純烈が見据える10年後の歌の世界 次に目指す高みは令和のジュリーと出会うこと!?
2020年にメジャーデビュー10周年を迎えた純烈。コロナ禍で苦しむすべてのファンに寄り添うことをコンセプトに作り上げた12枚目のシングル『君がそばにいるから』で、新たな10年に向けてスタートを切った。結成当時、「紅白出場が最大の目標」と語っていた彼らだが、昨年ですでに3年連続出場を果たした。そんな純烈は、次の10年に向けてどこに向かおうとしているのか、心の内を聞いた。
純烈の10年を振り返ってみると、スター街道を駆け上がるスピードの速さに改めて驚かされる。『涙の銀座線』でメジャーデビューしたのが2010年。スーパー銭湯や健康センターなどで地道な活動を行いながら、ブレイクの兆しが見えたのが2015年の頃。「NHK歌謡コンサート」に初出演、浅草公会堂単独ライブの成功を経て、7枚目のシングル『幸福あそび/愛をありがとう』がオリコン演歌・歌謡曲ウィークリーチャートで初の1位を獲得したのが2016年のことだった。以後の活躍ぶりは、改めて紹介するまでもないだろう。
――ここ数年のご活躍を拝見していると、結成当初に立てた目標があるとすれば、ほぼすべて達成したのではと思いますが、いかがですか。
酒井:ぜんぜん、ぜんぜん! まだほとんど達成できていないと思っています。(目標を達成できたのは)紅白出場……くらいかな。でも紅白に出るって実際すごいことですし、そこには命かけてきたので、素直にうれしいですけれど。あっ、あと少しは親孝行もできたかなとは思います。もう少し達成感がほしいのは収入ですかね(笑)。最近はコロナもあって健康センターでのライブも減っているし、閉塞感を感じています。とはいっても、僕自身、そんなにガツガツお金稼ごうというタイプではなくて、新しい道を切り開いていくこととか、何か楽しいことをやりたいとかいうことのほうが大事なので、イライラしたりとかそういうことはなく、楽しんで仕事をしています。
――最近の純烈のパフォーマンスで、印象に残っているのが、ドラマ『俺の家の話』(TBS系)で登場した、劇中のムード歌謡グループ・潤沢が歌ったドラマオリジナル曲『秘すれば花』を、すぐさま純烈が振り付きで完全カバーして、公式YouTubeチャンネル「重量お~ば~純烈号!」で公開したこと。こういう企画力は、これまでの歌謡界ではあまり見られなかったことだと思いますが。
後上:今回の潤沢のカバーの件は(リーダーから)急に振りの動画が送られてきて、何だろうと思いつつ、動画を再生していると、ピコッと「これ明日までによろしく(覚えるように)」って入ってきて(笑)。まあ、最近はこういうことがあっても、そんなに驚かなくはなりました。昔からリーダーはバズったワードがあったら、すぐ次のステージのMCに反映したりとかはあって、変な話、それが昔より予算がかけられるようになって、いろんなことができるようになっただけ。昔から体質は変わってないと思います。
小田井:そうそう、だから何も疑うことなく、「じゃあ、明日までにやるんだなって」淡々と受け入れていますよ(笑)。
酒井:今回のことは、そもそもは暖簾なんです。ドラマの中に登場するグループの楽屋に「純烈より」って書かれた暖簾をかけたいので、純烈のロゴを貸してほしいってTBSさんから連絡がきたんです。こっちは宮藤(官九郎)さんのドラマだし、「よっしゃー、クドカンドラマに純烈が出るぞ!(ロゴだけど)」って喜んで、オンエア当日、ロゴが写るワンシーンを見逃すものかって食い入るように見ていたら、何か潤沢ってグループが出てきて、長瀬(智也)さん、阿部(サダヲ)さん、桐谷(健太)さん、永山(絢斗)さんが歌ってるし。エッ!?これ何ってなって。その場でレコード会社の担当の方に電話して、「今、ドラマの中で歌ってるんだわ。これ絶対カバーしなきゃダメだと思うから。すぐTBSさんに許可とってくれます?」って。そんなノリで実現したんです(笑)。
あのとき、僕ら3月1日に名古屋の御園座に入らなくてはいけなくて、いっそ御園座を借りて(潤沢のカバーを)収録しようかとも思ったんですが、考えてみれば御園座に何の実績もないし、公演の座長は里見浩太朗さんだし、「これから公演が始まるってときに、遊びかよ」って思われるのも気まずいので、やっぱりこっちでやろうということになって。閉まっていたお台場の大江戸温泉物語をわざわざ開けていただいたりと皆さんが協力してくれて、遊び心満載でやりました(笑)。
――遊び心と言えば、新曲『君がそばにいるから』のプロモーションビデオ(PV)もユニークですね。どんなコンセプトで作られたんですか。
酒井:コンセプトらしいコンセプトはないんですよ(笑)。歌はまじめに作ったんです。で、PVどうしようってなったときに何かないかなとずっと探していて。で、もういよいよ作んなきゃっていう段になって番組収録の楽屋でいろいろ話してて、僕が急に森脇健児さんがどうの、『夢がMORI MORI』(フジテレビ系)がどうのこうのという話をバーっとしまして。メンバーが「また始まった」みたいな顔でニヤニヤし始めたので、ニヤニヤしたということは、バカバカしくていいということなんだなと解釈して、これでいこう!ってなったんです(笑)。
歌の衣装は、昨年のレコード大賞のとき、ステージで嵐が着ていた衣装のコンセプトをいただきました。楽屋のモニターで見ていて、僕らももうおっさんやし、カワイイほうがいいんじゃないか。これいただこう」って。だから歌は嵐、PVは『夢がMORIMORI』なのでSMAP(SMAPは『夢MORI』のレギュラーを務めていた)なんです。まあ、僕らがやっても絶対にジャニーズっぽくは見られないですけどね。でもアイドル感だけはちゃっかりいただきました。
――PVはともかく(笑)、曲は純烈さんらしく、ムード歌謡の王道ですね。この曲でどんなことをファンに伝えたかったのですか。
酒井:今回はやっぱりコロナがベースになりました。コロナ禍で僕たちもファンの皆さんにお会いできていません。昨年は100本以上のコンサートが中止や延期になってズーっと生で歌を聴いていただいていないんです。そういう状況を考えたとき、“そばにいるから”というフレーズが出てきました。そこは我々も作詞・作曲の幸(耕平)先生も考えが一致して、詞のコンセプトはスーッとできました。コロナを始め、いろんな意味で大変な状況にいる皆さんに寄り添うイメージだと思って聴いていただければ。曲もすごくクオリティーが高かったので、楽曲がしっかり作ってあればPVは何してもいいねっていう感じでした。
――ところで最近、若い人たちの間で昭和歌謡ブームが起きつつあると言われています。このブーム、純烈の影響も大きいとは思いませんか。
後上:純烈がブームをけん引してるということではないと思います。僕もデビューするときはムード歌謡をぜんぜん知らないところからスタートしたので、当然なじみはなかったのですが、好き嫌いを別にして、昔の曲は一度聴くと、メロディーが耳に残るんです。この間も友人が遊びに来ているときに、仕事で歌うことになっていた中村メイコさんの『田舎のバス』を聴いていたら、その友人も2回くらい聴いた後でいきなり口ずさんでいましたから、やはり昭和歌謡ってメロディーの持つ強さ、曲の強さがあって、それが若い子たちにも浸透していっている原因なんじゃないかと思います。
白川:僕たちのファンはご高齢の方も多いんですが、ライブで昭和のヒット曲をやると「待ってました!」みたいな感じですごく盛り上がるんです。皆で楽しめるのが昭和の歌謡曲の魅力なんじゃないでしょうか。今また、昭和の歌が若い子に受けているのは、個人的な感覚では、ファッションと一緒で自分たちの知らない歌が一回りしてまた新鮮に聴こえているのかもしれない。ほら、最近またベルボトムのジーンズが流行っているでしょ。ああいうファッション感覚で楽しんでいるんじゃないでしょうか。
小田井:最近、演歌・歌謡曲の世界でも20代前半で演歌が好きで、紅白が好きでっていう子たちがどんどんデビューしているんですが、僕は、歌詞が大きいと思っています。今の若い子たちが使わない言葉やフレーズに魅力を感じているのではないか。最近、例えばあいみょんさんみたいに歌詞に特徴のあるアーティストがたくさん出てきていて、そういう人たちって多かれ少なかれ昭和歌謡の影響受けているんだと思うんです。昔の曲には日本語の言葉の巧みさありましたから。矢吹健さんに『蒸発のブルース』っていう曲があるんですが、「蒸発」なんて今は死語でしょ。若い子たちがそれを目にしたとき「何これ!?」って興味を持つんじゃないんでしょうか。『神田川』にしても「石鹸カタカタ鳴った」って、何でカタカタなるのか今の子には分からないですよね。でもそこに3畳一間のアパートや銭湯に二人ででかけるというような昭和の文化があって、それを若い子たちが掘り起こそうとしているように感じています。
――今が歌謡曲復権のチャンスかもしれません。もっともっと純烈が歌謡界を盛り上げていこうという気持ちは強いのではありませんか。
白川:確かに今、演歌や歌謡曲の若い歌手がたくさん出てきていますが、僕としてはもっとたくさんのグループが出てきて、ムード歌謡を盛り上げてほしいですね。僕たちの前にデビューした一番新しいムード歌謡グループって、聞いたところによると30年以上前になるんだそうです。それだけムード歌謡って出てくるのに難しいジャンルなのかもしれないのですが、僕たちのような4人組、5人組のアーティストが出てきてくれて、歌謡界全体も活性化すればいいと思っています。
――ヒットチャートの上位常連となり、紅白にも3年連続の出場、そこに昭和歌謡ブームという追い風を受けて、純烈の次のステージはどんなものになると考えていますか。
酒井:僕ら自身の次の目標は、4年連続紅白出場……くらいですかね。それよりも、もっと歌の世界が面白くなればいいと思っています。昔、マヒナスターズが出て、それを見て鶴岡雅義さんが東京ロマンチカを作って全国区になったように、僕らが出て誰か後に続いてくれる人たちが出ればいいなと思って頑張ってやってきましたが、紅白に3回出ても、全然そうなっていない。だからカルチャーを作るという意味でもまだまだですね。でも、僕らはこれから音楽シーンのど真ん中に殴りこんでいってやろうと思っていて、NiziUさんのようなアイドルもあいみょんさんやYOASOBIさん、米津(玄師)くんとか、今最先端にいる人たちが、世界のダンスとかカルチャーとかファッションとかを全面に出した角度から掘り進むのなら、僕らはまた別の角度から掘り進んで、それがどこかでぶつかって、スパークしたときに例えば、ジュリーみたいな大スターが絶対出てくると思うんです。だからそのときのための準備を今からしていこうと思っています。その頃はもう、テレビは歌番組だらけになっているはずですから(笑)。テレビの仕組みも今と大きく変わっているかもしれない。いや、もう間もなく5年後、10年後にはそうなってます!そこに僕らはいたいんです。
そのときは、ワイルドワンズの加瀬(邦彦)さんがジュリーをプロデュースしたように、そのノウハウで素晴らしい素質を持った少年と出会って、新しい歌謡曲を生み出すことができたら最高だと思っています。間違わないように言っておきますが、僕自身が令和のジュリーになろうって思ってるわけじゃありませんからね(笑)。
一同:でもリーダーのジュリーっていうのも見てみたいね。2030年のジュリー!(爆笑)。
純烈『君がそばにいるから』
2021年2月3日発売
¥1,227+税
<Aタイプ>(CRCN-8382)
1.君がそばにいるから(作詩・作曲:幸耕平/編曲:萩田光雄)
2.夏色グラフィティー(作詩:岡田冨美子/作曲:幸耕平/編曲:萩田光雄)
3.君がそばにいるから〔オリジナルカラオケ〕
4.夏色グラフィティー〔オリジナルカラオケ〕
<Bタイプ>(CRCN-8383)
1.君がそばにいるから(作詩・作曲:幸耕平/編曲:萩田光雄)
2.僕に残された時間はどのくらいあるだろう(作詩:酒井一圭/作曲:幸耕平/編曲:坂本昌之)
3.君がそばにいるから〔オリジナルカラオケ〕
4.僕に残された時間はどのくらいあるだろう〔オリジナルカラオケ〕