19年前の映像と一緒に歌っているシーンもあるなど、監督さんがいろいろと考えて作ってくださって見ごたえのあるものになったと思います。その映像を収めたDVD付のCDも同時に発売になります。

――カップリングの『あなたに逢いたい』ですが、この曲は書き下ろしですか。

この曲は1981年に八代亜紀さんが出された曲で、実は五木寛之先生と弦哲也先生が初めてタッグを組まれた曲でもあるんです。ただ、八代さんの数あるヒット曲の中では地味な存在で、全曲集などを見てもほとんど入っていない。映像を探しても、晩年に弦先生のギターでワンコーラス歌った時の映像くらいしか出てこない曲です。今回『金沢望郷歌』が五木先生、弦先生の曲ということもあり、両先生の曲を歌い継ぎたいという思いも込めて、カップリングでは『あなたに逢いたい』を歌いたいと僕から提案して実現しました。

――松原さんは八代さんが歌われたこの曲をご存じだったのですね。

もちろん知っていましたし、レコードも持っています。実は以前、歌番組で八代さんとこの曲を歌う機会があったのですが、打ち合わせの段階で予定が変更になり、実現しませんでした。いつかぜひ一緒に歌わせていただきたいと思っていたのですが、それが叶わないうちにお亡くなりになってしまって。なので、八代さんへの追悼という意味も込めさせていただきました。

――9月から10月にかけては「松原健之コンサートツアー2024」が行われます。今回は神戸、東京、金沢の3か所ですが、コンサートの構成や選曲は進んでいますか。

今、ちょうど音楽監督の塩入俊哉さんと、構成を考えているところです。ピアノの塩入さん、バイオリンの徳永希和子さんを交えてのステージは前回同様ですが、去年とはまた違った聴かせ方、見せ方ができればと思っています。松原健之らしく、そして初めて来てくださった方も楽しんでいただけるような内容になればいいなと思っています。

――コンサートの他にもライブをたくさんされていますね。

もう少しカジュアルに僕の歌を聴いていただこうという趣旨で、「松原健之トーク&ライブ2024」というライブをやっています。場所もなるべくコンサートで行ったことのない土地を回って、ライブハウスのようなコンパクトな会場でギターの弾き語りとトークを楽しんでいただいています。僕、コンサートなんかでもけっこうベラベラとしゃべることがあって、「ちょっとトークが長いよ」なんてファンから叱られることがあるのですが、それを逆手にとって「トーク&ライブ」にしてしまえば、しゃべり過ぎても叱られないなっていうことでやっています(笑)。

――コンサートやライブで直接、お客さんと触れ合うのは楽しいのではないですか。

ライブは生ものですからやってみないと分からないという怖さはあるのですが、それでもお客さんと一緒にライブ空間を作る、そしてお客さんの体温を感じる楽しさは、ライブならではのものがあります。以前、歌いながら会場の後ろの方までいってお客さんと握手した時、それをすごく喜んでくださった方がいて、こういうことでも嬉しいと感じてくださるんだなぁと思ったことがありました。テレビでしか見ることができない、東京まで応援に行けないという方もいらっしゃいますので、大きな都市だけじゃなく、なるべく全国津々浦々まで回りたいですね。

――松原さんは、『松原健之 歌をあなたに』(STVラジオ)、『松原健之こころの旅』(ラジオ関西)、『松原健之とBitter & Sweetの音茶メロらじお♪』(全国9ネット)とラジオ番組を持っていらっしゃいますが、トークがお得意ですし、やっていて楽しいのではないですか。

いや、決して得意なわけじゃなくて、ただ取り留めもなく話しているだけです。ラジオでも話を振られた時にすぐに返せなかったり、いただいたメールやはがきに通り一遍のコメントしかできなかったりで、もっと内容のある話をしなくてはいけないと今、反省しているところです。

――ところで、これまでの松原さんのプロフィールを見ると、趣味は温泉めぐりや卓球を上げていますが、今ハマっていることといえば何ですか。

卓球くらいですね。中学、高校で卓球をやっていたものですから。少し前、山口ひろみさんに誘われて、伍代夏子さんの美魔女演歌卓球部という卓球同好会の練習に参加したことがありました。他に石原詢子さんや大石まどかさん、多岐川舞子さんなんかが集まっていて、確かに1~2時間は卓球するんですけど、あの同好会は、その後の打ち上げの方が長いんです(笑)。その日は僕と山口さんがゲストでしたから、いっぱい接待していただきました。

――楽しそうな同好会ですね。

その後も何回か誘っていただいて、前回は千昌夫さんがゲストでした。千さん、なんと60年ぶりに卓球をやったとおっしゃっていましたが、シェイクハンドでお上手でしたよ。お話をうかがうと、「昔はみんなペンホルダーだったけど、俺は人と違うことやるのが好きだったし、目立ちたいからシェイクハンドでやっていた」とおっしゃっていました(笑)。

――じゃあ、卓球は今も時々やられているんですね。

そうですね、伍代さんたちに誘われるようになったこともあるので、練習するようになりました。この間も久々に時間ができたので、プロの選手に1時間くらいみっちり相手をしていただきました。

――では、もし1週間丸々休むことができたら何をしますか。

行けるならどこか海外に行って、ボケっとするとか、日本だったらやっぱり温泉にいくとかでしょうか。海外は、アメリカは高校時代にホームステイで行っただけでよく知らないので、今ならヨーロッパがいいですね。ウィーンのような音楽の都を巡ることに憧れがあります。でも、1週間休みがあったら、本当は能登に駆けつけなければいけないと思っています。人より体力があるわけじゃないので、足手まといになってはいけませんが。

――今後の目標をお聞きします。来年はデビュー20周年の記念年ですが、そこに向けて何か計画していることはありますか。

今年はツアーも3か所だけですので、来年はもう少しいろいろな場所に行けるようにしたいです。そのためにも、今年1年は『金沢望郷歌』をしっかり歌って、20周年記念曲につなげられればと思っています。今、日本音楽著作家連合というところで、僕が歌う歌の歌詞を募集する「新作歌謡作品コンクール」というものをやっていまして、そこで選ばれた曲が20周年記念曲になります。皆さんに楽しんでいただけるような曲ができることを期待しています。

――松原さんはこれまでに21枚のCDをリリースされて、その中には歌謡曲あり、演歌あり、フォークソングありと、いろんなタイプの曲を歌ってこられました。20周年を越えて、そこから先はどんな歌を歌っていきたいと考えていますか。

自分の中で歌いやすい曲、得意な分野の曲というのはありますが、でもそれが必ずしもお客さまが求めているものとは限りませんし、あまり明確には考えていません。ただ、松原健之らしい歌と考えると、ドロドロした愛の歌より親子愛であったり師弟愛であったりというような歌の方が合っているかなとは思います。マラソンの伴奏者ではありませんが、僕の歌は頑張っている人、辛い思いをしている人に寄り添って、一緒に走っていく歌でありたいし、そういう歌い手であり続けたいと思います。そしていつの日にか、(美空)ひばりさんの『川の流れのように』のような、人生を歌った曲を歌える歌手になれればいいですね。

――奇跡のクリスタルボイスと言われた松原さんの声は、今でも聴く人の気持ちを癒してくれていると思います。

デビュー前は歌手としてもっと個性が必要だ、声を潰してきなさいなんて言われたこともありましたが、結果的には、あまり色がついていないこの声質がかえってよかったのかもしれません。いろんな先生方が描かれる歌の世界を、変に脚色することなく聴いてくださる方に手渡すことができるという意味では、これで間違いではなかったのかなとは思っています。

――では最後に新曲、『金沢望郷歌2024』を改めてファンの方にPRしてください。

ファンの皆さんにはご存じの歌になりますが、今の僕の声でレコーディングした新作を、デビュー当時の声と聞き比べて楽しんでいただくのもいいと思います。また初めて聴く方は地震で大変な思いをしている能登の方に思いを馳せて聴いていただければ嬉しいです。五木先生の言葉をお借りすれば“旅情歌”であり、また抒情歌でもあるこの歌を歌いながら、「能登の皆さん、頑張っていますよ、ぜひ力を貸してください」という気持ちを多くの方に伝えられればと思います。小さな力かもしれませんが能登の復興に繋がってほしいと願いながら歌っていきますので、皆様どうぞ、よろしくお願いいたします。

松原健之『金沢望郷歌 2024』

2024年6月19日(水)発売

CD

定価:¥1,500(税抜¥1,364)
品番:TECA-24022

【収録曲】

1.金沢望郷歌 2024 (作詞:五木寛之 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:前田俊明・鈴木 豪)
2.あなたに逢いたい (作詞:五木寛之 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:鈴木 豪)
3.金沢望郷歌 2024 (オリジナル・カラオケ)
4.あなたに逢いたい (オリジナル・カラオケ)

CD+DVD

定価:¥1,700(税抜¥1,545)
品番:TECA-24023

【CD収録曲】

1.金沢望郷歌 2024 (作詞:五木寛之 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:前田俊明・鈴木 豪)
2.あなたに逢いたい (作詞:五木寛之 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:鈴木 豪)
3.金沢望郷歌 2024 (オリジナル・カラオケ)
4.あなたに逢いたい (オリジナル・カラオケ)

【DVD収録内容】

「金沢望郷歌 2024」ミュージックビデオ
特典映像 メイキング・インタビュー

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