「YOUは何しに日本へ?」で話題沸騰! 昭和歌謡を愛するアメリカ人DJ

2019.8.22

2011年から毎月渋谷のリズムカフェで開催されている人気イベント「昭和歌謡ナイト」。
キャンディーズ、青江三奈、ピンクレディー、チェッカーズ…など40代以上の音楽好きにドストライクな選曲ながら、リアルタイムでは昭和歌謡を知るはずもない若者や外国人も音楽に合わせて体を揺らし、サビ部分ではフロア全体での大合唱となることも。そんな大人気イベントをプロデュースしているのは、なんとアメリカ人のDJ Dandy(ジャスティン)だ。
「YOUは何しに日本へ?(テレビ東京)」の出演でも話題となった彼に、なぜ今“昭和歌謡”なのか、そしてその魅力について語ってもらった。

■昭和歌謡は日本音楽と感情、西洋的な要素の融合

―――日本で暮らし始めて11年ということですが、そもそもどんなきっかけで“昭和歌謡”と出会ったのですか?
「もともとオールディーズが好きなんです。50-60年代や、60-70年代にかけてのアメリカやイギリスなど、世界の音楽が好きで、ずっとレコードを集めていました。それで、初めて日本に来たときに、名古屋のリサイクルショップでレコード漁りをしていたら、黛ジュンさんの『ブラック・ルーム』と出会ったんです。ジャケットが本当にかっこよくて、9インチのレコードでとても素晴らしかったです。」

―――黛ジュンさんのレコードに会う前にも日本の歌は聴いたことがあったんですか?
「ピチカート5や渋谷系の音楽だけは聴いたことはありました。また、アメリカでも人気のあった坂本九さんの『SUKIYAKI(上を向いて歩こう)』は知っていました。私が思うに世界で最も有名な昭和歌謡です。ただ、日本に移り住む前までは、それ以外はあまり知りませんでした。」

―――そんなジャスティンさんの選曲は、日本人にとっては所謂“テッパン”と言われる盛り上がり必至の曲ですが、なぜ往年のヒット曲を知っているのでしょう?
「最初から人気がある曲を選んでレコード収集しているわけではありません。昭和歌謡ナイトで曲をかけてみて、そこでお客さんが盛り上がっているのを見て、人気曲かどうかがわかります。いつもまずレコードを聴いてみて、自分が好きになった曲をかけています。人気アーティストの誰もが知っている曲をかけることもありますが、おそらく人々に知られていないと思われるB面をよくかけたりしています。私自身は昭和歌謡にノスタルジックな思いがあるわけではなく、ただ昭和歌謡好きで、好きな音楽をかけているだけです。“昭和歌謡”は私にとっては、全く新しい音楽です。」

―――レコードを選ぶときはいつもジャケ買いですか?
「そうですね。ファンキーでクールなジャケットで、たいていそれが安い場合には買います。
それから、ジャケットの裏を見て、年代と歌詞をチェックします。たとえば、ディスコアイドルのようなものでは、“ダンス・ダンス・フーヤー!”みたいな歌詞があったら、きっと盛り上がる曲だろうなと思って、買ってしまいますね。
日本に11年いるので顔が分かる歌手も少しずつ増えてきましたし、ほかのDJが持っていて顔を覚えている歌手のレコードを見つけて買うこともありますよ。」

―――いつもどういったところでレコードを掘り出してくるのですか?
「フリーマーケットやリサイクルショップで買うのが好きです。ほかには『ココナッツディスク』や、学芸大学に住んでいたときは『サテライト』というレコード店によく行っていました。いつも店の前に50円の 9インチレコードが出ていたので、そこで色々発掘していました。」

―――“昭和歌謡”の魅力はどんなところなのでしょうか?
「日本の昭和という時代はとても刺激的だったと思います。昭和歌謡は、日本の音楽と感情のミックスであり、西洋的な要素も盛り込まれています。
私が持っている中で一番古いレコードは50年代のもので、当時はラテン系の影響が大きかった。日本の感性とラテン音楽を混ぜたようなもので、新しいものが作られたようです。ラテンだけでもなく、日本だけでもない、その2つのミックスが、ユニークな音になります。
グループサウンズについても、すべての種類の西洋のガレージ音楽のようなものであるといえます。そのうえで、祭りの歌と日本の楽器を大切にしたいと、バニーズなどが三味線を取り入れたりしていたが、それは本当にワイルドな音楽でした。」

■音楽を通して“昭和”という希望に満ちた時代の気持ちに

―――では、一番好きな歌謡曲をあげるとしたら?
「ここに自分のレコードがない中で、好きな歌謡曲を言うのは非常に難しいですが、初めて買った黛ジュンの『ブラック・ルーム』は好きです。それから、山本リンダさん、平山みきさん、宇崎竜童さんはソロでもダウンタウン・ブギウギ・バンドも大好きです。この3人には昭和歌謡ナイトの拡大版イベント『昭和歌謡ナイト 大盛り』にも出演してもらいました。本当に大好きなアーティストだったので、自分のイベントで演奏してもらえて信じられないほどでした!
宇崎さんはファンタスティックでとてもクール、とてもいい人でした。
一緒にたくさんの写真を撮りました。昭和歌謡ナイト(@showakayonight)のInstagramページにいったら、写真を見ることができますよ。」

―――毎月定例のイベントが大成長して、これまでに3度の「大盛りイベント」を実現させているのですよね。大好きなアーティストと共演できるなんて夢のような出来事ですね。
「はい、小さなイベントから始めたことが実を結びました。11月に昭和歌謡ナイトは8周年を迎えます。最初の数年間は、時間の経過とともに変化していくようなものでしたが、月に一度開催される楽しいイベントになったように感じます。
昭和歌謡ナイトのいいところは、人が混ざり合っていることです。年配の人、若い人、日本人、外国人など様々な人が来てくれます。子供の頃からのお気に入りの曲を聴いている人もいれば、新しい音楽として初めて聴いている人もいます。昭和歌謡ナイトでは、みんなお酒を飲み、踊って、見知らぬ人同士でも自然とコミュニケーションできる。そういったパーティーの雰囲気を作り出せて嬉しいです。」

―――今後はどんな活動をしていきたいですか?
「昭和歌謡ナイトの全国ツアーをやりたいです。私はさまざまな都市にいる同じ昭和歌謡のDJを知っているので、その土地のローカルDJと一緒にツアーで回れれば面白いなと。
ほかには、熱海で週末旅行者向けのイベントをやりたいです。熱海はとても昭和にぴったりの場所で、古いホテルがあり、DJやバンドもたくさんいます。
まだ話せない秘密の計画もいくつか頭の中にあります。私は昭和の音楽をDJするのが大好きで、そのお客さんの反応を見ることがアイデアの元になります。」

―――「昭和歌謡ナイト」はもちろん、色々な仕掛けでもっと“昭和歌謡”好きの人たちが増えるといいですね。
「今の時代は、政治的な問題や気候変動、海洋のプラスチック問題など、私たちを取り巻く環境は、困難で不確実な状況にあります。でも、昭和という時代は、もっと希望に満ちていて、物事が上向いていたように思えるんです。だから、踊ったり、音楽を聴いている間だけでも、その気持ちを思い出すことで、少なくとも平和で落ち着いた気分になれると思うのです。」