北山たけし 10年越しのラブコールが実った『風物語』 デビュー17年目にして新しい歌唱法にもチャレンジ!

2021.6.16

2021年にデビュー18年目を迎え、益々歌手としての存在感が増している北山たけしが、24枚目のシングル『風物語』をリリースした。
北山自身が待望した浜圭介による”海の歌”で、4月に北島ファミリー4人で歌った『ありがとうの空』をカップリングしたバージョンをリリース。
そして6月16日にはファンの間で人気の曲でこれまではアルバムにしか収録されていなかった『夢色吹雪』をカップリングにして追撃発売する。
コロナ禍は「自分の歌を見つめ直すいい機会だった」という北山たけしに、新曲にかける想いや歌手としての新たなチャレンジなどを語ってもらった。

 

 

北島三郎最後の弟子」――その肩書は後に北島ファミリー入りした大江裕に取って代わったが――そんな触れ込みで北山たけしがデビューしたのは2004年。
以来17
年、今や北島ファミリーの“長男格”として大活躍を見せている。コロナ禍で歌手として十分な活動ができない今、どんな想いで新曲をリリースしたのだろう。

「コロナ禍でまったく歌う機会がなくなってしまい、僕自身もいろいろ考えましたが、やっぱり僕たちにできるのは歌うこと。歌の力で皆さんに少しでも元気や頑張っていこうというメッセージを発信できたらという思いが強かったです。また、北島(三郎)師匠の発案で、僕一人じゃなくて、北島ファミリーの皆で歌える歌をということで、カップリング曲に『ありがとうの空』を収録しました」

 

 

北山に加え、原田悠里、大江裕、山口ひろみの北島ファミリーが結集して歌った『ありがとうの空』の作曲者は、原譲二。北島三郎が作曲家として使うペンネームだ。

「曲が出来上がってきて、ファミリー皆で初めて聴いた時は一瞬びっくりしました。師匠の作る曲なので演歌だとばかり思っていたら、明るいポップス調の曲、子どもさんでも歌えそうな曲でしたから。師匠に聞いたら、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、家族全員で歌える曲を作ったんだということでした。歌っていても楽しい曲ですし、長く後世まで歌い継がれていく曲になったらいいと思っています。曲の中に“離れていてもつながっている”という歌詞が出てきます。コロナで親や恋人や友達などなど、皆さんそれぞれ会いたくても会えない人がいる。そんな方にも聴いていただけたらと思います」

 

 

表題曲の『風物語』は、浜圭介作曲の海の歌。海を歌った浜作品と言えば、師匠・北島三郎の『漁歌』を始め、北原ミレイの『石狩挽歌』、八代亜紀の『舟唄』など名曲ぞろい。今回の曲は、その系譜に連なる一曲となった。

「僕は福岡の柳川出身。車で5分くらい行くと有明海に出られます。子どもの頃はよく父と有明海に向かって歌の練習をしました。近くには漁師さんたちもいて、海や海で働く人に対する憧れ、思い入れが今でもあります。もちろん『漁歌』や『石狩挽歌』も昔から僕の大好きな曲でした。実は10年以上前から、浜先生の“海の歌”の世界観を表現した曲を歌わせていただけないか、ディレクターさんを通じてお願いしていたんです。でもなかなかご縁がなくて、今回10年越しの願いが叶って本当にうれしいです。先生は『歌も時代と共に変わっていく。最近の僕の曲は昔の曲とは違う。今は新しい演歌を作っているんだ』とおっしゃっていたんですが、最後は『北山くんが望むなら』と、願いを聞き入れてくださって、これまでの浜先生の曲の香り、世界観を表現した曲を作ってくださいました」

 

 

夫は船で海に出て生活を支え、妻は浜で夫の無事を祈りながら家庭を守る――生活に根付いた詞の世界は、まさに昭和の演歌を彷彿させる。

「詞は、これもいつか書いていただきたいと思っていた石原信一先生にお願いしました。僕が浜先生に『漁歌』や『石狩挽歌』で描かれたあの世界観を歌いたいと熱望したので、歌詞もその線で書いてくださったと思います。北島師匠は、よく山で働く人、ネオンの裏街で働く人、海で働く人(を歌え)と言うんですが、今回は正に海で働く人の世界を描いてくださいました。石原先生とも今回、初めてご一緒させていただきましたが、本当に優しい方で、レコーディングの時も『いいよ、いいよ』ってニコニコしながらおっしゃっていただいて、おかげで緊張することなく歌えました」

 

 

歌詞を見ると確かに昭和の演歌の香り漂う海の歌だが、曲調は想像とは違い、歌謡曲のイメージが強い。

「確かに曲はド演歌ではなく、歌謡曲に近いですね。でも浜先生は僕の声域なども考えてくださって、歌っていて一番心地いい音域でメロディーラインを作ってくださいましたので、本当に歌いやすい。イントロはメジャーで始まるのですが、歌い始めるとマイナーになって少し落ちついて、後半はアップテンポで盛り上がっていく。これまで僕が歌ってきた曲に比べて、メリハリが効いていて新鮮でした」

 

 

歌手生活17年。今回の曲では新たな挑戦もしている。

「実は、今回はこれまでの北山の歌い方を封印して、すべて浜先生の歌唱法で歌っています。これまで僕は、歌い出しに『ン』と一拍入れる歌い方をしていました。例えば『風物語』の冒頭なら『男はよー』と歌うところを『ン男はよー』と最初に鼻にかけた鼻濁音を入れて歌う。ですが今回は、浜先生がそれをやめようと。全部、浜圭介の歌唱法でいくと。『男はよー』と言葉の頭を爆発音のように出してアタックしていこうとおっしゃったんです。実際、2つの歌い方を比べてみると、確かにぜんぜん違う。これから漁に出ていくんだという勢いや意志の強さを表現することができるんです。浜先生からは、最初の一文字の発声法で、歌がこんなに変わるんだということを教えていただきました。これはささいなことのようですけれど、プロの歌い手としては、歌唱法を変えるという大きな挑戦でした。僕は最近、細川(たかし)さんとも親しくさせていただいているんですが、細川さんも同じことをおっしゃるんです。歌い出しをためる、もちろんそういう歌い方もあるけれど、頭からポーンと出す歌い方も覚えなさいと。師匠からも指導していただきながら、今後もこの歌唱法を自分のものとして、別の曲にも生かしていけたらと思っています。新しい引き出しが増えたようでうれしいです」

 

 

6月には『風物語』に別のカップリング曲を収録した追撃版もリリースする。カップリングに選んだのは、デビュー15周年を記念して行ったコンサートのオープニングを飾った曲だ。

「『夢色吹雪』をカップリング曲にしました。僕自身、大好きな曲でよく車の中で聴くんですが、よし今日も頑張ろうって思える曲です。吹雪のように空高く舞い上がっていこうと、自分自身を鼓舞する内容。コロナ禍でもありますし、この曲で聴いて下さる方に少しでも勇気を与えられたらと思います」

 

 

ワクチンの接種が始まったとはいえ、コロナの収束はまだまだ見通せない。下を向く人も多い中で北山は、“人生の応援団”のごとく前向きな姿勢をくずさない。

「今は我々、歌い手だけではなく、ライブを支えてくださるバンドの方やライブを運営してくださる方、ホールの方、皆さん大変な思いをしていらっしゃいます。僕自身もですが、こういう時こそ、前を向いて、歌で皆さんを奮い立たせていかなくてはと思っています。ファンの方々も、皆さんいろいろな事情を抱えながら、同じ思いでいるはずですから。そのファンの皆さんには会えない分だけ、ネットや電話を使って少しでも触れ合える時間を作ろうと思っています。先日も「オンラインバスツアー」を開催しました。当日、カメラマンがその場所に行って撮影した生の映像に、事前に撮影した映像を差し込んで、本当に旅行に行った気分を味わえました。参加してくださったファンの皆さんも喜んでくれて、楽しかったです。7月には「電話会」も開催します。CDをお買い上げくださった方と僕が電話で直接、お話しするという企画です。
また、僕自身はこのコロナ禍で出来た時間を有効に使って、自分のスキルアップに努めたいとも思っています。これまで尺八、太鼓、三味線などに挑戦してきましたが、まだまだ中途半端。ですから今のうちにもっともっと練習してして、コンサートやライブが再開した時、皆さんにこれまで以上に楽しんでいただけるようにしたいと思います。師匠からはステージは戦場と思えと教えられています。5000円、6000円のチケットを買って来てくださったお客様に、それ以上の価値のある歌をお聞かせして、お客様が『ああ、来てよかった』と心から思ってくださるステージをお届けできるように頑張ります」

 

 

コロナが終結した暁には、こんな望みも……ぜひ実現してほしい。

「先ほどお話しした『風物語』のカップリング曲『ありがとうの空』は、僕は合唱曲になるんじゃないかと思っているんです。子どもたちが学校で、おじいちゃんやおばあちゃんが地域の集まりで、皆で歌ってくれたらとてもうれしい。もちろんコロナが収まったら、コンサートに来てくださった方全員で大合掌したいですね! 早くそんな時が訪れるように心から祈っています」

 

北山たけし『風物語』c/w 『夢色吹雪』

2021年6月16日 発売
TECA-21019       ¥1,550(税抜価格 ¥1,409)シングルCD+DVD

配信リンク:https://lnk.to/kitayama_D063

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