演歌界の革命児!?鳥羽一郎の長男・作詞作曲家、木村竜蔵。もう一度紅白のトリは演歌で飾りたい!弟・木村徹二に作る曲は演歌とポップスを融合させて演歌界を変えるプロジェクト!

高校生からポップスのシンガーソングライターとして活動し、2012年にはメジャーデビュー、そして2016年からは弟の木村徹二とのデュオ・竜徹日記をスタートさせ、今や弟や父への楽曲提供はもちろん、演歌界の作詞作曲家としてひっぱりだこの木村竜蔵。この春にはソロ時代の曲が配信もされた。演歌界を変えたいと切望するその熱い胸の内を聞いた。
――ご家族の思い出がモチーフになっている曲も多いですよね。徹二さんの『湯呑み酒』、鳥羽さん山川さんに提供された『俺たちの子守唄』もそうですね。楽曲作りのこだわりがあれば教えてください。
ノンフクションが好きなんですよね。なので、自分の身に起きたことの方が書きやすいです。1%~10%くらいのノンフクションがあれば血が通った作品になると思っています。詞のこだわりがいくつかあるんですが、ひとつは情景描写です。活字で見て絵が浮かぶこと。そして、客観性、母音と子音のバランス、サビのキャッチーさ、などを複合的に考えています。詞を書くとなると結構根を詰めます。作詞の作業って言葉の選択なんですよね。自分たちの曲だとなかなか言葉を選びきれなくて迷子になることがあります。
『湯吞み酒』を作るのにあたっては『雪唄』のAタイプBタイプのカップリング曲も全部自分が書いたので、正直もうこれ以上出ないよ(笑)と思っていました。締め切りも迫っていたのでどうしようかと思い悩んでいる時に、祖父が亡くなり葬儀にも参列したんです。その時に祖父の思い出をモチーフに作ろうと思いました。それまでは全く違う曲を構想していたんですが、切り替えて作ったのが『湯呑み酒』です。
『俺たちの子守歌』は自分も子供の頃から見ていた風景と、父と叔父から聞いた若い頃の苦労話をビジュアル化しました。家族に提供する歌は比較的書きやすいことが多いです。
――ポップスの竜徹日記、演歌の作詞作曲家、拝見しているとボーダーレスな感じを受けていますがいかがですか。
はい。竜徹日記をやることによって作家としての考えが熟成するときもあり、相互作用があるんですよね。
楽曲を作っている時に、竜徹日記に活かしたらいいなと思う瞬間もあって、だから特に線は引いていないです。
全てをプラスに考えることで詞も生き方も変わる
――アウトプットし続けているとだんだん枯渇して行きませんか。インプットはどうしていらっしゃるんですか?
日常全てです。一人の時は読書、映画、旅行、車、バイクですね。それから、シンプルですが友達と飲みに行って話を聞いている時にアイディアが浮かんだりもします。最近読んだのは「暇と退屈の倫理学」、「死は存在しない」という本です。大事な人の死も何度か経験しいているので、宇宙とか死とかに興味があって、それが曲作りのモチーフになることがあります。
本を読んだりYouTubeで見て、その中で腑に落ちたものがあったりすると曲に活かせるなーと思ったりします。生き方の参考にもなります。弟に書いた『みだれ咲き』もそうです。
17歳の時にこの業界に誘ってくださったプロデュ―サーの方が、自分が20歳の時に亡くなり、親友も29歳の時に突然亡くなってしまいました。とても悲しく辛かったのですが、向き合うことが大事だと思い真剣に向き合いました。傷に塩を塗ることにもなるんですが、それを経ると大事な人の死すら自分にとって意味のあるものになると思えるんです。
20歳の時、自分をプロデュースしてくださった方が亡くなった際には、周囲の人たちが自分からさーっと引いていきました。
その人ありきの自分だったことが分かり、自分ひとりでも人が寄ってくる人間にならないとと思い、ギターでの弾き語りを始めました。
もしもその方が生きていらしたら今の自分はなかったかも知れないですし、向き合ったからこそ、その考えに行きつきました。大事な人の死ですが、自分にもたらしてくれたプレゼントだと考えるようにしたんです。
親友の死に向き合った29歳の時には、自分が彼の立場だったらどうかと考えて、悲しんでばかりでは嫌だろうなと。
自分の人生に彼の死を活かせるにはどうしたらいいかと考えました。その彼はミュージシャンで、ミュージシャンとして生涯を閉じたんです。自分はその時まだ音楽だけでは食べて行けない状況でしたが、自分も生涯ミュージシャンで生きて行こうと決めて、作詞作曲家としての活動にも力を入れ始めました。その人たちの死と向き合って、自分がもしも亡くなった時に、周りの人たちに良い影響をもたらすには…と考えて作った歌が『みだれ咲き』です。
歌手にとって一番売れた曲ではなく、一番好きな曲を作りたい
――ご家族以外の方に提供される曲も増えてきたと思いますが、何か意識されていることはありますか?
歌い手として歌いたくない歌を歌うのは嫌だろうと思うので、初めての人に提供する際は、どんな歌が好きで、どういう歌を歌いたいのかなど、なるべくディスカッションはします。その人にとって“この曲が一番売れた”という曲を作るよりも、“この曲が一番好き”という曲を作りたいんです。好きな曲を歌った方が歌い手が輝くと思うんですよね。聞いている方にとっても幸福感が違うと思うんです。そういういい循環を作りたいと思っています。演歌界に関わろうと思ったのもそこが始まりなんですよね。
子供の頃から演歌が常に周りにあったんですが、詞も曲も同じような感じで食傷気味で、規模も小さくなっていっている気がしちゃったんです。気張る人がいないとダメなんじゃないかと思ったんです。運の良いことに弟が演歌が上手く歌えたので、今までの演歌と違った楽曲が作れたら弟と一緒にこの演歌界をもうひと盛り上がりさせられるんじゃないかなと思いました。
演歌の歌詞の中の男尊女卑も嫌で、男は黙って…とか女は下がって…とかは気持ち悪いんですよね。なので、弟に書いている曲はそれも意識しています。
紅白のトリをもう一度演歌で。それが木村徹二プロジェクト
――子供の頃から演歌がいつも側にあって、演歌をリスペクトしているからこその挑戦なんでしょうね。
“演歌界を変えたい”というのが根底にあるんです。
子供の頃に見ていた紅白のトリは北島三郎さんで、とても盛り上がっていたのを記憶しています。あの頃のような風景がもう一度見たい、作りたいんですよね。そのために何をするかなんです。望月琉叶さんに提供した『朧月』はサビで転調してチャレンジしました。
だけど、演歌界ってポップスと違って目新しいものをやればいいというものでもないんです。ファンの方にも“演歌ってこういうもの”っていう意思があるんです。なので、変えるところと変えちゃいけないところの見極めとバランスがとても大事なんです。
それを実験的にやったのが弟の『二代目』なんです。あの曲の骨組みはポップスなんです。だけど肉付けは演歌にして着物を着させました。あの曲を出した際に「久しぶりの骨太演歌だ」という反応があったんです。それで、「ああ、これは大丈夫なんだ」と思いました。『二代目』が着物を着ていたとすれば、和柄の洋服にしたのが『みだれ咲き』です。さらに破れたヴィンテージのジーパンを履かせたのが『雪唄』なんです。三段階で考えてやりました。
だからアレンジャーさんってとても大事なんですよね。自分はアレンジャーさんと深い時間まで飲みながらディスカッションして作るんです。どんな楽器をチョイスするとかも。
『雪唄』はポップスみたいなものです。あの歌が“演歌”だという世界観が作れたら、演歌はもうちょっと延命するかなと思います。そしてもう少し若い世代にも受け入れられて、さらに言うと和ロック、和ポップスみたいなところに行きつくといいんじゃないかと思っています。
その架け橋が木村徹二プロジェクトで、それこそが自分のミッションなんです。
――徹二さんからはこういう歌が歌いたいというリクエストはあるんですか?
基本ないです。自分が行き詰った時に聞くと客観的な意見は言ってくれます。こういう歌は評判が良かったとか、こういう歌を歌って欲しいと言われたとか、ファンの方や、歌手仲間のみなさんの意見を弟から聞くことで参考にはなっています。自分が、弟の歌唱に全幅の信頼を置いているように、彼も、自分が作るものに全幅の信頼を寄せてくれています。そこが木村徹二プロジェクトの一番の強みじゃないかと思っています。
――今は木村徹二プロジェクトを始め、作詞作曲家としてお忙しい日々だと思いますが、この先何か考えていらっしゃることはありますか?
竜徹日記をやった時にソロ活動は一旦区切りをつけたんですが、色々経験してきた中で、今またソロをやっても面白いだろうなとも思い始めています。ライブは時々やっていまして、最近、ソロだった頃の10年以上前の作品が配信開始になったんですが、それがきっかけになったらいいなとは思ってはいます。
木村竜蔵は自分や周囲を客観視でき綿密な戦略を立てている敏腕プロデュ―サーだ。
”死”に興味があるのは同時に”生”にも興味があるということ。おそらく木村竜蔵は木村家に生まれた意味を考え、それを最大限に活かす方法も考えたのではないだろうか。それが”木村徹二プロジェクト”なのかも知れない。
しかし、その繊細な内面とは裏腹に弟・徹二と共に人前で話す時はサービス精神旺盛なボケ役に回りまるで漫才コンビと化す。そのギャップがたまらなく魅力的なのである。木村竜蔵という作詞作曲家はまさに策士である。
木村竜蔵 1stミニアルバム『6本の弦の隙間から』
- CD発売日:2012年9月12日
- 品番:CRCP-40328
- 価格:1,676円(税込)
- 【収録曲】
- 1.風の祈り
- 2.四季
- 3.雨薫ル
- 4.入道雲
- 5.セレナーデ
木村徹二 『雪唄』特別盤
2025年7月9日発売
品番:CRCN-8760
定価:¥1,500 (税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 雪唄 作詩:木村 竜蔵/作曲:木村 竜蔵/編曲:遠山 敦
2. 湯呑ゆのみ酒ざけ 作詩:木村 竜蔵/作曲:木村 竜蔵/編曲:遠山 敦
3. 鯱しゃち 作詩:新本 創子/作曲:三原 綱木/編曲:丸山 雅仁
4. 雪唄 (オリジナル・カラオケ)
5. 湯呑み酒 (オリジナル・カラオケ)
<あわせて読みたい>
鳥羽一郎の長男・木村竜蔵、日本クラウンからリリースしたソロ4作品を配信開始! 過去のMVもYouTubeで公開
演歌最強ファミリー“木村家”次男・木村徹二の3rdシングル『雪唄』が大好評! 「演歌とポップスの境界線を“攻めた”新曲が好感触」
演歌界最強ファミリー“木村家”鳥羽一郎・山川豊・木村竜蔵・木村徹二が都内で開催のコンサート&取材会をレポート! 「4人で紅白のステージに立ちたい」
木村徹二の2ndシングル『みだれ咲き』が絶好調! 「後半も、この勢いのまま突っ走っていきたいと思いますので、皆さんもついてきてください(笑)」
鳥羽一郎と山川豊、都内で初の兄弟デュオ作品『俺たちの子守唄』の店頭キャンペーンを実施! 「来年あたりは紅白を目指したい」と意気込み語る
演歌界のニュータイプシンガー・望月琉叶が5作目の新曲『朧月』を発表! 「思い描いたのは『源氏物語』の世界。平安貴族の実らぬ恋を妄想しながら歌っています」