こおり健太の14枚目のシングルは、 高音の響きを活かした真骨頂の女唄。 「でも、単なる恋愛の歌ではありません!」

2021.9.15

2016年の『雨の舟宿』を皮切りに、4作連続でオリコン演歌チャート初登場1位を獲得するなど、切ない女心を歌って人気のこおり健太が14枚目のシングル『乗換駅』を発売した。
持ち味の美しい高音を活かした“女唄”で、こおりの真骨頂とも言える楽曲に仕上がった。
“泣き節”のこおりがグッとこらえて心で泣いて歌ったという新曲の聴きどころをたっぷり語ってもらった。


――新曲の『乗換駅』、切ない歌詞に、こおりさんの艶のある高音が相まって、聴き入ってしまいました。

「ありがとうございます。デビュー以来、女性が主人公の歌を歌わせていただいてきましたが、今回も“女唄”の路線はキープしながら作らせていただきました。曲は大谷明裕先生に、詞は木下龍太郎先生が生前、預けていらしたものがあって、その作品をいただくことができました。言葉がすごくシンプルに並んでいるのですが、(歌の中に出てくる人物の)表情まで鮮明に想像できる力のある詞だと思いながら歌わせていただいています」

――男女の道行きで、乗換駅でふたりは別れる。逃避行をしようと思っていたのか、最初から別れるつもりの旅だったのか、いろいろ想像してしまいます。

「状況的には許されない恋なんだと思います。最後の歌詞で『強い女で 送ります』と言っているので、女性はこれでもう一生会わないと心に決めているのだと思うのですが、僕はこの曲を聴いてそれ以上のイメージを抱いたんです。人生の終わりを意味しているんじゃないかと」

――それは“死”ということですか。

「『時間を貸して もう少し』という歌詞が出てきますが、僕はこの部分がすごく刺さったんですね。男性も女性も、もうこの先がない状況なのかもしれないと感じました。今、コロナ禍で辛い思いをされている方もいらっしゃいます。もしかしたら二度と会えないことだってあるかもしれないとか、そんなことも全部重なってしまい、この曲はひとりの人間が一生を終えていく物語なのかもしれないと、僕は思ってしまいました。だからレコーディングのときも、この部分は特に気持ちを入れて歌いました。シンプルな歌詞だけに、いろいろなストーリーを想像できるので、歌っていて最初は切なかったですね」

――こおりさんはデビュー以来、女唄を歌ってこられましたが、特に心掛けていることはなんですか。

「自分の中で主人公の像を作って、その主人公がどんな境遇なのかドラマを想像するようにしています。今回は、隣にいてくれたらいいなと思う女性像を思い浮かべて歌いました。歌唱法に関しては、“泣き節”といって歌のどこかで泣きを入れるのが僕の特徴です。どんな泣きなのかは歌によって違いますが、どこかに“泣き節”という表現を入れてお届けしたいと思っています。でも、今回は泣いちゃいられないんです、時間がないので。『時間を貸して~』ですよ。だから僕も、今にも嗚咽しそうなのをグッとこらえて、主人公の気持ちを思い浮かべながら歌いました」

――歌いながら切なくなって、ウルっとくることもあるんですね。

「あります、あります。『乗換駅』はレコーディングがスムーズに進んで、40分くらいでOKが出たんですが、もう一回、さらにもう一回とお願いして歌わせていただきました。でも最後はギリギリでした。主人公の気持ちを重ねて、強い思いで歌ったので、本当に泣きそうになったんです。そのときに大谷先生やディレクターさんと「これ、単なる恋愛の歌じゃないですよね」という話をしました。“ここで人生を終える、別れが迫ったふたり”――別れの重みが違います。でもそんなふうに思ったのは、コロナで皆さんと会えないという今の状況もあるでしょうね。これが3〜4年前ならもっと違う女性像を描いていたかもしれません。『強い女で 送ります』も「離れたくない、でも強い気持ちでサヨナラしようね」という解釈だったかもしれません」

――歌は社会情勢を映している鏡なのかもしれませんね。

「そうですよね、今の社会の状況が、そういう思いにさせたっていうことなんです。歌は世につれ、世は歌につれ、ですね。でも歌ってひとつずつ紐解いていくと面白いものです。演歌はたいてい、タイトルの言葉が入っているところは重く歌うものなのに、この曲の『乗換駅へ』のフレーズはどこよりも明るいメロディで弾みます。『無理を言わずに~』へ行くためにあえて軽く作られている。それがまた切なさを際立たせるようで、歌っていても面白いですね」

――さて、こおりさんと言えば、デビュー前に保育士をされていたことでも有名ですが、なぜ保育士になられたのですか。

「僕は両親が共働きで、子どもの頃に保育所で過ごすことが多かったんです。当時、まだお世話になった先生たちもいらっしゃったし、歌手を夢見ながらも、自分が小さいときに受けた感謝を子どもたちにお返ししたいなという思いがあって、保育士の資格を取りました。NHK『のど自慢』で『きよしのズンドコ節』を歌って合格をいただいたとき、次の日に保育所でお母さんや子どもたちがすごく喜んでくれて、それから運動会などで子どもたちが踊って僕が歌ってということをやるようになったんです。そのときに歌ってすごいなと思って、幅広い世代の方々に届けられる演歌歌手になろうと保育所を辞めました」

――デビューは2008年でした。それから13年ですが、20周年を迎えたときはどんな自分になっていたいですか。

「『こおり健太ならこの歌だよね』という曲に出会っていたいです。多くの先輩方は、その一曲でお客さまを納得させられる大ヒット曲をお持ちじゃないですか。お客さまも『あの曲を聴けた』と満足してお帰りになる。そういう自分の代名詞になる一曲を、ぜひ20周年のときには持っていたいです」

――歌以外ではラジオの番組を4本お持ちです。ラジオはこおりさんにとって、どんな存在ですか。

「僕を成長させてくれる場所、加えてお客さまと会話できるところですね。僕、北海道のSTVラジオでパーソナリティーの日高晤郎さんにすごく可愛がっていただいたんです。ラジオの面白さ、怖さを全部、晤郎さんが教えてくださいました。晤郎さんは曲を紹介するとき、その曲をより深くリスナーに染み込ませるために、言葉のスパイスを振りかけるんです。僕の歌も、その世界観を広げてリスナーの皆さんに届けていただきました。僕が今あるのは、『日高晤郎ショー』のおかげだと思っています。ラジオは、想像させるメディアですから、例えば『好きです』という一言でも、発するトーンとか前後に付ける言葉とかで、その意味が全然違ってきます。収録で何気なく話した言葉に、人生を重ねているリスナーの方々がいっぱいらっしゃいますから、言葉一つひとつが本当に大事だと思っています」

――ファンの方と会えない今、ラジオで繋がっているんですね。最後にそんなファンにメッセージを。

「『こおり健太なら“女唄”、“女唄”ならこおり健太』と言っていただけるように、今回も女性の切ない心情を歌わせていただいています。ぜひ歌の世界に浸って、楽しんでください。コロナが収束したら、皆さんのところへ生の歌声をお届けに参りますので、それまで『乗換駅』を、どうぞ皆さんで可愛がって育てていただければと思います」

こおり健太『乗換駅』

2021年9月15日発売 CD:TKCA-91365
価格 ¥1,227(税抜)¥1,350(税込)
01. 乗換駅     (作詞:木下龍太郎/作曲:大谷明裕/編曲:南郷達也)
02. しあわせの場所 (作詞:みやび恵/作曲:大谷明裕/編曲:南郷達也)
03. 乗換駅     (オリジナル・カラオケ)
04. しあわせの場所 (オリジナル・カラオケ)
05. 乗換駅     (女声用カラオケ -2音上げ-)
06. しあわせの場所 (女声用カラオケ -2音上げ-)

こおり健太『乗換駅』ミュージックビデオ 

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