<そして、三山ひろしと叶えるこれからの夢>ミイガンプロダクション社長/歌手・松前ひろ子#3

2019.10.30

50周年を迎え、愛弟子と念願の番組共演。そして今の夢は…。

――「演歌は良い歌詞があってこそ、良いメロディーが浮かぶ」とは夫・中村典正さんの弁だが、松前さん自身も歌詞に対する思いが強い。若かった三山にも歌うとき『歌詞に出てくる主人公はどういう人なのか』と、その人物像を考えるように話してきたというが、主人公の人物像や時代背景などを熱心に勉強する三山の姿に驚かされることもあったという。

演歌は詞を伝えることが大事なので、たとえば彼がデビュー間もない20代の頃に、『人生に疲れて路地裏で酒を飲んで~』みたいな大人の詞が来た場合には、『彼にはまだ早いかな』と作曲家が判断して後にとっておくこともありました。でも『この歌はこういう人だからよく理解してね』と一言アドバイスすると、彼はその人物像についてすごくよく調べるんです。また、歌詞の世界がどんな時代を背景にしたものか、歴史についてもよく知っていて、ちょっと聞いただけで予想の3倍ぐらいの情報が返ってくる。勉強量もすごくて、どこでそんなに勉強しているんだろうと思ったら、移動中のバスや新幹線で本をよんだりして、勉強しているんですね。
時間を無駄にしないし、集中力もある。そして人目も気にしない。『歌謡浪曲』の舞台のときなどは、楽屋で、最初の曲から最後まで通しで声を出しています。普通、楽屋では、軽く鼻歌で調子を見るくらいですけど、彼は全力で声を出して唸る。芯から歌が好きで、人前に出るときには、お客様に喜んでもらい、気持ちよくお帰りいただくことを一番に考えているんです。だから妥協しない。私と同じ“全力投球”の精神の持ち主です

 

――三山と言えば特技のけん玉でも有名だが、もともと得意だったわけではなく、「お客様に喜んでもらいたい」という気持ちから生まれたものだった。ファンサービスにもその人柄がうかがえる。

彼は何をやるのも一生懸命。上辺だけではなく、心から頑張るので、お客様に愛されるのだと思います。たとえばCDを手売りするとき、(ファンの人と)写真を撮るのでも、一人ひとりと丁寧に接する。冗談で『サービスで肩に手をかけて差し上げたら?』と言うと、『とんでもない』と“気をつけ”の姿勢のまま、『僕の歌を聴いていただいて、いいなと思ったら(CDを)買っていただきます』って。そんなところも、とっても彼らしいと思うんです。
けん玉も、お客様を退屈させないようにと彼自身が考えたことです。昔ながらの遊びだから良いだろうと思ったようですが、けん玉を練習して、いざ披露してみたら失敗ばかり。だけど、それでお客様は大爆笑して、結果的には喜んでもらえたわけです。でも彼はそこから猛練習して、どんどん上達して、今では指導員ですからね。その後も竹とんぼ作りをやったりと、ファンサービスに対する彼の貪欲さには驚かされます。そう言えば、私が帯締めに使う棒を、板を削って作ってプレゼントしてくれたこともありました。手先も器用なのですが、彼は『どうしたら相手が喜んでくれるか』を常に考えていて、そのための労を惜しまない人なんです

――今年デビュー50周年を迎えた松前さん。その記念曲第2弾である『夫婦鶴』は、恩師・北島三郎がプロデュースを担当。レコ―ディングにも北島氏が立ち会い、松前さんへの歌唱指導も行った。長年連れ添った夫婦の来し方と未来を唄うこの曲は、北島が松前さん夫妻をイメージして書いたものだった。ところが、この曲の発売前の8月、夫の中村氏は惜しまれながらこの世を去ってしまう。

テレビ出演したとき北島さんに『50周年だから曲を書いて』とお願いしたんです。私はずっと『遅咲きでも小さな花を咲かせたい』という言葉を大事にしてきましたが、生前、曲を聴いた主人は『この曲で花が咲くよ』と言ってくれました。だから、いつまでも泣いてはいられないなと。辛いけど、その分頑張らなければと思っています。
今後の夢は一日でも長く歌っていくということ。歌手には終わりはありませんから。実は45周年のコンサートのときに『この辺で、そろそろ終わりかな』と思っていたんですけど、お客様から『50周年を楽しみにしているよ』と言っていただいて。その言葉に励まされて、50周年までやることになりました。声が出るうちは歌っていきたいと思いますが、いつかは三山くんにバトンタッチして、彼に私の歌手魂を引き継いでいってほしいです。今年で18回目となる『いい夫婦の日ディナーショー』は、彼が一人になっても何回でも続けてほしいと思っています

――BS日テレで放送中の「あさうたワイド」では三山とともに司会を務め、念願だった番組共演について楽しそうに語る松前さん。また三山の舞台衣装を担当している松前さんは、9月の『新歌舞伎座開場60周年記念 三山ひろし特別公演』でも、何度も来場する人が楽しめるようにと、衣装も日替わりで準備しているそう。

三山くんは、私ができなかったことをどんどん叶えています。「あさうたワイド」でも、横にいてとても頼もしく感じます。ゲストの方に合わせて話をしっかり切り替えることができますし、案外器用な面も持っているんです。ゲストが新人のときはしっかりフォローもしますし。楽しい番組になっていると思います。
彼の舞台衣装を作るのも私の楽しみです。地方公演では、『紅白歌合戦』で着た衣装など大きなステージのときの衣装を見ていただくために着ることはありますが、基本的には同じものは着せません。その方がお客様に楽しんでいただけますし、自分の場合もそうですが、いいものを着ればその分頑張ろうと思えますから。私としては、彼が自分の一代記で歌謡浪曲をやってほしいですし、そのときの衣装を作ってみたいですね。
私は今、プロダクションの社長も務めていますが、会社というよりスタッフも所属タレントもみんな家族だと思っています。その家族が三山くん始め、タレントたちの夢を実現するために一丸となって頑張っていく。そんな会社であり続けいけたら、それ以上の望みはありません

作品情報

info01

松前ひろ子「夫婦鶴」

恩師北島三郎プロデュース、作詞・作曲原譲二による、歌手人生50周年記念曲第2弾!永年連れ添った夫婦の愛を描いた夫婦慧可の決定盤!カップリング曲「おめでとさん」(作詞:千葉幸雄/作曲:中村典正)¥1,204円(税別)/㈱徳間ジャパンコミュニケーションズ

関連キーワード

この特集の別の記事を読む