神野美伽・新曲は気風のいい”終活演歌“人生百年時代にふさわしい? 百歳まで生きたら「まっぴら御免」!?

演歌はもちろん、ジャスやロックなど幅広いジャンルで活躍し、海外でも数々のステージを成功させてきた神野美伽がリリースしたのは元夫の作詞家・荒木とよひさの人生観。今では“お互い大好き”と語る二人の関係性についても語ってもらった。
――新曲は久しぶりの王道演歌でかつ男歌ですね。
演歌好きの私のファンの方が私に望んでいらっしゃる世界観だと思っています。詩がありきだったんです。作詞家の荒木とよひさ先生からタイトルを見せて頂いた段階で「来たー!!」と思いました。今歌っておきたい演歌でした。
――曲を作る前にご自分の希望をリクエストするのですか?
私は作詞家・荒木とよひさ先生の曲を歌いたいとリクエストしています。82歳になる先生と闘っていたい。元夫婦で、今は違いますが、夫婦であった頃は関係性が近すぎて歌手と作家との闘いがお互い辛かったんです。でも今はとよひさ先生に全部任せています。昔は神野美伽をイメージして色々書いてくださったんですが、今はとよひさ先生自身の思いが詩に100%詰まっています。面白いです。前作の「天の意のまま」という曲も先生ご自身の思いに溢れていました。本人の生々しい本音が詰まっているんですよね。売れるための詩ではなく、本音が感じられる歌が歌いたい。だからとよひさ先生の歌が歌いたいんです。
前作の「天の意のまま」で先生の死生観みたいなものを全部吐き出したのだと思っていたんですが、まだあったんですね。それが今回の曲です。
とよひさ先生が今何が悲しくて、何が幸せなのか、離れてみると不思議なくらいに良くわかって。とよひさ先生も自分の詩を表現してくれる歌手だと思って大事にしてくださっていると感じています。
――10月に演歌だけのコンサートが控えていますね。これまで様々なジャンルを歌っていらしたのに、あえて演歌だけに絞ったのは何故ですか?
10年近く演歌じゃないジャンルを求めて様々な曲、場所に挑戦してきましたが、やっぱり私の一番の個性は“演歌”なんだと実感したんです。でも他のジャンルは歌わないということではなく、それぞれ別々に考えてみようと思ったんです。
これまでは演歌もジャズもロックも同じステージで歌ってきたんですが、お客様にとってはどうなんだろうと考えて別々にしてみようと思いました。
でも、ジャズのビックバンドで歌ってきたことは大きな収穫があって、それが今回のこの曲のアレンジにも活かされていると思っています。「イントロはトランペットじゃなくてトロンボーンのアンサンブルで始めて欲しい」とか、「昭和感を出したい」とか私の希望を伝えました。詩も変えた方がいいと思ったところは言います。それはやっぱり元夫婦の関係性があるから言えることだと思っています。
――とよひさ先生と絶妙な距離感なんですね。
歌を作る戦友としてお互い尊敬があるんだと思います。今はお互い大好きです。とよひさ先生の詩を一番理解して歌えるのは私だと思っているんです。私が再婚したことによって、逆にとよひさ先生との関係性が良くなったんです。
そうさせてもらえるのは今の夫のお陰です。夫と、夫に巡り合わせてくれた神様に感謝しています。
――今年は還暦を迎えますね。
全く実感ないんですけどね。特に何かする予定もないですし、周りも忘れているんじゃないかなー(笑)
でも、まわりまわってご縁が繋がったり、再びご縁があったりすることも多くなって
そういう意味では“還る”ってことを実感しています。人生って面白いなーと思っています。
――神野さんは“まっぴら御免”という歌詞について“寅さんの挨拶のようだ”と仰っていますね。
「あの人とはまっぴら御免!」とか負の感情を表す言葉だと思っていると思いますが、“真平御免”と書いたりもして、許しを請う意味や、挨拶のような意味もあるらしいんです。“ここにいらっしゃる全ての皆様よろしくね”みたいなニュアンスなんだと思うんです。とよひさ先生が言いたいのは「この調子だと百歳まで生きちゃうよ、よろしくね。」と言うことなんだと思います。
――MVはどんな感じですか?
MVにとよひさ先生の字で書いた歌詞が入っています。気持ちいい空に映えています。先生は縦書きが苦手なんですが、縦書きで書いてとお願いしました。
――カラオケで歌うポイントは?
ひとりよがりでいいので、自由に気持ちよく歌って欲しいです。チャーミングなところがあったら二重丸!(笑)
――カップリングの「往生しなっせ」の詩は村田英雄さんから頂いたと書いてありましたが、どういういきさつで?
私の父が村田英雄さんが大好きでいつも家では村田英雄さんの歌がかかっていて、村田さんの歌を子供の頃かたら聞いて歌っていたんです。
もう30年以上前になりますが、「無法松の一生」を歌い継ぐという番組のコーナーがあって、村田さんのそばで歌う拷問のようなことがあったんです(笑)それ以来とても可愛がってくださって、「女の君が歌うのがいい。女性が歌う恰好良さがあるんだ。」と仰って頂いて、ご飯を食べに連れて行ってくださったり、テレビ番組のロケで「無法松の一生」の歌碑がある小倉を一緒に旅したりしました。父より年上の大先輩でしたが、とても親しくさせて頂いていました。
バレンタインデーの日にチョコレートを私が差し上げて、そのお返しに頂いたのがこの曲の詩だったんです。「君は任侠の世界の曲が似合うから、いつか誰かに曲をつけてもらって…。」と言われてずっとそのままだったんです。
20年近く前にコンサートで歌うために曲をつけて歌ったんですが、リリースはしていませんでした。でも、ずーっとリリースしていなかったのが引っかかっていて、今回「まっぴら御免」が昭和の匂いのする曲だったので、カップリングにしてみたいと思ったんです。
――その頃の先輩達とはどんな思い出がありますか?
沢山あります。三波春夫さんは校長先生みたいな人でした。本も良くくださいました。ご自身の経験にも基づいた歴史の話も聞きました。着物を選ぶときのこだわりや所作の美しさも教えて頂きました。村田英雄さんはサングラスに毛皮でおいしいものを食べに連れて行って下さいました。沢山のものを見て学ばせて頂きました。いい時代を肌で知っているのは良かったと思っています。
――ご病気されましたが今の体調はいかがですか?
これまで11回~12回手術をしました。今年も1月に手術をしました。リハビリで2か月使いましたが未だ出来ない動きがあったりするんですけれど、ステージでは動き回りたいんです!
5年半ぶりに再演する「SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~」の舞台が夏にあるので、今は体調管理と何があっても対応できるようにするためのトレーニングが一番の仕事です。すごいプレッシャーなんですが、5年半前よりももっと出来ると思う気持ちもあって…。
毎日が貴重です。誰と過ごすか、何を食べるか、一日一日を大切に過ごしたいと思っています。
―― これからどんな曲を歌いたいですか?
納得したものを歌いたい。限られた時間です。この先そんなに沢山曲も作れないでしょう。だから勿体ないのでね。
それから「演歌は古臭い、昭和で止まっている」とかいう人もいますが、“それの何が悪いの”と思っています。それがいいんですから。
神野美伽『まっぴら御免』
発売中
品番:KICM-31168
定価:¥1,500 (税抜価格 ¥1,364)
収録内容
1.まっぴら御免(作詩:荒木 とよひさ/作曲:岡 千秋/編曲:猪股 義周)
2.往生しなっせ(作詩:村田 英雄/作曲:立花 淳夫/編曲:猪股 義周)
3.まっぴら御免(オリジナルカラオケ)
4.まっぴら御免(一般用カラオケ半音下げ)
5.往生しなっせ(オリジナルカラオケ)
6.往生しなっせ(一般用カラオケ半音下げ)
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