花園直道が20周年記念シングル『キトアイラク/Let’s walk together』をリリース 「喜怒哀楽から“怒”を取ればもっといい世の中になるという思いを込めました」

花園直道
2023.10.4

国内外に和のエンタメを発信する日舞パフォーマー・花園直道が、芸能生活20周年を記念した両A面シングル『キトアイラク/Let’s walk together』をリリースする。15歳から舞台に立ち、18歳で日舞とボーカルを融合させた舞踊集団「華舞斗~kabuto~」を結成。また、歌手としては2011年にメジャーデビューしている。さらに現在は、日舞とダンスを融合させた新たな舞踊ジャンル・JPN danceを提唱。演歌、ポップス、ロックとジャンルを超えた音楽ジャンルと交流し、うたびと初インタビュー。決して平坦ではなかった20年の歩みや、来年に控えた明治座公演に対する思い、プライベートの過ごし方などを聞いた。


和とロックの融合は20年の活動の集大成

花園直道

──新曲『キトアイラク』(作詞:相田毅 作曲・編曲:池毅)は、古今東西の音楽に合わせて日本舞踊を披露する花園さんの“スーパー日舞”の世界が、歌でもビジュアルでも表現されています。そして気になるのは“キトアイラク”という聴き慣れないワードですが……。

喜怒哀楽から“怒”を取ればもっといい世の中になるんじゃないか、というメッセージを込めた造語です。昔から疫病の後には争い事が増えると言われていますが、今はまさに世界中がそんな雰囲気になっている気がします。エンターテインメントの役割は人々に喜びや楽しみを届けることですから、自分もその責任をしっかり持ってこの歌を歌っていきたいと思っています。

──メッセージ性のある歌詞のなかに遊び心も感じられます。「“ど”がついていいのは あの歌だけさ」という歌詞は、どのような意味なのでしょう。

僕もはっきりと作詞の相田毅先生に伺っていないのですが、この歌詞にちょっと遊び要素を入れたのではないかと解釈しています。

──和楽器を全面にフィーチャーしつつ、ロックテイストもある力強い楽曲です。メロディーについてはいかがですか?

和とロックの融合というのは、まさに今回、作曲の池毅先生にリクエストさせていただいた要素だったんです。10年ほど前、初めてロサンゼルスで単独公演をしたときに、現地のダンサーと一緒にマイケル・ジャクソンのビートで日舞を踊るというパフォーマンスを完成させたんですね。以来、そのテイストはずっと大切にしてきたものなので、20年の活動の集大成としてぜひ今回の楽曲にも取り入れたいとお願いしました。

──MVでは、圧巻のパフォーマンスでも魅了されます。特に見て欲しいのはどんなところですか?

MVでは小道具を使用していますが、なかでも扇子を使った技にはぜひ注目していただきたいですね。古典芸能では扇子は神聖なものとして扱われていますが、僕はあえてジャグリングのような派手な技で楽しんでいただくことを意識しています。ラスベガスで披露した際には、現地のパフォーマーたちからもぜひ教えてくれと言われました。「これが花園直道だ!」というエンターテインメントをふんだんに詰め込んだMVとなりましたので、隅から隅まで楽しんでいただけるとうれしいです。

これまでの歩みとステージへかける思いを落とし込んだ

花園直道

──賑やかで華やかな『キトアイラク』から一転、両A面のもう1曲『Let’s walk together』(作詞・作曲:向井浩二 編曲:矢田部正)は、人生の決意を歌ったバラードです。衣装の燕尾服も新鮮ですね。

燕尾服は桂由美先生が20周年のお祝いにプレゼントしてくださったものなんです。燕尾服はもちろん、バラードを歌うのも初めてですが、ここから始まる新しい花園直道を作ろうという先生方の思いがこの1曲に詰まっています。作詞・作曲の向井浩二先生には3年ほど前から歌のレッスンをつけていただいていて、歌い手としての花園直道を形作っていただいた恩人なんです。

──芸能生活20周年の中で歌手デビューは2011年のことでした。

ただ、自分の中ではどこか舞踊がメインだという意識が長らくありました。だけどもう一つ殻を破るためには、やはり歌の力もつけなければいけない。そんな思いが強くなっていたときに、向井先生が「俺が直道を歌い手としても本物にする」とおっしゃってくださったんです。今回の『Let’s walk together』は、その向井先生が、僕のこれまでの歩みとステージにかける思いをすべて落とし込んでくださった曲です。

健康ランドの巡業で受けた声援が原点となった10代

花園直道

──花園さんのエッセイ集『僕の、生きる道』では日本舞踊に出会う前の、孤独で居場所のなかった少年時代が綴られていましたが、あの本が歌になったように思いました。

まさにこの曲を作るにあたって、向井先生とあの本に書いたことを4時間くらい語り合ったんですよ。日本酒を飲みながらですね。

──不登校だった少年が日舞と出会い、壁にぶつかりながらも夢を追いかけていく──。初めて舞台に立った15歳の頃の思い出を聞かせていただけますか?

稽古は楽しかったのですが、とにかく内気で人前で披露するなんてとんでもない、無理だって言っていたんです。それでも1曲だけでもと、健康ランドでの巡業で踊らせてもらったときにものすごい拍手をいただいて、それですっかりハマってしまったんですね。その後、15歳で同い年だった先生の次男と日舞と三味線のユニットを組んで3年ほど営業回りをしました。あの頃の経験が今に至るすべての原点だと思っています。

──下積み時代ということでしょうか?

そうですね。主に健康ランドを回っていたのですが、お客さんがまったく入らなくて中止になったこともありましたし、寝泊りしていた楽屋も会場によっては雨漏りがひどかったりして。でもいろんな方に可愛がっていただきましたし、それほど辛さは感じていませんでしたね。何より踊りが好きでしたし、お客さまからいただける拍手と声援がすべての原動力になっていました。

自分にしかできないことを問い続けた日々

花園直道

──20年にわたる芸能生活の中で、ターニングポイントとなった出来事はありましたか?

2010年に三越劇場で座長公演を行ったときに、ある方から自分がやってきたことを全否定されたんです。「君がやっていることは誰にでもできる」と強烈なダメ出しをいただいたんですね。ショックでした。それまで“日本舞踊界の新星”とかチヤホヤされて、どこか調子に乗っていたところもありましたから。子どもでしたしね。その言葉のおかげで「自分にしかできないことってなんだろう」と強く意識するようにもなりましたし、それは今も常に考えていることです。

──現在は一般社団法人JPN dance協会の代表も務めていらっしゃいます。こちらはどんな団体なのですか?

オフィシャルメンバーには日本舞踊などの古典芸能をやっている人からストリートダンス系のパフォーマーまでさまざまいるのですが、コンセプトとしては日本の魅力と文化を現代の感覚で世界に発信すること。今の時代にふさわしく、若者の心を惹きつける新たな日本舞踊のあり方を目指す“日舞×ダンス=JPN dance”というジャンルを提唱する団体です。2020年の設立からありがたいことにメンバーも増えて、公演はもちろん、レッスンやワークショップにも多くの方にご参加いただいています。

──どのようなきっかけで立ち上げられたんですか?

コロナ禍が始まって最初の緊急事態宣言のときに、何もすることがなくてずっとインスタライブをやっていたんです。そうしたら、それまであまり縁のなかったパフォーマーの方々が覗きに来てくれたんですね。そのときに僕が語っていたのが古典芸能の行き詰まり感というか――日本舞踊も高齢化と日舞人口の減少で未来が見えなくなっている、伝統を継承することも大事だけど、そのためには時代に合わせてアップデートしていかないといけないよね、みたいなことを語っていたところ、意外と多くの方が共感してくれて。じゃあみんなで一緒に何かやろうかというノりで、社団法人を立ち上げることになったんです。

僕は幸運なことに師匠(坂東蔦寿次)が新しいことに理解がある方だったので、のびのびとやらせてもらってきました。古典の日舞は間違いなく素晴らしい芸能です。その基本のエッセンスを守りながら、世界に通用するエンターテインメントに昇華していく。それがJPN dance協会の目指すところです。

──団体を立ち上げてうれしかったことを一つ教えていただけますか?

たくさんあるのですが、あえて挙げるとしたら、不登校だった女の子が僕のステージや本をきっかけにレッスンに参加してくれたことです。その子は、1年半ほど通ってくれているのですが、最近は学校に行くようになったらしいんですよ。何か一つでも好きなことが見つかり、それが誰かに認められたりすると自信がつくんですよね。まるで昔の自分を見ているようで、その子との出会いは本当にうれしかったですね。

「ハナミチ東京 歌舞伎町」オープンに明治座公演と大忙し

花園直道

──新曲もさることながら、これから花園さんは大忙しのようですね。まずは10月1日には和のエンタメを発信する施設「ハナミチ東京 歌舞伎町」がオープン。こちらの1フロアのプロデュースを務めるとか。

そうなんです。僕が担当するのは11月1日オープン予定のフロアで、ここでは飲食も楽しめるのですが、ステージや音響も完備しています。まずはJPN dance協会のショーを予定していますが、演歌・歌謡界のみなさんにも、ぜひキャンペーンなどに利用していただけたらうれしいですね。

──そして来年4月には明治座で芸能生活20周年記念公演が控えています。出演者がなんとも豪華ですね!

お世話になっている先輩や仲間がたくさん駆けつけてくれます。僕が花園城のお殿さまという設定で、いろんな地方の殿や姫がお祝いに来城し、どんちゃん騒ぎをするという趣向ですね。歌と踊りが満載のショーを企画しておりますので、ぜひみなさんお越しください。

息抜きは独酌で

──つい最近もマレーシアのジャパンEXPOで連日公演をするなど、多忙の中でどのように息抜きをしていますか?

息抜きといえば、1人で飲みにいくことなどですね。コロナ禍の前は、それこそ明治座公演に出てくれるみんなと飲むことも多かったんですが。海外や地方では、メンバーもみんな疲れて、公演が終わってから飲みにいこうってなかなかならないので、じゃあゆっくりと考えたりリラックスをそれぞれできるよう1人で行こうかなと。マレーシアはイスラム教の国なので、お酒を飲める店を探すのが大変でした(笑)。

──ちょっと頑張ってでも、1杯はやりたい感じですか?

やっぱりリセットをしたいんですよね。この仕事って24時間営業みたいなところがあって、それこそJPN dance協会を立ち上げてからは事務作業も増えたので、下手すると仕事の終え時を逃しちゃうんですよ。だから今は23時になったら仕事はストップすることも。1杯飲んで切り替えて、明日もまたステージを頑張ろうというふうにしています。

──何を飲まれるんですか?

僕はもっぱらハイボールですね。おつまみは塩辛とか枝豆とかマカロニサラダとか簡単なもので大満足ですね。自分ではぜんぜん料理しないので(笑)、家で飲むときはだいたいコンビニとかで買ってきちゃいます。

──最後にファンのみなさんにこれからの活動のメッセージをいただけますか?

みなさまのおかげで無事20周年を迎えさせていただきました。『キトアイラク』は普段から派手な衣装が多い僕でも一際ド派手で、特に帯がめちゃくちゃ重い!(笑) だいぶインパクトのある衣装を作っていただきましたので、音源や映像はもちろんのこと、ぜひ生で楽しんでいただきたいと思っております。会場でお待ちしております。

花園直道『キトアイラク』

花園直道『キトアイラク』TKCA91532

2023年10月4日(水)発売

品番:TKCA-91532
価格:¥1,500(税込)

【収録曲】

1.キトアイラク(作詞:相田 毅/作・編曲:池 毅)
2.Let’s walk together(作詞・作曲:向井浩二/編曲:矢田部正)
3.キトアイラク(オリジナル・カラオケ)
4.Let’s walk together(オリジナル・カラオケ)
5.キトアイラク(半音下げ・カラオケ)
6.Let’s walk together(半音下げ・カラオケ)

花園直道 芸能生活20周年記念公演「花園城だよ!全員集合」

日時:
2024年4月18日(木)
16時開演
2024年4月19日(金)
11時開演(昼公演)、15時30分開演(夜公演)

会場:
東京・明治座
(東京都中央区日本橋浜町2丁目31−1)

料金:
SS席¥9,000
S席¥6,500
A席¥3,500
プレミアム席¥25,000

出演者:
真田ナオキ(19日夜)、田中あいみ(全公演)、東京力車(19日昼・夜)、徳永ゆうき(全公演)、新浜レオン(19日昼・夜)、パク・ジュニョン(全公演)、原田波人(18日夜)、藤井香愛(全公演)、松阪ゆうき(19日昼・夜)、彩青(全公演)、MIKAGE PROJECT(全公演)など

<あわせて読みたい>

花園直道が「ジャパンエキスポマレーシア2023」のオープニングセレモニーステージに出演! 伝統舞踊や津軽三味線、オリジナル楽曲で観客を魅了
花園直道がホテル雅叙園東京でバースデーディナーショーを開催! ド派手な衣装で新曲『キトアイラク/Let’s walk together』を初披露
舞踊家・花園直道が恒例の「和のエンタメLIVE 花園城」を開催 歌から殺陣まで“和のエンタメ感”を存分に披露!

関連キーワード