〈奇跡のクリスタルボイス〉松原健之が 15周年を記念してコンサートツアーを開催 ファンとの絆を確かめ合う

2019.10.2

今年でデビュー15周年、〈奇跡のクリスタルボイス〉で知られる松原健之が、9月21日(土)、浅草公会堂で「松原健之コンサートツアー2019」の初日を迎えた。「14年前の今日、『金沢望郷歌』でデビューしました。自転車にのぼりを立てて金沢駅を出発し、『有線にリクエストしてください』と、チラシに10円玉を添えて道行く人に配りました」と懐かしそうに話す松原をお祝いすべく、当日は約1000人のファンが集合。

昨年11月にリリースされて絶好調の『最北シネマ』とともに、15周年を記念する特別なコンサートが幕を開けた。凛々しい袴姿の松原は、続けて『花咲線〜いまきみに会いたい〜』、バイオリンとピアノを伴奏に『雪』を情緒豊かに歌い上げた。

次に女流講談師の神田京子がVTRで登場し、松原の半生を講談で紹介。幼少時代の写真に会場が沸き、5歳で杉良太郎の『すきま風』を歌っていたこと、中2でヤマハ主催の「ティーンズ ミュージック フェスティバル」に出場し、千昌夫の『夕焼け雲』でパフォーマンス賞を受賞した当時の映像などが流れた。

18歳でテレビ東京の『チャレンジ歌バトル』初代グランドチャンピオンになりまして、高校卒業後、すぐに上京してレッスンに励みました。でもなかなかうまくいかなくて、郷里の静岡に戻ってアルバイトでお金を貯め、再び上京しました

 

そんなとき、『チャレンジ歌バトル』の司会を務めていた平尾昌晃から電話があり、作家の五木寛之が原作・脚本を担当した舞台のオーディションを受けて前進座の劇団員となったのは、ファンにはよく知られたエピソードだ。

『恋歌サミットコンサートinKANAZAWA』というイベントのために、弦哲也先生が『金沢望郷歌』を作曲してくださり、五木先生のご指名で僕が歌わせていただくことに。5歳で『すきま風』を歌い、26歳でデビューしました」と会場を笑わせ、一旦下手へ。

程なく黒いラメが光るジャケットを身にまとって、松原が舞台に登場。最新アルバム収録の『内灘愁歌』『愛は不死鳥』を熱唱した。特に『愛は不死鳥』はドラマチックな曲調で、松原の持ち味でもある透き通った高音の伸びが美しい。

三連休のお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。今日、千葉から来ていただいた方、停電は大丈夫でしたか?」と、台風の影響で停電が続いていた千葉の観客を気遣う。桜の目線から歌った歌詞が特徴的な『さくら花』では、手拍子をしながら軽快なリズムにのり、沖縄や奄美をイメージさせる『ウタキの丘で』では、VTRで映された南の海のゆったりとした情景のように、伸びやかに歌唱。

そこで、なんと徳さんこと徳光和夫からのVTRによるサプライズメッセージが! この件を全く聞いていなかった松原は驚き、VTRの中で紹介された、歌の大先輩・五木ひろしの座右の銘「元の身の 毛虫忘るな 今もなお あげ羽の蝶と なりて舞うとも」という言葉を受け、「この気持ちを忘れず、これからも一日一日を大切に歌っていきます」と誓った。

ここでゲストを招いてトークコーナーとなり、プライベートでも親しい歌手の川上大輔が、松原のツアーTシャツを着て登場。

今日は一段と声がいい! 松原健之の母性に包まれるよう」(川上)

母性? あるのかな? 僕に」(松原)

15年間で変わったところは?」(川上)

体重! デビューの頃は今より10キロ痩せていた」(松原)

普段の仲の良さが滲み出るようなポンポンと弾む会話に、客席はほのぼのとした笑いに包まれた。最後に二人で『愛のうた』を歌い、客席は、川上のハスキーボイスと松原のクリスタルボイスが奏でる、美しいハーモニーに酔いしれた。

 

ここから後半戦がスタート。『冬のひまわり』を情感たっぷりに歌い上げたかと思えば、作詞家の石原信一が日本語詞をつけたバッハの『G線上のアリア』に挑戦し、どんな曲でも歌いこなせる実力の一端を見せつけた。

続いてはリクエストコーナー。初の試みであるこの企画では、ファンクラブによるアンケートと、当日会場に置かれたリクエストボックスから集計された〈ファンが聞きたいベスト10〉を発表。10位から5位は、10位『花咲線』、9位『冬のひまわり』、8位『夜明けのメロディー』、7位『星の旅びと』、6位『ときめきのバラード』、5位『雪明かりの駅』という結果に。ここでファンからのメッセージを読み上げる。「〈『雪明かりの駅』は震災後に聞いた曲です〉というメッセージを下さったきよみさん、いらっしゃいますか?」と問いかける松原に、客席から手をあげたファンとトーク。「健之さんの歌のおかげで落ち着きました」との言葉に、微笑みながら何度も頷く松原。真心を込めたファンとの触れ合いの様子に、彼の人気の理由の一端を垣間見たような気がした。

ベスト10の上位は、4位『洞爺湖の雪』、3位『歌の旅びと』、2位『遠野ものがたり』、1位はデビュー曲『金沢望郷歌』だった。

ここで下手へはけ、二度目の衣装替えを済ませ舞台に戻ってきた松原は……なんと全身金ピカの眩いスーツ! 衣装を見せびらかすように一回転し、「キラキラの服でやってまいりました。僕、地方から出てきた青年のイメージでデビューしたのに、五木先生に破門されちゃう!」とのコメントに観客は大笑い。『ときめきはバラード』を歌った後、バックバンドのメンバー紹介を挟み、オーラスに向かって畳み掛けるようにオリジナル曲を熱唱。『マリモの湖』『北の冬薔薇』『雪明かりの駅』を歌い上げ、「あっという間に最後の曲です」との言葉に会場は「えーっ!」とどよめく。デビュー曲候補だったという、五木寛之作詞の『遠野ものがたり』を歌い、ステージを去る松原。

しばらくして「タケシ! アンコール!」の声に導かれるように、1Fの客席の後ろのドアから登場。驚き、喜ぶ観客。『金沢望郷歌』を歌いながら客席を周り、ファンと握手をする松原は、「ありがとうございます!」「どちらから?」と声をかけ、彼らを喜ばせていた。

アンコールの最後の曲は、彼のデビューの恩人でもある五木寛之が作詞した『歌の旅びと』。NHKの人気ラジオ番組『ラジオ深夜便』の〈深夜便のうた〉にもなった曲だ。

今日は本当に幸せでした。いつかみなさんに恩返しができるように、これからも一曲一曲大切に歌っていきます。季節の変わり目、みなさんお体に気をつけて、また近いうちにお目にかかれることを楽しみにしています

何度も繰り返される松原の深いお辞儀を見て、この温かい人柄に惚れ込んだファンも多いのだろうと感じた。

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