市川由紀乃独占インタビュー 「昭和の香りがする阿久悠先生の詞の世界に魅力を感じています」

2019.12.25

第61回「輝く!日本レコード大賞」で2019年度の最優秀歌唱賞を受賞した市川由紀乃。デビュー26年を経て、大きな勲章を手にした彼女がリリースした新曲は、作詞家の故・阿久悠さんが遺した未発表作品。「大好き」だと話す阿久悠さんの詞の世界について、最優秀歌唱賞を獲得して、これからどんな歌手になっていきたいか、「うたびと」としての決意について聞いた。


――新曲『懐かしいマッチの炎』は、「歌謡曲」というイメージがぴったりのスローな曲ですが、お聴きになった時の第一印象は、いかがでしたか。
「この曲を聴いて、阿久先生の詞を読んだとき、まっさきに浮かんだのが“昭和”という言葉でした。私も昭和生まれですので、『ああ、あの頃、いい時代だったなあ』って、いろいろ思い出しました。この曲は昭和の香りがするところにとても魅力を感じています」

――ちなみに昭和という時代からどんなことを連想しますか。
「私はやっぱり歌です。今は演歌、Jポップ、歌謡曲のようにアーティストはジャンルごとにそれぞれの領域で活動することが多いですが、昭和の頃は、例えば『ザ・ベストテン』のような、ひとつの音楽番組にいろんなジャンルのアーティストが一堂に集っていたというイメージがあります。“流行歌”というくくりの中で、音楽はジャンルに関係なくファンの皆さまの耳にとどいていた時代だったと思います」

――『懐かしいマッチの炎』以外でも市川さんは、阿久さんの作品を集めたカバーアルバム(『唄女<うたいびと>Ⅲ昭和歌謡コレクション&阿久悠作品集』)をお出しになっています。阿久さんの詞にはどんな印象をお持ちですか。
「阿久先生の歌詞はどの歌も映画のワンシーンを観ているようで、ストーリーが鮮明に浮かんでくるところが好きです。曲を聴くと“あの頃”にタイムスリップしたような感覚になれるんです。『唄女Ⅲ』ではピンク・レディーさんや山本リンダさんの曲まで歌わせていただいていてレコーディングは本当に楽しかったです。『懐かしいマッチの炎』も“マッチ”という言葉を通していろんな情景が浮かんできて、やっぱり大好きな阿久先生の世界だなと思いました。昭和の時代を生きてきた方は、あの頃はあんなこと、こんなことがあったなぁって思い出しながら、昭和を知らない世代の方は、昭和の雰囲気を感じていただければうれしいです」

 

――ところで、今年度のレコード大賞最優秀歌唱賞をお取りになって、改めて今の心境はいかがですか。
「子供の頃からレコード大賞を見てきているので、この賞の重みは分かっているつもりです。まさか、自分がいただけるとは思っていませんでしたが、歌い手としては大変、光栄な賞だと思いますので、歌唱賞という名に恥じないよう努力していきたいと思います」

――大きな賞をお取りになったわけですが、最後に、これからの目標を教えてください。
「小さい頃から歌手になりたくて、その夢は実現しましたが、まだここがゴールではないし、“うたびと”としての旅はこれからも続きます。今年(2019年)は各地で災害が発生して、つらい思いをされた方が多かったと思いますが、そういう時こそ歌の力が試される時。この曲を聴いて元気が出た、前向きになれたと思っていただけるような歌をうたいたい。市川由紀乃の歌を聴くと力が湧く――そう思っていただける存在になりたいと思います」

作品情報

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市川由紀乃「懐かしいマッチの炎」

昭和を代表する作詞家・阿久悠の未発表詞に、新たな命を吹き込んだ作品。「NHK ラジオ深夜便」の2019年12~2020年1月の深夜便のうた。 2019年12月25日発売/¥1,364(税別)/KICM(KISX)-30956/カップリング:「珊瑚抄」、「最愛のひと」

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