演歌系シンガーソングライター大沢桃子が浅草公会堂で毎年恒例コンサートを開催「心が笑顔になるような曲を届けたい」

2020.10.15

演歌系シンガーソングライターというユニークな活動で人気の大沢桃子が、10月10日、東京・浅草公会堂で8年連続8回目のコンサート「大沢桃子コンサートin浅草公会堂~エレキDE演歌2020」を開催した。専属バンド・スーパーピンクパンサーの演奏も含め、全17曲を披露し、元気な歌声とトークでファンを楽しませた。

 

コロナ禍の下、新曲『どんどはれ』のキャンペーンやライブは軒並み延期になり、ファンの前に姿を見せるのは久しぶりだという大沢。この日は感染防止対策として入場前に検温と消毒を実施、また入場者を収容人数の3分の1にあたる350人に減らして開催。同時に生ライブ配信も行った。

 

大沢といえば彼女のデビューのきっかけを作ったのが、エレキの神様の異名をとる寺内タケシ。’60~’70年代に、ロックのみならずシューベルトの『未完成』などのクラシックや、この日も途中、スーパーピンクパンサーの演奏で披露された『津軽じょんがら節』に代表されるエレキ民謡シリーズなどで、日本中にエレキブームを巻き起こしたレジェンドだ。

オープニングで、まずは『どんどはれ』を元気に披露した後、歌の師匠として尊敬する寺内の人気シリーズから『ソーラン節』『花笠音頭』『よさこい節』を熱唱。迫力あるエレキサウンドに乗せて気持ちよさそうに3曲を歌い上げた。新調したという着物姿で軽快に踏むステップも決まり、会場から大きな拍手がわいていた。

冒頭で「世の中、不安なことが続いていますが、そんな中、コロナにも台風にも負けず、命がけでお越しいただいて、本当にありがとうございます。今私の胸の内は感謝の気持ちでいっぱいです」と挨拶。雨の中、応援グッズを抱えて集まってくれたファンへの感謝から始まったステージは、スーパーピンクパンサーの演奏にのって最初からヒートアップ。5枚目のシングルとして2007年にリリースした『夢をくれた人』をはさんで早くも衣装替え。その間を、スーパーピンクパンサーが加山雄三の『夜空の星』、『君といつまでも』の演奏がつなぐ。

矢絣の小紋と紫の袴に着替えて登場した大沢は、ここから「心が明るくなるような、私の大好きな」昭和歌謡メドレーに突入。並木路子の『りんごの唄』、菅原都々子の『月がとっても青いから』、笠木シヅ子の『東京ブギ』の3曲を軽快に歌うと、またまた着替えタイム。
その間はスーパーピンクパンサーが、スプートニクスの『霧のカレリア』、ベンチャーズの『さすらいのギター』、アストロノウツのヒット曲で寺内タケシもカバーした『太陽の彼方に』と’60~’70年代を代表するエレキバンドの曲で会場を温める。

再びステージに現れた大沢は、「コロナで自粛期間中、生地を買ってきて自分で仕立てた」というシックなドレスで登場。2011年にリリースした『大沢桃子 全曲集~涙唄~』に収録された『演歌娘21』を歌い、スーパーピンクパンサーの『二人の銀座』の演奏に送られてもう一度、着替えのために舞台袖へ。

装いも一新、鮮やかな黄色のワンピースをまとって登場した大沢にここでうれしいメッセージが届く。大沢の踊りの師匠・浅香光代家元がパートナーの世志凡太と共に、会場や配信ライブのカメラの向こうのお客さんに向けて発信した「お世話になっております。どうか桃子をかわいがってやってください」というコメントが会場に流された。続いて元NHKの徳田章アナウンサーがゲストで登場。「僕が担当しているCS放送の番組『聴かせて!あなたのリクエスト』でも桃ちゃんの曲はいつも(リクエストの)上位に入っていますよ。これからもいい歌を皆さんに届けてください」と激励。さらに「桃ちゃんが着替えてる最中のスーパーピンクパンサーの演奏がまたいいんですよ。昭和40年代を中心に、知っている曲ばかりで。今日お見えの皆さんも懐かしい曲ばかりではないでしょうか」と絶賛。大沢の歌とスーパーピンクパンサーの演奏が交互に繰り返されたステージ前半の構成は、コンサートというよりショーと呼んだほうがしっくりくる内容で大いに楽しめた。

次に披露された曲は、大沢が仲村つばきのペンネームでスーパーピンクパンサーのボーカル曲として書き下ろした『恋する銀座』。9月に放送された朝の情報番組『グッとラック!』(TBS系)でMCの立川志らくが「演歌界の新しい顔は大沢桃子という歌手だと思っています」「私の一番好きな曲は『恋する銀座』。エレキと演歌の融合、この違和感が心地いい」と大絶賛した曲。GSサウンドも彷彿されるこの曲のイメージで探したという黄色の地に白い水玉模様のロカビリーワンピがお似合いだった。

 

ステージはここで換気タイムも含めて20分間の休憩。

後半は「桃子女将劇場」で幕を開けた。大沢が飲み屋の女将に扮して、「お客さん、故郷(くに)はどちら?東京の人?」と問いかける一人芝居の後にアルバム曲『夜半の酒』、『南部恋歌』、そして昨年リリースした『懐郷』をしっとりと歌い上げ、女性らしい一面を見せた。

 

ステージにはこの日の司会者、風呂わく三が登場し、スーパーピンクパンサーの面々を紹介。ツインギター、ドラム、ベース、キーボードにバイオリン、サックスも加わった8人編成のバンドで、大沢が修業を積んだ寺内タケシの下でバンドメンバーとして活躍していたスーパーピンクパンサーは、現在は専属バンドとして大沢を支えている。

この後はそのスーパーピンクパンサーの演奏で、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン主演の映画『ひまわり』の主題歌、2人のギターをフィーチャーしてのベンチャーズの『キャラバン』と寺内タケシの代表曲、エレキ版の『津軽じょんがら節』が披露され、そのまま続けて大沢が、なかむら椿名義で作った『イギリス海岸』へ。
私の故郷、岩手県の花巻市に宮沢賢治が命名したイギリス海岸という場所があります。素敵な名前ですよね。その場所を舞台にした曲を聴いていただきました

ステージも残すところ数曲。ここからはエンディングに向かって、大沢の持ち歌が続く。まずは2017年リリースの第17弾シングル『すずらんの道』(作詞・作曲/仲村つばき)、出身の大船渡を舞台にした2018年発表の『椿の咲く港』(作詞・作曲/仲村つばき)、そして2011年の東日本大震災で破壊された街や大切な人の思い出を忘れないようにと、三陸鉄道にある「恋し浜」という駅名に思いを重ねて作った2012年発表の『恋し浜』(作詞・なかむら椿)の3曲を故郷への思いを胸に熱唱。

デビューして18年目。今回の『どんどはれ』で20枚目のシングルをお届けできました。この間もカラオケ屋さんに行って、いったい私の曲は何曲くらい(カラオケに)入っているんだろうって、数えてみたら50曲以上ありました。本当に皆さんのおかげです。ありがとうございます」。そう挨拶をしてエンディングへ。まずは『どんどはれ』のカップリング曲で初のムード歌謡として作曲したという『神戸しのび恋』、そしてこちらも自身で作詞・作曲を手掛けた『どんどはれ』を力強く歌い上げた。ちなみに「どんどはれ」とは、岩手県遠野地方の言葉で、昔話を語る際に最後に使う「めでたし、めでたし」の意味。
『どんどはれ』は5月20日にリリースして、自粛期間中でもありほんとに何もできなくて。そんな中でも皆さんのおかげで、オリコン演歌・歌謡ランキングで初登場2位をいただきました。私は自分のために歌を作ることはしたくなくて、皆さんの心がフーっと癒されるような、心が笑顔になれるような曲をお届けしたいと思いながら曲を作っています。『どんどはれ』の1,2,3番に共通して出てくる“思い出してね私のことを”という歌詞には“皆さんにひとりじゃないよって思っていただきたい。寂しい、辛い時はよかったら私のことを思い出してくださいね、という思いを込めました」とファンとの絆を呼び掛けた。

 

この後のアンコール曲の『風の丘』まで全17曲。スーパーピンクパンサーの演奏も含めたメドレー曲も1曲ずつカウントすれば29曲。演歌、歌謡曲からポップス、映画音楽まで内容満載の2時間半のステージに、お客さんも大満足の様子だった。

 

コロナ禍で依然としてイベントなどの開催も難しい時期が続くが、大沢は、10月7日に『全曲集~南部恋歌・どんどはれ』を発売、12月8日には東京・浅草ビューホテルでディナーショー&生オケ発表会(課題曲:『どんどはれ』『神戸しのび恋』)開催と少しでもファンと触れ合える機会をつくろうと奮闘している。大沢桃子の元気な歌を聴いて、年末にはコロナも去って“どんどはれ!”といきたいところだ。

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