石川ひとみが、デビュー43年目にして初のライブDVDをリリース 「私の音楽で、一瞬でも辛いことを 忘れられる、そんなお手伝いができたらと思います」
1978年に『右向け右』でデビュー。『まちぶせ』や『くるみ割り人形』などのヒット曲で知られる石川ひとみが、初のライブDVDをリリースした。「自分の曲をもう一度、初めから歌い直してみよう」そんな決意で、2014年からスタートしたライブ活動が今回のDVDに結びついたという。
そんな石川に、歌への思い、そしてコロナ禍で改めて思ったという“歌の持つ力”について語ってもらった。
デビュー43年目にして初めてのライブDVD『石川ひとみLIVE わたしの毎日』をリリースした石川。
4月に行われた配信ライブの模様を収録したもので、『ひとりじめ』『夢番地一丁目』『何も言わないで』など、懐かしいアイドル時代の曲と2018年にデビュー40周年記念盤としてリリースされたオリジナルアルバム『わたしの毎日』からの曲を織り交ぜ、往年のファンはもとより、若い世代も十分楽しめる構成になっている。
「コロナ禍でコンサートや小さなライブなども開けない今、何とかファンの皆さんに歌をお届けできないかと考えていて、この4月に初めて配信でライブを行いました。その時のライブ映像と、ボーナストラックとして『にわか雨』と『くるみ割り人形』、それに『君の声』と『えんどうの花』を新録で加えて全18曲を収録したDVDを作りました。配信ライブは無観客でしたので、最初はどんな気持ちで臨めばいいのか分からなくて不安だったのですが、いざ1曲目が始まるとその不安は消えて、不思議といつもどおり、お客様がいらっしゃるのと同じ気持ちで歌えました。もちろん(客席からの)反応はないんですけれど、どうも私の頭の中では拍手も歓声も聞こえていたし、お客様の顔も見えていたような気がします(笑)」
カメラの向こうのファンにどんなメッセージを届けたかったかと尋ねると、
「とにかく、まずは楽しんでいただきたいということ。ひと時であっても、一瞬でもいい、辛いこと、苦しいことを忘れて、楽しいなとか、思わず微笑んでしまうとか、そういう思いになっていただければ、私自身、幸せに感じますので、あまりいろいろ考えずにただ一生懸命、歌いました」
配信ライブには40年以上前の曲もラインナップされているが、昔の曲を改めて歌ってみてどう感じたのだろうか。
「2014年の12月から、浅草にあるアミューズカフェシアターというカフェレストランのステージで、定期的にライブを開いてきました。それまで私はあまり積極的にライブ活動をしてこなかったので、何とか私の生の歌を皆様にお届けできる場を作れないかと考えていたんです。そんな時、スタッフがアミューズカフェシアターでライブを開く許可をとってくれて、このチャンスを逃してなるものかと思い、やらせていただくことにしました。ここでライブをやるにあたっては、『かつてリリースしたシングル曲やアルバム収録曲をもう一度歌い、曲たちに息を吹き込もう、目覚めさせてみよう』という思いがありました。だから、ほとんどの曲はこのライブで歌っていましたので、配信ライブでも、過去の曲も今の曲も自然な気持ちで歌えたと思います。歌い方も変えていませんし、キーも当時のまま。歌って、変えない方が最初に聴いた時の感動をそのまま届けられると思うんです。
このアミューズカフェシアターでのライブを続けてきたおかげで、40周年に向けて一歩ずつステップアップできたような気がします。ライブを続けてこなければ、新しくオリジナルのアルバムを作ったり、40周年記念コンサートを開いたりは、急にはできなかったと思うんです。一つひとつのステップが、今回の配信ライブとDVDに結実した感じでした」
これまでのシングル、アルバムを合わせると相当数のオリジナルを持つ石川。
ライブやDVDのラインナップを選ぶ上で、どうしても収録したかった曲はあったのだろうか。。
「過去の歌の中で、ファンの方が好きだと言ってくださる曲は必ず入れたくて、そういう意味で今や私のライブでなくてはならない曲となっている『君は輝いて天使にみえた』は、アンコール曲として入れました。その他、石垣島へのツアーを組んでファンミーティングをした際のライブで初めて歌った『えんどうの花』も、他とはまた少し雰囲気の違う曲なので選びました。他にも思い出、思い入れのある曲がたくさんありますし、アルバム『わたしの毎日』に収録した曲は、本当は全部入れたいくらいでした」
今年でデビュー43年を数える石川。最近はファン層に変化を感じているという。
「もちろんデビューの頃からずっと応援してくださるファンの方も多いのですが、最近ライブに足を運んでくださるようになった若い方が増えてきました。コロナ前ですが、サイン会をやった時、若い方だなと思って『失礼ですが、おいくつですか?』とたずねたら、『19歳です』とか『21歳です』とかって。聞くと、お父様やお母様が聴いてくださっていたみたいで、そんな新しいファンの方々にも力をいただいています。ライブに親子だったり、ご夫婦だったりでいらしてくださる光景を見ていると、つくづく私は幸せ者だと感じます」
親子2代のファンを持つほどのキャリアを積み上げてきた石川に、コロナ禍の今、“歌うことの意味”を改めて問い直してもらうと、
「コロナ禍でコンサートやライブはできないけれど、できないからと落ち込んでいるんじゃなくて、音楽には力があって、CDやDVDでも、ファンの方たちが歌を聴いたり口ずさんだりすることで少しだけでも元気になれたり、一瞬でも辛いことを忘れられたりする、そんな小さな積み重ねのお手伝いができればいいなと思っています。私自身、若いころは歌っているのが一番楽しい、歌うのが好きというのが先にあったと思うんです。それがデビュー40周年を迎えるあたりになって、歌は自分にも力を与えてくれるものだと思うようになりました。ステージに上がる勇気とか、これからも歌っていく勇気とか、もっと言えば生きていく勇気を与えてくれる。歌うことで、それまでとは違うフレッシュな風を感じるようになりました。私ができることは歌うことだけですので、これからも“歌の力”を感じなら、皆様にお届けできたらいいなと思っています」
“withコロナ”の時代は、まだ収束を見通せない。演者にとっても辛い時期が続くが、そんな中でも石川はあくまでも前向きな姿勢をくずさない。
「まだどうなるか先が見通せないですし、私たちは不安の中で生きているんだなって感じることもあります。でも、負けるものかという気持ちもあって、止まっていてはいけないと思うんです。今回もDVDを出させていただいて、こうやって何か動きがあると自分自身もやりがいを感じられるし、ファンの方も喜んでくださる。『今はライブに行けないけれど、DVDが出たから、今から夫婦で見ます』みたいな書き込みを見ると、ああ、配信ライブもDVDもやってよかったと思います。DVDを出すことで、今は会えないけれど、つながっているよというメッセージをファンの皆様に届けられたのではと思います」
さらに、ステイホーム下での日々の過ごし方を聞くと、こんなプロ根性ものぞかせた。
「コロナでお休みが続いて、せっかく時間があるので、まずは喉の調子を整えたいと思いました。いつ何時、歌うことになってもいいように、しっかり調整しようというのが一番に考えたことでした。喉も身体の一部ですから、休んでいると衰えるんです。昔、入院したことがあって、後に退院した時、歩けなくなってしまったことがありました。階段の登り方を忘れて、あれ、どうやって登るんだっけみたいになってしまったんです。たった1か月半の入院だったのに。ということは、コロナで2年も歌わないと喉にも絶対良くないと気づいて。それからはなるべく声を出すようにしたり、トレーニングをしたりしています。もちろんマイクを持ってステージで歌うのとは違いますが、イメージを膨らませながら、自分なりにこんな感じだよなって確認をしながら自主練をする毎日です」
2023年にはデビュー45周年の記念の年を迎える。最後にファンへのメッセージとともに意気込みを聞くと……。
「45周年と言っても今までと何も変わりません。もちろん記念のアルバムも出したいし、コンサートもやりたいです。でも基本的には今までやってきたことを、さらにバージョンアップしてお届けすることが大事だと思っています。私の音楽にもっともっと栄養を与えて大きく育てていきたいです。いつも大きな拍手やメッセージを届けてくださるファンの方には本当に感謝! これからも一緒に歩んでいけたらうれしいです」
石川ひとみの代表曲と言えば、やはり『まちぶせ』。ご存じのとおり、ユーミンの楽曲だが、他にも丸山圭子、谷山浩子、西島三恵子、天野滋(N.S.P)から玉置浩二や吉田拓郎などのビッグネームまで、フォーク、ニューミュージック系の名だたるメロディーメーカーが曲を提供している。
彼女の歌唱力とも相まって、アイドル歌謡とは一線を画すユニークなシンガーとしての立ち位置を確立してきた石川ひとみ。“afterコロナ”にどんなパフォーマンスを披露してくれるか、楽しみに待ちたい。
商品情報 石川ひとみ LIVE 「わたしの毎日」
2021年5月19日発売
TEI-186 6,600円(税抜価格6,000円)
※テイチクオンライン限定発売
発売元:SAZAE 販売元:テイチクエンタテインメント