寺本圭佑 カラオケファンなら歌いたくなる大人の歌謡曲『折鶴夜曲』をリリース 『いただいた1曲を大切な宝として、全国隅々まで行き渡るようにいろいろなところで歌っていきたい』

2022.9.14

前作『望郷本線』がロングヒット中の寺本圭佑がニューシングル『折鶴夜曲』をリリース。最愛の妻に先立たれるやるせなさと、残していく夫への気遣い──。お互いを思いやる夫婦の絆を、情感溢れるメロディに乗せて歌う大人の歌謡曲だ。33歳で遅咲きデビューし、2019年にはデビュー10周年企画「日本縦断10万キロ~目指せ! 地球二周半」を始動。コロナで中断を余儀なくされながらも、2年4ヶ月をかけて47都道府県に歌を届けてきた。そんな「歌の宅配便」こと寺本の独特の歌声に心震わせるファンは1人また1人と増え、『ひとりにしない』『望郷本線』と2作連続ヒットを果たしている。「うたびと」では初インタビューとなる寺本にユニークな経歴や歌にかける思い、プライベートの素顔について聞いた。


──新曲『折鶴夜曲』は前作に続いて大切な人との別れがテーマです。まずは歌に向き合ったときの気持ちをお聞かせいただけますか?

僕は今年、父親を亡くしているんです。よく歌手は親の死に目に会えないことも覚悟しなきゃいけない職業だと言いますが、親との別れを歌った前作『望郷本線』がおかげさまで調子よくなればなるほどほど、葛藤も大きくなっていきました。だけど親父は33歳でデビューを決断したときの一番の理解者でもあった。歌を頑張ることが何よりもの供養になるんじゃないか──。師匠の小田純平さんのそんな言葉に背中を押されるようにいただいたのが本作だったんです。

──ご自身の体験と重なる運命的なタイミングで出会った歌だったんですね。

本作は夫婦の別れを歌った歌ですが、心に迫るものはやっぱりあって最初は声が震えて歌えなかったですね。それでも先生方の支えでいいレコーディングができたと思っています。カップリングの『迷子のホタル』のほうがやや演歌色が強めで、どっちをメインにするか先生方とも話し合ったのですが、やっぱり『折鶴夜曲』のほうがカラオケで歌いたいタイプの曲だよねということで、こちらを勝負曲としました。

──寺本さんはカラオケファンからも厚く支持されています。歌唱アドバイスもいただけますか?

先生方から言われたのは、悲しい歌ではあるけど”泣かない”こと。『望郷本線』はキャンペーンで歌うと、今まで笑顔で聞いてくれていたお客さんが急に目頭を押さえ出すことが何度かありました。『自分もまったく同じ体験をしたんだよ』とおっしゃって。本作も夫婦の別れを歌った歌なので、そんなふうに思いを重ねてくださる方もいるだろうから、歌う方が泣いてはいけないんですね。歌い出しからサビ前まではなるべく力まずにとつとつと。そしてサビでシャウト気味に、思いを天に届けるように歌っていただけるとカラオケ映えすると思います。

──寺本さんは「歌の宅配便」として全国津々浦々に歌を届けてきました。こうしたキャンペーン活動も、昨今の演歌・歌謡界では珍しいのでは?

昔よく先輩方がやってたようにスナックビルの1階から最上階まで回らせてもらったり、1年で最高1174ステージで歌ったこともありました。小田純平さんの『いい歌は必ず伝わる』という信念と、あとは33歳という遅咲きのデビューだったこともあって、とにかく全国の1人1人に届けていこうと。屋久島や種子島といった離島でも歌わせてもらいましたね。

──20代からカラオケ大会でならし、「NHKのど自慢」本選で合格したことも。なぜ33歳まで時間がかかってしまったのでしょうか。

歌手にはずっとなりたかったんです。それこそ18歳くらいの頃に地元のお祭りで歌った『イヨマンテの夜』に、おじいちゃんおばあちゃんたちがとても喜んでくれたことが忘れられなくて。それと僕は陸上の推薦で大学に入学してるんですが、そのときの監督がカラオケ好きで、合宿の夜なんかにはよくスナックに駆り出されたんですよ。『明日も練習ですよ』って言ってるのに、『ちょっとくらいいいじゃないか』って、そこで歌うと監督も喜んでくれて。4年生の時には駅伝にも出場しましたけど、大会よりも監督とスナックに行った数のほうが多かったかもしれません(笑)

──大学卒業後には地元の食品会社に就職されています。

実業団に行く話もありましたが、歌手のチャンスを待つために普通に就職しました。そして22歳で『NHKのど自慢』に合格。大ファンの山川豊さんに褒められたことに気を良くして、なんのツテもコネもないままに上京したんです。ところが東京という街のスケールの大きさやいろいろなプレッシャーからか円形脱毛症になり、体も壊し、決まりかけていたデビューの話も流れ──。上京に猛反対しながら家を出る日には『いつでも帰りや』と送り出してくれた親父の言葉に甘えて地元に戻り、前にお世話になっていた会社の社長にも頭を下げて再就職させてもらったんです。

──理解がある社長ですが、寺本さんもきっと優秀な社員だったんでしょうね。

社長を裏切ってはいけないという思いで仕事を頑張り、課長まで昇進させてもらいました。だけど今の事務所と出会い、やっぱり歌を諦めたくないという思いがフツフツと湧き上がってきたんですね。とは言え、デビューから1年くらいはサラリーマンをしてたんです。一応、社長には内緒にしてたんですが、得意先の方が『寺本くんの歌はいいねえ』なんて言うもんだからだんだん隠しきれなくなって(笑)。またキャンペーンを回ろうと思ったら、二足の草鞋はやっぱり難しい。またもや頭を下げることになったにも関わらず、『頑張れ』と送り出してくれた社長には感謝しかありません。

──それから全国をキャンペーンで回る日々に。どのような力を培ったと感じていますか?

昔は本当に『ありがとうございます』くらいしか言えなかったですけど、最近は『もうしゃべるな』と言われることも(笑)。歌はもちろんですけど、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえればと、しゃべりの対応力はだいぶ鍛えられました。ハンカチで目をおさえている方を『あれ、花粉症ですか?』とイジったりとかですね。あとは歌手としての意識をいかに高めていくか。最初のうちはCDを買ってもらえるんだろうかと不安もあって、『よかったら聞いてください』と差し上げようとしたこともあったんですよ。それを見た小田純平さんからこっぴどく叱られました。『買ってもらう自信がない歌ならやめろ』と。1枚でも2枚でもきちんと対価に値する歌を歌うこと、そうしたプロの矜持みたいなものは厳しく叩き込まれましたね。

──キャンペーンで忙しい日々ですが、プライベートではどんな趣味をお持ちですか?

僕はちょっと時間があればすぐに旅行に行くんです。たとえば大阪のキャンペーンで1日空いたら、北海道に飛んで1泊してまた大阪に戻ったり。あと今はちょっと難しいですけど、昔はよく日帰りで韓国にも行きました。羽田空港を4時50分の飛行機に乗ると7時間くらい向こうで遊べるんですよ。韓国では歌謡ショーのステージを見たりして勉強になりましたね。

──フットワークが軽い! 休みも含めて毎日のように移動してるんですね。

今はほとんど休みはないですけど、むしろ毎日歌えることがうれしいですね。移動日もできるだけ歌える時間に到着できるようにスケジュールを組むんです。本当は移動日は休んだほうがいいらしいんですが、1つでも多くのステージで歌いたいですから。

──デビューから12年、コツコツと積み上げてきたキャンペーンが実を結び、連続ヒットも生まれています。今はどのような目標をお持ちですか?

キャンペーン先でカラオケの機材があるところでは、よくリクエストコーナーをやるんです。ときにはぜんぜん知らない歌をリクエストされることもあって毎回がドキドキなんですが、新しい自分が発見できて楽しいんですよね。中でも『イヨマンテの夜』はYouTubeにどなたかが上げてくれたこともあってよくリクエストされます。デビューした頃にもカバーアルバムを出しているんですが、近いうちに改めて名曲をたくさん詰めこんだ1枚に取り組んでみたいですね。

──遅咲きデビューとは言え、まだまだ長い歌手人生をどのように描いていますか?

山川豊さんや五木ひろしさんもおっしゃっていましたが、今はすぐにヒットする時代じゃない。だからこそお客さんの前で歌って反応がいい歌は、じっくり長く歌っていくことが大切だと。ヒットを連発することもとても大事だけど、いただいた1曲を大切な宝として全国隅々まで行き渡るようにいろいろなところで歌っていきたいですね。

──最後に『折鶴夜曲』を聞く方にメッセージをいただけますか。

病院にお見舞いに行けなかったり、実家にもなかなか帰れなかったり、いろんな思いを抱えている人がたくさんいる今だからこそ、この歌を歌う意味もあるんじゃないかと思っています。別れがテーマの悲しい曲ですが、今ここにある幸せや大切な人との絆を噛みしめながら聞いてくれる方がたくさんいることを願って歌っていきますので、どうぞよろしくお願いします!

寺本圭佑『折鶴夜曲』

2022年09月14日発売

品番:UPCY-5109
価格:1,400円(税込)

【収録曲】

1. 折鶴夜曲
2. 迷子のホタル
3. 津軽の女(ひと)よ
4. 折鶴夜曲(オリジナルカラオケ)
5. 迷子のホタル(オリジナルカラオケ)
6. 津軽の女(ひと)よ(オリジナルカラオケ)

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