杜このみが女心の切なさにあふれる新曲『夕霧港』をリリース! 「これまでにないオンリーワンの演歌になりました」

少女時代から民謡歌手として名を馳せ、細川一門の筆頭弟子として培ってきた確かな歌声で、聴く者を魅了し続けている杜このみ。7月17日リリースの新曲『夕霧港』(作詞:円香乃、作曲:岡千秋、編曲:南郷達也)は、男性との別れを決意した切ない女心を夕霧に包まれた港の情景に重ね合わせて歌う、詩情あふれた作品。大相撲・髙安関との結婚、2度の出産を経て、歌手活動に本格復帰してからおよそ1年。ロングヒットを記録している前作『葦風峠』に続き、あえて民謡色を打ち出さず、大人の女性の心情をしっとりと歌いあげる『夕霧港』に込めた思い、演歌をピアノ弾き語りで歌うという新たなライブへの挑戦について、また、アスリートの妻として、そして子育てに奮闘するママとしてのプライベートライフまでを聞いた。
女心を切々と綴るような昔ながらの演歌に挑戦
――(誕生日7月2日の2日後に取材)一昨日はお誕生日でしたね。おめでとうございます。ご家族でお祝いされたのでしょうか。
ありがとうございます! 今年は娘と息子が「ハッピーバースデー、マァ~マァ~♪」と歌ってくれて、すごくうれしかったですね。
――もうしっかり歌えるのですね。もしかしたら杜さんの歌も一緒に歌ったりするのでしょうか。
私の歌も歌いますよ。2人とも歌うのが大好きですね。歌が私のお仕事だということも最近ようやくわかってくれたみたいです。仕事復帰する前は、世の中のお仕事=お相撲さんだと思っていたみたいで。「ママもちょっとは仕事をするんだよ~」って言ったら、「ママもお相撲さんなんだね!」って言われて(笑)。
――早速新曲のお話ですが、『夕霧岬』はどのような作品なのでしょう。
北海道・白老町の虎杖浜(こじょうはま)を舞台とした作品で、人生をもう一度やり直そうとやってきた主人公の切ない女心を歌っています。最初に曲をいただいたときに、美しいメロディーからも詞の世界観からも主人公の気持ちがグッと伝わってきて、この切なさを一曲の中で表現できることに感動しました。
――杜さんご自身とは対極ともいえるような女性が主人公ですが、本格復帰作となった前作『葦風峠』以降、岡先生、円先生のコンビによる女性の心の機微をていねいにすくい取るような作品を発表されていますね。
前作の『葦風峠』から主人公の胸の内の苦しさといった心情を歌で表現することに挑戦させてもらっています。平成~令和と演歌も華やかな作品づくり、大胆な変化をつけた作品づくりをする新曲が増えてきましたが、復帰にあたり、派手な作品とは反対の方向ともいえる、女心を切々と綴るような昔ながらの演歌に挑戦しよう、そういう歌い手がいてもいいじゃないかと、先生方、スタッフの皆さんと作り上げたのが『葦風峠』でした。実際、演歌ファンの皆さんからも「こういう曲を歌いたかったのよ」というお声も数多くいただき、本当にうれしいです。『夕霧港』も主人公の気持ちになりきっていただけるような作品になっていると思います。
――詞も曲もシンプルですが、味わいがありますね。
派手なフレーズはないのですが、歌ってみるとシンプルだからこその難しさもあり、表現力が問われる作品です。新人の頃にはなかなか挑戦させてもらえない作品だと思います。子どもの頃から民謡の練習を重ねてきたので、新人時代は自信に満ちあふれ、それが力強さとなって歌にも表れていたと思います。当時の自分の歌を聴くと、今の私にはできない20代ならではの勢いや表現力を感じられ、素直にかっこいいなと思います。新人の頃、(細川たかし)師匠に演歌は40代になってからが本番だとずっと言われていたのですが、当時はその意味がよくわかりませんでした。でも、今は師匠のおっしゃっていたことが少しだけわかる気がします。20代には20代にしか歌えない歌があったのだと思いますし、そこから人生で経験を積んだ現在、30代になった杜このみの歌の世界をちょっとずつ自分の中で見つけ、広げている感じがしています。
キャンペーンでのファンの雰囲気が変わった
――約1年ぶりの新曲『夕霧港』が完成し、ファンの皆さんの反響はいかがでしょう。
『葦風峠』、そして今回の『夕霧港』と、キャンペーンのお客様の雰囲気がそれまでとはまったく違うものになりました。20代の頃は、ファンの皆さんとワーッと一緒に盛り上がって、笑顔、笑顔という感じだったのですが、今はステージで披露する1曲1曲を皆さんが目をつむりながらしんみり聴いてくださる印象です。今さらながらやっと気づいたのですが、皆さんが「歌」を聴きにきてくださっていることを実感しています。若い頃は会場が盛り上がっていないと感じると、あとでショボンとしていたんですけど、今は皆さんが歌の世界に入り込んでいる姿を見て、私もやっと演歌歌手らしくなれたのかなと思います。
――とてもいいタイミングで、いい曲にめぐり逢っているのですね。サビの最初にくる「オーエヤサー」が印象的です。
「オーエヤサー」は、白老の潮風や土地に暮らす人々の生活の匂いを感じられるフレーズです。歌唱するうえでもポイントとなります。曲全体としては美しいメロディーラインなのですが、ここを力強く表現することで、曲全体の切なさがより際立ってきます。実はここも最初は優しく歌う予定だったのですが、レコーディング当日に岡先生がここだけを勇壮な歌唱に変えようとおっしゃって、急遽歌い方を変えたんです。実際に歌ってみると、とても耳に残り、作品全体を色づけるようなフレーズになりました。美しい演歌はたくさんありますが、その土地で労働し、生活する人たちの苦しさまでもが落とし込まれ、これまでにないオンリーワンの演歌になったと思っています。また、主人公が見ず知らずの土地でそれまでの人生を消し去ろうとしてまで生きていこうとする強さやきれいな部分だけではない人間らしさなどを、一瞬で霧に包まれるという虎杖浜の情景と重ねる円先生の創作力もほんとうにすごいですし、それをメロディーで表現される岡先生もすごいと感じました。
――実際にレコーディングしてみて何か感じられたことはありますか?
産休・育休を経て、コロナ禍もあり、歌う現場から遠のいていた時期がありましたので、自分の作品を新曲として作らせてもらうことのありがたさを改めてかみしめています。それを感じられたことが、自分の今後の歌手生活にとって財産になると思っています。自分の歌声で表現できることへの感謝の念が強まりました。また、歌手活動をお休みしている間に、自分自身の音楽の感性について見つめ直す時間があったことも大きく、今は歌うことがとても楽しくて、うれしいですね。
――『葦風峠』の動画再生数も85万回を突破しているそうですが、『夕霧港』のミュージックビデオは、どのような映像に仕上がるのでしょう。
港が舞台の歌ですが、実は海はまったく出てこないんです。大きな洋館の室内で撮影し、幻想的な作品になりました。霧を使った演出がめちゃくちゃかっこいいので、ぜひご注目ください。
――『夕霧港』を細川たかし師匠や髙安関はもうお聴きになったのでしょうか。
師匠はシンプルに「いい曲だね」とおっしゃってくださいました。師匠がお好きな感じの曲を考えると、「どうかな?」と思ったのですが、「うん、いいね」とおっしゃったので、安心しました。髙安からも「ほんとうにいい曲。『オーエヤサー』が耳に残るね」と言ってもらえ、最近はいつもこの曲を口ずさんでいます。娘も「オーエヤサー」って言っています。高安も歌うことが大好きなので。演歌・歌謡曲好きで、演歌の番組もよく見ています。
ピアノ弾き語りで演歌を歌う新たな試み
――カップリングの『明日を信じて』(作詞:円香乃、作曲:岡千秋、編曲:南郷達也)は、全編ポジティブで、人生の応援歌と感じました。今年は年初から能登半島地震も起き、豪雨災害などの相次ぐ自然災害、物価高などでも苦しまれている方々が多いです。このような状況だから、あえてこの曲をリリースされたのでしょうか。
北陸にはお世話になっている方々が大勢いらっしゃいます。無理に励ましたり、声高に「頑張ろう!」と言ったりするのではなく、皆さんの背中をそっと押すような、ちょっと前向きになり、ともに歩むことができるような、強すぎることのない応援歌を歌いたいとスタッフにお願いして作っていただいた作品です。
――杜さんの声も軽やかで、聴いていると気持ちが軽くなるような印象を受けました。
声質はもともと明るいほうですが、自分の幅を広げるためにも、このような人生の応援歌も歌ってみたいと思いました。演歌歌手として活動しているからには、今後も皆さんの背中を押せるような歌い手でありたいと思います。
――昨年デビュー10周年を迎えて、この1年間、初のクリスマスコンサートやライブハウスでのライブなどを行われました。9月にはCOTTON CLUBで美貴じゅん子さんとのスペシャルライブも予定されています。ピアノの弾き語りで演歌を歌うという斬新なスタイルも話題ですが、新たな試みをすることには、どのような思いがあるのでしょう。
大きな会場でのコンサートではなく、もっと気軽にお客様に近い距離で歌を聴いていただける機会を作っていきたいとお話をさせていただいたことから始まりました。場を広げることで、演歌ファンの方以外の音楽好きの方にも「演歌もいいな」と思っていただけるようなライブがしたいという思いがあります。私自身変わったことをしているつもりはないのですが、ピアノの弾き語りをするようになって、それを皆さんすごく新鮮に感じてくださっているようで。ピアノは民謡を習ううえで、音感をつけたくて、小学3年から高校3年まで続けていました。今から新たなことを始めて中途半端になるよりは、今までやってきたことと向き合って、きちんとまとめあげてお届けすることで、ほかのジャンルにはない演歌の素晴らしい魅力を発信していきたいと考えています。
歌手としての刺激を受ける細川一門コンサート
――9月には細川一門のコンサートも地元・札幌で開催されます。ソロでのステージとは異なる楽しさなどがありそうですが。
楽しさというよりは、自分にとってすごく刺激になります。なんといっても師匠の歌声を間近で聴かせていただき、これから自分がどのような歌い手を目指していけばいいかを再確認しています。歌の力を極めていくことしかないと感じるのは、やはり師匠と一緒の現場です。細川一門はそれぞれが個性的で、みんなで寄り添ってやっていこうというよりは、ステージで自分の実力を磨いていこうという集団になりつつあります。彩青君は、三味線もやる、尺八もやる。天才だと思いますし、先輩後輩関係なくかっこいいなと思います。田中あいみちゃんが自信をもって歌う姿に、20代にしか出せないパワーと魅力を感じ、若い頃の自分を思い出すこともあります。2人の後輩を引っ張っていけるような、演歌歌手として確立した存在を自分自身の中で見つけていけるように頑張りたいといつも思います。ただ、師匠の熱唄には、弟子の誰もがまだまだかないません。
――SNSを中心にその師匠の私服姿がバズっています。
すごく話題になっていますが、そこに注目がいきすぎてしまうのが個人的には嫌だなと最初は思っていまして。もっと師匠の素晴らしすぎる歌声に皆さん注目してもらいたいと。私は17歳のときに初めて師匠とお会いしていますので、そこから日々、師匠とお会いするたびに私服を見ていましたから。そのような話を家でしていたら、高安が「細川たかしさんが、歌が上手いことは、みんな言わなくてもわかっているから。それよりもキャラが面白いっていうことで、音楽もまた聴いてもらえるんじゃない」と客観的に言うので、「なるほどね」となったんです。
――彩青さんをはじめ、二見颯一さん、小山雄大さんら、後輩の民謡出身の歌手の活躍をどうご覧になっていますか?
めちゃくちゃうれしいですね。民謡歌手があまり注目されない時代もあったので、彼らが活躍することで民謡の魅力に気づいてもらえるきっかけにもなると思います。私自身、振り返って民謡を見つめ直すと、8、9歳の頃に教わった民謡がすごいいい曲だったことに気づかされることがあります。演歌、民謡に限らず、いい歌の再発見があるんですよね。原点に返って民謡の美しい魅力を伝えていくことも今後の活動に考えています。
相撲好きの長男は大の里推し!?
――プロの演歌歌手、トップアスリートの妻、2児の母の三刀流は、まさに想像を絶する大変さだと思うのですが、切り替えはどうされているのでしょう?
お仕事をしていることが自分らしくいられるときでもありつつ、やっぱり家に帰って子どもたちと過ごす時間も自分にとっては必要な大切な時間です。大変ですが、充実しているからすべてうまくいっているのかなと最近思っています。いい意味で自分の時間を作ろうという気持ちが今はないんです。
――お子さんを相撲巡業に連れて行きたいということですが、相撲部屋にもよく行かれるのですか?
部屋にも行きますし、本当に小さい頃からお相撲さんと触れ合う生活をしているので、お相撲さんが家にいるのが普通なんです。下の子はまだ1歳半ですが、夫以外のお相撲さんの名前も覚えていて、ほんとうに1歳半かしらって思うくらい。保育園から帰ってきて、「パパと大の里の取り組み見せて!」とか言ったりするのでびっくりします。パパの次に好きなお相撲さんが大の里関なんです。
――最後に「うたびと」読者へメッセージを。
デビュー11年目に入りましたが、師匠のように日本中を明るくするような、また、聴いてくださる皆さんの心に寄り添えるそんな歌が歌える演歌歌手を目指して頑張ります。今後も応援をお願いいたします。
杜このみ『夕霧港』ミュージックビデオ
杜このみ『夕霧港』
2024年7月17日発売
シングルCD
品番:TECA-24038
価格:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【商品内容】
1. 夕霧港 (作詞:円 香乃 作曲:岡 千秋 編曲:南郷達也)
2. 明日を信じて (作詞:円 香乃 作曲:岡 千秋 編曲:南郷達也)
3. 夕霧港 (オリジナル・カラオケ)
4. 夕霧港 (メロ入りカラオケ)
5. 明日を信じて (オリジナル・カラオケ)
DVD付シングル
品番:TECA-24038
価格:¥1,650(税抜価格 ¥1,500)
【商品内容】
CD:シングルと同様
DVD:夕霧港 ミュージックビデオ
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