城之内早苗 独占インタビュー 「何から何まで森昌子さんのようになりたかったんです」
1985年にフジテレビ系で始まった番組『夕やけニャンニャン』で人気となったアイドルグループ“おニャン子クラブ”で活躍しながら、演歌で歌手デビューしたのが城之内早苗。アイドルが演歌に挑む姿が、当時衝撃を与えたものだった。そんな彼女も50代。レコード会社移籍後第2弾となる『恋待ち夜雨』への思いをはじめ、これまでの歌手人生を振り返っていただいた。
自分にはどんな歌が合うのか――20代から悩み続けるも今は逆に楽しみに
――止みそうで止まない雨に、別れた男性への思いをのせた新曲『恋待ち夜雨』。城之内さん自身は曲をいただいた時、どのように感じたのだろうか?
「雰囲気は優しい曲だなと思いました。メジャー演歌だなあと。でも歌詞を砕いていくと哀しい女ごころを歌った歌なので、どんな風に表現しようかと試行錯誤するうちに、哀しい歌詞だけれど、哀しそうに歌うよりかえって笑顔で歌うほうがより切なさが伝わるんじゃないかと思いました」
――確かに哀しみをこらえる女の健気さが、よく表れた楽曲となっている。
「男の方って、女の涙は面倒だと思ってしまうこともあると思うんです。逆に涙がこぼれそうなのに頑張ってニッコリ笑える女性には胸がキュンとするのではないかって思ったりもして」
――そんな『恋待ち夜雨』を、カラオケで歌う時のポイントを教えていただくと……
「『ダメね、ダメね』など言葉をくり返す部分があるのですが、そこは語るように台詞のように歌う。そういうのを歌に盛り込んだら良いと思います。“歌は語れ”なんて言葉もありますが、自分のしゃべり口調を入れ込んでいくことで、皆さんそれぞれの歌となっていくと思います。同じ『バカね』でも強く言うのと優しく言うのとでは伝わるニュアンスが全く違うし、自分の心情に合わせて語ったらいいのではないでしょうか。そうやって歌を楽しんでいただきたいですね」
――ここまで順調に歌手生活を送ってきた印象が強い城之内さんだが、歌うことに迷った時期もあったという。
「おニャン子クラブで活動していた頃、実は『なんで私がアイドルなの?』と戸惑っていたんです。小さい頃から目指していたのは演歌歌手でしたから。おニャン子クラブに参加した時も、3ヶ月くらいで終わると言われていたので、私としては社会勉強のつもりで参加しました。その後、希望通り演歌でデビューが決まった時、お前は演歌を若い世代に広める“架け橋”になれと言われたので、自分の役目はそれだと思っていました。でもデビュー曲の『あじさい橋』は、思ったより歌謡曲志向が強い曲で。生意気な話ですが、私は子供心に『もっと演歌を歌いたい!』って思っちゃったんですよね。とにかく私は森昌子さんが大好きで、何から何まで森さんのようになりたかったんです。デビューされた頃の森さんは、『せんせい』とか『同級生』とか、学校を舞台にした等身大の歌を歌われていたじゃないですか。成長に合わせて大人の歌に変化し、『哀しみ本線日本海』など女の歌を歌われるようになられた。私もそんな風に等身大の歌を歌いたかったんです。そして成長に合わせて少しずつ大人の歌を歌い、最後は結婚して引退するのがカッコいいと思っていました。だから27歳ぐらいで本当は引退する予定だったんですよ(笑)」
――20代はどんな歌をうたうべきか、悩んだ時期だったという。
「その後、高校生の頃からのファンも大切にしたいとか、大人にも向けたいとか、いろいろ試行錯誤していくうちに自分が何を歌いたいのか、どこに向かえばいいのかわからなくなってしまいました。私自身は一生懸命歌っているのにそう見られないこともあって、すごく苦しくて。歌を楽しいと思わなくなってしまったんです。辛い20代でしたね。でもそれが変わったのが『恋桜』(99年)。31歳の時でした。歌の内容が『あなたのおかげで三十路の桜になれました。ありがとう。これからもよろしくね』というようなもので、応援してくださったファンの皆さんの姿が重なって。なんだか自然と笑みがこぼれたんです。そうしたら肩の力が抜けた。それまでは一生懸命歌っていることを伝えたいと力んでしかめっ面で歌っていたのに。それがキッカケで歌の楽しさを思い出したんです」
――長いトンネルを抜けた城之内さん。50代になった今はどんな歌を歌いたいのだろうか。
「未だに自分にはどんな歌があっているのか、正直よくわからないんです。でも周囲の皆さんが城之内早苗にこういう歌を歌わせたいと用意してくださるのが、今は本当にありがたいし、自分にとっても楽しみになりました。これからも周りの皆さんに感謝しつつ、いい歌を歌っていきたいと思います」
出演情報
『歌謡曲の匠』
放送チャンネル:BS12(トゥエルビ)
放送日時:2019年11月5日(火)4:30~5:00
番組ホームページ:https://www.twellv.co.jp/program/music/kayou-takumi/
作品情報
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城之内早苗「早苗歌」
レコード会社移籍後(徳間ジャパン)初のアルバム。代表曲「あじさい橋」の令和ヴァージョン、「北の旅人」等カバー5曲、更に新録曲「夏泊恋歌」「小樽秋冬」「愛ひとすじに」を含む全13曲収録の、ファン待望のフルアルバム 2019年10月23日発売/【初回限定盤CD+DVD】¥3,409(税別)【通常盤】¥2,727(税別)/【初回限定盤CD+DVD】TKCA-74811-002【通常盤】TKCA-74812