愛しのレコードジャケット<スポーツ紅白歌合戦>

2019.10.31

スポーツ選手たちの豪華競演による「妄想紅白歌合戦」

今はもう秋、誰もいない海…
センチメンタルジャーニーな出だしで始まってしまったが、 世の中は秋の気配が濃厚だ。
体を動かすにもよい季節になってきた。
今回は「スポーツの秋」にちなんで、昭和に活躍したスポーツ選手が出したレコードコレクションを、架空の紅白歌合戦形式で紹介しよう。

さて始まりました。「昭和のスポーツ紅白歌合戦」!

会場は、往年の名アスリートたちの登場を今や遅しと待つ観客の熱気であふれかえっている。

1回戦「プロ野球ハンサムピッチャー対決」

「エモやん」こと江本孟紀と、「炎のアンダースロー」小林繫が颯爽と入場してきた!!

あなたまかせの夜/江本孟紀・センセーション
作詞:なかにし礼 作曲:渡辺敬之


江本孟紀が引退後に出した著書「プロ野球を10倍楽しく見る方法」がベストセラーとなり、それにあやかって出したのがこのレコードである。
ムーディな音楽をバックに「一つ、俺のやり方に絶対服従のこと」と、自分と付き合う時の女性の心構えを1から10まで語っている。

亜紀子/小林繫
作詞:八谷けい 作曲:内山田洋


小林繫は、1971年の「空白の1日」事件に関連して巨人から阪神に移籍し、その潔さから多くのファンの共感を得た選手である。
「亜紀子」は、クールファイブの内山田洋作曲のムード歌謡だが、マスクと同様その歌声も甘くよく通る。
プロの歌手といってもおかしくないほどの高い歌唱力だ。

2回戦「爽やかカップルVS大人の男女」のデュエット対決

フィギュアスケートの佐野稔と渡辺しのぶが鮮やかな曲線を描きながら登場すれば、プロレスラーの木村健吾は歌手の中山朋子をエスコートして現れた!

君がいるから/佐野稔・渡辺しのぶ
作詞:たかたかし 作詞:大野弘也


「フィギュアスケート界の貴公子」こと佐野稔と、女子フィギュアスケート選手の渡辺しのぶによる爽やかなデュエットソングである。
佐野の歌声はアイドルのように軽やかで、歌に慣れず音程がやや不安定な渡辺を上手くフォローしている。
聞いていて清々しくなる曲だ。

デュオ・ランバダ/木村健吾・中山朋子
作詞:石坂まさを 作詞:美波有


「デュオ・ランバダ」は、当時ブームのランバダを元にムード歌謡風にアレンジした曲である。
囁き合うように歌う木村と中山は、ムード歌謡の王道である「訳あり男女」のイメージにぴったりだ。
木村健吾は、新日本プロレスで藤波辰巳のライバルとして活躍した選手だが、歌唱力に定評があり数枚レコードを発表している。

3回戦「プロボクシングチャンプ対決」

甘い雰囲気から変わって、会場にしぶいイントロが流れてきた。

元WBC世界ライト級チャンピオンのガッツ石松と元WBA・WBC世界スーパーウェルター級チャンピオンの輪島功一の入場だ!

炎の男/輪島功一
作詞:滝田順 作曲:曽根幸明


輪島功一といえば、今では「お団子屋のおもしろいおじさん」というイメージだが、現役時代は多彩なテクニックと不屈の闘志で人気を博したプロボクサーである。
「炎の男」とは輪島の現役時代のニックネームであるが、ファイトスタイルをそのまま表したような力強い演歌である。

石松おとこ節/ガッツ石松
作曲:藤田まさと 作曲:曽根幸明


ガッツ石松がうたう「石松おとこ節」は、石松自身の波乱の人生をつづった正調演歌だ。
現役時代は三度笠に合羽姿で入場したり、番組で「OK牧場!」を連発したりとかなりユニークな人だが、幼少期は貧困生活を経験するなど苦労も多かったらしい。
石松の歌は上手いとは言い難いが、哀愁のメロディに乗せた歌が聴く者の心に染み入る。

4回戦「アイドル女子プロレスラー新旧対決」

会場から女性ファンの黄色い歓声が沸き起こる!
女子プロレス伝説の「ビューティペア」と「クラッシュギャルズ」がそろい踏みだ。

かけめぐる青春/ビューティ・ペア
作詞:石原信一 作曲:あかのたちお


ジャッキー佐藤とマキ上田のビューティ・ペアは、絶頂期のピンクレディーと人気を二分するほどのアイドルレスラーである。
試合前にリング上で「ビューティビューティ、ビューティペア~♩」とボックスを踏みながら歌う姿は、ややぎこちなかったものの、生の姿を見たファンの中には感動して泣きだす子もいたという。

炎の聖書/ クラッシュギャルズ
作詞:森雪之丞 作曲:後藤次利


ビューティ・ペアの解散後、再び女子プロレスブームを興したのが長与千種、ライオネス飛鳥の「クラッシュギャルズ」である。
精悍なルックスと空手を主体としたファイトスタイルは、女子高生を中心に大人気となった。
「炎の聖書」は後藤次利作曲のアップテンポのビートが効いた曲で、二人のイメージにもぴったりである。

5回戦、相撲vs空手の「歌う異種格闘技戦」

続々登場するレジェンドたちに、会場の雰囲気は最高潮!!
極真空手の大山倍達が大勢の弟子たちを引き連れて会場に上がれば、人気力士の高見山大五郎は「ニバーイニバーイ!」とアピールしながらの登場だ。

ジェシー・ザ・スーパーマン/高見山大五郎&SPSシンガーズ
作詞:石原信一 作曲:鈴木幸明


「ジェシー・ザ・スーパーマン」はファンキーなディスコソングなのだが、高見山自身が歌っているのではなく、バックのSPSシンガーズが主に歌い、高見山はサビで合いの手をいれるぐらい。
高見山ファンにはちょっとがっかりなレコードだが、それでも聴いていて楽しくなる曲である。

極真への道/大山倍達
作曲:桜庭伸幸


マス・オーヤマこと大山倍達は極真空手の創始者であり、当時梶原一騎原作の漫画「空手バカ一代」を読んだ少年たちは大山に憧れ、極真空手に入門したものも大勢いた。
「極真への道」は、荘厳な曲をバックに大山の「座右の銘」を大山自身が語るもので、聞いていると思わず正座をしてしまうほどだ。

最終戦「プロレス若大将対決」

トリを務めるのは、新日本プロレスの炎の飛龍藤波辰巳と、全日本プロレスの若きエースジャンボ鶴田だー!
若い二人が舞台に並ぶと、会場のプロレスファンは大歓声!!

マッチョドラゴン/藤波辰巳
作詞:森雪之丞 作曲:EDDY GRANT


藤波辰巳の「マッチョドラゴン」は、元々レゲエの曲に日本語の歌詞をつけ藤波自身が歌った曲だが、歌唱力にやや難があり、今でもお笑い芸人によくネタにされている。
個人的には藤波の大ファンなので、歌の上手下手にかかわらず大好きな曲なのだが…。

ローリングドリーマー/ ジャンボ鶴田
作詞:喜多條忠 作曲:川口真


ジャンボ鶴田は、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスの次世代エースとして活躍したが、音楽への造詣も深く、自ら作詞作曲しミニコンサートを開くなどの活動を行っていた。
「ローリングドリーマー」は鶴田自身の作詞作曲ではないが、鍛え抜かれた肉体と同様に力強い歌声がファンを魅了する曲である。

 

すべての歌が終了し、お馴染みの南極基地からの電報朗読や日本野鳥の会による集計も終えて、今回はめでたく引き分けに・・・。
試合が終わればノーサイド、選手たちはそれぞれ握手やハグをして親交を深め合っている。
スポーツマンらしい爽やかな光景だ。

 

なんて、私の妄想によるスポーツ紅白歌合戦はこれで終了だが、電流爆破マッチの大仁田厚や巨人軍最強の5番打者と言われた柳田真宏など、スポーツ選手のレコードはまだまだたくさんある。

スポーツと音楽は、今も昔も深い絆で結ばれているのだ。

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