愛しのレコードジャケット<三波春夫と音頭>編#1

2019.4.19

アナログレコードをこよなく愛するコレクター・もりしげゆき氏が、ジャケットデザインという観点から、演歌・歌謡曲のレコードを紹介する特集「愛しのレコードジャケット」。
第1回目は、歌謡界に多くの金字塔をうちたてた国民的歌手・三波春夫が歌った数々の「音頭」をテーマに、4回にわたって特集する。
今回紹介するのは、オリンピックや万博など国民的行事のテーマ曲となった音頭たちだ。


私がレコードを収集する中で、熱心に集めたのが三波春夫の音頭だった。
三波春夫といえば、「チャンチキおけさ」や「世界の国からこんにちは」など数々のヒット曲を持ち、毎年紅白歌合戦にも出場する超大物の国民的歌手。
私が若い頃はそんな歌謡界の大御所よりも、もっぱらビートルズやサザンオールスターズばかり聴いていたのだが、年をとってレコードを集め始めた頃から三波春夫の音頭が気になるようになった。

私がレコードを集めるためレコード店を巡ったり、関連書籍を読んでいると必ずといっていいほど、三波春夫の音頭が現れる。
しかもそれらは私の収集欲を満たしてくれる面白いものばかりだった。
テクノ、アニソンなど演歌以外のジャンルとコラボしたり、ちょっとふざけたような歌詞で遊んでみたり・・・。
国民的歌手と呼ばれた大御所が何故こんな音頭を?と思うことが続き、気がつけば三波春夫の音頭ばかり探すようになっていた。
三波春夫の明るくよく通る歌声と、ジャンルやスタイルにこだわらない遊び心に惹かれていったのだ。

昭和の大イベントを「音頭」で歌う

昭和の大イベントといえば、1964年の東京五輪と1970年の大阪万博。
両イベント共に各レコード会社が音頭を競作したが、やはり三波春夫のバージョンが印象深い。
冒頭写真で紹介した「東京五輪音頭」は、五輪開催が待ち遠しい国民の心情を三波春夫が高らかに歌い上げている。
ちなみに東京五輪音頭には緑ジャケと青ジャケの二種類ある。緑は東京五輪音頭がA面、B面に「東京五輪おどり」となっているが青は逆になっている。

 

「万国博覧会音頭」は、大ヒット曲「世界の国からこんにちは」のB面で目立たなかったが、こちらも世界中の人びとを迎える喜びにあふれた歌詞が特徴的だ。
なお、ジャケット裏には「世界の国からこんにちは」は日本万博テーマソングとあるのだが、「万国博覧会音頭」はただの「流行歌」としか表記されてない。もちろん「世界の国から〜」も好きな曲だが、音頭贔屓としてはちょっと残念。

 

ちなみに、五輪、万博という昭和の2大イベントの他にも国民的行事をテーマにした音頭を歌っている。
「未来音頭」は1988年に開催された「ぎふ中部未来博」をテーマにした音頭で、博覧会といえば三波先生の出番だろう。

 

「音頭」という日本人にとって耳なじみが良くキャッチーなリズムに乗せ、伸びやかに笑顔で歌う三波春夫は、国民的行事を歌わせたらNo.1ともいえる存在だ。ところで、2020年の東京五輪では「東京五輪音頭-2020-」と題し、石川さゆり、加山雄三、竹原ピストルによるリメイク版が制作されたそうだが、やはり三波春夫の歌声が聴けないのはさびしい限り。
あらためて三波春夫版「東京五輪」をアナログ盤で聴きなおしてみようと思う。

次回は、かなり異色なテーマを音頭にした楽曲たちを紹介する。
(写真提供・文/もりしげゆき)

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