グラビアアイドル、グループ活動、そして演歌歌手―― 三足の草鞋を履く唯一無二の歌手・望月琉叶が誕生するまで

2020.8.11

7月22日に『失恋慕情』でデビューを果たした望月琉叶。小学生のころから、カラオケで美川憲一を歌っていたという筋金入りの演歌女子に、「グラビアもできる演歌歌手」というキャッチフレーズでソロデビューを果たすまでの紆余曲折を語っていただいた。

 

――お母さんも若いころ歌手を目指していたとお聞きしました。

そうなんです。でもその前があって、実は母の父親、つまりわたしの祖父も歌い手になりたかったんですが果たせず、娘である母に夢を託して、その夢をまた私が託されて……だから演歌歌手になる夢は3代目の私の代でようやく実現したことになるんです。

 

――じゃあ子どものころから演歌を聴いて育つ環境にあったんですね。

私の周りには意外と高齢な方が多くて、例えば有線放送で音楽が流れていても、それはたいてい、演歌や歌謡曲だったりしたんです。だから小学生のころ友達とカラオケに行っても、友達はモーニング娘。さんとか大塚愛さんの『さくらんぼ』とか歌っているのに、私は美川憲一さんの『柳ケ瀬ブルース』(笑)。でも友達も分かってくれていて、「琉叶だから仕方ないか」みたいな感じでした。

――ボイストレーニングに通っていたそうですね。子どものころからお母さんの意志を継いで歌手を目指していたということですか。

ボイストレーニングは大学生になってからで、子どものころは音楽教室でピアノの勉強をしたり、歌を歌ったり。小学生のころはただ歌うことが好きなだけだったんです。本格的に歌手になりたいと思いは始めたのは中学生の時ですね。で、高校生になってから事務所やレコード会社のオーディションに応募するようになりました。でも、なかなか演歌歌手を育てようというところと出会えなくて、いつも自分のやりたいことと違うと思って、声をかけていただいたところもあるんですが、お断りしていました。

 

――具体的にこの世界に入るチャンスをつかんだのは、どんな経緯からだったんですか。

大学も終わりに近づいて、そろそろ就職を考えるころに代官山で今の事務所の社長からスカウトされたのがきっかけです。お話を聞くと演歌女子ルピナス組というグループがあって、その一員としてやってみないかということだったんです。演歌って聞いて、すぐにやってみたいと思いました。ただ、実は就職の内定をいただいていて、母はお話ししたように歌手になりたかった人なので賛成してくれたんですが、父は内定をけってまで歌手になることに心配だったようです。

 

――結局、演歌女子ルピナス組に加わることになりますが、ルピナス組ではどんな活動をしていたんですか。

「演歌を世界に広める」というコンセプトのグループだったので、8か国で36の海外公演をやりました。私は少し遅れて加入したので全部は行っていないんですが、インドネシアでの公演が印象に残っています。海外のお客さんの前でその国の言葉であいさつをし、曲によってはその国の言葉で歌う経験は大きかった。すごく度胸がついたと思います。演歌女子ルピナス組は、役目を終え、今は民族ハッピー組に受け継がれて、“世界中の民族をハッピーにする”を目標に活動しています。民族ハッピー組は、歌う曲も演歌ではなくボカロ系の曲だったりするんですが、私も今でも民族ハッピー組の一員としての活動を続けています。

――そこから今回、ソロ歌手としてデビューすることになったわけですね。初めての自分だけの曲『失恋慕情』を聴いた時はどんな気持ちでしたか。

正直、まだ自分の曲っていう実感がわかないんです。今でもこんなにキレイな曲を私が歌ってもいいのかって思うほど。この曲は、正統派の演歌というより歌謡曲よりの曲ですが、例えば坂本冬美さんのデビュー曲『あばれ太鼓』を聴くと、こぶし回しやビブラートなど、ほんとにテクニックがすごい。私はというと、まだそこまで演歌を歌いこなすことはできません。周囲の方も、「少し歌謡曲のテイストが入った曲のほうがキミらしいよ」って言ってくださるし、それに私はアイドル活動もしていて、グラビアもできます。新しい演歌歌手のイメージを打ち出したかったので、この曲でよかったと思っています。

 

――とはいえ、悲しい女ごころを切々と歌った『失恋慕情』の世界観を表現するのは難しかったのでは。一人の女性として理解できましたか。

私自身はまだまだ人生経験も浅いし、男女の機微をどこまで理解しているかわかりません。ただ、周囲には恋多き女子がたくさんいまして(笑)、彼女たちからいろんな話を聞いていますし、恋愛ドラマを見て研究したりもしています。それにアイドル活動の中で、これまで「キミだけを応援するよ」って言ってくださったファンの方がほかの子推しになったり、しばらく顔を見ないなと思っていると、ほかのグループの子に会いにいっているのをツイッターで発見することがあったりして。アイドルにとって、ある意味ではすべてのファンは彼氏ですから、これってある種の失恋みたいなものですよね。まさに『失恋慕情』の気持ちなんだって思います。アイドルの経験も演歌を歌う上で役に立ちました。

――『失恋慕情』は樋口義高先生の曲ですが、歌うにあたって樋口先生から何かアドバイスがありましたか。

樋口先生はレコーディングにも立ち会ってくださいました。最初は力まないで抑えて、クライマックスに向かって盛り上げていくことなど、感情の込め方を教えていただきました。それから歌い方だけではなく、キレイな口の開け方やステージでの立ち方、表情の作り方など、これからはプロの歌手として映像に残ることまで考えてパフォーマンスするようにと、細かく指示してくださいました。

 

――頻繁にネット配信を行っていますが、これからどんなふうにファンの方に向かって発信していこうと思っていますか。

コロナのこともあるし、ネット配信はこれからも積極的にやっていこうと思っています。ファンの皆さんが目の前にいないのは寂しいですが、今はネット上でファンと直接コラボすることもできますし、いろいろ工夫していければいいですね。いずれコロナが収束した後は、小さな会場でもいいのでファンの皆さんと触れ合える機会をつくりたい。一人ひとりに直接「ありがとう」を伝えに全国を回りたいですね。

 

――まさにコロナ禍の中で、目標は立てにくいと思いますが、これからはどんなことを目指して活動していきますか。

演歌女子ルピナス組の「演歌を世界に」の精神を受け継ぎつつ、まずは日本の皆さんに望月琉叶を知っていただいて、聴いてくださった多くに方に「演歌っていいね」って思ってもらいたいです。具体的には紅白に出るのが夢なんですが、現実を見るくせがあって(笑)、今年は難しいかもしれないので3、4年後に実現させたいです。私の歌で聴いてくださる方に勇気や元気をあたえられるような歌手を目指して頑張っていきます。

望月琉叶『失恋慕情』


2020/07/22発売
COCA-17787 ¥1,227+税

<収録曲>
1.失恋慕情
作詩/小林元 作曲/樋口義高 編曲/周防泰臣
2.小夜時雨
作詩/小林元 作曲・編曲/大野ヒロ

他カラオケ

<配信>
https://VA.lnk.to/yTUv18ry

関連キーワード