【「うたびと」オープン記念】氷川きよし独占インタビュー

2019.3.25

「20周年記念の新曲は、氷川きよしにしかできないことを突き詰めました」

 

――日本全国から有線放送局に寄せられた電話リクエストをはじめ、有線放送局でのオンエア回数、テレビ番組『日本演歌歌謡大賞』へのリクエストをもとにNo.1を決定する「日本演歌歌謡大賞」。50年間開催されてきた「日本有線大賞」が装いも新たに生まれ変わったこの大会で、昨年、記念すべき第1回大会大賞に輝いた氷川きよしさん。デビュー以来、19年間、NHK紅白歌合戦に連続出場、大トリも務めるなど、まさに平成を代表するトップスターのひとりとして、演歌・歌謡界に君臨している。そんな氷川さんがデビュー20周年を迎えた今年、3月12日にリリースした新曲が両A面シングルの『大丈夫/最上の船頭』だ。

「20周年ということで、作曲家の水森英夫先生とタッグを組んで、『最上の船頭』は完成しました。駆け落ちする若い2人を描いたストーリー性のある演歌ならではの素晴らしい曲ですが、その1曲だけではなんか寂しいなと思って、もう1曲、お客様と一緒に楽しく盛り上がれるような曲もほしいと提案し、『大丈夫』を収録して、両A面シングルという形でドドンとリリースさせていただきました」

 

――20周年を記念する新曲を創り上げるにあたっては、水森氏とともに、「氷川きよしでなければできないことを何より考えた」と語る。

「僕は、自分の存在する意味を大切にしたいと思っているのですが、とくに、今回は周年ということもあって、氷川きよしでなければ歌えないもの、氷川きよしでなければ届けられないもの、なぜ、氷川きよしがそれをやるのかをきちんと伝えたいと考えました」

 

――『最上の船頭』では、人間模様を情緒たっぷりに歌い上げ、実力派演歌歌手としての魅力を存分に発揮。さらに『大丈夫』では、親指と人さし指で丸を作って「大丈夫」を明るく連呼し、「勇気や元気をもらえる」と支持される氷川きよしならではの明るい笑顔と三本締めで観客を盛り上げる。そんな氷川さんが、40歳を過ぎた今、“うたびと”として変わらず持ち続けている歌への思いが「歌詞」だ。

「死にたいくらい辛いことがあっても、歌によって励まされて、もう一度がんばろうと思えたことが自分自身にもあったので、この歌詞で伝えるべきことはなんなのかをよく考え、言葉ひとつひとつを大切にする思いは、10代の頃から今も変わらず持ち続けています」

―― 一方、年齢を重ねて変わったこともあるという。

「もっと自分らしくやろうかなって思い始めてきました。デビューからしばらくは、ある意味、“氷川きよし”を演じてきた部分がありました。でも40歳を過ぎた今、薄皮を1枚1枚めくるように、これまでの自分の殻を剥ぎながら、本来の自分らしさや自分が培ってきたものを表現していけたら、自分ならではの色を出していけたらと思っています」

――新曲『大丈夫』もその一つだ。

「聞いてくださる方々が、悲しいことや辛いことがあったって大丈夫という気持ちになれるよう、励ましの気持ちを込めて歌わせていただいていますが、(歌の)主人公がどこか3枚目で抜けているところがあって、自分の性格に似ているので、自分自身、気持ちが入って、楽しさを等身大で表現できていると思います」

――その裏には、20年間積み重ねてきたからこその“うたびと”としてのこんなこだわりもある。

「演歌・歌謡曲の世界では、どうしても女性は“待っている”“耐える”、男性は“強く生きる”“我慢する”ということがテーマになるし、それが日本の美学でもあります。でも、この年齢になった今、僕自身は男女関係なく、人間として自分はどう生きているかということをすごく考えるようになったんです。自分自身、完璧じゃなくてダメなところばかりだけど、自分ってなんだろうって考えたとき、孤独で一人泣いていたり苦しかったりした思いも全部、新しい作品に活かすことができたら、そして、自分の歩いてきた足跡や、これまでやってきたことが無駄じゃなかったんだって思えたら、歌手として、氷川きよしとしての人生は勝ちなのではないかと思うようになって。そこに重点を置いて歌っていきたいですね」

――ライブにて、シャンソンの名曲を披露しているのもその表れだ。

「根底にあるのは、演歌ファンの方々に対するプレゼントの気持ちですが、自分自身、歌いたい歌を自分に歌わせてあげたいって思うようになったんです。これからは、1つの型にはまらないで、いろんなことをやっていきたいと思っています。氷川きよしは何を目指しているんだろうって思われるかもしれませんが(笑)」

作品情報

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「大丈夫/最上の船頭」

満を持して20周年始動、両A面シングルをリリース。お手を拝借、三本締めで景気よく!の「大丈夫」、繰り広げられる人間模様を情緒たっぷりに歌う「最上の船頭」の2曲を収録。

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