デビュー35周年を迎えた城之内早苗が新曲に選んだのは“ワルツ”。「ワルツの優しいメロディと私の声で、皆さんのストレスを和らげることができたら」

2022.1.25

1月26日、約2年ぶりに新曲『しあわせワルツ』をリリースする城之内早苗。歌手デビュー35周年を迎えた昨年、新型コロナウイルスの影響で、大好きなライブやイベントが行えず、歌う場を極端に制限された中、久しぶりに新曲のレコーディングに臨んだ心境と、曲にかける想い、そしてこれからを聞いた。

━━コロナ禍、いかがお過ごしでしたか?

この2年間、どうなるんだろう、どうしたらいいんだろうって、様子をうかがう日々でしたね。でも、なんとか動かなくちゃって。スタッフもその思いは同じだったようで、昨年、『恋衣/あなたで良かった』のデラックス盤とアルバム『城之内早苗全曲集~恋衣~』をリリースするとともに、新曲を出そうと考えてくださって、久しぶりに、新曲のレコーディングに臨ませていただきました。

━━『しあわせワルツ』では、これまでの演歌に代わり、メジャーワルツに挑戦されました。

こういう時代だからこそ、あえて『しあわせ』というタイトルをつけた曲を出したかったんです。ただ、詞の内容は、幸せかといったらそうでもないんですけども(笑)、でも、とても前向きな歌ですし、ワルツのやさしいメロディとともに、私の声で、みなさんのストレスや、抱えているものがふわっとゆるむような歌をお届けできたらと思いました。

━━作詞家のたかたかし氏とは初めてタッグを組まれましたが、レコーディングにも同席してくださったそうですね。

新曲のレコーディングは久しぶりでしたから、先生とお話をしながら臨めたらうれしいなと思ってお願いしました。先生からいろいろなお話を聞かせていただいたり、私も質問したり、自分にとって歌と向き合うすごく有意義な時間を持つことができました。

━━具体的にはどんな質問をされたんですか?

例えば、詞をちゃんと理解しなくてはいけないと思って読んだとき、一番引っかかったのが、2コーラス目の〈腰にまわしたその手がすべる〉という歌詞だったんです。〈その手〉は私の手なのか、彼の手なのか、誰の手なのか。で、先生に聞いてみたら、「え!? どっちでもいいんじゃない?」って仰るんですよ。「僕、そこまで考えて書いてないよ。聴いてくれる人が好きなようにとらえればいいんだから」って。なるほどなってハッとしましてね。
そして、そのあとに先生から「あとはあなたに託すんだから、あなたはあなたの歌を責任持って歌いなさい」と言われたことがまた衝撃で。これまでなんとなくそれに近いことを言われたことはありましたけど、言葉でハッキリ「責任持って歌え」と言われたのは初めてだったので、今まで私は責任問題で歌を歌ってこなかった気がするぞって、本当にピリッとして。
みんなで作り上げるものという感覚があったので、もしかしたら、責任も均等くらいな感じで歌っていたかもしれないなって考えさせられました。

━━曲は2009年に他界した三木たかし氏の遺作だそうですね。ワルツのリズムに乗って、早苗さんのぬくもりのある歌声が、時に切なく、時に温かく、時に可愛く、心に沁みました。

ありがとうございます。ワルツの心地よさもこの曲で知りましたね。1回2回3回と歌っていくごとに、派手ではないけれど、じんわりといい曲だなという思いが増して、私自身も癒される1曲になったと思っています。

━━今回の『しあわせワルツ』では衣装はドレスですが、着物とドレスでは歌う時、何か違いはあるのでしょうか?

お着物は内股、ドレスは外股になるので、力の入り方が違うんですよ。あと、ドレスだと、衣装をキレイに見せたくて、くるりと回ったりするけれど、お着物ではできないですし、ドレスのほうが動きが自由で好きかもしれません。でも、お着物だと気取れるというか、演じられる気がします。なので、『恋衣』のようなドラマチックな歌はやはりお着物がいいかもしれないですね。

━━カップリングの『こころの手紙』は、愛する人に先立たれた女性が、亡くなった男性に向けた思いを綴った、切なくも心温まる前向きなラブバラード曲で、こちらも、悲しさ、愛おしさ、健気さなど、早苗さんの歌声が表現するいろいろな情感が心に沁みました。

『しあわせワルツ』は、失恋して、その傷はもうカピカピのかさぶたになっているんだけれど、間違って剝がしたら、まだ血が出るかなって感じなんです。一方『こころの手紙』は、目に見える傷ではないんですよね。心が血を流している状態なので、もっと重い。でも、歌ううえでは、救いようのないものにはしたくないと思いました。誰しも出会いがあれば別れがあって、死んだらまたどこかで生まれ変わって、その中の一つのドラマ、一つのプロセスと思って聴いてもらえたらいいなと思っています。

━━作詞・作曲を手がけた伊藤薫氏の作品は初めてだそうですね。

昔からお目にかかるとお話はさせていただいていたんですけれど、お仕事をするのは初めてで、とても楽しみでした。先生の歌って、キレイで優しいんですよね。今回は、亡くなられた先生のお友達の奥様のことを思って歌にされたそうなんですけれど、先生は「まだ彼女には聞かせられないけど、いつかこうなってほしいという思いで書いた」とおっしゃっていました。私自身も、一方的に泣いて歌ってはいけないし、泣かせてもいけないし、難しかったですね。

━━先生にとっても思い入れの深い歌なのですね。先生はなぜこの歌を早苗さんに託されたのでしょう?

私の声で歌ってほしかったからだとおっしゃっていました。薫先生だけでなく、先生方は誰も私に歌が上手いとは言ってくださらないのに(笑)、わりと私の声は褒めてくださるんです。私自身、ここ最近、自分は声なんだなってわかるようになってきて、こういう声が優しいかな、こういう声はちょっと冷たいかなとか、声の響きを探しながら歌っているような気がします。
心ももちろん大切ですけど、あまり気持ちを入れてしまうと、聞いている皆さんがおなか一杯になってしまいますからね。私は朝昼晩、誰もがいつ聴いても邪魔にならない歌というのを理想にしているんです。

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