天童よしみが“昭和100年”の幕開けに新曲『昭和ごころ』をリリース 「みんなが明るく前を向いていた昭和時代の素晴らしさを感じてください」

2025.1.15

NHK紅白歌合戦への通算29回目の出場が決定した天童よしみが、新曲『昭和ごころ』(作詞:水木れいじ、作曲:水森英夫、編曲:猪股義周)を2025年1月15日にリリースする。2024年のカラオケリクエストランキング演歌・歌謡曲部門1位に輝いた前作『昭和かたぎ』に続く本格演歌で、昭和と令和の心をつなぐ。近年は映画3作品に立て続けに出演するなど、デビュー50年を超えて活動も歌手だけにとどまらず、ますますパワフルに。2025年は昭和100年にちなんだ“100曲コンサート”も予定しており、ファンの期待が高まっている。インタビューでは『昭和ごころ』へ寄せる思いのほか、映画出演時のエピソード、自宅での意外な過ごし方、若手へのエール、そして2025年の展望までを聞いた。


毎晩欠かさない1人ボイスレッスン

──新曲『昭和ごころ』の歌詞にもあるように、2025年は昭和100年にあたります。大好評だった前作『昭和かたぎ』を受けて、ご自身でも昭和という時代を歌いたいという気持ちはさらに高まっているのでしょうか?

普通は『昭和かたぎ』が好評のうちに次はがらりと雰囲気を変えて、というのが定番ですが、この勢いのまま昭和100年を突き進もうと。しんどいこともあったけど、みんなが明るく前を向いていた昭和という時代の素晴らしさを、昭和を生きた人に思い出してもらい、まだ生まれてなかった人にも感じてもらえるような歌になったらいいなと思っています。

──『昭和かたぎ』はカラオケで多くの方が歌われていますが、『昭和ごころ』はカラオケでどのように歌うと映えそうですか?

この楽曲は4分の3拍子のワルツなんですね。ワルツって頭でっかちというか、最初の音にドンッと力が入ることが多いのですが、そう歌うとなんだか暗くなってしまうなと思いまして、通常のワルツとはちょっと違う歌い方を自分なりに工夫してみました。それはCDで確認していただくとして、どこに強弱をつけるかは皆さんが自由に歌っていただけたら。メロディーの山場が来るサビのところでリズムに乗り遅れないようにだけ気をつければ、あとは完璧に歌えると思います。

──たしかにマイナー調の曲ではあるけれど、天童さんの歌声は、決して暗くならず、どこかに希望があり、昭和という時代そのものを象徴しているようです。

そう言っていただけるのが一番うれしいんですよね。コンサートでも「元気が出たわ」とか、「すごいパワーやったね」とか、そのように言ってくださるお客さんがいたよという報告を聞くと、誰よりも私が元気でいなくちゃって気持ちになるんです。そのためにも声はしっかり出てなきゃダメですし、毎晩の1人ボイスレッスンは欠かせないですね。『珍島(ちんど)物語』から『道頓堀人情』まで一通り、ああでもない、こうでもないって言いながら、夜遅くまで1人で歌っているんです。

パワーの源は掃除!?

──全国を忙しくコンサートで飛び回りながら、そのパワーはどこからみなぎってくるんですか?

私の場合は掃除です。ものすごく片付けたがり屋で、部屋がすっきりしてないと嫌なんですよ。一番増えて困るのが紙類ですね。紙を整理していると手がカッサカサに荒れるんです。だからちゃんと手袋をしてね、これは必要、これは捨てるって全部仕分けして、紐でくくって、翌朝にゴミ出ししやすいように。それが終わったらお洗濯。

──天童さんがご自身で?

人にやってもらうのがダメなんです。自分でどこに何があるかわかっておきたいから。私はB型なんですけど、母からよく「あんた(綺麗好きが多いとされる)A型やったんかなあ』と言われます。生まれて70年も経って、そんな今さらねぇ(笑)。そんなふうにせっせと家事をやった翌日に、天童よしみにスイッチを切り替えてステージに立つという日々を送っていると、デビューから50数年経っても「なんやおもろいことやってるなあ」と思いますね。

「令和も頑張ろうや!」と私が言わんでどうする

──天童さんにとって、昭和はどんな時代でしたか?

今と一番違うのは、歌番組がたくさんありましたね。しかもアイドルから演歌の人までが一緒に出て、それがとにかく楽しくてね。私は南沙織さんや天地真理さんが大好きだったんです。その頃には私もデビューしてましたけど、自分とは真逆のポップスも大好きで。聖子ちゃんやキョンキョンもいい歌だなあって。昭和は名曲が本当にたくさん生まれましたよね。

──一方で、令和はどんな時代だと感じますか?

明るかった昭和に対して、今の時代は閉塞感があるとかしんどいとかいろいろ言われるじゃないですか。私は一切それがないんですね。むしろあの勢いのあった昭和を生きてきた分、自分が先頭切って「令和も頑張ろうや!」と言わんでどうするって気持ちが湧いてくるんです。人生100年っていうじゃないですか。私の母もすごく喜んでいるんですよ。90いくつになっても「まだ10年もあるやんか」と。そういう母を見ていると、ものすごく愛おしいし、「私もまだまだチャレンジせな!」という気持ちになるんですよね。

映画『湯道』出演が歌のアイデアにつながった

──チャレンジといえば、近年は『湯道』『BAD LANDS』『飛んで埼玉~琵琶湖より愛を込めて~』と立て続けに映画に出演されました。意外にも映画は初挑戦だったとか?

そうなんです。最初にお話をいただいた『湯道』が銭湯を舞台にした映画で、お風呂に入るシーンがあると。じゃあ、ってことでデコルテまで綺麗にして臨んだら、首から上までしか映ってませんでした(笑)。それはともかく歌を歌う役ということで、しかも息子役がクリス・ハートさん。えー!?と思うでしょう(笑)。私とクリス・ハートさんが男湯、女湯で『上を向いて歩こう』をデュエットするんです。そのシーンの撮影が本当にいい雰囲気で、(共演の)生田斗真さんや橋本環奈ちゃんも感動してくれたみたいでした。

──銭湯を巡るさまざまな人の人情群像劇。なかでも息子の出所を待ち侘びる母親と、母親思いの息子が歌で“再会”するシーンは心を打たれました。

実はこの映画の経験が『昭和かたぎ』につながっているんです。特に銭湯のシーンでは、コーヒー牛乳みたいな懐かしいものがいっぱい出てきてね。昭和の風景っていいなあって、そこから昭和をテーマにした歌を歌いたいというアイデアが浮かんだんですよ。それで気を良くして、たまたま立て続けに映画のオファーがあったのでお受けしたんですが、その次の『BAD LANDS』ではとんでもない目に遭いました(笑)。

──『BAD LANDS』で演じた新井ママは、特殊詐欺グループの道具屋。ドスの効いたお芝居が「こんな天童さん見たことない!」と新鮮でしたが、何があったのでしょうか?

映画も怖かったですが、それに輪をかけて原田眞人監督が怖くて。映画のことなんて私、何も知らないじゃないですか。それでお気楽な気持ちで現場に行ったら、「生きるか死ぬかなんだよ、この話に出てくる人間は」とおっしゃられて、もう震え上がりましたね。あるシーンで監督に「ガムをペッと吐き出してください」と言われて。そんなことやったことないじゃないですか。でも、そうだよな、そういう女性だよなと理解してやったんですが、でも何回やってもOKが出なくて、ガムを何十枚も噛んであごが痛くなりました(笑

──堂々たるお芝居でしたが、そんな裏話があったとは。

雪の多い年でね、ロケが荒んだ工場だったんです。寒空の下、原田組の皆さんがおでんを炊いていて。ああ、映画ってこういうふうに、みんなで同じ釜の飯を食べながら作っていくんだなあと。歌手ってどうしても一匹狼みたいなところがあるので、それがとても新鮮でしたね。

──現在は3作品ともに配信でも見ることができます。これからも映画のオファーがあったら受けていきたいですか?

ご縁があったらぜひ。原田監督とも打ち上げで打ち解けましたしね。でも、現場で叱っていただいたのも、今となってはとてもいい思い出なんです。この年齢になると叱ってくれる人もなかなかいなくなりますから、自分を成長させてくれる方との出会いは本当に宝物だなと思いますね。

刻一刻と近づく100曲コンサートに向けて

──2025年は昭和100年にちなんで、11月に東京国際フォーラムで「100曲コンサート」も予定されています。

まだ先のことなので実感が湧いてないですけど、時は刻一刻と近づいてきますので、この1年気合いを入れていきたいですね。選曲はまだこれからですが、『天童節昭和名曲選』というアルバムシリーズを第二十集まで出しているんですね。1枚につき15曲だとしたら300曲あるわけで、そういう意味では選ぶのもそんなに苦労しないかなと自分を奮い立たせているところです。

──先ほどもおっしゃったように昭和にはたくさんの名曲が生まれた一方、近年は演歌の世界でも若手歌手がどんどんデビューしています。ご自身の経験を通して、後輩の歌手の方々にどのようなエールを贈りたいですか?

デビューして少し経った頃に、事務所の社長から「演歌やから火がつくのは遅いかもしれんな」って言われたことがあったんです。それを聞いて若い私は恐怖を覚えました。いったいいくつになったら世に出られるのかしら、その頃にはおばあちゃんになってるんじゃないかと。でもね、「演歌は1曲ヒットすれば一生もの。ポンと火がついて簡単に消えるのとは違う」と励ましてくださって、それで私も夢を見ながら頑張ることができたんです。

──紅白歌合戦にも通算29回目の出場。社長さんの言葉は本物でした。

だから若手のみなさんにも結果が出なくてもすぐに放り投げないで、しつこく頑張ってもらいたいですね。ここ数年、デビューされた若手の皆さん、それぞれ個性的ですし、声もとてもいい。何より楽曲にとても恵まれているなと思います。みんなで演歌を盛り上げようと力を合わせている姿は本当に素晴らしいし、私も負けていられないなと思いますね。

──演歌はもとより、近年はジャンルを超えた“天童よしみの歌力”を発揮されています。2025年の展望と『昭和ごころ』について、改めてファンの方にメッセージをいただけますか。

2024年から“4人の天童よしみ”を演じて歌うということで、演歌、クラシック、バラードポップ、ジャズセッションを選曲したコンサートをお届けしています。2025年もぜひいろんな土地に伺いたいですね。そして『昭和かたぎ』は初心にかえってキャンペーンをたくさん行ったのですが、動けば動くほどみなさんにも反応していただき、とても充実した1年でした。『昭和ごころ』もたくさんの方に歌っていただけるよう、タイトル通り真心を込めて歌っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

天童よしみ『昭和かたぎ』

2025年1月15日(水)発売

品番:TECA-24002
価格:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)

【収録曲】

1.昭和かたぎ (作詞:水木れいじ/作曲:水森英夫・編曲:猪股義周)
2.季節のメロディ (作詞:水木れいじ/作曲:水森英夫・編曲:猪股義周)
3.昭和かたぎ(オリジナル・カラオケ)
4.昭和かたぎ(メロ入りカラオケ)
5.季節のメロディ(オリジナル・カラオケ)

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