松前ひろ子が55周年記念シングル第2弾『漁り火情歌/波止場で汽笛が鳴く夜は』をリリース 「松前会のお客様の熱い反応で両A面になりました」

2024.9.4

夫婦演歌の名手としてカラオケファンから絶大な支持を誇り、9月1日に歌手デビュー55周年を迎えた松前ひろ子。その記念シングル第2弾として両A面の『漁り火情歌/波止場で汽笛が鳴く夜は』が9月4日にリリースされる。ビートの効いたサウンドが印象的な『漁り火情歌』で歌われるのは、愛した男性への一途な思いを貫こうとする北の女性の熱き心。一方、『波止場で汽笛が鳴く夜は』は、港の酒場で去っていった男性を思う女性の心情をしんみりと表現した、聴く者の心にじんわり響く作品だ。また、両作とも出身地の道南を歌の舞台にしており、故郷への強い思いも感じさせる作品となっている。交通事故や出産、育児などによる8年間のブランクも経験した55年間の歌手生活を振り返りながら、今後の活動について、また、自身が社長を務めるミイガンプロダクションに新たに加わった小山雄大へ寄せる期待など、現在の心境を明かす。


55年の歌手生活を続けられたのは家族の支え

――デビュー55周年、おめでとうございます。

皆さまのおかげで55周年を迎えることができました。歌の師で従兄でもある北島三郎さんのもとで内弟子としての4年間を経て、1969年に日本クラウンさんからデビューさせていただき、2作目の『兄妹』(1970年)は北島さんとのデュエット曲と、華やかな船出だったのですが、歌手生活2年目に交通事故に遭い、大きな怪我を負ってしまったんです。早く治そうと8軒もの病院を転々としました。最終的に大学病院の口腔外科の先生に顔を10㎝切らないと手術はできないから「時間をかけて(治癒を)待ちましょう」と言われ、その頃はまだ若く楽観的だったので、3カ月くらい待てば復帰できるかなと思っていたんですけど、そこから治るまでまさかまさかの8年間もの時間がかかりましたから」

――1981年の復帰作『なにわ育ち』までの間に、故・中村典正先生とご結婚され、出産もされました。

北島さんに「ひろ子、結婚しろ」と紹介されたのが主人の中村です。それから子どもが生まれ、育児など主婦業にしばらく専念しましたが、下の子が3歳くらいのときにカムバックしました。北海道から家出してまで歌手になったわけですから、交通事故であきらめるのが自分の中で許せなかったのです。また、親不孝をしてきましたから、歌手として活躍し、故郷・知内(しりうち)町にいる両親の喜ぶ顔を見たいという思いがありました。その歌手活動を断念していた間に、父が大病を患い、「最後にひろ子が歌う舞台をもう一度見たい」と言ってくれていたのですが、活動再開までに間に合わず、その思いにこたえることはできませんでした。

――歌手活動を続けてこられたのは、中村先生や3人のお子さん達ご家族の理解もあったのでは。

子どもたちが応援団になってくれました。学校で「売れない歌手の子ども」といじめを受けたこともあったようです。でも当時、子どもたちは3人ともいじめられていることを私に話したことがないんです。娘が成人式のときに手紙をくれて、そのことを打ち明けられました。心の中で初めて「歌手でいたくない」と思いました。でも、「本当は歌手をやめてほしかったけど、ここまでやってきたのだから、ママ頑張って」と書かれたその手紙を目にして、子どもたちのために頑張ろう、皆さんに知っていただける「松前ひろ子」にならなければ、子どもたちの心に傷がつくと心に銘じました。私にとってそこが歌手としての新たな始まりとなりました。もともと結婚当初から主人からは家にいてほしいと言われていたのですが、子どもたちのために頑張りたいと言うと、何も言わずに曲を書いてくれました。そのときから私は、どんなことがあっても亡くなるまで中村典正の曲を歌い続けてきました。それが私の主人に対する恩返しの気持ちなのです。一つのことを決めたら崩すことなく、義理と人情を忘れない夫婦でありたいと。

――松前さんの一途な思いは、55周年記念シングル第2弾となる新曲『漁り火情歌』の、惚れた男性にどこまでもついていく覚悟をもった主人公の女性にも通じる部分があると感じます。

一途という言葉で言っていいのか、悪いのか。私の場合はそれしかありませんでしたから。家を出るときは「松前ひろ子」、帰ってくると一目散に「中村弘子」に戻って、お母さんになる。そんな私に子どもたちはとても気を使ってくれました。また、主人の優しさにも感謝です。家族の愛があったから今の私があるんです。だから、私はどのような人にも感謝とありがとうの気持ちを忘れないでいようと思っています。

夫婦演歌ではない大人の女歌に挑戦

――1年前のインタビューで、55周年に向けて「ねぇ、あなた」という感じの夫婦演歌以外の歌にも取り組んでいきたいとおっしゃっていましたが、前作の55周年記念第1弾『おんなの恋路』に続き、今回の『漁り火情歌』も1人の女性の秘めた思いを吐露するような情熱的な歌ですね。

前作の『おんなの恋路』のときは、弦先生から3作品を提案され、今までの曲にはないリズムがある『おんなの恋路』をいただきました。今回『漁り火情歌』も、さくら先生の書かれた歌詞に登場する男女は夫婦かどうか定かではありません。かっこいい一人の男性についていく――そんな情けが深い北の女が主人公で、大人の歌として歌わせていただきたいと頑張りました。タイトルの「漁り火」とはイカ釣り船の灯りのことです。北海道の生まれですから、歌っていると自分でも心に染み入るものがあります。それに曲の出だしに尺八が入っているんです。自分の曲で尺八は初めてで、感動しました。この曲を歌えて幸せですね。

――道南が舞台の歌というところもうれしいのでは?

この曲のおかげで函館に帰れたことが、とてもうれしいですね。『漁り火情歌』は、歌詞の最初のほうに「函館山」と出てきますからね。声を張り上げて歌っています。ミュージックビデオも55周年ということで、スタッフが私の希望をくんでくださって函館でロケをすることができました。大泉洋さんのお兄様としても知られている大泉じゅん市長にもご挨拶させていただきましたが、函館観光大使を務めていたことやかつて函館公園に桜を植樹したことなどもお話しして、『漁り火情歌』の映像を函館山ロープウェイの車内放送で採用してほしいとアピールしてきました。ただ、今回函館にうかがった際は、街のそこかしこ『名探偵コナン』のコナンくんだらけで(笑)。『波止場で汽笛が鳴く夜は』のほうは、連絡船で映像を流したいと言ってくれています。

――やはり故郷には格別の思いがあるのですね。

55年前の後援会の方は、すでに鬼籍に入られた方も多く、そのときの皆さん全員に今の私の歌をお聴きいただくことは叶いません。来年、函館でコンサートを行いますので、杖をついてでも車いすに座ってでも舞台に上がり、昔から地元で応援してくださっている方々にお会いして、ステージをご覧いただきたいと思っています。

――『漁り火情歌』の歌唱で特に大事にされていることはありますか?

サビ前に「なんて哀しい ことを云う」というフレーズがあるのですが、「こ・と・を・い・う」と一音一音ずつ区切るように歌うところがポイントです。そう歌うことで「北の女は 情けが深い」と続いていくサビが一層際立ってきます。この一連の流れが民謡調でも語りでもない、とても印象に残るこの歌の山場だと思っています。弦先生のデモ音源に忠実に歌ったのですが、初めての歌い方でした。

恋心を忘れない女性がスッと入れる歌

――55年にして「初めて」というのが驚きです。一方の『波止場で汽笛が鳴く夜は』は、どのような曲でしょうか?

この歌の主人公は、自分を振り切って連絡船に乗った男を「あなた今どこの港で誰といるの?」と悲しんで、一人お酒を飲んでいる女性です。恋心を忘れない女性なら、いくつになっても感情移入しやすい、スッと入れるような歌詞の世界です。麻先生が素晴らしい作品を書いてくださいました。「未練ほつれ毛」「酔えないお酒」「夜更けの酒場」など、悲しみがにじみ出てくるような言葉です。振り切っていった男はどんな人なのだろうと思いながら歌えるわけです。

――ピアノやギター、アコーディオンなどサウンドもシンプルながら奥深いですね。

『漁り火情歌』は何十人ものバンド編成で厚みがある音づくりで、『波止場で汽笛が鳴く夜は』のほうのバンドは5~6人ですが、音に味があります。カラオケで歌う際は、主人公になりきって、女性の悲しみを表現するのにちょっと笑顔で歌ってほしいですね。

――以前のインタビューでもうかがった「悲しい歌は笑顔で歌え」という北島三郎さんの教えですね。

笑顔といっても、「笑い」ではなく、悲しみを抑えるための笑顔づくり。悲しいけど泣き笑いで、「あなた、どこにいるの?」と呟きながら、酒場の片隅で涙を流しながらお酒を飲んでいる女性です。それを演じてほしい。声を張り上げると、一本調子になりますので、メリハリをつけて歌っていただくと、主人公の悲しみを表現できると思います。

――月1回開催されているファンの方とのイベント「松前会」で新曲は披露されたのでしょうか?

昨日、松前会だったのですが、『漁り火情歌』『波止場で汽笛が鳴く夜は』を初めて披露しました。皆さん何も言わず聴いていて、終わった瞬間の拍手がウワーッとすごかったです。「どちらがいいですか?」と聞いたら、皆さん口を揃えて「両方!」とおっしゃったんです。それがうれしくて。そこで今回のシングルは、両A面になりました。

小山雄大のデビューに涙を浮かべたわけ

――社長を務めるミイガンプロダクション所属の小山雄大さんが4月にデビューしました。デビューイベントでデビュー曲『道南恋しや』をお聴きになって、松前さんも「胸がいっぱいになった」と発言されていましたが、そのときのお気持ちは?

小山がうちに来たのが昨年の8月です。9月1日から正式に三山ひろしの舞台に立ってもらいました。その頃はダメだしばかりしていたのですが、ようやく皆さんの前で堂々とデビューしましたと、胸を張って歌えるようになったのだなと思ったら、なぜだか目頭が熱くなりました。

――小山さんがミイガンプロダクションに所属することになった決め手は何だったのでしょう。

昔から民謡ができる演歌歌手を探していたんです。入院しているときに弦先生から小山の写真とデモ音源を送っていただきました。痛みを忘れて朝から晩まで小山の歌を聴いてみました。ただ、正直に言うと、そのとき聴いた小山の『道南恋しや』は、私が気に入る歌ではありませんでした。まだまだ未熟でした。民謡をやっているときの声、張りあげるときの声はいい声でしたので、お預かりすることを決めたのです。本格的なレコーディングから歌唱が変わっていきました。小山の武器を挙げるとしたら、小学4年生からやっている津軽三味線だと思います。三味線の演奏は素晴らしいと思いますので、今後さらに稽古を積み、皆さんの前でご披露できるようになればと思っています。

若手歌手の歌の上手さにびっくり!?

――三山さんとMCを務める「あさうたワイド」(BS日テレ)も回を重ねられ、お二人のかけあいもあうんの呼吸ですね。

5年前から始まった番組ですが、三山が上手にやってくれるので、私はチャチャを入れるだけです。毎月1回開催している「スペシャルコンサート」も今はどんどんお客様が増えています。会場にはそれぞれの歌手のファンがいらっしゃいますが、ここに来たら、自分が好きな人だけではなく、全員にペンライトを振って、声をかけて応援してくださいとお客様にはお願いしています。

――番組のゲストは若手の方がほとんどですが、10~30代の演歌・歌謡曲の歌手を見て、何か感じられるところはありますか。

一番びっくりするのが、みんな歌が上手なこと。プロの歌い手だから当たり前ですけど、ご自分の歌を歌われるときに「へぇ、いい声だな」「この子はいいな」と皆さんよく見えます。ただ、着物の着方が悪かったり、髪飾りが変な方向を向いていたりするので、そんなときは直してあげます。汗をかいていたら、収録を止めて綺麗にしてあげたい。それが私の役割だと思ってやっています。この番組に来ている人はちゃんとしてあげたい。でも、着物を短く着てしまう方が多いんですよね。後ろから見るとおかしな着付けが多くて、先輩として教えられることは教えておこうと思っています。

お嫁さんの夢の中に亡き夫が出てきた!

――ご自身の歌手として今後の活動は、どのようなことをしてきたいですか?

手術をしてから、日常生活では杖を手放せませんので、この55周年を機にこれまでのようにコンスタントに新曲を出すような歌い手としての人生は終わりになるのかなと思っています。もちろん歌わせていただいているときが一番の幸せですので、ずっと歌っていきたいとは考えていますが。

――とはいえ、今後も「松前会」「あさうたワイドコンサート」、三山さんのコンサートへの特別出演などが年末までイベントがびっしり続き、11月22日には三山さんとの恒例のディナーショー「~愛につつまれて・いい夫婦の日~」も予定されています。歌手としての活動も社長業も非常に充実した日々をお過ごしのように感じられますが、中村典正先生が今の松前さんをご覧になったらどのようなことをおっしゃるでしょう。

「ママ、そんなにやったら倒れるから家にいろよ」って言うんじゃないかしら。もともと家にいてほしいという人でしたから。私、忙しいと、仏さまにご飯をお供えできないときもあるんですよ。「忙しいから、またね!」と言って家を出てくる。「それくらいママ、頑張っているな」と褒めてくれるとは思うんです。でもね、先日、息子のお嫁さんが飛ぶようにうちにやってきたんです。「パパの夢を見たの! お腹すいた、お腹すいたってパパが夢の中で言ったの!!」って。そのとき、私、1週間以上、仏壇にご飯をお供えしていなかったの(笑)。ほんとうの話なの。だからすぐにご飯をあげました。

――松前さんの夢ではなく、お子さんの夢でもなく、お嫁さんの夢に出てこられたのが不思議ですね。

私がちゃんとお供えしていないから、向こうでご飯を食べさせてもらおうと思ったんじゃないかしら(笑)。私が忙しそうだから。

今後の夢は女の子の歌手を育てること

――歌手活動に限らず、今後取り組んでみたいことはありますか?

周囲が幸せになることが私の願いなので、まずは小山雄大が歌手として大きくなってほしいこと、三山ひろしが20周年をきちんと迎えられること、また、三山が今年「紅白歌合戦」に10年連続出場を果たせるように見守っていきたいと思っています。やりたいことはたくさんあります。その一つが女の子の歌手を育てたいという事です。まだ発表できませんが、もう私の中にはこの子!という子がいるんです。小山がデビューしたばかりですので、直ぐにという訳には行きませんが、近い将来デビューさせてあげたいというのが今の夢ですね。しっかり勉強して頑張っていますので、乞うご期待ください。

――最後に「うたびと」読者へメッセージを。

賞とは無縁な私が55年も歌手を続けてこられたのは、演歌ファンの皆さんがいらっしゃるからです。カラオケ愛好家の方が、無数の曲から松前ひろ子の曲を選んで歌ってくださっていることが、私のパワーとなってきました。今回のCDにも「カラオケ大会&体験レコーディング」の応募券が封入されますので、ぜひご参加ください。大勢の方に歌っていただけることが松前ひろ子の幸せです。皆さんに感謝しております。

松前ひろ子『漁り火情歌/波止場で汽笛が鳴く夜は』

2024年9月4日発売

品番:TKCA-91581
価格:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】

1. 漁り火情歌 (作詞:さくらちさと/作曲:弦哲也/編曲:竹内弘一)
2. 波止場で汽笛が鳴く夜は (作詞:麻こよみ/作曲:弦哲也/編曲:竹内弘一)
3. 漁り火情歌  [オリジナル・カラオケ]
4. 波止場で汽笛が鳴く夜は  [オリジナル・カラオケ ]
5. 漁り火情歌 [女性声用カラオケ]
6. 波止場で汽笛が鳴く夜は [女性声用カラオケ]
7.漁り火情歌 [男性声用カラオケ]
8.波止場で汽笛が鳴く夜は [男性声用カラオケ]

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