コロナ禍でも消えない”太陽のスマイル” 黒木ナルト「ブラジルに帰る時は故郷に錦を飾る時」

2021.3.31

2020年4月8日、新型コロナウイルスによる最初に発令された緊急事態宣言の翌日にデビューした黒木ナルト。キャンペーン活動などの予定がデビュー前日にすべて白紙になるという不運に見舞われながらも前向きにがんばりつづけ、4月7日にシングル『太陽のスマイル〜ナルトの燦々サンバ〜(デビュー1周年感謝盤)』をリリースする彼に、この1年の思い出とニューシングルにかける思いを聞いた。

 

――デビュー前日に緊急事態宣言が発令されるとは災難でしたね。

緊急事態宣言が出た日は、デビュー曲のキャンペーンのために名古屋に行っていたのですが、そのまま何もせずに帰ることになりました。その他にもたくさん仕事を入れていただいていたのですが、一気に予定表が真っ白になってしまって、かなりショックでしたね。でも自分を磨く時間をいただいたと考えるようにして、気持ちを切り替えました。

 

――緊急事態宣言中は、どんなことをしていたのでしょうか?

とにかく黒木ナルトの存在を知ってもらおうと思い、SNSをがんばりました。中でもブログは、毎日必ず8回更新するように決めたんです。最初は「中途半端な日本語しかできない僕が、1日に8回も……」と不安でしたが、周りのスタッフの方々にご協力いただいて、とにかく毎日8回アップしました。1日8回ですから1か月で200回以上になります。それを1年以上続けましたので、今では2000本以上の記事がブログにストックされています。

――反響の大きかったのはどんなブログでしょうか?

僕のルーツである宮崎出身のおじいちゃんとおばあちゃんの話を連載の形で書いているのですが、これは評判がいいですね。僕のおじいちゃんは66年前に宮崎から移民としてブラジルに入ったのですが、その時から毎日日記をつけているのです。その日記のエピソードを紹介しています。

 

――ブログ以外にもいろいろなSNSをやっていますよね。TikTokもやっていると聞きました。

若いユーザーの多いSNSですから、TikTokでは演歌ではない部分の黒木ナルトを出そうと考えていろいろアップしています。でも、思っていたよりも演歌ファンの方が見ていてくれて驚きました。「ナルト君はこういう曲も歌えるんだ」といったコメントをたくさんいただけるのはうれしいですね。歌だけではなく、ブラジルと日本の懸け橋になるというのが僕に与えられたミッションだと思っていますので、日本とブラジルの文化の違いを紹介したり、ブラジルの早口言葉を紹介したりしています。

――昨年の12月に初めてデビュー曲のキャンペーンをしたそうですが、その時の感想を教えてください。

初めてお客さんに生で歌をお届けできて、とにかく楽しくてしょうがなかったです! 当日までものすごく楽しみにしていたのですが、やっぱり緊張もしました。初キャンペーンの2カ月前にYouTubeで配信ライブをやらせていただいたのですが、その時は無観客だったので、お客さんの前で歌うと気持ちの乗せ方が全然違うんだということを体験できていい勉強になりましたね。新型コロナウイルスの感染防止対策でお客さんは声を出すのがNGだったので、声援を聞くことはできませんでした。僕は歌で皆さんとひとつになることが大好きなのでちょっと残念でしたが、皆さんからの応援の気持ちのこもった温かい拍手をいただけたのはうれしかったです。

 

――デビュー1周年を記念してリリースするCDには、新録音の曲も収録されています。まず大川栄策さんの名曲をカバーした『はぐれ舟』について聞かせてください。

この曲は僕が初めて『THEカラオケ・バトル』に出させていただいた時に歌わせていただいた曲です。この番組で僕のパフォーマンスを見たレコード会社の方が声をかけてくれたのがデビューのきっかけでした。この曲がなければデビューできていなかったかもしれない、僕にとってはすごく大切な1曲です。実はこの曲は、徳永ゆうきさんが『NHKのど自慢』に出た時に歌った曲なんです。僕がまだブラジルにいた時にその放送をお父さんと一緒に見て、「うわっ、すごい歌だな!」と思って、一生懸命覚えて自分のレパートリーにしました。

――その頃は、まだ日本語ができない頃ですよね?

だから歌詞の内容は、当時はまったくわかりませんでした。でも大好きだったので、とにかく聴いて覚えて歌えるようになりました。日本に来て日本語の勉強をして、歌詞の意味がわかった瞬間は感動しましたね。歌うのがもっともっと楽しくなりました。ただ、日本語をわかるようになればなるほど、歌が難しくなっていくような気がします。日本語は言葉の意味が深いので、それをどうやって表現すればいいのか迷いや悩みが増えていくんです。でもそれがうまく表現できたと時は、ものすごくワクワクするし幸せを感じます。表現のバリエーションが増えて、今は1年前より自分の歌が少しだけ豊かになっているような気がしています。

 

――1周年感謝盤に収録されたもうひとつの新録音曲『ひまわり』は、叔母さんのことをイメージされた曲と聞きました。

僕が「演歌歌手になる」と伝えた時に、家族の中でも一番応援してくれたのが叔母さんでした。ブラジルから日本に来る時の飛行機代も、この叔母さんが90%くらいを出してくれたんです。日本に来ていろいろあって、選んだ道が自分に合っているのか悩んでいた時期もあったのですが、そんな時は叔母さんがわざわざ日本まで励ましに来てくれました。その後に僕のデビューが決まったのですが、デビューと同じ月に叔母さんは天国へ旅立ってしまいました。『ナルトの初コンサートには、あなたのお母さんと一緒に必ず行くから』と言ってくれていたので、僕がもっと早くデビューできていれば叔母さんにコンサートに来てもらえたのかもしれないと思うと、とても悔しいです。その話をディレクターさんにしたところ、すぐに作ってくれたのがこの曲です。周りにいる人たちを大切にして感謝しなくてはいけないという気持ちが込められた作品で、スタッフの皆さんや応援してくれるファンの皆さんすべてにこの気持ちを届けたいと思っています。

――『ひまわり』のデモテープを初めて聴いた時の気持ちを教えてください。

僕の気持ちとパーフェクト・マッチした歌だと感じました。僕が叔母さんに伝えたくてできなかったことが、歌詞にすべて書かれていましたね。涙を流さずにこの歌を歌えるか不安になったくらいです。曲を作ってくれた向井浩二先生からは、「ありがとうのメッセージを意識して明るく歌いなさい。そうすればその気持ちが必ず届きますよ」とアドバイスをいただきました。僕は今ラジオのレギュラー番組を持たせていただいているのですが、その番組内で先日初披露させていただいて、評判が良かったのはうれしかったですね。『これまでの黒木ナルトとはちょっと違った世界観が見られる作品ですね』といったコメントもいただきました。次はお客さんの前で生で歌えるのを楽しみにしています。

 

――これから2年目に突入ですが、どんな年にしたいですか?

ライブやキャンペーンも待っていると思いますし、とにかく『太陽のスマイル』を歌って皆さんに元気を届けたいと思っています。僕は日本に来てからはブラジルには一度も帰っていないのですが、ブラジルに帰る時は故郷に錦を飾る時と決めています。次に帰るのは、ブラジル公演が実現した時ですね。それまではとにかく一生懸命がんばります!

黒木ナルト『太陽のスマイル〜ナルトの燦々サンバ〜(デビュー1周年感謝盤)』

“ブラジルからやってきた演歌男子”、日系3世・黒木ナルトのデビュー1周年感謝盤。カップリングにはナルトがデビューのきっかけをつかんだ『THEカラオケ・バトル』初出場時に歌った『はぐれ舟』のカバーと、ナルトの歌手への道を後押ししてくれた今は亡き叔母への想いを込めた『ひまわり』を収録。

2021年4月7日発売/TKCA-91261/1,350円(税込)

関連キーワード