『新・BS日本のうた』収録現場に密着!コロナ禍な世の中にライブハウスから届ける若手歌手らの力強い歌声

2020.9.16

新型コロナ感染拡大防止策を徹底しながら、ウィズコロナ時代の新しいコンテンツの作り方を強いられているエンターテインメント業界。テレビ界もドラマからバラエティまですべての番組作りで模索が続くが、特に観客を入れての公開収録は軒並み中止になり、名場面集や収録裏話などを交えながら過去映像を流すなど、苦肉の策でしのいできた。
そんな中、毎週全国各地から公開放送を届けてきたNHKの『新・BS日本のうた』(毎週日曜日19:30~/NHK・BSプレミアムほか)も3月に収録を中断、6月に再開以降もNHKホールでの収録が続いていたが、このほど、およそ4カ月ぶりにNHKホール以外でのライブ収録を再開した。ロック、ポップス系ライブのイメージが強いライブハウス「KT Zepp Yokohama」で行われた『新・BS日本のうた』の無観客収録の模様を実況中継する。

この日収録されたのは9月20日放送分の『新・BS日本のうた』。出演は、司会も務めた石原詢子をはじめ、みちのく娘!としても大活躍を見せる工藤あやの津吹みゆ羽山みずき、旬なイケメンを集めて番組内で結成するユニット・五つ星演歌男子としてのステージも見せてくれたパク・ジュニョン松阪ゆうき真田ナオキ中澤卓也新浜レオンの総勢9人。演出を担当した横大路順一エグゼクティブプロデューサー(EP)も、「民放も含めて、今は、地上波の番組で若い演歌・歌謡曲系の歌手が歌える機会が少なくなっています。我々『新・BS日本のうた』は、ずっと若手が成長できる場を提供することを意識して番組を作ってきました。今回はZeppということで、特に若さを爆発させてくれそうな勢いのある歌手を集めました」と力が入る。

出演者の間に置かれたアクリル板

12:00をまわりいよいよ収録がスタート。無観客のため、当然ながら1階フロアは観客席を取り払っている。ガランとしたフロアを数台のカメラが縦横に動き周り、コーナーごとに収録が進んでいく。

Zeppで収録することを決めたのは3月。当時、ライブハウスは感染者が出たりして悪いイメージを持たれていて、厳しい状況におかれていた。でもここを見にきたら、換気は最新の設備でしっかりしているし、かなり安心して収録に臨める環境だと分かって、それで決めました」と横大路EPは話すが、出演者も安心感を持ってのびのびと、久しぶりの現場を楽しんでいるように見えた。新浜に感想を聞くと、「とにかく歌う場があることが幸せ」と笑顔をみせてくれた。

番組の進行はNHKの田村直之アナウンサー。「停滞したコロナムードを吹きとばすべく、若手歌手の力強い歌声を!」と歯切れのいいアナウンスで始まった収録のトップバッターは、「歌謡ミュージカル」をコンセプトに、ステージ狭しと歌って踊って見る人に元気を届けるみちのく娘!の3人。アクリル板を挟んだ窮屈なステージもものともせず、新曲『べっぴん音頭』を熱唱。女性の可愛らしさ、優しさを野菜やフルーツにたとえて歌った“女性賛歌”で、3人のはじける笑顔がステージに花を咲かせた。

みちのく娘!のステージの後を受けたのは、この日の見どころのひとつ――歌謡曲の歴史を彩った名曲を出演者一人ひとりがカバーするコーナー。
誰がどんな歌を選んで歌うのか、また今回、音楽と指揮を担当した、たかしまかんた氏、杉山ユカリ氏が各人に合わせてどんなアレンジで聴かせてくれるのか、興味津々だ。
ラインナップを順に並べてみると、まず真田ナオキ『さらば友よ』。1974年に森進一が30枚目のシングルとしてリリースした曲で、阿久悠の詞らしく、友情と好きな女性への思いのはざまで悩む男の心情を切々と描いた内容。ハスキーボイスの先輩の歌を見事に歌い上げた。真田は「お客さんがいると勝手に笑顔になるんですけど、カメラに向かうとぎこちなくなってしまって……」と、無観客収録へのとまどいも。2人目は中澤卓也が、あおい輝彦の『二人の世界』を披露。1970年から放送された、山田太一脚本の同名ドラマの主題歌として1971年にリリース。「あおいさんの柔らかな雰囲気を大事に歌いたい」と話す中澤がミラクルボイスを駆使して往年の名曲を歌い上げた。
続いて登場したのは津吹みゆ工藤あやの羽山みずき。「憧れの都はるみさんのような歌手に」と話す津吹が選んだのは、その都はるみの『涙の連絡船』、“歌の演技派”を目指したいと抱負を語った工藤は高田みづえの『秋冬』、羽山は早いテンポのワルツ曲、園まりの『何も云わないで』を選曲。それぞれジャンルは違うが、大人の世界を見事に表現していた。
パク・ジュニョン三田明が歌った夜間高校を舞台にした学園ソング『みんな名もなく貧しいけれど』。まだ日本が貧しかった時代に夢を持って生きる若者の姿を描いたこの曲を聴いて「夢をあきらめずに頑張っていこうと改めて思った」というパクが歌い上げた。

世代を超えて愛される歌手を目指すという新浜レオンが選んだのは、堺正章のヒット曲『街の灯り』演歌、民謡からJ-POPまで歌いこなすハイブリッドシンガー松阪ゆうきは、ジャズテイストも取り入れた岡晴夫の『東京の花売り娘』を歌った。

最後は、この日、司会者として出演者の魅力を引き出す役目も担って大活躍の石原詢子が「今の時代に希望を感じてもらえる歌を」という理由で選んだ、江利チエミの『新妻に捧げる歌』でコーナーを締めた。

音楽ジャンルの垣根を取り払って、歌謡曲、演歌が混じった新しい音楽体系をを作ることができる若手がどんどん出てきたので、われわれもそれをバックアップしていきたいと思っている
という横大路EPの話を裏付けるように、それぞれが大先輩のヒット曲を自分なりに昇華して歌う姿に、新しい時代の歌謡界の可能性を感じたコーナーだった。

 

⇒後半はみちのく娘!と五つ星演歌男子が日本中に元気を届ける!出演者全員が初挑戦の歌も披露!

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