丘みどり 「なるようになるさ」 歌手を辞めようと決意したことがターニングポイントに

2021.7.21

今年3月、これまでの演歌/歌謡曲の路線とは一転、ポップス調の『明日へのメロディ』で新機軸を打ち出した丘みどりが、7月21日、今度はハッピーな雰囲気にあふれた、ノリの良いリズム歌謡『みどりのケセラセラ』をリリース。全編にわたる大阪弁も印象的な一曲だ。

 

「前作の『明日へのメロディ』は、単純に誰かを励ますのではなく、大変な思いをしていても、最終的にはもがきながらも明日への一歩を踏み出そうというメッセージ性の強い歌でした。コロナ禍の今だからこそ聞いてもらいたいと思って作っていただいたのですが、今回の『みどりのケセラセラ』も、こんな時代だからこそ、底抜けに明るくて、聴いている方が思わず笑顔になってしまうような楽曲がほしいなと思って作っていただきました。あと、関西出身なので、関西弁が入っていたらうれしいですとお願いしました」

 

〈ケセラセラ〉とは〈なるようになるさ〉という意味。丘自身、「私自身がそういう性格なので、レコーディングでは等身大の自分で歌えました」と微笑む。
「なるようになるよ、いろいろあるけど笑っていきましょうという前向きな気持ちを歌っています。ここまで底抜けに明るい曲は初めてですし、等身大の自分の気持ちと同じなので、レコーディングはすごく楽しかったですね」

 

昨年、デビュー15周年を迎えた丘。デビューした20歳のときから今日まで、自分自身、“うたびと”としての成長を感じているようだ。
「20代の頃、ずっと『演歌は30代からだよ』と言われてきて、当時はどういう意味なのかわからなかったのですが、いろいろなことを経験した今、歌詞の内容や世界観など、今まで以上に理解できることが増えて、歌にも少しは深みが出せるようになったかなと思います」

 

ターニングポイントとなったのは、デビュー10年目の30歳のとき。歌手をやめようと決意したことだったという。
「5歳から民謡を習ってきて、歌しかないって自分で勝手に思っていたけれど、実はほかにも何かやれることがあるんじゃないかなと思うようになって。デビュー10年目の30歳はいい区切りだし、やめるという選択も、これからの人生を楽しく生きていくためには必要なんじゃないかって考えたんです」

 

所属していた大阪のプロダクションとの契約期間は残り半年。事務所に辞めることを告げ、残りの期間は悔いが残らないよう思い切り楽しもうと気持ちを切り替えた瞬間、状況が変わり始めた。
「それまであまりトークとかできないタイプだったんですけど、どうせやめるんだし、もう何も失うものはないんだからと思って、ありのままの自分を出して楽しんでやるようにしたら、それまでの10年間、あまりなかった雑誌社の取材やバラエティ番組からの出演オファーが次々と来るようになって、これは辞めるなってことなのかなって(笑)」

 

その状況をきっかけに、「どうせやめるなら、最後に東京に出てチャレンジしてからでも遅くないか」と気持ちが変化。東京に誰一人知り合いがいない中、番組収録で出会ったスタッフらに「事務所を紹介してください」と自ら依頼。多数の事務所に履歴書とそれまでリリースしたCDを送るという行動に出た。「最後だと思って、捨て身でチャレンジした」と笑顔で振り返る丘だが、その頑張りが、現在の丘の礎となっている。
「大阪にいた20代の頃は、事務所の方などが決めたことをただ一生懸命頑張るっていうスタイルだったのですが、東京に出ようと自分で決めて、上京してからは、こういうことをやりたいとか、こういう歌を歌いたいとか、自分の気持ちを率先して言えるようになりましたし、それに対して、ファンの方たちが『わかるよ』とか、『そういうのいいよね』って共感してくださることでちょっとずつ自信に変わっていきました。ファンの方が求めてくださることをできるだけ実現したいという気持ちも増して、そこからお仕事がとても楽しくなりました」

 

丘に“うたびと”としての自信と幸せを感じさせてくれたのは、何よりファンの存在だった。
「キャンペーンって同じ場所で何回もやるんですけど、最初、観客が5人だったのが10人になって、30人になって、『今日は100人も来てくれたよ!』、『今日はもう座れなくなったらしいよ』って目に見えて応援してくださる方の人数や熱が伝わってくるようになっていった。私の歌を聞いて、『明日も頑張ろうって思えたよ』とか、『良かったよ』という声もいただけるようになって、こんな最高な仕事ってないからやめることないじゃんって思うようになりました」

 

そんな丘にとって大切な、ファンとのつながりであるコンサートが、新型コロナウイルスの影響で軒並み中止や延期に。「コロナ禍でどうやったらファンに喜んでもらえるか」。公演を楽しみにしていた全国のファンに歌を届けるべく、昨年は無観客ライブを3回開催。〈生誕祭〉〈秋麗〉〈雪華〉と題されたそれらを1本に凝縮したBlu-rayとDVDも5月26日にリリースした。
「コンサートができないからって立ち止まるのはやめようということで配信ライブを行いました。歌い終わっても拍手がないのは寂しかったですが、配信ライブはコンサート会場まで足を運べない方や、演歌のコンサートに行く勇気がないという若い方にも気軽に観ていただけますし、カメラワークなどで普段のホールコンサートとは違った臨場感が味えます。無限の可能性を感じたので、これからコンサートが復帰したとしても配信ライブは続けていきたいと思っています」

 

今年、結婚し、秋には出産を控えている丘。
「ファンの皆さまには、人として成長した姿をまた見ていただけたらと思いますね。先輩方の姿を見ていて、歳を重ねることに不安はなくて、歌手として(成長できる)楽しみのほうが強いし、先には希望しかありませんので」

 

12月には、昨年、コロナ禍により中止となった15周年記念コンサートを開催する予定。出産後すぐに復帰となることに「不安はめちゃくちゃありますよ~」と瞳をキラキラ輝かせながら、笑い飛ばす丘。最後に“うたびと”としてのこだわりを聞いてみると……。
「今はコンサートで歌いながら演じるということをテーマに、舞踏家の花柳糸之先生にご一緒していただいて一生懸命、世界観を作っています。初めて演歌のコンサートに来た人にもすごいなって思ってもらえるように、また、歌いながら演じるといえば丘みどりだよねって言ってもらえるように、極めていきたいと思っています。あとは、とにかく、目の前のことを全力で、悔いのないようにやること。バラエティや演技などにも挑戦しながら、でも主軸は演歌歌手でありたいと思っているので、一本筋の通った説得力のある歌を歌えるようになりたいと思っています」

丘みどり『みどりのケセラセラ』

2021年7月21日発売

◆プレミアム盤
KIZM-687~8 DVD付 <1,700円(税込)>
【CD】
1.みどりのケセラセラ
作詩:森坂 とも/ 作曲:岡 千秋/ 編曲:伊戸 のりお
2.楡
作詩:久保田 洋司 / 作曲:谷本 新 / 編曲:京田 誠一
【DVD】
みどりのケセラセラ ミュージックビデオ・メイキング映像・振付けレッスン映像

◆通常盤
KICM-31032 <定価1,400円(税込)>
【CD】
1.みどりのケセラセラ
作詩:森坂 とも/ 作曲:岡 千秋/ 編曲:伊戸 のりお
2.楡
作詩:久保田 洋司 / 作曲:谷本 新 / 編曲:京田 誠一

関連キーワード