三丘翔太が新曲『発車のベルが長すぎる』をリリース。 “懐メロボーイ”がブルース歌謡に挑む!! 「発声をとにかく正しく朗々と、それがまたカッコイイ。まるで銀幕のスター気分が味わえました」

2022.10.19

戦前~戦後の歌謡曲への深い愛情と造詣で、「平成生まれ・昭和育ちの懐メロボーイ」として注目度急上昇中の三丘翔太。新曲『発車のベルが長すぎる』は、昭和流行歌さながらの懐かしき叙情感あふれるブルース歌謡で、朗々とした歌唱は「ディック・ミネか鶴田浩二か!?」と錯覚させるほど本格的だ。若き懐メロの伝道師にふさわしい勝負曲を得て、ますます飛躍が期待される三丘が「うたびと」インタビューに初登場。盟友・真田ナオキとの交流やYouTubeチャンネルへのこだわり、紅白マニアぶりなど、シャイな素顔を深掘りした。


──タイトルもユニークな新曲『発車のベルが長すぎる』ですが、何より印象的なのが昭和の香りの再現度です。懐メロマニアの三丘さんにとっては取り組みがいがあったのではないでしょうか。

そうですね。昭和といっても30年代ともなるとムーディな都会派歌謡が盛んになっていきますが、この曲はそれより前の時代。歌い方も発声をとにかく正しく朗々と、それがまたカッコイイです。特にサビを歌い上げるあたりは、鶴田浩二さんじゃないですけど銀幕のスター気分が味わえました(笑)。ローカル線のホームの一場面を描いた歌詞なのに、スケールがとにかく大きいのがこの時代のメロディですよね。

──ゆったりとしたメロディとボリューム感たっぷりに響く歌声。歌唱法もこれまでの三丘さんの曲とは違うようですが、新たな挑戦も?

このところ『新・BS日本のうた』で“懐メロボーイ”というキャラクターで、戦前の曲を含めて多くの懐メロを歌わせていただいています。この時代の歌手は藤山一郎先生がそうだったように、アカペラでもステージの最前列から一番後ろの席まで日本語の歌詞が届くような歌声をお持ちですが、(師匠で同曲を作曲した)水森英夫先生からは『大事なのは言葉を掴むことだ』と指導されました。母音だけでなく子音も1語1語しっかり捉えるという、歌の基本に立ち返った訓練を改めてしてきたことが、新曲にも生かせたんじゃないかと思っています。

──カラオケではどのように歌えば映えそうですか?

別れを歌った歌詞ですが、あまり物悲しく歌わなくていいと思います。むしろ一歩も引かずに声をバーンと前に出すことで、男の未練ややるせなさがカッコよく引き立つ、そんなメロディです。この時代の流行歌はこぶしをほとんど使っていないので、朗々と素直に心地よく歌っていただけたらうれしいですね。

──22歳でデビューして現在28歳という若さが信じられないほど、懐メロに造詣の深い三丘さんですが、深掘りするようになった経緯は?

祖父母がカラオケ喫茶を経営していまして、幼い頃からよく遊びに行っていました。僕が歌うと祖父母がとても喜んでくれて。だけど歌うのは本当に身近な人の前だけでした。とにかく引っ込み思案で、知らない人の前で歌うなんてとてもとても──ただ演歌や歌謡曲は好きだったので、祖父母の店以外でも家でこっそりキーボードの弾き語りをしていました。一人遊びが好きな子どもでしたね。

──そんな三丘さんの歌人生を変えたのが、高1で出場してチャンピオンになった『NHKのど自慢』です。

祖母が僕には内緒で応募ハガキを送りまして、本当は恥ずかしくて出たくなかったんです。でも、ゲストの北島三郎さんと一緒に歌わせていただけた感動は大きくて。そのときに知り合った方に、後に水森先生にスカウトされることになるカラオケ大会へ誘われたときも、出てみようかなと思いました。あんなに前向きな気持ちになったのも、当時の僕としては珍しかったですね。

──デビューから7年。数々のステージを経験されて、引っ込み思案は克服されましたか?

今でも人が大勢いるところではつい隅っこに行きがちで(笑)。でもみなさんも楽しみに足を運んでくださるわけですし、少しはおしゃべりもできるようにならなければと、1人で飲み屋さんに出掛けてお店の方とお話しするようにしました。最初は訓練のつもりでしたが、今では行きつけのお店になりましたね。

──そんなシャイな三丘さんですが、YouTubeの『三丘翔太ちゃんねる』を拝見していると若手男性歌手ユニット・テイチクサムライのメンバー・真田ナオキさんとはとても気が合っているようですね。

真田さんは僕とは対極で、底抜けに明るい陽のキャラクター。陰と陽でちょうど釣り合いが取れています(笑)。それでいて気遣いも細やかで優しい。生まれ変わってもあんなふうにはなれないだろうと、仲良くさせてもらいつつも尊敬する存在ですね。

──交流が生まれたきっかけは?

2019年に『新・BS日本のうた』で沖縄にご一緒したことがありました。その夜はみんなで吉幾三さんにご馳走になって、若手同士で演歌界のこれからについて意見交換をしました。お酒が入っていたこともあって、僕も思いがけず前のめりで語ってしまい、真田さんが驚いたらしいです。いつもボーッとしているのに、意外に熱いヤツだなって。そこから急速に仲良くなりました。

──今年6月25日のスペシャルコンサート『テイチクサムライアワー』では、真田さんが作詞、三丘さんが作曲を手掛けた『#テイチクサムライ音頭』を披露。YouTubeチャンネルで公開している楽曲制作のプロセスも楽しそうでした。

生配信で真田さんの一言から始まった企画ですが、まさか実現するとは! 7組それぞれの特徴を歌詞に入れるとか、特に合いの手はかなり遊んでしまったので、歌手のみなさんに許可取りをするときはけっこうヒヤヒヤしました(笑)。お付き合いいただいたことに本当に感謝です。

──三丘さんは初めての作曲だったそうですが、テイチクのベテランディレクターが絶賛しているそうですね。

いやいや(笑)。ただお遊び企画に見えますが、アレンジも各メンバーで少しずつ展開させて、けっこう作り込みました。6月25日のコンサートのためだけに作ったものではありますが、使いどころがあれば、また使っていただけるとありがたいですね。

──YouTubeチャンネルの生配信『三丘翔太の個人練習ライブ』では、キーボードで懐メロの弾き語りをたっぷり披露されています。

コロナ禍で歌う機会が少なくなってしまって、このままじゃ歌えなくなるのではと心配になって『個人練習ライブ』を始めました。学生時代に吹奏楽部だったので、多少管楽器ができますが、鍵盤はまったく習ったことがない自己流です。歌本をめくりながら、ユルユルと好きな歌を歌っているだけの生配信ですが、意外に見てくださる方が関係者にも多くて、この間も市川由紀乃さんに『見ています』と言われて恐縮しちゃいました。

──そうしたラフな生配信の一方で、懐かしのレーザーカラオケ映像を再現した「手作りカラオケ」シリーズなど、作り込んだ企画も充実しています。

ものづくりが好きです。手先が器用じゃないのでプラモ作りなどは苦手ですが、音楽に関しては黙々と作っている時間がとにかく好き。『紅白ステージ再現』や『ひとり紅白歌合戦』など、好きなことができるのもYouTubeの楽しいところですね。

──アカデミックなまでの紅白マニアでもある三丘さんですが、マイ・ベスト紅白ステージを1つ挙げるとすると?

うーん、たくさんあるので難しいですが、今日の気分は97年の大トリを飾った五木ひろしさんの『千曲川』ですかね。歌唱は言わずもがな、オーケストラの伴奏と合唱団をバックにした素晴らしいアレンジで、あの一夜限りのステージは何回見ても胸に迫るものがあります。五木さんはデビューのきっかけを作ってくださった恩人の1人で、ご著書の『昭和歌謡黄金時代』は僕のバイブルです。

──五木ひろしさんといえば、流行歌への深い愛とあくなき探究心で知られていますが、三丘さんはその正当な継承者になってほしいです。

僕なんか知識も経験も五木さんの足元にも及ばないです。ただ、純粋に好きだという気持ちはありますし、引っ込み思案なんて甘えていられない年齢でもあります。今後もYouTubeや流しスタイルのライブ、いろいろな形で演歌や歌謡曲、流行歌の魅力を発信していきたいです。

──では最後に8枚目のシングル『発車のベルが長すぎる』を聞く皆さんにメッセージをお願いします。

カップリングの『しあわせのうた』も含めて、メロディから歌唱法、CDジャケットに至るまで“あの時代”にこだわった1枚になりました。個人的にアナログレコードのパチパチッというノイズを入れた“ラジオエディット”も作ってみたいですね(笑)。リアル世代の方には懐かしく、若い方には新鮮に味わっていただけたらうれしいです。

三丘翔太『発車のベルが長すぎる』

2022年10月19日発売

品番:TECA-22061
価格:¥1,400(税抜 ¥1,273)

【収録曲】

1. 発車のベルが長すぎる
2. しあわせのうた
3. 発車のベルが長すぎる(オリジナル・カラオケ)
4. 発車のベルが長すぎる(メロ入りカラオケ)
5. しあわせのうた(オリジナル・カラオケ)

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