『雪恋華』が好調の市川由紀乃が恒例のリサイタルを開催 全国の被災地に歌でエールを送る!
新曲『雪恋華』が8万枚突破とロングヒット中の歌手・市川由紀乃が、1年の活動の集大成となる恒例のリサイタルを10月21日に東京・中野サンプラザで行った。
会場は2階席まで満員御礼。まばゆいペンライトの光が揺れる中、1曲目に五木ひろし作曲の『逢いたいなぁ』をしっとりと歌い上げた市川の目には、早くも涙がいっぱいだ。
今年デビュー27年目の市川だが、その間には4年半の活動休止も経験している。順風満帆ではなかったからこそ「緞帳が上がってお客さまの姿が見えた瞬間、いつもこみ上げてしまうんです」とファンへの感謝も厚い。「由紀乃ちゃん!」という声援が飛ぶ中、続いては2006年に活動を再開した際のシングル『海峡出船』を力強く艶やかに歌唱。素顔は控えめでつつましい市川だが、ひとたび歌の世界に入るとパッと大輪の華を咲かせるのが”演歌界のヒロイン”と呼ばれるゆえんだ。
2019年は3月に五木ひろしの特別公演(大阪・御園座)で初の本格芝居に挑戦。7月には初の座長公演(大阪・新歌舞伎座)と充実した1年だった。中でも「歌手としての大きな夢の1つだった」という座長公演では尊敬する先輩・島倉千代子の人生を歌と芝居で熱演。そんな思い入れの深いステージを、この日は島倉千代子メドレー(『この世の花』~『逢いたいなぁあの人に』~『愛のさざなみ』~『東京だョおっ母さん』~『人生いろいろ』)という形でギュッと凝縮して振り返った。内容たっぷりのリサイタルはまだまだ始まったばかりだ。
今年は岩手県の「宮古復興親善大使」にも任命された。埼玉県出身の市川だが、活動休止から見事に歌手復帰したその経緯に東日本大震災からの復興を願う宮古市の市民らが共感しての要望だったという。そうした縁からこの日は岩手民謡の『南部牛追い唄』で民謡に初挑戦。「今年は自然災害の多い年でした。岩手のみなさんはもちろん、今なお大変な思いをしている全国の方々に少しでもエールを送れたら。岩手のみなさんへの(任命の)ご恩返し、そしてここ東京のみなさんにもどうぞ東日本を忘れないでいただきたいという思いを込めて」とその選曲理由を語り、尺八の荘厳な音色をバックに伸びやかな声を響かせた。
続いては竜童組の『津軽口説組曲』と『道行華』。ロックと和が融合した壮大な世界観の名曲だ。歌唱パートの極めて少ないこの曲を、この日のステージでは「男と女の情念の世界」として表現。和装の男性の踊り手と共に披露された出逢っては別れ、離れてはまた巡り逢うような激しくも切ない踊りには、女性の可愛らしさだけでなく、凄みや残酷さまで滲み出ており、改めて市川の表現力の豊かさが証明された一幕だった。
満月がステージに昇り、ドレスに召し替えた市川が再登場した。続いて披露されたのは童謡『月の砂漠』。幻想的なコーラスや演奏で無国籍にアレンジされたこの曲を、市川もまたステージに座してたおやかに、すらりと佇んで静謐に、裾の広がったドレスをなびかせてダンサブルに、1曲の中にさまざまな表情を込めて”大人の歌”にアップデートして観客を魅了する。
持ち歌以上にその歌手の力量が試されるのが、歌謡史を彩ってきた名曲のカバーだ。しかし魅惑的な七色の声に加え、近年ますます声量に磨きがかかっている市川にその懸念はいらないだろう。透き通ったバイオリンの音色に合わせて切々と『めぐり逢い紡いで』を、ラテンギターと共に、情熱的に『ベサメ・ムーチョ』を、表情豊かなピアノに乗せて伸びやかに『愛しき日々』と続けて披露されたカバーでもそのことは証明された。
何と言っても白眉だったのが、25人のダンサーを従えての『ヒーロー』。ラグビーW杯の日本開催で再び注目を集めている伝説の青春ドラマ『スクール☆ウォーズ』の主題歌だ。ロックの女王さながらに真っ赤なドレスを翻して力強く歌うその姿は、いつもの「しとやかな由紀乃ちゃん」ではない。そんなスペシャルな目撃ができるのもリサイタルの醍醐味だろう。
リサイタル前の囲み会見では「ラグビーはにわかファンの1人」と恥ずかしげに語っていた市川だが、「だけど試合を見て魂が揺さぶられ、改めて素晴らしいスポーツだと思いました。日本代表のみなさんの素晴らしい戦いに教わった勇気と生きる力、前向きな精神、あきらめない心……。それは歌の世界にも通じるのではないかと。そして演歌だけでは伝えられない何かを届けたいと思い、この曲を選ばせていただきました」と、改めて全国の自然災害の被災者たちに思いを寄せた1年を噛み締めた。
もちろん彼女の真骨頂はオリジナルの持ち歌。リサイタルのラストスパートは『命咲かせて』、『はぐれ花』、『うたかたの女』、そして紅白歌合戦初出場を決めた『心かさねて』という近年のヒットナンバーを次々と歌唱。観客による”由紀乃コール”にもますますノリにノッてくる。
声援の大きさにまたもや声を詰まらせる市川。そこへ「泣くなよッ!」という観客の励ましが飛ぶ。「泣きません」と気持ちを整えた市川は、「私は1人では何もできません。みなさまがいらっしゃるからこそ、私は頑張れます。これからももっと努力を重ねて、いい歌が歌える歌手になるよう精進して参ります」としっかりした口調で決意表明。「これからも市川由紀乃と一緒に人生を歩んでくださいますか?」との呼びかけに応える大きな声援に、改めて市川には素晴らしいファンが多くついていることが伺えた。
フィナーレは1月に発売され、2019年を共に駆け抜けてきた『雪恋華』。ステージいっぱいに降り注ぐ雪の中で歌う彼女の姿を、ぜひとも年末にも観たいと待ち望んでいる人は多いはずだ。
セットリスト
M1. 『逢いたいなぁ』
M2. 『海峡出船』
M3. 『横笛物語』
M4. 島倉千代子メドレー(『この世の花』~『逢いたいなぁあの人に』~『愛のさざなみ』~『東京だョおっ母さん』~『人生いろいろ』)
M5. 『南部牛追い唄』
M6. 『津軽口説』~『道行華』~『津軽口説』
M7. 『月の砂漠』
M8. 『めぐり逢い紡いで』
M9. 『ベサメ・ムーチョ』
M10. 『愛しき日々』
M11. 『ヒーロー』
M12. 『命咲かせて』
M13. 『はぐれ花』
M14. 『うたかたの女』
M15. 『心かさねて』
M16. 『雪恋華』