小川みすず『何でやねん』な状況でデビューも「歌を通して皆さんに力を与えることができたらいいと思います」

2020.4.17

2017年の「日本クラウン演歌・歌謡曲新人オーディション」で藤圭子の「新宿の女」を歌い決勝大会に出場したが惜しくも敗れ、演歌歌手になりたいという夢を断念した小川みすず。しかし、作詞家・もず唱平との偶然の出会いが大きな転機に。自身のキャッチフレーズにもなっている“心をくすぐるパールボイス!”という個性的な歌声を武器に36歳の春、3月4日に『何でやねん』で日本クラウンから念願の歌手デビューを果たした。
しかし、ようやく演歌歌手として歩き始めた矢先に新型コロナウィルス感染症が拡大、デビューイベントやキャンペーンがことごとく中止に。まさに『何でやねん』の状況で彼女は何を想い、どんな夢を描いているのか。

小さい頃から演歌歌手になるのが夢でした。福岡から上京してきて約10年。何度かあきらめかけたことがありましたけど、歌うことを続けてきてよかったなと。とにかくうれしいですし、お世話になった方たちへの感謝の思いでいっぱいです

実家が理髪店を営んでいるため、常にラジオや有線からいろんな音楽が流れてくるという環境で育った小川。演歌好きの母親の影響を受け、3歳の頃から都はるみのものまねをするなど、歌を歌うことが大好きだったという。
ものすごく引っ込み思案な性格だったんですけど、歌だけは人前で堂々と歌うことができたんです。そんな私の姿を見て両親が『この子は歌で何かを表現できるんじゃないか』と思い、そこから歌のレッスンを始めることに。おかげで、歌だけは誰にも負けないという自信が持てましたし、もっともっと極めていきたいと思うようになりました

歌に対する自信の表れからなのか、子どもの頃からコンテストなどに積極的に参加。数々の賞を受賞している。
母親が応募したものもありますし、自分で調べてカラオケ大会に参加していました。歌が上手い人はたくさんいましたけど、歌には自信があったので絶対に負けないという気持ちで頑張って歌いました。今振り返ると、すごくいい経験だったと思います

地元の「平尾昌晃歌謡教室」に通うなど、演歌歌手をめざして歌のレッスンに励む日々。歌が上達していく一方で、子どもならではの欲求も出てきたようで…。
歌詞を伝える上で声の大きさは重要。もともと声量には自信があったので、高音も低音もしっかりと出せるようにボイストレーニングを基礎から徹底的に学びました。演歌が好きなのでレッスンでもずっと歌っていましたが、やっぱり時々は他のジャンルを歌いたいなと思うことがあって…。友達とカラオケに行った時は『魂のルフラン』や『残酷な天使のテーゼ』などのアニメソングを歌ってストレスを発散していました(笑)

高校卒業後、上京して歌手の道を歩むという選択肢もあったが、地元の小学校に就職。事務員として働きながら歌のレッスンを続けていた。
父は中学を卒業してすぐに家を飛び出して手に職を付けるための修行を始めた人なので、歌手になりたいという私の夢に賛成してくれました。でも、母は何のあてもないのに東京に行ってちゃんと生活できるのかと反対。母が言いたいことはよく分かっていましたからしばらくは地元で働いて、東京に行く資金を貯めることにしました。もちろん、歌手になるという夢は絶対にあきらめたくなかったので、歌のレッスンにも定期的に通っていました

そして、27歳の時に「水森英夫門下生募集」オーディションに合格。上京して、演歌歌手になるという夢に一歩近付いたように思えたが現実は甘くない。そこから、デビューするまで約10年かかることになった。
長かったなと思う反面、10年間で経験したことは全部無駄ではなかったなと。悔しい思いもいっぱいしたし、年齢的な不安もありましたけど、水森先生のところで多くのことを学びました。これは私にとって貴重な経験。水森先生には感謝の気持ちしかありません

結果的にデビューのきっかけとなった2017年の「日本クラウン演歌・歌謡曲新人オーディション」では、藤圭子の「新宿の女」で勝負。この曲を選んだ理由を聞いてみた。
当時の私はものすごく暗かったんです(笑)。いろいろ悩んでいて無理に明るくすることはできないと思ったので、尊敬する藤圭子さんの『新宿の女』が自分の気持ちをストレートに表現するにはぴったりなのかなと。この曲だったら自信を持って歌えると思いました

コンテストは残念ながら優勝できなかったが、作詞家・もず唱平との出会いがあり、その縁で作曲家・浜圭介のレッスンを受けることになった。デビュー曲「何でやねん」はベテラン二人のタッグによる、ジャジーなイントロと大阪弁の歌詞が味わい深い極上の歌謡曲だ。
『何でやねん』というツッコミのようなタイトルに惹かれました。コテコテの大阪弁で歌う感じなのかなと思ったんですけど、浜先生が作曲されたメロディーはとてもおしゃれ。もず先生の詞も女性の切なさや悲しい気持ちだけではなく、前を向いて生きていくぞという芯の強さが表れていると思います。つらいことや悲しいことがあっても笑顔で前を向いていたらいつかはいいことがあるよねって、頑張ってきた自分の思いと重なる部分があって、歌っていても自然に気持ちが入ります。ただ、浜先生からは『力強く歌い上げてはダメだ』と言われました。私はどうしても歌いすぎる癖があるんです(笑)。メロディーに言葉を乗せるだけでいいというアドバイスをいただいたので、力を抜いて淡々と歌うことを心掛けています。大阪弁の歌詞もくどくなく、スッと馴染むように聴こえたらいいなと思います

演歌歌手として歩き始めたばかりの小川。どんな歌手になることを目標に進んでいくのか。
私は小さい頃から歌と一緒に生きてきて、楽しい時も悲しい時も歌に支えられました。ありがたいことに夢だった演歌歌手になることができたので、今度は私が歌を通して皆さんに力を与えることができたらいいなと。小川みすずの歌を聴くと勇気が出るよねと言っていただけるよう頑張っていきたい。そして、いつか大きなステージに立って、大好きな歌を思いっきり歌いたいです。これからもよろしくお願いします!

作品情報

info01

小川みすず「何でやねん」

もず唱平の大阪弁、浜圭介の極上のメロディーで、華々しくデビュー!大阪を舞台に、失恋の女心を切なく、問いかけるように歌う極上の歌謡曲。C/W「愛されたくて」CRCN-8320 定価:¥1,227+税

関連キーワード