石原詢子 新曲テーマは”あなたがいてくれたから” 「なかなか面と向かって言えない”ありがとう”を」

2021.4.21

1988年のデビュー以来、『みれん酒』『ふたり傘』などのヒット曲を生み出してきた演歌の歌姫・石原詢子。そんな彼女が通算44枚目のシングルに選んだのは、これまでとは大きく違うシンガーソングライター・古内東子が提供する1曲だった。コロナ禍で感じた不安をきっかけに新たな楽曲に挑戦する石原詢子に、新曲『ただそばにいてくれて』への思いを聞いた。

コロナ禍が後押しした新境地への一歩

――5月19日に発売される新曲『ただそばにいてくれて』は、これまでとイメージが大きく変わった楽曲で驚きました。演歌という枠から離れた曲を選んだ経緯を教えてください。

デビュー25周年を過ぎた頃から「歌の幅を広げたい」とずっと考えてきました。企画アルバムでJ-POPのカバーを歌う機会もあり手ごたえは感じていたのですが、今回のタイミングで挑戦しようと思ったのは新型コロナウイルスの影響も大きいと思います。
2020年4月に緊急事態宣言が発出された当初は、まさかこんなに歌えない期間が1年以上も続くなんて思っていませんでした。最初のうちは「休みが増えたなぁ」くらいの感じだったのですが、予定していたコンサートや番組収録も中止になるといった感じで状況がどんどん悪化していき、人とのやりとりはほとんどメールで会話もなく、家にいても1日中声を出さない日もありました。毎日のように歌っていたのに、突然半年以上歌わない状況が続いて、このまま歌える場所がなくなるんじゃないかとまで思いました。「これからどうなっていくの?」という不安を、世界中の人たちが感じていたのではないかと思います。そんな中で私は、シンガーとして「今だからこそできることがあるんじゃないか」と考えるようになったんです。先の見えない不安を感じている人の耳にやさしく届く歌を、若い人にも年配の方にもオールマイティに伝えられるメッセージソングを歌いたいと強く思いました。

 

――コロナ禍で芽生えた思いが、新しい方向へシフトするひとつのきっかけになったのですね。でも石原さんに対して演歌のイメージの強い従来のファンからの反応に対して不安はありませんでしたか?

今まで一歩を踏み出せなかった原因には、そうした不安もありました。毎日お仕事をさせていただいていましたから、「突然着物を洋服に変えたら、お仕事がなくなってしまうかもしれない」という心配はあったと思います。でも、一歩を踏み出さない限り何も新しいことはできないので、そこは思い切ってやってみようと決心したんです。このタイミングを逃したらもうチャンスはないかもしれないと思って事務所の社長に相談したところ「今の世の中の状況だからこそ、チャレンジしてみる価値があるかもね」と言ってくれたんです。思いが同じで嬉しかったです。

――新曲を作るにあたって、楽曲提供に古内東子さんを選んだ理由を教えてください。

私はもともと、古内さんの作る歌の世界観が大好きだったんです。私にとっても大きな挑戦となる1曲ですから、思い切って演歌の世界を知らないような方にお願いしたいと思い、私と同じ時代を駆け巡ってきた同世代の女性シンガーである古内さんにお願いしました。最初は「断られるかもしれない……」とドキドキしていたのですが、快く「ぜひ!」とお返事をいただいてすごくうれしかったですね。

 

――古内さんに初めて会った時の印象はいかがでしたか?

古内さんの歌は「失恋」や「切ない片思い」の印象が強くて、あんなストーリーを作られる方なので、ひょっとしたらとっつきにくい人なんじゃないか……と勝手にイメージしていたんですが、直接お会いしたら明るくてすごく楽しい方で、すぐに意気投合しました。東子さんもお酒や食べることが大好きなので、コロナ禍でなければ週に1回以上会っていたんじゃないかと思うぐらい魅力的な方でした。

歌の表現に決められたルールなんてない

――新曲を作るにあたって、打ち合わせはスムーズに進みましたか?

私からのお願いとしては、「あなたがいてくれたから」というテーマで作ってほしいとお話しました。「あなたという存在があったからこそ、つらいことを乗り越えることができたんだ」という思いを伝えられる歌をとお願いしたんです。東子さんからは、「詢子さんは33年というキャリアがあって、これまで応援してきたファンの中には“演歌を歌う詢子さん”が好きな方もいらっしゃると思う。そういう方たちのことも考えて作った方がいいですか? 」という質問をいただきました。私は「東子さんが感じる今の石原詢子の気持ちをそのまま受け止めて作ってください。私のファンの方たちはどんな歌を歌ったとしても、“こんな詢ちゃんはイヤだ”という人はいないと思います。気になさらずに、東子さんの思う歌を作ってください」とお願いしました。

 

――古内さんが作った新曲を初めて聴いた時の感想を教えてください。

“あなたがいてくれたから”というテーマだけをお伝えしていて、「ありがとう」という気持ちを伝える歌にしてもらいたいと思っていたのですが、それは古内さんに言わなかったんです。でも曲をいただいた時に、「ありがとう」という言葉が歌詞に入っていて、ものすごくうれしかったですね。私の気持ちをそのまま表現していただいたことにとても感謝しました。

 

――実際に歌ってみた感想は?

超難しかったです(苦笑)。聴くのと歌うのとはまったく違うんですよ。東子さんは簡単に歌ってらっしゃるのですが、私は1コーラス目と2コーラス目のAメロとBメロが違うことに戸惑いました。演歌の世界で育っている私には1番と2番で歌い方が違うということは今までは考えたこともなかった、というのが最初の感想でした。でも何度も歌って慣れてくると、歌の表現に決められたルールなんてないんだと思えるようになりました。

――つまり、この曲で石原さんの表現の幅が広がったということですね。

私にとって今まで以上にハードルが高いレコーディングでしたが、この経験は私の中で大きな財産になると思います。演歌の場合は歌詞の1行のこの部分にいろんな意味が含まれているところがあって、そういうことをイメージして歌うんですが、今度の新曲はまるでセリフのような歌詞で、どうやって表現をしたらいいのか最初はわかりませんでした。自分なりに感情を入れると音に乗れなくなったりして、レコーディング中はけっこう葛藤がありましたね。

 

――新しい世界に踏み出したとたんに、かなりハードルの高い試練が待っていたんですね。

ちょっと甘く見ていました(笑)。カバー曲は耳にもう入っているので覚えている通りにできるのですが、自分のために作っていただいた曲というのは初めましてですから、「この音の配列、むずかしいな」と思う所もありましたし、今回のレコーディングはいろんな意味で勉強になりました。この曲を生で歌う時には、いったいどうなるのか……。逆に楽しみでもあるんですけどね(笑)。

 

――新曲を聴いたお客さんの反応も楽しみですね。ちなみにレコーディングして完成した曲を聴いた時の感想はいかがでしたか?

レコーディングでは、一生懸命歌の世界を表現して歌いましたが、出来上がった歌を聴いたあとも、もっともっと思いを込めて歌いたいという気持ちが今もあふれています。今までの曲もそうなんですが、私はCDは教科書だと思っているんです。その曲を歌い続けることで、私の中のクセなどが混ざっていってひとつの曲ができあがっていくと考えています。だから今度の新曲については、ようやくスタート地点に立ったなという感じです。これから石原詢子が歌う『ただそばにいてくれて』は、日々進化していくと思いますね。

なかなか面と向かって言えない「ありがとう」を伝えられる、そんな歌になってほしい

――これから新曲のプロモーションに力を入れていくと思いますが、当然演歌のお仕事もあると思います。そうした時のバランスはどのように考えていますか?

その点はこれから徐々に慣れていく部分だと思います。私の土台を作ったのは、間違いなく演歌です。そうした部分をうまく活かしつつ、違う石原詢子も生み出していって、いろんな歌が歌えるアーティストとして成長していきたい。もっといろんなスタイルで活動していって、今まで石原詢子を知らなかった方との出会いも増えていけばいいなと思っています。

 

――演歌あり、ポップスあり、そこに詩吟もありますよね。そうしたいろんなバリエーションを持つ歌手が石原詢子だということですね。今度の新曲は、従来のファンはもちろんですが、それ以外にどんな方々にアピールしたいと思っていますか?

まずは私と同世代の、幼い時にビートルズやフォークソングを聴いていた方々ですね。そうした方々の耳に、新曲がスッと入ってくれたらうれしいですし、若い世代や私よりも上の世代の方たちにもきっと伝わるメロディー、メッセージだと思っています。コロナ禍で、それまで当たり前だったことがストップしてしまいましたが、その当たり前だったことがどれほど大切だったかをわかった部分もあると思います。「『ありがとう』って言わなくてもわかっているよね」と思っていたことに対して、「本当にありがとう!」と思えるようになったという点については、今回のコロナ禍において数少ない“悪くなかったこと”なんじゃないかと思います。私は昨年の7月から飼い始めた2匹の猫ちゃんのおかげで、心が救われる場面が何度もありました。そういう存在って、家族であったり友達であったり、みなさんそれぞれにいると思うんです。そういう人たちに、なかなか面と向かって言えない「ありがとう」を、私の歌を通して伝えられるような、そんな歌になってほしいなと思っています。

 

――大石まどかさんや多岐川舞子さんと公私ともに仲がいい石原さんですが、新曲はお二人には聴いてもらいましたか?

聴いてもらいました。まどかちゃんは、「ジュンジュンが歌っているとは思えない。声が全然違って聴こえる。すごくいいじゃない!」と言っていました。舞ちゃんは、「ええやん! すごくいいよ。もっと違う自分も表現してみたいって言ってたから、やっとやん!」と喜んでくれました。

 

――大石さんは動画配信にも力を入れておられますが、そういった点で影響を受けた部分はありますか?

自分で編集して公開するという点では、私も影響を受けましたね。それまでは全部スタッフに任せっきりだったのですが、自分でもやらなくてはいけない時代なんだと思って、1からパソコンを教えてもらってやっています。今の私の毎日の日課は、インスタグラムとブログを上げることですね。今ハマっていることや作った料理など、もっと今のリアルな私が伝わるようにと思っています。以前は1日1回だけだったのですが、今は時間がある時はアップするようにしています。私の生活スタイルが全部見られている感じですね(笑)。

 

――新曲『ただそばにいてくれて』で新境地に一歩踏み出した石原さんですが、その先の目標は?

新曲はラブソングではないのですが、いくつになっても恋愛はできますよね、例えば、忘れかけているときめきとか、愛する気持ちや、恋する想いを伝える歌を歌ってみたいですね。私自身、そして聴いてくださるみなさんが、心から美しくなるための歌が歌いたいと思っています。心に潤いを与えられるような歌を歌いたい、それがテーマですね。

石原詢子の新たな1ページを彩る新曲『ただそばにいてくれて』のリリースが待ち遠しい中、本日(4月21日11:00)、イメージ&リリックビデオ(ショートバージョン)が公開された。
古内東子が書き下ろした「ありがとう」を伝える歌詞とともにしあわせな日常のワンシーンが映し出される。今後ミュージックビデオや、様々な世代の「そばにいてくれて、ありがとう」をテーマにしたドキュメントビデオ『ただそばにいてくれて』ドキュメント編も公開予定とのことでお見逃しなく。

『ただそばにいてくれて』イメージ&リリックビデオ(ショートバージョン)

石原詢子『ただそばにいてくれて』

これまでにないナチュラルな笑顔が印象的なCDジャケット

発売日:2021年5月19日
品番:CD:MHCL-2901/カセット:MHSL-41
価格:各1,300円(税込)
発売元:ソニーミュージック・ダイレクト

収録曲:

M1. ただそばにいてくれて(作詞:古内東子/作曲:古内東子/編曲:河野 伸)
M2. ひと粒(作詞:古内東子/作曲:古内東子/編曲:河野 伸)
M3. ただそばにいてくれて(オリジナル・カラオケ)
M4. ひと粒(オリジナル・カラオケ)

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