「どんなときも笑顔で」――祖母の教えを胸に 人生の応援歌『演歌魂』で日本を元気にする朝花美穂
幼いころからの夢だった歌手を目指して故郷の鳥取県米子市から上京。2018年に『なみだの峠』をリリースすると、オリコン週間シングル演歌歌謡ランキングで初登場7位を記録するなど、デビュー直後から話題を振りまいてきた朝花美穂。3月には3枚目のシングル『演歌魂』(徳間ジャパンコミュニケーションズ)をリリース、さらに10月には台詞入特別盤も発売予定と、元気いっぱいに活動を続けている。演歌界期待のニュースターに、演歌への思いやこれからの夢について語っていただいた。
3枚目のシングル『演歌魂』は「生きていれば泣きたい日もあるが、自分を信じて頑張ろうと唄う人生の応援歌」。タイトルの勇ましさとは裏腹に、スローテンポで一見おとなしめの曲調とも思うが、その分じっくりと人生の荒波に立ち向かう心意気が感じられ、途中の「ハ、ヨイショ」の掛け声に元気をもらえる。
「歌詞にもあるとおり、人生はいいことばかりじゃなくて、辛いときも悲しいときもありますが、自分を信じて明日を信じて、いつも笑顔でいればきっと元気になれると思うんです。この歌は、常に前を向いて頑張ろうという気持ちで歌っていただけたらうれしいですね。これからステージができるようになったら、掛け声のところで『よし、頑張るぞ!』という気持ちを込めて、皆さんで一緒にガッツポーズをしてもらったりとか、その部分で一体になれればいいなと思います」
10月には、『演歌魂』をさらに盛り上げるために、台詞入特別盤もリリースする。これまでの2枚のシングルはともに台詞入り。やはり朝花美穂の歌には台詞がよく映える。
「台詞は大好きです。私は小学生の頃、大衆演劇を見てお芝居が好きになったんですが、だんだんと私も演じてみたくなって。それからカラオケで台詞入りの歌をいっぱい探して、祖母に台詞の言い方を教えてもらいながら、歌うようになりました。『瞼の母』とか『大阪情話』、『俵星玄蕃』など好きな台詞入りの曲はたくさんあります。もちろんまだまだ勉強中ですが、自分の気持ちを込めた台詞が決まると本当に気持ちいいですね」
こうしてインタビューで話していると、まだあどけなさすら感じる朝花だが、ステージに立つと歌も台詞も迫力満点。台詞のあるなしにかかわらず、演歌では経験したことのない世界を歌うことが多いが、台詞と同じで“演じている”感覚なのだろうか。
「例えばデビュー曲の『なみだの峠』は、どうしようもない事情で子供を手離さなくてはならない母親の気持ちを歌っていますが、もちろん私にはそんな経験はありません。でも、聴いてくださっている方の中には『私も歌詞にあるような経験をしたんです』という方もいらっしゃって、そういう話を聞くと、演歌には人生の深い意味が隠されているんだなって思うことがあります。私は歌詞の内容を理解するために、いただいた歌詞を何度も何度も読み返して、(歌の中の主人公は今)どんな景色の中にいるのかを想像しながら歌っています」
演歌に対してあくまでも真っすぐな眼差しを向ける朝花美穂。そんな彼女の歌の原点はどこにあるのだろう。
「地元の米子でカラオケ店を経営していた祖母が、お店やいろいろな場所で歌と踊りの舞台を上演していて、私も3歳から舞台に立っていました。聞いた話だと、その前、2歳くらいのときに祖母の店で歌っているお客さんの歌を聴きながら、柱の陰で踊っていたようなんです。それを見て、そんなに好きならと祖母が歌や踊りを教えてくれるようになりました。地元・山陰地方を中心に上演していた舞台は、祖母が亡くなってからも『何があっても舞台に穴をあけてはいけない』っていう教えにしたがって、結局私が18歳で上京するまで続けました」
プロの歌手へはお母さんが背中を押してくれたようだ。
「歌手になるきっかけは、まだ米子にいる頃、NHKの『のど自慢』に出て島津亜矢さんの『縁』を歌ってチャンピオンになったことです。口には出せなかったんですが、歌手への夢はずっと持っていて、ただ自分の歌に自信が持てなくて、オーディションを受けたこともコンクールのようなものに出たこともありませんでした。そんなとき鳥取県の三朝町で収録があった『のど自慢』に母が内緒で応募してくれたんです。『のど自慢』に出演したことでレコード会社の方と縁ができて、ディレクターさんから師匠の宮下健治先生を紹介していただいてデビューすることができました。デビュー前には宮下先生から週1~2回、レッスンをつけていただきました。本格的な歌のレッスンは初めてだったのですが、先生からは歌詞の語尾に必ずあたたかさや思いやりの気持ちが現れる。語尾のビブラートの部分だけで、気持ちが伝わるから、語尾をきっちりお客様に伝えるようにということを教えていただきました。今も歌うときはこの言葉を大切にしています」
故郷・米子では「米子ふるさと親善大使」も務める。『演歌魂』のカップリング曲『天空の海城』は、今は城跡だけになっているが、かつては山陰一の名城と謳われた米子城を歌った曲。
「私自身、今回のミュージックビデオの撮影で初めて城跡に登ったのですが、360度パノラマで、雄大な日本海や中海、名峰・大山まで見渡せて、なぜ今まで来なかったんだろうって思ったほどでした。この曲を通して、米子をご存じない方にもその良さを知っていただけたらうれしいです。今はコロナもあって帰れませんが、コンサートなどで地元に帰ると、皆さん『お帰りなさい』って迎えてくださって、やっぱり地元ってあたたかいな、特別な場所だなって思います」
そんな米子で、朝花美穂の“人生最初の師匠”だったおばあちゃんからは、笑顔の大切さを教えられたという。
「祖母の教えで大切にしているのは、笑顔が大事ということです。私自身も大先輩の歌手の方がステージで「ニコッ」とされるのを見るだけで心がほっこりすることがあります。今の時期のようにいろんなことが起きると、つい心が沈んでしまうこともありますが、どんなことがあっても笑ってなきゃいけないって思っています。デビューが決まったとき、出来上がってきたサンプルCDを祖母のお仏壇に供えて、母と一緒に『デビューできたよ』って報告したんですが、今もきっと見守ってくれていると思います」
今後の目標を聞くと、
「私の趣味は大衆演劇を見ることと自己流の新舞踊を踊ること。いつも歌詞に合わせて自分で振り付けを考えて、その歌の世界に合った衣装も決めて練習しています。いつか照明にまでこだわって、自分で考えた歌とお芝居のステージができたら、それが大きな大きな目標です」
そして最後にこう付け加えた。
「今年はコンサートもキャンペーンもできなくて寂しいんですけれど、またファンの方とお会いできる日のために、もっと歌を勉強して、『美穂ちゃんこの間に成長できたね』って言っていただけるようにしたいです。それに先日、ツイッターのコメントに「美穂ちゃんの歌で元気をもらってるよ」ってあって、すごくうれしくて、感動しました。私もこれまで憧れの先輩たちに夢をいただいてきたので、もっともっと成長できるように頑張って、テレビを見てくださった方とかステージを見てくださった方に私の歌でとにかく元気になっていただけたらと思っています。それが私の大きな夢です」
作品情報
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朝花美穂『演歌魂』(台詞入特別盤)
“生きていれば泣きたい日もあるが、自分を信じて頑張ろう” と唄う人生の応援歌。得意の台詞を入れた特別盤!さらにオリジナル新曲『流し春秋』に加え、NHKBSプレミアム「新・BS日本のうた」で歌唱し話題となった『他人船』(三船和子)のカバーを収録。 2020年10月7日発売/12CDS/TKCA-91305/\1,227+税/【カップリング】『流し春秋』(オリジナル新曲)、『 他人船』(新録音カバー曲)