広島の復興をうたった古関裕而・作曲の幻の名曲『歌謡ひろしま』 シャンソン歌手・佐々木秀実が歌い継ぐ

2020.8.6

NHK連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルとなった作曲家の古関裕而が、終戦の翌年に作曲した『歌謡ひろしま』をシャンソン歌手の佐々木秀実が初めてレコーディングした。

 

『歌謡ひろしま』は、原爆投下の翌年に広島の復興を願い中国新聞社が歌詞を公募し、選ばれた広島市の歌人、山本紀代子さんの詩に古関が曲を付けた作品で、1946年8月9日付の朝刊で発表された。当時の記事に古関は「作曲にも苦心して何処でも誰にでもうたえるようにした」とコメントを寄せている。市民に親しまれたものの、レコード化されなかったこともあり、やがて忘れられ、幻の曲となっていた。

今回『歌謡ひろしま』を歌うことにあたり佐々木は「古関先生は、『応援』『復興』の歌を沢山書かれました。勿論、時代は違いますが、様々な事柄が次々に起こるこの時代に、私は古関先生のメロディーで、今こそ『復興』の魂をシャンソンにのせて歌いたいと思っております」とコメント。

『歌謡ひろしま』は8月26日に発売される佐々木秀実初のアルバム『シャンソン・ベスト』に収録される。また、レコーディング風景や『歌謡ひろしま』への想いを語る告知映像が本日公開された。

『歌謡ひろしま』に寄せて

日頃私が歌っている楽曲には、いくつも「戦争」をテーマとしている楽曲が多くあります。

戦争を知らない私ですが、人生を大きく変えてしまうその悲劇は、楽曲からヒシヒシと感じますし、
私は祖父母に育てられましたから、戦争の時代について沢山聞かされました。
それでも実際に、その時代を生きた方たちは、その辛さを「もう語りたくない」と
思って居られる方もとても多い事を知っています。
今までに訪れた故郷、長野県上田市にある美術館「無言館」や、埼玉県東松山市にある「丸木美術館」、
広島の原爆ドームや、鹿児島の「知覧特攻平和会館」で特攻隊の方が書かれた手紙を読んだ時も、
胸が張り裂けそうになりました。

今でも世界のどこかで戦争で苦しんでいる人たちの事を考えると、とても哀しいです。
そして、平和である事が何より素晴らしい世界なのだと痛感するのです。

シャンソンの楽曲では「アコーディオン弾き」や「リリー・マルレーン」など。
日本の楽曲では「約束」や「一本の鉛筆」などもそうです。

今年のNHK 連続テレビ小説の主人公と言われている作曲家・古関裕而先生は、戦中沢山「軍国歌謡」といわれる
作品を沢山書かれました。その時代の作曲家でも作詩家でも、歌い手でも画家でも、
表現者は皆同じ思いだったと思いますが、自由を奪われていた訳です。

戦後、「軍国歌謡」で戦争に行き、生きて帰れなかった兵士たち、残された方たちに対して、
古関先生は、ものすごく切ない思いをなさったと聴いております。
だって、自分が書いた曲で、兵士は送り出され、そして帰って来られなかったのですから、
それはそれは辛かった事だと思います。

『歌謡ひろしま』は、終戦の翌年に書かれた、復興の歌です。
古関先生にとっては、償いのレクイエムのつもりでかかれたのではないでしょうか。
私はそう感じています。

今、日本は戦争こそありませんが、
日本中、いや世界中、新型コロナウィルスという見えない怖さの中で闘っています。
ワクチンなどが出来るまでは、まだまだこの見えない物と共存し、戦うしかないのでしょう。

災害も多い日本です。
ネットが進むにつれて、見えないいじめや、不安もつきまとうようになってきた時代。
私は歌で、何が出来るでしょうか。

たかが歌。 されど歌。

歌の力、音楽の力はすさまじい力がある事は事実です。
時には優しい気持ちになり、時によっては武器にもなり得る力もあります。

この『歌謡ひろしま』は、今の時代だからこそ、復興の気持ちで、
これから大事に大事に、歌い継いでゆくべきだと思っております。

平和な時代が早く訪れますように。
みんなが疲れ果てたりしませんように。

歌い続けるのみです。

その根っこの部分を、私は『歌謡ひろしま』で思い知らされたような気持ちが致します。

2020年8月
佐々木秀実

 

<佐々木秀実プロフィール>

2002 年 故 ・ 阿久悠氏に見出され オリジナル楽曲『懺悔』で CD デビューの個性派ヴォーカリスト

◇ 誕生日:4月17日
◇ 出身地:長野県
◇ 血液型:B型
◇ 特技:三味線・日本舞踊・能楽

佐々木秀実/シャンソン・ベスト

COCP-41217
発売日:2020年8月26日
定価:¥3,000+税
発売元:日本コロムビア

 

収録内容

1.聞かせてよ愛の言葉を  PARLEZ-MOI D’AMOUR

作詩・作曲:Jean Lenoir/日本語詩:佐伯孝夫/編曲:美野春樹
シングル「愛と哀しみのバラード」(2016年)より

2.枯葉(New Vocal)  LES FEUILLES MORTES
作詩・作曲:Jacques Prevert – Joseph Kosma/日本語詩:岩谷時子/編曲:井上 鑑
アルバム「懺悔」(2002 / 2020年)より

3.まるでお芝居のように(New Vocal)  COMME AU THEATRE
作詩・作曲:Roland Arday/日本語詩:矢田部道一/編曲:美野春樹
アルバム「懺悔」(2002 / 2020年)より

4.さくらんぼの実る頃  LE TEMPS DES CERISES
作詩・作曲:Jean Baptiste Clement – Antoine Renard/日本語詩:高 英男/編曲:黒木千波留
アルバム「HIDEMI」(2007年)より

5.アコーディオン弾き  L’ACCORDEONISTE
作詩・作曲:Michel Emer/日本語詩:美輪明宏/編曲:黒木千波留
アルバム「HIDEMI」(2007年)より

6.再会  JE N’POURRAI JAMAIS T’OUBLIER
作詩・作曲:Patricia Carli – Emil Dimitrov/日本語詩:矢田部道一/編曲:羽岡 佳
シングル「夢物語」(2009年)より  Licensed by USM JAPAN, A UNIVERSAL MUSIC COMPANY

7.ラ・ボエーム  LA BOHEME
作詩・作曲:Jacques Plante – Charles Aznavour/日本語詩:なかにし 礼/編曲:美野春樹
アルバム「美しき愛のうた」(2014年)より

8.哀しみのソレアード  SOLEADO
作詩・作曲:Alberto Salerno – Francesco Specchia – Maurizio Seymandi – Dario Baldan Bembo –Ciro Dammicco/日本語詩:山川啓介/編曲:美野春樹
アルバム「美しき愛のうた」(2014年)より

9.スカーフ*  L’ECHARPE
作詩・作曲:Maurice Fanon/日本語詩:金子由香利

10.群衆*  LA FOULE
作詩・作曲:Enrique Dizeo – Michel Rivgauche – Angel Cabral/日本語詩:美輪明宏

11.愛の讃歌*  HYMNE A L’AMOUR
作詩・作曲:Edith Piaf – Margueritte Monnot/日本語詩:岩谷時子

12.ラストダンスは私に*  SAVE THE LAST DANCE FOR ME
作詩・作曲:Doc Pomus – Mort Shuman/日本語詩:岩谷時子

~ろくでなし*  MAUVAIS GARCON
作詩・作曲:Salvatore Adamo – Oscar Saintal – Joseph Elie De Boeck/日本語詩:岩谷時子

*ライブ音源 : 2017年11月27日 東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて収録
<ボーナス・トラック>
13.愛をありがとう
作詩:髙畠じゅん子/作曲:中川博之/編曲:石井為人
シングル「愛と哀しみのバラード」(2016年)より

14.あなたを愛さないために
作詩・作曲:加藤登紀子/編曲:美野春樹
シングル「焦がれ星」(2017年)より

15.一本の鉛筆
作詩:松山善三/作曲:佐藤 勝/編曲:北島直樹
アルバム「美しき日本のメロディ」(2012年)より

16.歌謡ひろしま(新録音)
作詩:山本紀代子/作曲:古関裕而/編曲:石田美智代

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