【三田明『六十周年記念アルバム』】「永遠の美少年」三田明の歌手人生60年

2023.9.12

1963年10月10日、『美しい十代』でデビュー。学園ソングで一世を風靡した三田明。以来、『明日は咲こう花咲こう』『アイビー東京』『恋人ジュリー』などなど、数々のヒット曲を世に送り出してきた。一方、70年代にはものまね番組の常連として活躍、80年代に入ると役者として時代劇に出演するなど、常にファンを楽しませてきた。そんな三田の歌手人生60年を、本人の〝証言〟で振り返る。


幼少期~「オーディション番組で合格」

幼少期

1947年6月14日、東京都昭島市に8人兄弟の末っ子として誕生。建築業の父、主婦として父親の家業を支えた母の元で育った。幼い頃は医者から見放されるほど身体が弱かったという。

「今夜が峠だと言われたこともあったようです。親父がこのままだと育たないからと、元巨人軍の選手だった方が監督をしていた少年野球クラブに入れられて、そこから元気になりました」。

『味の素ホイホイ・ミュージックスクール』オーディション時

1962年、『スター誕生!』など、後の日本テレビのオーディション番組の先駆けとなる『味の素ホイホイ・ミュージックスクール』に15歳の時に応募。見事合格を勝ち取った。

「僕が遊びでバンドをやっていたのを兄貴が知っていて、勝手に応募したんです。僕はお城(皇居)を見せてやるからって騙されて会場に連れていかれたんですよ(笑)。その時歌ったのは、リッキー・ネルソンの『ヤング・ワールド』でした」。

デビュー当時

吉田正門下生に。16歳でデビューを飾る

1963年、作曲家・吉田正に師事、門下生となる。10月10日、『美しい十代』でデビュー。

「62年の段階で日本コロンビア(当時)から舟木一夫さんがデビューすることが分かっていて、日本ビクター(当時)としても、そこにぶつける歌手を探していたようです。もう『美しい十代』は出来上がっていて後は歌い手だけ。そこに僕がちょうど先生の門下生で入って、歌が学園ソングだったこともあって、子どもっぽい子がいいと言うことで僕に白羽の矢が立ったんです。舟木さんがいたからデビューできたようなもので、ラッキーでした」

今でいうタイアップ戦略として、日活の映画、学習研究社の雑誌『美しい十代』、そしてビクターレコードと、3社がタッグを組んで三田明売り出し作戦がスタートした。写真家・秋山庄太郎が三田を「日本一の美少年」と評したのもこのころだ。

「あのころ秋山先生は女性しか撮らなかったんです。その女性専科の先生が少年を撮ったら面白い、話題になるよねということで実現した企画でした。吉田正先生の奥様と秋山先生がお友達だったこともあったんじゃないかな。そのころは本当にポンポンといろんなことが決まっていって、僕の人生の中で一番ついていた時期だと思います」

デビュー2年目で紅白初出場

映画『美しい十代』

1964年、映画『美しい十代』(日活)に出演。デビュー2年目にして『第15回NHK紅白歌合戦』にも出場した。橋幸夫、舟木一夫、そして同じくこの年に初出場した西郷輝彦と共に、後に「四天王」と呼ばれる4人が始めて紅白のステージで顔を合わせた。

「まだ子どもだったから、周りを見渡して、俺の知っている人ばかりだ、すごい、すごいって思いましたね(笑)。面白い話があって、当時、会場は東京宝塚劇場だったのですが、ステージに行くエレベーターは、あいうえお順に3人ずつ乗るんです。僕は三田でしょ、一人が三波春夫先生、もう一人が村田英雄先生なんですよ。エレベーターの中はシーンとしているし、緊張して乗っていたら村田先生が背中をつついて、『おい、何かしゃべれ』って。〝えっ!?俺、何を言えばいいんですか〟って(笑)、いやー緊張しました」

順風満帆な歌手生活が続いた1967年、デビュー5周年を迎え『夕子の涙』を発売。橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦と共に四天王と呼ばれ、大人気に。60年代の三田の曲は『夕子の涙』も含め、当時のランキング番組で15曲ほどが1位を獲得している。

「橋さんや舟木さんたちとは一緒の楽屋になることも多かったですけど、お互い四隅に座って挨拶ぐらいしか口はききませんでした。というよりきけなかったというのが本当のところ。お互い周囲のスタッフががっちりガードしていましたから。そんな感じだから他の歌手の方と遊びに行くなんてことも出来ませんでした。あ、でも同じ会社の久保浩くんとはときどき部屋を抜け出して、こっそり飲みに行っていましたね(笑)

70年代、ものまね番組で新たな才能発揮

「象印スターものまね大合戦」出演

1973年、デビュー10周年記念シングル『赤毛のおんな』をリリース。この頃から大人の歌への脱皮を模索する。同時に玉置宏司会の人気番組『象印スターものまね大合戦』にも出演、森進一などのものまねが話題を集めた。

「25歳過ぎくらいからかな、少しずつ自分の歌に葛藤を抱えるようになってきて、ちょうどそのころに番組からオファーがあって出演しました。当時、僕のショーの司会をやってくださっていた堺すすむさんに相談して、練習にも付き合ってもらいましたが、そのうちすすむさんが、いくら上手くても単なる〝うたまね〟では面白くない。歌い手が顔も崩してまでやるからかっこいいんだって言うので、そこから森(進一)さんのものまねをやるようになったんです。三田があんなことやっているよって言われましたが、自分のステージでお客様を喜ばすこともできるし、僕の中では大切な仕事の一つでしたね」

ものまねをした森進一さんご本人と

時代劇『長七郎江戸日記』で忍び・沢木兵庫を好演

時代劇『長七郎江戸日記』

80年代に入ると俳優としての活動が目立つようになる。83年にスタートした『長七郎江戸日記』(日本テレビ系)では、柳生配下の忍び・沢木兵庫役に扮し当たり役となった。第1シリーズが終了するまでの4年間、三田は京都に居を移し、俳優業に打ち込んだ。

「このころになると、自分がどんな歌を歌えばいいのか分からなくなっていて、悩んでいました。でも僕が恵まれていたのは、所属していた事務所に演劇部があって、そこのスタッフが一度歌から離れてお芝居をやってみないかと提案してくれたんです。それで僕も覚悟を決めて、結局4年間やらせてもらいました」

お芝居の世界にどっぷりつかった4年間を過ごしたから気づいたこともある。

「家も京都に移して覚悟して臨みましたが、最初はきつかったですね。特に太秦での撮影でしたから、撮影所には職人さんがたくさんいて怖かったですし。ただ2年ほどそんな生活を続けていると、だんだん歌いたくて歌いたくて仕方なくなってくるんです。やっぱり自分は歌が好きなんだって改めて気づかされました。『長七郎江戸日記』が終わって、京都から東京駅に着いた時、明日から歌えるんだと思って、涙が出てきましたから。自分は歌手なんだと再認識できたのもお芝居をやらせていただいたから。もちろん里見浩太朗さんを始め役者の方々から勉強させていただいたこともたくさんありましたし、やってよかったと今でも思っています」

30周年記念盤で尊敬するフランク永井の曲をカバー

デビュー30周年

1993年、デビュー30周年を迎えた年にはカバーアルバム『心の出発(たびだち)』をリリース。吉田門下の先輩・フランク永井の曲を6曲カバーした。

「フランクさんの声を皆さん低音の魅力って言いますが、決して低音ではないんです。僕でもフランクさんと同じキーで歌えますから。あの独特の声が低音に聞こえるんです。あの声は唯一無二のものだと思いますね。昔、先生から『お前も大人になったらフランク君みたいな歌手になれるといいな』って言われましたが、やっぱりそれぞれ持っているものが違いますから、なかなか真似できるものじゃないと思いました。ずいぶん可愛がっていただきましたし、今でもフランクさんは歌手としても人間としても尊敬しています」

舟木一夫、西郷輝彦と3人のコンサートをスタート

2000年代には、通算140公演を数えた全国コンサート『よみがえるロッテ歌のアルバム』や約100公演が行われた『輝け!平凡アワースペシャル』などのステージで各地を回った。かつてライバルとして競い合った舟木一夫、西郷輝彦と3人のコンサート『BIG3スペシャルコンサート』がスタートしたのは2010年だった。

2003年、デビュー40周年記念作品として『青春という名の旅人』を発売。トランペットやクラリネットが印象的なジャズテイストの大人の応援歌だ。

「曲を作っていただいた三木たかし先生とはよく飲みに行く仲だったんです。三木先生もジャズがお好きで、大人が聴ける人生の応援歌を作りたいねという話から実現しました。この辺りから自分が今後歌っていく歌がどんなものか、決まってきたような気がします」

2006年には、吉田正の未発表曲『しあわせ追いかけて』を発表する。

「この曲は先生がある女優さんに歌わせるつもりで書いた曲で、先生の地声で録音したテープが見つかったんです。奥様があなたにあげるって言ってくださって、女唄ではあるのですが歌わせていただきました。僕は吉田正に始まって吉田正に尽きる人生を送ってきましたから、感慨深かったですね」

50周年記念アルバムをリリース

2012年、歌手人生を振り返り、自ら選曲した20曲が収録された『50周年記念アルバム』を発売。翌年にはその中から『君に似た女(ひと)』『君を離さない』『月の港ボルドー』をシングルカット。

デビュー60周年!歌手・三田明は歌い続ける

2020年、『60周年記念アルバム』にも収録された『母さんの手』をリリース。明煌名義で三田が作曲した。

2023年9月20日『六十周年記念アルバム』リリース。新曲『同じ時代』『三丁目の路地を抜けて』『幸せのおすそ分け』は、『母さんの手』同様、作詞をもりちよこが、作曲を明煌が担当した。

「歌は生き物、いい歌を歌えるかどうかは自分のやり方次第、生き方次第です。いつもそのことを忘れずに、声出てないなぁなんて言いながら(笑)、これからもずっと歌い続けていきたいと思います」

三田明『六十周年記念アルバム』

2023年9月20日発売

品番:VICL-65877
定価:¥2,750(税抜価格 ¥2,500)

【収録曲】
1. 同じ時代(作詞:明煌・もりちよこ 作曲:明煌 編曲:工藤恭彦)
2. 三丁目の路地を抜けて(作詞:もりちよこ 作曲:明煌 編曲:工藤恭彦)
3. 幸せのおすそ分け(作詞:もりちよこ 作曲:明煌 編曲:工藤恭彦)
4. 母さんの手(作詞:もりちよこ 作曲:明煌 編曲:新田高史)
5. 赤毛のおんな ~60th Version~(作詞:千家和也 作曲・編曲:吉田 正)
6. 美しい十代 ~Elder Version~(作詞:宮川哲夫 作曲・編曲:吉田 正)
7. 同じ時代(オリジナル・カラオケ)
8. 三丁目の路地を抜けて(オリジナル・カラオケ)
9. 幸せのおすそ分け(オリジナル・カラオケ)
10. 母さんの手(オリジナル・カラオケ)
11. 赤毛のおんな ~60th Version~(オリジナル・カラオケ)
12. 美しい十代 ~Elder Version~(オリジナル・カラオケ)

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