松前ひろ子の新曲『片恋文/ひろ子抄』は愛弟子・三山ひろしの初プロデュース作! 「コンサートではいろいろな思いがこみ上げ、涙なしには歌えませんでした」
歌手として、そして芸能事務所の社長として長年演歌界を支えてきた松前ひろ子。デビュー55周年を終え、新たなステージへと向かう最新曲は、一番弟子の三山ひろしが中村心一というペンネームで作詩・作曲を手掛けた両A面シングル『片恋文/ひろ子抄』。師匠と弟子の固い絆から生まれた2曲の制作秘話を聞いた。

サプライズだった歌のプレゼント
――両A面シングル『片恋文』(編曲:佐藤和豊)と『ひろ子抄』(編曲:伊戸のりお)が4月22日に発売されます。三山ひろしさんが中村心一というペンネームでプロデュースされることになった経緯を教えてください。
三山が歌を作っていること自体、私はまったく知りませんでした。作詩も作曲も、いつどこでどのように身につけたのかも分からなかったんです。実は私の亡き夫・中村典正の運転手を三山が務めていた頃、夫はしばしば車の後部座席から「いつか必ず歌を書けるようになりなさい。日頃から勉強していれば書けるようになるから」と声をかけていたんです。でも三山は「まだ自分の歌も満足に歌えないのに、歌を書くなんて考えられません」と答えていました。そんな三山が昨年、私のデビュー55周年記念コンサートの1ヵ月ほど前に「先生のコンサートで歌ってほしい」と言って、ピアノ伴奏にのせて歌った『片恋文』のデモ音源を私の携帯に送ってきたんです。
――デモ音源を受け取ったときはどんな気持ちに?
「いったいこの歌はどういうことなの?」「いつ歌を作ろうと思ったの?」「いつの間にペンネームを決めていたの?」「そもそも中村心一という名前の由来は?」と、三山を質問攻めにしてしまいました。それに対して三山は、「デビュー55周年という節目をお祝いするにあたり、先生への思いを言葉ではなく、作品として残したかったんです。これは先生のことを書いた歌です。ずっと先生の背中を見てきたので、その姿をそのまま歌にしました」と言ってくれました。
ペンネームの「中村」は、師匠である中村典正の名前を継ぎたいという思いから。「心一」は“心は一つ”という意味を込めたそうです。そんな彼の言葉を聞いて本当に感激しました。『片恋文』は三山ひろしだからこそ書けた歌だと思います。以前から豊かな感性を持っている人だとは感じていましたが、感性だけでは歌は書けません。しかも3番までしっかり作ってあって、レコード会社のディレクターも感心していました。努力なしには書けない歌だと思いますね。アレンジにもとことんこだわってくれました。

亡き夫に語りかけるような気持ちで収録
――55周年記念コンサートで初めて『片恋文』を歌ったときの思いをお聞かせください。
舞台では泣かないで歌おうと思っていたんです。でも、私の後ろのスクリーンに歌詞が流れると、お客様がそれを見ながらしみじみ聴いてくださっているんですよね。その表情を見ていたら、いろいろな思いが込み上げてきて……。涙なしには歌えませんでしたね。
――レコーディングのときのエピソードを教えてください。
この歌は泣きながら歌う曲ではありません。ですからレコーディングでは、「パパ、私は元気よ。幸せよ」と亡き夫に語りかけるような気持ちで、笑顔で歌うことを心がけました。レコーディングには三山も立ち会ってくれて、「先生、いいですよ」と声をかけてくれました。私も「中村心一先生、大丈夫でしょうか?」と冗談で返したりして(笑)。とても和やかな雰囲気で録音できましたね。
――カップリング曲『ひろ子抄』も三山さんの作詞・作曲ですね。
CDはカップリングがないと成立しませんから、「もう1曲書いてほしい」と三山にお願いしたんです。そうしたら「はい、わかりました」と即答でした。後日できあがったのが『ひろ子抄』。女性のたくましさや優しさを描いた歌で、私の波瀾万丈の歌手人生と私の母の人生を重ね合わせたような詩になっていました。しかも私の名前を冠したタイトルでしょう。とても驚きましたし、忙しい中で2曲も作ってくれたことに感無量でした。

優しい心の持ち主だから書ける歌
――改めて三山ひろしさんはどんな方ですか?
表も裏もない、純粋でまっすぐな人ですね。三山が私たちの経営する青山のライブレストランを訪ねてきたことがきっかけで、事務所に入ってもう19年になりますが、最初に会ったときの印象は今も変わりません。入社するときに三山が「本来なら親が手土産を持ってお願いに来るところですが、私は片親で家も貧しく何も持参できませんでした。その分、僕が懸命に働きます」と言ったんです。その言葉を聞いて、彼をできる限り支えたいと思いました。
今はスターになった三山ですが、私のことを変わらず気遣ってくれます。車に乗るときも私がしっかりと座るまで見届け、降りるときは手を取ってくれるんです。「もう一人前の歌手になったんだからいいわよ」と言っても、「先生、これは当たり前のことです」と言ってくれる。そういう優しい心の持ち主だから、素晴らしい歌が書けたのだと思います。
――社長を務めるミイガンプロダクションに所属する若手歌手の皆さんのお話もお聞かせください。
ミイガンは「美一丸」と書きます。美しく一つになって前に進むという意味を込めました。最高のチームワークで、みんなで楽しく頑張っています。若手の小山雄大や平山花羽には「三山くんを見習って頑張りなさい」とはっぱをかけています。三山は責任の重い長男坊ですが、後輩たちの素晴らしい見本になっていますね。
――恒例のカラオケ大会についても教えてください。
今年の8~10月の3ヵ月にわたって、『片恋文』と『ひろ子抄』を課題曲にした大会を行います。『片恋文』は詩をしっかり読んで、天国にいる大切な人に届けるような気持ちで歌っていただきたいですね。ただ、優しく歌うだけでは詩が流れてしまうので、メリハリを意識するのがポイントです。『ひろ子抄』は音域が広く難しいですが、自信のある方はぜひダイナミックに明るく歌ってください。

演歌は歌い手の心がにじみ出るもの
――昨年デビュー55周年を迎えました。これからの目標をお聞かせください。
実は45周年のとき、歌手人生を終えようと考えていたんです。真っ赤なドレスを着て歌い、皆さんにケーキで祝っていただいて「もう思い残すことはない」と感じました。ところがお客様をお見送りしているとき、皆さんが「次は50周年ですね」と声をかけてくださったんです。その言葉に励まされて50周年を迎えました。
50周年のときには夫も亡くなっていて、今度こそ最後かと思ったのですが、ちょうどそのとき、新人の小山雄大くんが入ってきたわけです。この状態で三山くんにすべて任せてしまうのは申し訳ないと思って、もう少し頑張ろうと55周年まで来ました。
――BS日テレの番組『あさうたワイド』も内容を一新するそうですね。
4月からリニューアルします。スタッフから聞いたとき、「もしかして私の名前がなくなるのでは」と少し不安だったのですが(笑)、台本に名前が残っていて安心しました。リニューアル後は、毎回私と三山のデュエットで番組を締めくくる予定です。ぜひ公開収録にも遊びに来てください。
――松前さんにとって歌とはどういうものですか?
歌は人生の心ですね。どんなに美声でも、どんなに見た目が美しくても、心がこもっていなければ聴く人の胸には届きません。演歌は歌い手の心がにじみ出るもの。聴く方がご自分の人生に重ねてくださったとき、初めて歌が生きるのだと思います。そして、歌手には同性のファンが大事です。これは従兄で先輩歌手の北島三郎さんに言われた言葉です。「女性歌手は女性のファンがどれだけつくかが人気のバロメーターだ」と。ですから三山にも小山にも平山にも「同性のファンを大切にしなさい」と伝えています。私自身も、これからも心を込めて、女性のファンを大事にして歌っていきたいと思っています。

――最後に「うたびと」読者にメッセージをお願いします。
私はただ歌が好きで、「母が生きているうちにヒット曲を出して親孝行したい」と思って55年前にデビューしました。残念ながらその夢は叶いませんでした。「孝行したいときに親はなし」と言いますが、本当にその通りだと思います。ですから私が育てている若い歌手たちには、親孝行できる歌手になってほしい。そんな思いで見守っていたら、長男坊の中村心一こと三山ひろしが歌をプレゼントしてくれました。親孝行の息子を持って幸せです。感謝しながら、彼が作ったこの2曲を大切に歌っていきたいと思いますので、どうぞ応援よろしくお願いします。
松前ひろ子『片恋文/ひろ子抄』

発売中
品番:TKCA-91691
定価:¥1,550 (税込)
【収録曲】
1.片恋文(作詞・作曲:中村心一編曲:佐藤和豊)
2.ひろ子抄(作詞・作曲:中村心一編曲:伊戸のりお)
3.片恋文(オリジナル・カラオケ)
4.ひろ子抄(オリジナル・カラオケ)
5.片恋文(半音下げカラオケ)
6.ひろ子抄(半音下げカラオケ)
7.片恋文(1音半上げカラオケ)
8.ひろ子抄(1音半上げカラオケ)
