好評につき本日再放送!!『北島三郎からの恋文』~ゲスト里見浩太朗とのスペシャル対談~
日本の歌謡界に燦然とそびえる頂・北島三郎。その“終わりなき挑戦”にスポットを当てた、チャンネル銀河オリジナル番組『北島三郎からの恋文(ラブレター)』。3月に放送され大好評だった本番組が、本日4/30(木)5/1(金)にわたって再放送される。この再放送をより楽しんでいただくため、今回はその前編に登場した、同い年で最も親しい友人の一人・里見浩太朗との仲良しトークを「うたびと」限定でお届けする。
同い年の2人の子供時代
北島「こうちゃんは、1936年の11月28日生まれ。僕は1936年の10月4日生まれ。ちょっとお兄さん。学校時代、勉強はできた?」
里見「いや、全然」
北島「僕は全然できなかったけど、顔は良かったんだよね(笑)」
里見「(笑)。小学校時代は何をして遊んでたの? 戦争中ですものね」
北島「そうですね。こうちゃんは富士宮でしょ」
里見「僕はね、東京を爆撃するB29の七機編隊が西の山から富士山に消えるまでダーーッてつながっているのを見てた」
北島「私は北海道の村。空襲で初めて飛行機を見て、どうなってるんだろうって。飛行機ばかり見ていて、爺さんに『危ない』って怒られた。(視聴者の皆さんに)同じ年齢の方はね、ああそうか、俺たちそういえばそうだったなって思い出してる方もいらっしゃるでしょう。本当にそんな時代だったんですよ」
共に『NHKのど自慢』に出場!?
里見「歌に興味を持ったのは、いくつのときですか?」
北島「小学生の頃はね、歌はうまかったですよ」
里見「僕は、高校生くらいまで歌にあんまり興味がなかった。『NHKラジオ歌謡』っていう番組があったでしょ、朝7時からの。あれを聞き始めてから歌が好きになったの」
北島「どんな歌をよく歌いました?」
里見「『あざみの歌』とか『白い花の咲く頃』とか『山の煙』とか」
北島「ちょっとクラシックぽいのね」
里見「ちょっと叙情歌」
北島「歌曲ですよ」
里見「藤山一郎さん、伊藤久男さん、岡本敦郎さん」
北島「♪やま~のけむりを」
里見「そうですよ。(さぶちゃんは)僕よりちょっと早く『NHKのど自慢』に出たよね」
北島「出ました」
里見「鐘は?」
北島「Two!」
里見「僕は1年後に、詰襟の学生服着て、Three!」
北島「おめでとう~~~~。僕は、三浦洸一さんの『落葉しぐれ』を歌ったんです。そのときの司会の宮田輝さんの言葉が(歌手になる)きっかけになったんですよね。『やー、学生さん、良かったね、いい声していたね』って。『うまかったね、惜しかったね』って。あの先生が言ってくれたんだから、俺、歌手になれるのかなって」
上京を決意。その時、両親は…
北島「でも、歌手になる手段として、親を騙しちゃったんです。ただ歌手を目指すと言ったら絶対反対されるんですよ。おまけに僕は7人きょうだいの長男なんです」
里見「それは親は心配しますね」
北島「だから親父に、高校卒業間近に、ちょっと東京に遊びに行ってきていいかと。で、こっそり声楽の専門学校の試験を受けて、合格したんです。親父には、『4年間頑張れば、中学校の教師になれるから』って言いました。親父は『お前は長男で本当は家にいなきゃいけないんだけど、自分の子には自分の好きな道を歩かせてやりたい』って」
里見「親父のOKはとれた」
北島「とれた。でも、(家を出る時)おふくろは玄関で泣き崩れてましたね。で、親父は函館の桟橋まで送ってくれて。連絡船からテープを投げて、親子でテープを引きながら、船が出るとき、親父は、大きな声で『頑張れー! 体、気をつけろー!』って言ってね」
里見「涙が出ますね」
北島「親父の目を見たら、潤んでるんですよ。俺もテープを持ったまま、ボロボロッと泣きそうだった。だけどね、気持ちはもう東京に行っちゃってるんだよね。(歌手の夢が)実現できなくても、学校の先生になればいいんだっていう逃げ道もあるけれど、最初から学校の先生になるなんて気持ちは毛頭ない。もうステージの上で歌うことしか考えてないんですもん」
大都会で厳しい現実に直面
北島「(上京してから)一番心配なのは、経済的なことですよね。うちはあんまり楽じゃなかったんです。で、おふくろにね、『自分でアルバイトしてちゃんとするから(お金の)心配しなくていいよ』って。お金は一銭も送ってもらわなかったの」
里見「うちのおふくろも同じ。『東映っていう会社のニューフェイスっていう俳優の卵に受かっちゃったんだよ』って言ったら、電話の向こうで、『あ、そう、困った困った』って。何が困ったのかと思ったら、『俳優さんになったら、着るもの履くもの全部揃えなきゃいけないけど、あたしはそんなことやってあげられないよ』って」
北島「人様に見られるお仕事ですからね」
里見「さぶちゃんは、東京へ出てきて、経済はどうしてたの?」
北島「一番最初、アルバイトしたのは、江戸川区の鉄切り工場。でも、鉄切り工場じゃ歌の勉強にならないから、何か歌の勉強になる仕事をと思って新聞広告を見たら、歌手の募集があったの。これはどこかのステージで歌わせてもらえると思って行ったら、実は、流しだった」
幸運な出会い
北島「(流しのアルバイトで)ある日、お客がいきなり1000円くれたんですよ。3曲100円なので、30曲歌わなきゃいけない。しかし、この人と出会っていなかったら、船村徹というお師匠さんとの出会いもないんです」
里見「素晴らしい人に出会ってるんですね」
北島「本当に。人は、出会った人のおかげで人生が変わっていく、道が変わっていくんだよね。こうちゃんとは、最初、京都撮影所で会ったよね。昭和40年に『兄弟仁義』って歌を歌ったとき、(映画の)プロデューサーが事務所に来て、『タイトルがいいからこれで映画やりませんか』って。『僕、映画は……』って言ったんだけど、せっかくだからやらせてもらいなさいよということで、初めて京都撮影所に行って。撮影所の西も東もわかんない中、こうちゃんに会った」
里見「忘れもしない。さぶちゃんがね、『入る部屋がない』って。僕はほとんど部屋に入らないから、『さぶちゃん、良かったら使ってください』って言ったんです。とにかく撮影所の中は俳優さんでいっぱいで」
北島「(自分は)たかが歌手なんですよ。例えば、斬られ役でも何十年もやっているからうまいでしょ。みんな役者としてやってるから、大先輩。どこに行っても、俺は、ただお辞儀して『よろしくお願いします』って言うしかないんですよ。そんな時にね、なんか救ってくれたみたいにね、『自分の部屋を使ってって。良かったらそこでメイクしたりすればいい。わかんないことがあったら教えるから』って。そこから、こうちゃんとの付き合いは始まっていますからね。こういうお付き合いでずーっといるのは、さっきの出会いじゃないけれど、出会いだけじゃ片付けられない何かがある」
里見「本当にね、60年経っても一緒にお話しができるって、あんまりいませんよ。本当にいない。だから、こういうふうに合うっていうのはね、さぶちゃんとは、何か結ばれたものがある」
北島「絆がある」
座長に求められるのは……
里見「(座長公演は)全責任を負わなきゃならないですからね。1カ月間、ずーっと見張っていなきゃいけない。それはものすごく疲れます」
北島「僕は1年で、4か所やりましたよ。家に帰っているより劇場にいるほうが多かった。で、やっぱり戦の場所ですから、負け戦はしたくねぇな、勝ち戦でいきたいと思ってた。今度の出し物はこうしてやろうっていろんな工夫を外国行っても仕入れてきたりしてね」
里見「すごく偉いと思う。歌は作る、台本は自分で書く。これはね、僕には絶対できない。さぶちゃんは、特殊才能を持ってますね、本当に」
北島「舞台に上がると、こんな大きな劇場に出させてもらってありがとうっていう気持ちはいつも持っているんです。でも(それよりも)、何千円も何万円も出して、遠くからわざわざ来てくれたお客さんに対して、100人だろうが1000人だろうが、満足するものを、帰りに『いやー、楽しかったな、良かったな』って言ってもらえる舞台をやらなきゃいけないって考えて、お客様に、自分の持っているものすべてを投球するんです。で、それが通じたとき、お客様はすごく喜んでくれて。お客様のおかげで生かされているんだなって思ったら、腰が痛いとか足が痛いとか言ってられませんよ。そんな恰好を見せるより、何かお土産になるものを持たせて帰さなきゃ、『行ってよかった』、『聴いてよかった』っていう舞台をしなきゃダメだって。それはずっと変わってないですね。体調が悪くても、ステージに立って、お客さんから直に拍手をもらうと、やっぱり俺が生かされているのはここなんだなって感じる。いくつになっても感じるんですよ」
まだ完成じゃない
北島「こうちゃんも俺もそうだけど、おじいちゃんと言われる年代になって、歩いてきた道を振り返った時、偶然、この道に入ったのではなく、入るようにできてたんだよね。そういうものを背負わされて生まれてきてるんだよね。(芸能界は)すごく派手な世界というより特殊な世界で、皆さんが憧れて、いろんな目で見られる世界で、そういう世界に私もこうちゃんも生かされている。それゆえに、外見はすごくちゃんとしてなきゃいけない。あ、里見浩太朗さんだ、さぶちゃんだって言ってもらえなかったら寂しいもんね」
里見「そうそう」
北島「そのためには止まってちゃダメだ。この年になって、こうちゃんも俺もまだ歩いているんです、現役で。まだ完成じゃないんだなっていうのを、僕もこうちゃんも思うんです」
里見「そう、何かを求めて歩いている」
北島「本当に今日は、いい話というか懐かしい話で。また機会があったら、こういう話をしてみたいですね」
北島「本当に」
再放送情報
「北島三郎からの恋文(ラブレター)」
チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた
前編(ゲスト:里見浩太朗)4月30日(木)17:00~18:00
後編(ゲスト:木梨憲武)5月1日(金)17:00~18:00