坂本冬美 明治座3年ぶりの座長公演が好評スタート 泉ピン子が友情出演

2019.6.10

昨年の紅白歌合戦の紅組トップバッターとしての歌唱も記憶に新しい坂本冬美が3年ぶりとなる座長を努め、泉ピン子が友情出演している明治座特別公演が6月1日(土)より好評上演中だ。二部構成となっている本公演は、第一部は2018年に大阪新歌舞伎座でも演じた人情劇『恋桜-いま花明かり-』、第2部は『坂本冬美オンステージ2019 艶歌の桜道』と題したステージを披露する。

切なくも心温まる珠玉の人情芝居

第一部の宮川一郎作、石井ふく子演出の『恋桜-いま花明かり-』は、オリンピックを目前に控えた昭和38年の東京・下谷の花柳界を舞台にした人情劇。本作は、もともと美空ひばりのために書かれたドラマ脚本だったが、制作前に亡くなってしまったため、これまで封印されていた。今年、美空ひばりが逝去した歳と同い歳となった坂本は、この作品を演じることについて、光栄なことに身が引き締まると語る。
坂本冬美が演じる人気芸者・梅竜と、泉ピン子が演じる置屋の女将で売れない芸者の八重次が繰り広げる、じゃれ合いとも喧嘩とも言える掛け合いがなんとも可笑しく、冒頭から客席は笑いに包まれる。


一方で、物語が進行するにつれ見えてくるのは、この対照的な2人の芸者が抱える芸事で生きていくことの苦悩や、それぞれの哀しい恋模様。それでも強くたくましく生きていく梅竜と八重次の姿に、いつしか観ている側が励まされてしまう、そんな切なくも心温まる珠玉の人情芝居だ。
特に、不忍池の満開の桜の前で迎えるラストシーンは必見で、舞台とは思えないほど奥行きある美しい光景に、思わず客席からもため息が漏れた。

コラボレーションも多数の圧巻の歌唱ステージ

第二部『坂本冬美オンステージ2019 艶歌の桜道』は、CMでも話題となった「また君に恋してる」からスタート。そのほか、美空ひばりの「真赤な太陽」や、ちあきなおみの「喝采」、この日26回目の命日を迎えた師匠・猪俣公章が作曲した水原弘の「君こそわが命」を坂本ならではのアレンジで披露した。
松井五郎と“いきものがかり”の水野良樹のタッグで昨年リリースした「雨の別れ道」では、男女ペアダンサーとのコラボレーションも。

第一部の芝居にも出演し、坂本の事務所の後輩でもある森山愛子もステージに登場。昨年初のご当地ソングに挑戦した「会津追分」、演歌・歌謡のオリコン週間シングルランキングで1位を獲得した新曲「尾曳の渡し」を歌った。

続いて、第一部に引き続き友情出演の泉ピン子が、自身のヒット曲「哀恋蝶」を歌いながら登場するも・・・。
抱腹絶倒の展開とトークを繰り広げた泉だったが、ガラッと雰囲気を変えて朗読したのは、浪曲師・二葉百合子氏から坂本へ宛てられた手紙。これを受けて坂本が披露したのは歌謡浪曲「岸壁の母」だ。二葉百合子の歌謡浪曲を歌い継ぐのは、坂本のライフワークでもあるが、父親が浪曲師であった泉ピン子も二葉氏とは幼い頃から親交があったという。そんな共通の縁もあって実現した共演だったのだ。

最後はデビュー曲「あばれ太鼓」、最新シングル「熊野路へ」のほか、昨年の紅白でも歌った「夜桜お七」や「火の国の女」など、自身の代表曲を様々な楽器奏者とのコラボレーションも交えながら披露し、圧巻のステージは幕を閉じた。

第一部の芝居の中で多く語られている“人と人の間にある心の通った縁”。第二部のステージでも一貫してそんな“縁”を感じさせられる、じんわり温かい公演だった。

<撮影:田中聖太郎>


「坂本冬美特別公演 泉ピン子友情出演」は今月27日(木)まで。
■電話でのチケット購入
明治座チケットセンター:03-3666-6666 (10:00~17:00)
■インターネットでのチケット購入
インターネット予約「席とりくん」:https://web.meijiza.com/sekitori/public/TicSelectTokyuAction.do?kogyoCode=000628

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