人の心を救う音楽隊「陸上自衛隊中部方面音楽隊」とは 今こそ聴いてほしい「未来への希望」テーマの3rdアルバムが発売
〝陸自の歌姫″〝美しき防人″と称され、その澄んだ歌声と美貌で人気の鶫真衣(つぐみ・まい)が所属する陸上自衛隊中部方面音楽隊が、3枚目のアルバム『そして、未来へ』を6月3日にリリースした。
本作は「いのちの大切さ」をテーマにしたファーストアルバム『いのちの音』、「心を晴れやかにする」をコンセプトにしたセカンドアルバム『ハレオト~こころが晴れる歌』に続く3部作の最終作で、今回のテーマは「未来への希望」――さまざまな不安を抱えて生きているすべての人に聴いてほしい作品だ。
人の心を救うような歌が歌える歌手になりたい
自衛隊の専従音楽隊は、陸上、海上、航空の各自衛隊に計32隊あるが、その中の1隊、陸上自衛隊中部方面音楽隊は、兵庫県伊丹市に所在する音楽隊で、昭和35年に創隊。以来、近畿・東海・北陸・中国・四国の2府19県で、年間約100回に及ぶ演奏活動を行ってきた。主な活動は自衛隊の儀式の他、東京オリンピック、大阪万国博覧会、昭和天皇大葬の礼など、国家的な行事での演奏、定期演奏会などだが、子どもたちへの演奏指導やCD録音などにも積極的に取り組んでいる。
現在は、大阪音楽大学を卒業後、一般幹部候補生として入隊、第15音楽隊長、中央音楽隊運用訓練班長等を歴任し、2017年から第20代中部方面音楽隊長に着任した柴田昌宜を指揮者に、国立音楽大学、洗足学園音楽大学大学院で声楽を専攻し、2014年に陸上自衛隊では初となる声楽要員として入隊したソプラノ歌手の鶫真衣をボーカルに据え、活動の幅を広げている。
鶫は音大の大学院まで卒業しながら陸上自衛官という異色の道を歩み始めた理由を、「大学院でクラシック音楽を学んでいる中で、この先音楽を通して社会に貢献し、人の心を救うような歌が歌える歌手になりたいと強く思うようになった。そんな時、陸上自衛隊で初めて歌手の募集が行われることを知りました。災害派遣などで人命救助にあたる自衛官の姿が思い浮かび、音楽隊という存在にとても魅力を感じました」と語っているが、陸上自衛隊中部方面音楽隊の一員として発表してきたこれまでの音楽の数々は、まさに人の気持ちを温めたり、勇気づけたりと自らの音楽に対する〝想い″を体現してきた。
入隊して6年、全国の駐屯地や式典会場、ホールなどのほか、今年1月には阪神・淡路大震災25年の追悼コンサートでも歌を披露した鶫は、今回のアルバムについて、「さまざまな場所で演奏させていただく中で私が強く感じたことは『音楽の力』です。『音楽』には無限の可能性がたくさん詰まっていて、時には人に夢を与え、愛を与え、悲しみを乗り越える力を与え、希望を与えます。(略)悲しい出来事や暗い世の中の現実に夢を描けなくなることもあります。それでも夢や目標を見つけ描き続けることは、人間が生きていく上でのとても大切なエネルギーであり、身体に流れる熱い情熱へと繋がることを強く感じます。今回のアルバム『そして、未来へ』は、夢を描くことの大切さと素晴らしさを伝えたい!との想いで歌わせていただきました」と、音楽への熱い想いを語っている。
さらに、柴田も「オリジナル曲『そして、未来へ』の制作にあたって(作曲を担当した)村松さんとお話しする中で、いま子供たちが夢を描きにくい世の中になっていますが、それはとても悲しいことで、若者が未来に夢や希望を抱きその背中を後押しできるような曲にしたいとの思いを共有して作り上げました。詞の内容やメロディが見事に一致し、どんな困難でも未来を見つめて歩んでいける、そんな素敵な曲に仕上がりました。是非多くの若い方に聴いていただき、ときには一緒に歌っていただけると嬉しく思います。このアルバムが多くの方の勇気や支えになれますよう願っています」とメッセージを送ってくれている。
クラシックから童謡まで幅広いジャンルの曲を収録
アルバムには鶫自身が作詞、ピアニストの村松崇継が作曲したアルバムタイトル曲の『そして、未来へ』を始め、NHKの連続テレビ小説「エール」の主人公のモデル・古関裕而が作曲した『栄冠は君に輝く』(夏の全国高等学校野球選手権大会の歌)、さらにエドワード・エルガーの『威風堂々』(鶫真衣が作詞を担当)、手塚治虫の漫画「火の鳥」の実写版映画の主題歌『火の鳥』(作詞は詩人の谷川俊太郎)、『早春賦』や『浜辺の歌』『赤とんぼ』など、それぞれの季節を唱歌、童謡で綴った〝日本の四季″メドレーなど、クラシックから映画音楽、童謡、ポピュラーソングまでさまざまなジャンルの楽曲が収められていて、聴きごたえ十分だ。
中でも注目したいのが、数多くのアーティストへの楽曲提供やNHKの東日本大震災復興支援ソング『花は咲く』の作曲者として知られる菅野よう子が作曲を手掛け、昨年11月に皇居前広場で行われた天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典で披露された組曲『Ray of Water』が第1楽章から第3楽章まですべて収録されたこと。第2楽章ではピアニストのマシュー・ローをフィーチャーし、「澄みきった水面に光がきらめくような素晴らしい演奏」と柴田も大絶賛する音色を聴かせてくれている。また、前述の天皇陛下即位をお祝いする国民祭典の際、嵐の5人が熱唱した第3楽章の『Journey to Harmony』(作詞は脚本家の岡田惠和が担当)では鶫が渾身の歌声を披露している。
鶫は「演奏を聴いてくださった方から『涙が出たよ』とか『元気が出ました』などのお言葉をいただくととても嬉しく、やりがいを感じます」。さらに「コンサートホールでの演奏会だけでなく、野外での演奏や、災害の被災地における慰問演奏など、自衛隊の音楽隊にしかできない、より近い距離で音楽を届ける事ができる」ことに喜びを感じているとも。
コロナウイルスの収束が見えない中で、あるいは命の危険にさらされ、あるいは経済的困難に直面して、不安と恐怖の中で毎日を過ごしている多くの人にとって、今こそ音楽の力が必要とされている。心にそっと寄り添ってくれるような鶫の歌声と陸上自衛隊中部方面音楽隊の演奏には〝明日への希望″を見いだす一筋の光が見える。
陸上自衛隊中部方面音楽隊 3rdアルバム『そして、未来へ』
2020年6月3日リリース
鶫真衣(ソプラノ) 柴田昌宜(指揮)
COZQ-1657~8 ¥3,500(税込)
1.栄冠は君に輝く(作詞:加賀大介/作曲:古関裕而)
2.火の鳥(作詞:谷川俊太郎/作曲:ミッシェル・ルグラン)
組曲「Ray of Water」(作曲:菅野よう子)
3.第一楽章 海神
4.第二楽章 虹の子ども
5.第三楽章 Journey to Harmony(作詞:岡田惠和)
6.旅立ちの日に(作詞:小嶋 登/作曲:坂本浩美)
7.波雫(作詞:菅野祥子/作曲:菅野祥子)
8.World Dreams with Chorus(作詞:麻衣/作曲:久石 譲)
9.日本の四季(早春賦~浜辺の歌~赤とんぼ~ペチカ)
<早春賦>作詞:吉丸一昌/作曲:中田章
<浜辺の歌>作詞:林古渓/作曲:成田為三
<赤とんぼ>作詞:三木露風/作曲:山田耕筰
<ペチカ>作詞:北原白秋/作曲:山田耕筰
10.威風堂々(作詞:鶫 真衣/作曲:エドワード・エルガー)
11.そして、未来へ(作詞:鶫 真衣/作曲:村松崇継)
編曲:三浦秀秋
【DVD】
1.そして、未来へ
2.Ray of Water 第3楽章「Journey to Harmony」
配信リンク:https://va.lnk.to/2t2UL6