【「うたびと」オープン記念】西田あい独占インタビュー
――2010年に平尾昌晃氏プロデュースの元、『ゆれて遠花火』でデビュー。哀愁ある歌声と”あい”らしいトークで、数多くのメディア・全国各地へのイベント・コンサートへ出演等、活躍する西田あいさん。10代の頃に平尾氏に言われたある言葉を、今も大切にしているという。
「平尾先生にはよく、“ヒロインになる”のではなく、“ヒロインしなさい”と言われました。当時10代の私には理解するのが難しい部分もあったのですが、ステージに立つ回数が増えれば増えるほど、先生のおっしゃっていた意味がわかってきた気がするんです。私が主人公になりきってしまうと、自分だけの世界で終わってしまうんですよね。そうではなく、歌を聴いた方が色々な情景を浮かべて、ご自身がそこに立ってドラマとして広がるように表現しなければならない。今も新しい曲に挑むときにはまず、先生のその言葉を思い浮かべながらスタートするようにしています」
――もともとポップスを歌っていた西田さんは、平尾氏から渡された山口百恵さんの『プレイバックPart2』を聞いて衝撃を受けてから、歌謡曲に魅了されていったそう。
「70年代80年代は、平均して3分間ぐらいの作品が多いんですけど、その中で2時間越えの映画を1本見たような満足感を味わえるのが魅力だと思います。短い時間の中で、そして決して多くない言葉で、主人公たちのドラマや気持ちの移り変わりが表現されているんですよね。歌謡曲の中でもロックやジャズっぽいもの、演歌調の曲もあって、ジャンルレスな世界なのもおもしろい部分だと思います」
――歌謡曲を聴くこと、歌うことで非現実感を味わい、ワクワクするという西田さん。
「数少ない言葉でドラマを作る作詞家の先生がいて、歌手の最大の魅力を引き出すメロディーラインを作る作曲家の先生がいて、ガラッと異国の風を吹かせて色々な表情にお化粧をしていく編曲の方がいて、そのすべてを歌い手が表現する。プロフェッショナルな方々の職人技のような世界にワクワクして、どんどん世界に引き込まれていきました」
――そんな西田さんですが、当初は自分の声にコンプレックスがあったという。
「小さい頃は決して高くない自分の声がコンプレックスで、人と電話するのもイヤだったんです。でも、平尾先生に“ずっと聴いていても疲れないし、飽きない声”と言って頂けて、自分の声質をポジティブにとらえられるようになりました。私の祖母は、寝る前に睡眠導入剤として私の歌を聴いてくれているんです。元気になるためではなく、寝るために聴く(笑)。耳障りではなく眠れるような声ということは、すごくうれしいですね」
――そんな声質を活かした企画が、西田さんの開設したYOUTUBEチャンネル「ニシアイチャンネル」で大きな話題になっている。
「童謡を歌ったり、絵本を読んだりして心地よく寝てもらうための動画を配信しているのですが、たくさんの方に見て頂けてビックリしています。不眠症が治った、勉強に集中できたという声も頂けて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。今後は、例えば“ささやくだけのライブ”とか、皆さんにお布団持参で寝に来てもらえるような、新しいライブにも挑戦してみたいですね」