三山ひろしがデビュー11周年を迎えコンサートを開催 自らのプロデュースで「昭和・平成の名曲」を披露

2019.10.18

10月7日(月)、新宿文化センターにて、「三山ひろしスペシャルコンサート2019〜名曲は永遠に〜」が開催された。デビュー11周年を迎えた三山ひろし本人が初めてプロデュースした本公演では、昭和と平成を彩った演歌・歌謡曲を含め計23曲を熱唱。約1700人の観客にとって大満足の2時間となった。

3階までぎっしりの客席。コンサートが始まると、万雷の拍手の中、ラメがきらめくスーツ姿の三山が姿を見せた。最初の曲は、昨年の『NHK紅白歌合戦』で歌った『いごっそ魂』。観客の歓声に応え、

心に響くみなさまの声、痛み入ります。え? なんですって? 男前ですって?」と、さっそくその場を笑いの渦に巻き込む。そして『男の流儀』を明るくツヤのある歌声で披露した。

私のふるさと高知県では日本一美しい川があります。『四万十川!』」と板についた口上に応えて、観客から「ひーろしちゃーん!」の掛け声。まだコンサートは始まったばかりなのに、客席はすっかり温まったようだ。

ここから、今回の公演のサブタイトル「名曲は永遠に」のコーナー。ステージ上のスクリーンに「昭和」の文字が浮かび上がる。昭和初期のモダンな東京の街並みが映し出され、弾むようなリズムと聞き覚えのあるイントロが流れた。

『丘を越えて』(昭和6年:藤山一郎)。アップテンポの明るいメロディにのせた軽やかな歌声に、客席から自然と手拍子が起こる。続いての『東京ラプソディー』(昭和11年:藤山一郎)では、ステージがピンク色に染まる。「♪はーなーの都」と三山が歌うと、「都!」と客席がコール。あうんの呼吸で繰り広げられる掛け合いに、ファンとの絆の強さが伝わってくる。

三山がいったん舞台をはけると、BGMがマイナー調に。スクリーンに海の映像が映し出され、「日本は戦争の時代に突入。そして終戦を迎えても、多くの同胞が各地に取り残されていました」と本人によるナレーション。『かえり船』(昭和21年:田端義夫)のイントロと同時に、目の覚めるような真っ白な着物をまとった三山が登場し、哀愁を込めて切々と歌い上げる。続けて『岸壁の母』(昭和29年:菊池章子/昭和46年:二葉百合子ほか)を、ビブラートのような細かいこぶしを効かせて丁寧に歌う。「あれから十年、あの子はどうしているじゃろう」――切々としたセリフとともにステージが青く染まり、思わず引き込まれる観客。曲が終わると客席から大きな拍手が巻き起こった。

素晴らしい名曲を歌わせていただきました。私もこの曲を歌うと、涙がこぼれそうであります」。ここからは『赤いランプの終列車』(昭和27年:春日八郎)で叙情的に、『あの子が泣いてる波止場』(昭和30年:三橋美智也)はトランペットに合わせてリズミカルに、『皆の衆』(昭和39年:村田英雄)では堂々とした歌いっぷりとステージアクションと、それぞれに観客を魅了した。ここで三山が下手へ消え、女性講談師の一龍斎貞鏡が登場。

釈台で張り扇を叩き、「時は戦国時代でございます。上杉謙信と武田信玄、激突いたしましたのは川中島の合戦」とハリのある声で一節。スクリーンでは錦絵が映し出され、上杉謙信が敵である武田信玄に塩を送ったという逸話が語られる。「浪曲師から歌謡界に転身した三波春夫が歌いました。長編歌謡浪曲『戦国塩物語』です」という貞鏡の口上とともに、三山が黄色の袴で登場。

伸びやかな高音を生かしダイナミックに歌い上げる。トランペットとドラムがリズミカルに曲を盛り上げ、1部が終了。

10分の休憩を挟み、2部がスタート。1、2、3、4とカウントが聞こえ、緞帳が開く。「2部行きましょう!」と赤いラメスーツを着た三山が元気よく登場し、『函館の女』(昭和40年:北島三郎)を明るい歌声で披露する。ペンライトでリズムを取る観客も楽しそうだ。歌い終わった彼は「それでは大人の魅力たっぷりに」と客席に投げキッスをし、『たそがれの銀座』(昭和38年:黒沢明とロス・プリモス)で甘い声をプレゼント。続けて『女のみち』(昭和42年:ぴんからトリオ)を歌った。

 

昭和中期の名曲でございました。平成にも有名な曲がありますね。平和を願う想いのこもった曲『ハナミズキ』(平成16年:一青窈)です」。こぶしを控えめに爽やかに歌った三山の『ハナミズキ』は、原曲とも違った清々しさがあり、観客からひときわ大きな拍手が起こった。

それではみなさま、盛り上がって参りましょう!」のかけ声とともに『2億4千万の瞳』(昭和59年:郷ひろみ)。郷ひろみがステージで見せるジャケットアクションのような動きをし、ノリノリで歌唱。センターステージの階段がカラフルに光り、舞台もショーアップされ、観客のボルテージも最高潮。間奏で披露した三山のエアギターに「いいぞー!」と男性ファンからの声が飛んだ。次の曲は一転して落ち着いた『時代』(昭和54年:中島みゆき)。厳かなバラードを詩情豊かに歌い上げた。

ここで三山は下手へ。ほどなく黒いスーツで再び登場し、デビュー曲の『人恋酒場』を歌う。「♪ソレソレ」「♪ひろし」と観客からの合いの手が賑やかだ。

歌で綴る昭和の時代、いかがでございましたでしょうか。ここでご存じの方もいらっしゃると思いますが」と前置きし、先日逝去した恩師の中村典正を追悼。本番前の会見でも「先生は素晴らしい曲を残されました。その名に傷をつけず、20年、30年と頑張っていきますと報告したい」と涙ぐんだ三山だが、「先生から最近マンボの調子が悪いと言われ、何のことかと思ったらお掃除ロボットのルンバだった」と、恩師とのほっこりしたエピソードも披露した。

そして「先生の作るメロディは時に男らしく、時に切ない」と中村典正作曲の『男の路地裏』を涙をこらえながら歌唱。

その後は『杉の大杉』、最新曲の『望郷山河』を丁寧に歌い上げた。曲に合わせてステージには雄大な山のシルエットが広がり、まるで風景画のよう。

お送りしてきました三山ひろしスペシャルコンサート、いかがでしたでしょうか。初めてのセルフプロデュース、みなさまに喜んでいただき本当に嬉しいです。大好きなこの道を歩ませていただいて、歌を歌わせていただける、私にとってみなさまはあかり、光、灯台でございます。私にできることは一生懸命歌うことです!」とフィナーレの『あなたは灯台』を熱唱。灯台の光をイメージさせるライティングがステージに広がり、三山はステージを右に左にと移動して歌いながら、3階席からもよく見えるように背伸びをして手を振る。

本日は誠にありがとうございました。今後ともどうかよろしくお願いいたします」。緞帳が織りきるまで、深いおじぎの姿勢を崩さない三山。10周年を一区切りとし、11年目を新たなスタートにしたいと会見で語っていた彼の、その決意の強さを改めて感じた。

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